如月が惑えば雪雲が近づく俺の瞳も濡れたまま乾く間もなくて春近し(山下智久)
春(弥生三月)は別れの季節である。冬ドラマは一気にこの流れに乗らなければならない。
ワンクールで終わるドラマの宿命だが・・・せっかく・・・馴染んだ井原家とも・・・もう愛と青春の旅立ちの予感なのである。
その上での卒業シーズンなのである。前回は長女・晴香が「青春をあきらめて」から卒業したわけだが・・・今回は前半から「この戦争が終わったら彼女と結婚するんだ」的なフラグをたてまくり・・・デカワンコのデークじゃなかったデュークじゃなかった長峰刑事(水上剣星)が人生を卒業してしまったのである。そして、ついに治療不可の脳腫瘍告知で健人の余命も卒業間近であることを知った主人公・真人。まさに悲しみに彩られた第八話ですな。
すでに・・・仕出しの村内の緑さん(松本じゅん)にさえ愛着を覚える今日この頃・・・もうすぐ警視庁高円寺署(フィクション)周辺ともお別れかと思うと・・・なごり雪もふる時を知り、駅前に落ちてくるんだな・・・と目がしらが熱くなります・・・まあ、耄碌じじいですからな。
とにかく・・・長いフリが終わって・・・ここからが本番なんですな。きっと。準備万端ですかな?
残された謎は・・・岩田さん。そして、あずあずです。
まあ、健人の母(来週、登場か・・・)や、真人たちの母、健人が放浪中に噂のあった美人ママ、晴香の幼少の頃の事故の詳細、デーク刺殺犯の正体、桃子の進路問題、隼人のバイト先、村内弥生の独身生活、田中さんの家庭問題、ぶっかけその後で・・・など知りたいことは山Pだけに山ほどありますが~。
で、『最高の人生の終り方〜エンディングプランナー〜・第8回』(TBSテレビ20120301PM9~)脚本・渡辺千穂、演出・石井康晴を見た。いきなり、めでたい・・・で始まるのだな。仕出しの村内は結婚式もやってるので「鯛」はつきもの。そして、出入りの業者として弥生(橋本真実)さんはサービス、サービスなのである。ついでにさりげなく出番を確保する香川生花店の夕子(磯野貴理子)さんである。ながら見のお茶の間では未だにこの二人の女性が何者なのか定かでない人もいるかもね。お葬式には仕出し弁当も、生花もつきもの・・・っていうことなんで、よろしく。つきもの・・・って便利な言葉だよね。とにかく、なしくずしに関係をせまってくる感じで。で、「鯛」を知らない無知はいまどきの大学生の隼人(知念侑李)にはつきもので、「お肉がよかった~」と贅沢を言うのは体はもう大人の女子高生の桃子(大野いと)にはつきものなんだな。そして、俺(真人=山下智久)には岩田(山崎努)さんが憑きもの・・・おっと、これ意味違うし、今回のオチだから先走りしすぎでした。
で、外回りから戻る俺。まあ、葬式帰りとも言います。健人兄貴(反町隆史)がまたまた所在不明になったんで・・・葬儀の井原屋店主としては・・・葬儀の後始末など最終責任者として一番最後の帰宅になるわけ。お腹もペコペコだよっ。
と、そこへ・・・不審なカップル登場である。なんか・・・理由(わけ)ありって感じで・・・なんと健人兄貴と坂巻刑事(榮倉奈々)がしっぽりなのだ。
そそくさと家に戻った兄貴。思わず、俺は坂巻刑事を問い詰める。いゃ、別に坂巻刑事を兄貴に取られたって感じじゃなくて、むしろ、兄貴を坂巻刑事にとられた気分。わかるかな・・・俺はものすごい兄貴っ子なんだぜ。
「なんで・・・兄貴と一緒なんだよ」
「あれあれ・・・その顔は・・・嫉妬かな。うんうん、失いそうになって初めて大切なものがわかるってあるある・・・だよね~」
「そりゃ・・・美しい誤解だね。まったく、ちがうから」
「またまた~。じゃ、私はこれで」
しかし、俺には分かる・・・坂巻刑事は何かを隠しているんだな・・・きっと。
もちろん・・・それが何か、まではわからない。レントゲン・アイはもってないからね。ああ・・・それは服の上から裸が見えるってやつか。
とにかく、今回はショートで兄貴が帰還したおかげで、おいしい鯛料理にありつけた。
まったく・・・葬儀屋の跡取り息子なのに魚を捌けるってのは凄いことだよね。俺たちの母親がいつから不在なのかはまだ明らかではないけれど・・・兄貴が母親代わりで晴香が大きくなるまでは食事を作ってたってことは・・・充分、想像できるでしょ。そう、つまり、俺にとって兄貴はおふくろ的存在でもあるわけなんだ。俺が兄貴っ子なのは胃袋をつかまれてるからなんだよ。
時は三月。桃の節句だけど・・・晴香の恋の始まり、桃子の恋の終わり、隼人の片思い継続中といつになく和やかな早春なのだった。
兄貴は「親父にこんな立派な雛人形を買ってもらったんだ・・・晴香も桃子もたくさん食べて、健康に育てよ・・・」なんておふくろきどりである。まあ、実は意味深なんだけどね。
しかし、事情を知らない弟妹は「桃子はもうでかいからいいよ」「なによ、チビ」「兄さんに向かってその言い方はひどいでしょ」などとぶっかけチャンスを匂わすのだが・・・なにしろ、健人兄貴のいる我が家は・・・ほのぼの家族なのである。全国、一千万人のぶっかけファンをがっかりさせる展開です。
しかし・・・兄貴の言葉に何故か胸騒ぎを感じる俺は・・・坂巻刑事の事情聴取に向かうのだった。念のために言っておくけど・・・二人の仲がどうこうではなくて・・・なんとなく兄貴のことが気がかりなんだからね。俺は。
たまたま、居合わせた長峰刑事に袖の下を渡すと・・・何故か上機嫌の長峰刑事は俺と坂巻刑事を食事に誘うのだった。
有線放送でビートルズの流れるとんかつ屋に俺たちを連れ込んだ長峰刑事は刑事としては危険な旗を次々とたてはじめる。
「俺、結婚しました~」
「刑事みたいな危険な仕事に娘をやれんと言われて苦節三年、ついに結婚指輪をはめました~」
「ただ今、ダイエット中なのでダブル・とんかつ控えてます」
「長生きしなければならないのです。なぜなら子供が出来たから~」
「無事、出産を祈って願懸け中なのです」
ああ、長峰刑事、このドラマでそんなフラグをたてまくったらだめだよおって俺はアドバイスしたいくらいでした。
でも、この日、俺たちはとんかつ定食を食べながら結婚した、子供もできたっていう長峰刑事の話を笑って聞いてたんだ。
で、肝心な兄貴の話を聞き損ねた俺だった。
さて、高齢の・・・じゃなかった恒例の親父の遺言チェック。今回は健人兄貴のリクエストなんで脚本通りです。
健人・・・一生懸命葬儀屋を手伝ってくれたな。
お前の家はここだ。
それを忘れるなよ。
「オヤジの奴・・・なに、当たり前のことを書いてんだ・・・」
そう言うと兄貴はふらりと家を出て行った。それって当り前じゃないことを書いていたってことなのかい。一体・・・兄貴は何を隠しているのかな。
すると、晴香がやってきて「洗濯物出して」って言うから、俺はなんとなく兄貴の部屋へ言って・・・恐ろしいものを発見してしまった。脳外科の処方薬。そして・・・ものすごくやばい感じのするたくさんのクスリ・・・いや・・・誤解なきように。つまり・・・なんだか・・・重病って感じがしたってことだからね。
こうなったら・・・やはり・・・坂巻刑事をとことん問い詰めなければならないのだ。
「一体、何を隠してるんだ・・・」
「ごめん・・・それは兄貴に聞いて・・・」
兄貴って・・・お前の兄貴かよっ・・・とつっこみたいところだけど・・・俺がまさぴょんだからな。きっとまさぴょんの兄貴は自分にとっても兄貴ってことなんだろう。坂巻刑事めぇぇぇぇぇぇっ。俺にぞっこんなんだな。
兄貴が俺に隠しごとをするなんて、絶対、絶対に許せない。絶対、絶対にだっ。
ということで、家に帰るなり、兄貴に「おりいって話がある」と切り出す俺。
「なんだよ・・・まさか、まさぴょん、好きな人ができましたーっとかかぁ」
兄貴の一言にのって騒ぎ立てる弟妹たちを制して、俺は四代目葬儀の井原屋店主として、兄貴と「二人だけでまじめな話がしたい」と切り出した。
で、兄貴が俺をさそいだしたのが・・・きれいなお姉さんがいるガールス・バーである。
「こんなとこじゃ、話にならないだろ」
「そんなにいきりたつなよ」
「ま~、こちら弟さんでしょ~。兄弟そろってイケメンさんね~」
「あ・に・き」
店内が静粛になってしまった。
「わかった・・・すまないけどちょっと席をはずしてくれないか」
「あら・・・しんねこ(ご親密)ね・・・」
「昭和の生まれかよっ」
「兄貴、坂巻刑事に話は聞いたんだぜ・・・」
「そうか・・・」
店内の全員が聞き耳を立てている。
「病気ってなんだよ」
「脳腫瘍だ」
「の・・・のうしゅよう・・・」
店内の全員に緊張が走る。
「難しいところにあるそうだ」
「そんな冗談だろ・・・」
「本当だ」
「でも薬とかで・・・治るんだろう」
「症状は緩和されるが・・・根本的には治療できないそうだ」
「でも、手術とか・・・」
「できないそうだ」
「日本一の奇跡の名医とか」
「いないそうだ・・・日本全国の医者を訪ねたが答えは同じだった」
「そんな・・・」
俺は戸惑い、絶望し、怒り、そして悲哀に包まれた。
俺は涙をこらえようとした。でも、無理だった。
「なんでだよ・・・なんでだよお」
俺は泣いた。店内のみんながもらい泣きした。
号泣する俺の肩を兄貴がそっと抱いてくれる。
嘘だろ・・・俺の優しい兄貴がずっとずっといなくなるなんて。
しかし、本当だった。
兄貴と一緒に西荻病院にいった俺は医者から説明されてしまったのだ。
医者に言われたらもう信じるしかないんだな、この国では。
「深刻な状況だし・・・麻痺とか、記憶障害とか、そして、いつ最後のその時が訪れてもおかしくない状態です」
なんだよ・・・その言い方・・・まるで兄貴が死んだも同然みたいじゃないか。
「そういうわけなんだ・・・このことは隼人や桃子・・・そして晴香にも内緒にしてくれないか」
「だって」
「そうすれば・・・最後までいつもの兄貴でいられるだろう」
「・・・」
「最後まで楽しくすごしたいんだ・・・それに死ぬまで葬儀屋の仕事を続けたい」
「・・・」
「親父の言う通りに・・・あの家が俺の家だ・・・最後は俺の家で・・・」
俺はまためそめそと泣きました。
一人になってコタローを見ても泣いてしまう。
すると、岩田さんがやってきた。
「おやじさん・・・幾つで亡くなったっけ?」
「享年六十五だったかな・・・」
「健人くんはいくつだ・・・」
「俺と九つ違いだから・・・三十五かな・・・」
「年をとると・・・死ぬのがこわくなくなる・・・よくしたもんだ・・・まあ、そうならない命根性の汚い人もいるが・・・でも・・・若くて死ぬのは・・・普通はこわくてこわくてたまらないだろう。まあ、若い時から命知らずもいるけどな」
「例外の話はいいですよ・・・」
「とにかく・・・大好きな兄貴のためだ・・・めそめそしていても・・・しょうがないぞ。しょうがないからしょうがないじゃないだろう・・・」
「・・・」
「願いをかなえてやればいいだろう」
「はい」
雛祭りの夜は晴香がちらし寿司を作るのだ。
「うまいなあ・・・晴香のちらし寿司は・・・」
「うれしい・・・さすがは健兄ちゃん」
「やはり、女は料理のうまいのが一番だよ」
「えー、そうなの」
「そうだよ、顔なんてたとえ松嶋菜々子くらい美人でもいつかは飽きるしさ、やはり家政婦のミタさんみたいにおいしい料理を作れた方がいつまでも愛されるさ・・・胃袋つかみが最高の必殺技なんだぞ~」
兄貴が言うと説得力があるけど・・・無邪気に喜ぶ晴香や桃子の顔を見ていると・・・俺はまた泣きそうになってしまう。でも兄貴がウインクするから・・・ぐっとこらえたよ。
そうだ・・・俺だって兄貴なんだからな。顔で笑って心で泣くくらいできなくてどうする・・・だ。
なにしろ・・・兄貴はきっともっともっともっと辛くて痛くて哀しいはずなんだから。
雛祭りがすんだら・・・早めの片づけは・・・嫁入りが遅くならないようにという心得である。
まあ、本当は出しっぱなしだと邪魔だからだけどな。
まあ、娘も片付かないと邪魔だった時代があったということだよね、きっと。
「私は結婚なんてずーっとしたくない」と桃子。
「何言ってんだ・・・どんどん、結婚して、幸せになれ」と兄貴。
「いつか・・・みんな・・・この家からいなくなるのかな」と隼人。
「でも、健人兄ちゃんがいるから・・・この家はいつまでも私たちの家だよね」
理屈はともかく・・・晴香、やめてくれ・・・俺は泣くのを我慢してるんだ。
兄貴は励ますように俺を見て微笑んだ。
もう・・・駄目だ・・・と思った時に電話が鳴った。
とにかく・・・助かったよ。
電話の相手の長峰刑事に呼び出されて、駅前の居酒屋にいくと・・・坂巻刑事が酔いつぶれていた。
「俺にお祝いのファースト・シューズくれたんだけど・・・なんだか・・・兄貴のことでまさぴょんに悪いことしたとか、くだまいてるうちに泥酔だ・・・」
「しょうがないやつ・・・おいっ」
「はーい、あ、先輩、あれあれ・・・」
「ああ、あれね~」と胎児のエコー画像を取り出す長峰刑事。
もう、出入りの業者としてはヨイショのしどころである。
「男ですかー女ですかー」
「これが目にはいらぬかー」
「わー、立派なおチンチン~」
「立派、立派ーーーっ」と叫んで坂巻刑事ふたたび沈没である。
その時・・・長峰刑事に電話が入り、「急用ができたんで・・・すまないが・・・こいつの面倒みてやってくれ」と頼まれる。
「かしこまり~」である。
ああ、なんだか久しぶりに台車を押してると思うかもしれませんが・・・ただ、省略されているだけで坂巻刑事の休日前夜はいつも押しているんですよ・・・念のため。
そして、夜の街には雪が降っていたのだ。坂巻刑事がいつものゲロ・ポイントで嘔吐した後で俺たちは冷たいベンチで肩を並べたよ。
「流れ星はありませんかーっ」
「雪だよ、雪」
「・・・まさぴょんは何をお祈りしたの・・・」
「願い事は人に言ったらだめなんだよ」
「ちぇっ・・・」
「今日は悪酔いの度が過ぎてるかな~」
「あたしさ・・・おじいちゃんも刑事だったんだ」と突然、坂巻刑事の問わず語りである。
「尊敬してた・・・あの駅で死んだ人って言ってたの・・・おじいちゃんなんだ・・・私が殺したようなもんなのよね・・・おじいちゃん・・・車いすに乗ってたの・・・私がホームでストッパーかけ忘れて・・・」
「でも、事故なんだろう・・・」と言いつつ俺はそんなに簡単に車イスは電車の線路にとびこまないとも思ったな。誰かが押さなくちゃ・・・ね。
「あの日、私、ケンカして・・・おばあちゃんの三回忌なのに・・・おじいちゃんが昔の仕事仲間に逢うとか言ってこなくてさ・・・私におこられて・・・おじいちゃん、哀しい顔してた・・・そして・・・その後すぐに・・・」
いや・・・想像しただけで恐ろしい。坂巻刑事・・・よく立ち直れたな。尊敬するぜ。
「これ・・・私のおじいちゃん」と坂巻刑事はふるびた写真を取り出した。
・・・え・・・ええっ・・・ええーっ・・・この人は岩田さんじゃありませんかっ。
「俺・・・この人知ってる・・・生きてるし・・・」
「えー、なんてこと言うんだよ、いくらゲロの始末をしてくれるまさぴょんでも、言っていい冗談といけない冗談があるぜーっ」
「でも・・・岩田さんだし・・・」
「だって、私、遺体見たもん・・・おじいちゃん、死んでたもん・・・おじいちゃん・・・」
「ごめん・・・悪かった・・・きっと・・・他人の空似なんだろう」
「・・・」
でも・・・似ているよ・・・岩田さん・・・坂巻刑事の母方の祖父なのか・・・。
いや、その人は死んでいるから・・・別人。そうでない場合は・・・ゆ、幽霊とかですかーっ。
で、坂巻刑事を宅配してから自宅に戻ると夜更けの岩田さんである。
いや・・・もう、この時点で・・・不気味ですから。
雨上がりの月光に照らされた岩田さんは朧な姿が見え隠れである。
「あの・・・幽霊ですか?」
「違う」
「ですよね~」
そこへ・・・長峰刑事から電話である。振り返ると岩田さんはいない。なんというか・・・背筋がピンとした・・・じゃなくてヒヤリとしました。
それはそれとして、実は長峰刑事たちはある事件を追っていた。ここで・・・後で坂巻刑事に聞いたりした事件の経過をまとめておきます。
①造成地で白骨遺体が発見される
②六年前に失踪した阿佐ヶ谷のイタリアンレストラン経営者の大林恭子と判明
③大林恭子は失踪直前に地下カジノでの賭博行為にはまっていたことが判明
④捜索願いを出した恭子の弟・大林健一(榊英雄)は「もうなにもかもイヤになった」と書かれた遺書のようなものを車イスに乗った元・刑事に渡したと証言。
ただし、最後の部分は・・・岩田元刑事であることが推測され・・・長峰と坂巻の上司でもあり、岩田のかっての部下でもあった木野原刑事(塩見三省)のアドバイスで・・・坂巻刑事には知らされていなかったらしい・・・。
とにかく・・・長峰刑事はそういう事件も捜査中だったのだ。
まあ・・・もう・・・城壁の上は旗だらけなんだな・・・・。
「あれから・・・坂巻の奴どうした・・・そうか、大人しく帰ったか・・・襲われたりしなかったのか・・・それはよかった・・・じゃ・・・そういうことどぇ・・・うげっ・・・ズッ、ジジジ・・・」
「長峰さん、長峰さん、どうしたんですかーっ」
翌日、長峰刑事のご遺体がジョギング中の人によって発見された。血痕その他から、殺害現場はどこか別の場所だったらしい。持ち物は・・・坂巻刑事のプレゼントしたファースト・シューズも含めてご遺体とともに放置されていたという。
まさに「長峰刑事が死んでいる」だな。
事情聴取された俺は長峰刑事に最後に会い、長峰刑事と最後に電話したのが自分だと知る。うわあ・・・すごく・・・ブルーな感じだ。いや・・・その時、酔いつぶれて爆睡していた坂巻刑事なんて・・・想像するのも恐ろしいダーク・ブルーな気持ちだろうけどさ。
せっかく、「お清め」というか袖の下のビール券をさりげなく渡せる仲になったのに・・・一から営業しなおしだ・・・とか言っている場合じゃないな。
こんな時、頼りになるのは兄貴・・・でも、その兄貴がもうすぐこの世からいなくなるんだぜ・・・俺もやっぱりダーク・ブルー。
遺体安置所に現れた長峰夫人(西原亜希)は新婚で、身重で、未亡人だ。もう、何と声をかけていいかわからない。
しかし、さすがは兄貴。
「葬儀の井原屋と申します・・・長峰さんには生前大変お世話になりました。奥様、どうか長峰さんのご葬儀をまかせていただけないでしょうか。従業員一同、心をこめてお見送りのお手伝いをいたします」
「・・・お願いします」
本当にさすがは兄貴なんだぜ。
とりあえず新婚のご自宅へ遺体を搬送。田中さん(大友康平)や晴香もかけつけて・・・葬儀の相談に入ったが・・・長峰夫人は茫然自失だ。
「奥様・・・」と兄貴が呼びかけても・・・「ごめんなさい・・・結婚したばかりで・・・奥様と呼ばれても自分のことだと思えなくて・・・」
ああ、いたたまれない。
「もっと・・・優しい言葉をかけてあげればよかった・・・」
坂巻刑事ももらい泣きである。
「私も赤ちゃんプレイにもっとのってあげれば・・・」
長峰夫人と坂巻刑事、この二人は昔、さつき高校でダンスドリル部に所属していた親友同士なのだ。
一同、しのび泣きである。
俺は思わず、席をはずしてしまった。気配を読んで俺を追いかけてきた兄貴。
「大丈夫か・・・」
「あの時、どこに行くのかとか・・・どこにいるのかとか・・・俺がちゃんときいてれば」
「そんなの、無理だよ・・・真人のせいじゃない・・・それより・・・う」
あ、兄貴~。やめて、まだ、逝かないで・・・。
俺は倒れかかった兄貴を抱きとめた。
「大丈夫だ・・・真人・・・俺たちの仕事は・・・ご遺族に心から悲しんでもらえるように・・・」
「わかったよ、わかったから・・・ちょっと休んでくれよ」
「・・・うん」
そこへ坂巻刑事がかけつけた。
「まさぴょん・・・兄貴・・・」
だから兄貴はやめてくれ。俺の兄貴なんだから。
「坂巻刑事・・・君もつらいだろうが」
「わかってます、私の仕事は犯人を・・・グス・・・逮捕・・・ヒック・・・することです・・・・・・・グルグルキュ~」
俺と坂巻刑事は空腹だった。だから二人であの店へ行ったんだ。
ヒレとロースのダブルとんかつ。
俺たちは死者を悼むように食材を悼む。命をいただいてそれでも生きていくしかないからだ。
「トンカツ食べて」
「パワーもらって」
「葬式成功」
「犯人逮捕」
「う、うまい」
「おいしい」
・・・どんなに哀しくても美味しいものは美味い。これが若いってことなんだな。
そして・・・長峰刑事の葬儀にはダブルとんかつをお供えした。
田舎の敬虔な仏教徒には意外かもしれないが東京では葬儀の後に美味しいお寿司を食べるのが習わしなんだよ。
彼の無念は大きすぎて・・・俺の手にあまることは確かだけど・・・。
涙をこらえて署員を代表して弔辞を読み上げる坂巻刑事はすごく立派だった。
「かならず犯人を検挙します」
長峰刑事のご遺体に誓う署員一同である。
俺たち、葬儀の井原屋も全員で長峰刑事の旅立ちを見送るのだ・・・逝ってらっしゃい・・・と。
一体、長峰刑事は誰に・・・何のために・・・殺されたのか・・・。
それはまだ・・・これからの話なのだが・・・最後の最後に黄昏時は逢魔時である。
岩田さんの再々登場なのである。
「彼は犯人を追っていたのか?」
「いや・・・なんだか・・・女の人の白骨死体について調べていたとか・・・検索してみます?」
「してくれ・・・」
「杉並区松庵の道路拡張工事で・・・白骨遺体発見・・・これです」
「・・・」
「何か知っているんですか」
「追ってた女だ」
「えっ・・・」
「俺は刑事だったんだ」
「それじゃ・・・坂巻刑事のお祖父さんですか・・・」
「そうだ」
「・・・じゃ・・・死んでるんですか・・・」って。
い、いなあああああああああああい。お、俺は、こ、腰がぬけそうなよろりをしたよ。
親父・・・あのよ・・・。
でも、まあ・・・双子とか・・・別人が整形してなりすましてるとか・・・単なるそっくりさんとか。
それとも・・・本当に・・・。
ジーザス、ヴィーナス、麻婆茄子。
ほら。もっとよく見て。
う、うろたえるな。俺。
関連するキッドのブログ→第7話のレビュー
シナリオに沿ったレビューをお望みの方はこちらへ→mari様のレビュー
山Pをこよなく愛する皆様はこちらへ→エリお嬢様のレビュー
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コメント
じいやさま、ひな祭りパーティは大盛況ですね~。
桃の節句にちなんでピーチパイが好評みたいだわ。
私の甘酒は日本酒の濁り酒にしといてね~。
蛤のおすましとチラシ寿司
みなさま、満足してくれたようで良かったわ。
じいやのおかげよ~!
それにしても涙を絞られました。
なんでダブルで涙の演出だったのか
トンカツまでダブルでしたしねえ。
とっても疲れてしまいましたわ~。
でも井原家には久々に健人兄ちゃんが帰ってきて
本当、まるでお母さんみたいでした。
私もほのぼのしたものを感じました。
てか「兄貴っ子」ってじいやのネーミングが
すごくいい感じです~。
Pさんと反町さん二人が並ぶと潤い気分ですね。
昨日、遊びに来た時に見ましたが
「あずあず」とのツーショットコーナー。
二人のことをすっかり忘れてました。
初回に携帯待ち受けで見て以来
それっきりのコレっきり・・?
今後あずあずが話題に乗る事はあるのでしょうか。
可愛い子だったのがよくわかる写真でしたね。
次回は健人兄ちゃんのママがやってくるそうですし
別れの季節が近いことを感じて
また涙、私の瞳も乾く間もなしだわ。
投稿: エリ | 2012年3月 3日 (土) 13時23分
✿❀✿❀✿かりん☆スー☆エリ様、いらっしゃいませ✿❀✿❀✿
夕方からは100万発の冬の花火大会。
巨大ひなロボットのエレクトリカルパレード。
H☆Cレーザービームショー
と「ひな祭りパーティー夜の部」が続きますぞ~。
まこ様専用直系10メートルのチョコレートひしもち
アンナ様専用立ち食い善哉
エリ様専用おきよめ入り甘酒も飲み放題の大盤振る舞いでございます。
今回は真人様がこれでもかと
涙の演技のヴァリエーション。
そして、お化けに対するリアクションと
小技満載でしたな。
のりつっこみ手作り望遠鏡も天晴ですな。
こういうおしゃれな演技プランの
あるところがアクター山P先輩の真骨頂ですな。
全編「愛、テキサス」の変奏曲で
じいやも「つめ、をかーむしーぐさが」と
つい口ずさんでしまう洗脳状態でございます。
そうでございましょう。
これまでをじっくり見ていれば
あきらかに健人は真人様の擬似お母様なのですな。
言わば、蟹江敬三・反町隆史夫妻で
妻家出中に夫死亡みたいなーーーーっ。
まあ、この脚本家には
既成概念に対する懐疑が
意識的にせよ無意識的にせよ
匂い立つのですな。
ふつうの家族とか
ふつうの倫理とか
ふつうの恋愛とか
そんなのちゃんちゃらおかしいよっ・・・
そういう心根ですな。
で、ありながら
美しいもの、清らかなもの、優しいものを
ヒリヒリと求めて行く。
「泣かないと・・・」「名前を・・・」「最高の・・・」と
このあたりは一貫しているようでございます。
ヒレカツもロースカツも食べたい気持ちなのですな。
前二作は女の子主人公でストレートだったのが
今作は男の子主人公で少しカーブがかかったようですが。
とにかく、山P&反町のツーショットは美兄弟ですな。
「あずあず」に関してはまったく着地点が見えないのですが
TBSドラマによくある、最終回にみのもんた登場の
伏線まで考えると・・・難解ですなーーーっ。
初回くらいまで視聴率が回復すれば
最終回以後の展開もあるので
あずあずだけにおあずけおあずけかもしれません。
しかし、お天気キャスターなので
演技力の問題がありますしね~。
戸川美奈子(長山藍子)とはまた豪華なお母さんですな。
今回は長峰夫人(西原亜紀)でしたが・・・
「渡る世間」から人が流れてきそうな予感が
いたしましたぞ~。
本当に冬ドラマの終わりは
なんとなく心がせつなくなるのですなーっ。
投稿: キッド | 2012年3月 3日 (土) 16時39分
今年の冬はいつまでも続きそうでしたが今日は暖かくなりましたね(^^)
いつもと勝手が違って戸惑うことが多いこのドラマ☆キッドさんのおかげで毎回楽しんでいますが正直8話の展開はあまり好きではありませんでした
予告で手術の言葉を聞いた事があった気がしたけれど最終回の葬儀が誰かは確定するわ 明るいパートで好きだった水上剣星さんは殺されるわで もう最悪(笑)
でも今までで絵的には一番よかったです♪山下君と反町さんとの並びや 最後の雨の中 敬礼するシーン
さすが女優さん
弔辞を読むシーンも雨のシーンも榮倉奈々ちゃんが魅せてくれました☆
犯人はあまり引き延ばさず次回には判明して欲しいです
今までの展開では残された4人の兄弟の絆を描く最終回になるのでしょうか?
一度でいいから主役に惚れ惚れするようなシーンがあればいいなと思っていますが期待半分にしてあと2話 楽しみたいと思います
投稿: chiru | 2012年3月 6日 (火) 22時08分
シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃいませ・・・大ファン
寒くて辛い日々の中に春一番が吹く。
しかし、そうなると冬も名残惜しい・・・。
そういう心情があれば
心というものの厄介さに思い当たりまする。
毎回、楽しんでいただき幸いでございます。
励みになりますーーーっ。
しかし、今回はいつもの通り、再現性は低めですが
構成そのものはほとんどいじってないのですな。
そのぐらいノーマルな展開・・・。
そうなると逆にこの脚本の持つ
底意地の悪さみたいなものがお茶の間を直撃・・・
でございますなーーーっ。
刑事ドラマでは刑事の殉職は日常茶飯事ですが
ホームドラマでは近所の刑事は
めったなことでは死にませんからねえ。
本人にも医者にもお墨付きを与えられた
もっとも愛するものの余命ポイント・ゼロ。
毎週、ほんのささいな付合いだけれど確実に心にしのびこんでいた
出入り先の親しい人の突然の死。
この脚本の人目につきにくい
着実な前フリが
じっくり見ていると効いてきますな~。
レビューなどしていると
本当に心が揺らされますぞ。
まあ、すぐに人格交替してスルーしますけれどね~。
しかし、まあ、世にも美しい兄弟のツーショットで
主人公が人目もはばからずめそめそと・・・。
なかなか、見応えがございましたぞ~。
そして・・・長峰刑事の死に関しては
さらにつらい心情の坂巻刑事。
けれど・・・祖父の死と坂巻刑事殉職という点が
一本の線で結ばれると
もっとやりきれない何かが暴露される予感も
はらんでいますしなあ・・・。
まあ・・・それをすかしてきたりもするかもしれませんがぁぁぁぁっ。
まったく・・・じゃじゃ馬だな~
次回は・・・予告では
一人目の母が登場ですねえ。
二人目の母はどうなるのかなあ・・・。
この流れで言うと
健人の死と岩田さんの謎解明は
最終回にあわせて・・・
ですけれど・・・そういう予測をしても
無駄だったりいたしますなあ。
とにかく冬の北風で始まった物語なので
最後は春の南風で終わるだろうとは考えますが・・・。
ちなみに今回の隠しタイトルは
「健人の夏をあきらめて」でございます。
ええーっ、毎回毎回
真人に惚れ惚れしている・・・キッドって一体・・・!?
女心の鷲掴みは本当に難しいですなーーーーーっ。
投稿: キッド | 2012年3月 7日 (水) 02時14分
キッドさん、おはようございます
毎回、タイトルには、なるほどと舌を巻くのですが、今回は一段と風流ですね
違法カジノに白骨死体、殉職と、見ていて局を間違えたのかと思ったほど
ハードでスピーディな展開に、驚かされた回でしたわ。
やっぱり、想像の斜め上を行ってくれます。
岩田さんの謎も明かされつつ、このまま一気に最終回に突き進むのかと思いきや、
明日は健ママ登場で、足踏み回になるようですね。
それでこそのエンプラ。何故か、ちょっと安心しました
優樹がおじいちゃんの葬儀に行けなかった、と話していたので、
ひょっとしたら、最終回は岩田さんを送ることになるのかもしれませんね。
岩田さんの死因など、腑に落ちない点は多々ありますが、
あまり期待しないで待ちたいと思います
投稿: mi-nuts | 2012年3月 7日 (水) 10時53分
✭クイーン・オブ・ザ・ランチ✭mi-nuts様、いらっしゃいませ✭親切百回接吻一回✭
「寺内貫太郎一家」的流れから
元ネタは70年代歌謡を意識していたのですが
要素が消えたので80年代へ。
「夏をあきらめて/サザンオールスターズ」は「愛、テキサス」にも
ちょっと似てますしね。
耳で聞いていると「銃口(マズル)」は
「なずる」に聞こえていて
なぞるの古語的表現かな・・・と思っていましたが
歌詞は映画「キル・ビル」の世界ですな。
花嫁を撃ったビルの心情そのものですからなーっ。
作詞のやくしまるえつこをキッドは矢野顕子だと
ばかり思っていましたぞ~。
アニメ版の「荒川アンダー ザ ブリッジ」の主題歌の頃から
キッドを痺れさせているアーティストですが
山Pにぴったりの歌をよくもまあ・・・と舌を巻く
今日この頃です。
この場を借りて言っておきまする~。
山越えて谷越えてあいつのいる星に届きますように。
真人は現在、26歳の設定ですので
六年前の事件の頃は20歳前後。大学生だったことでしょう。
それから六年、時の台車にのってここにたどりついた真人。
この悲しみに出会うための旅路だったと思えば
胸も痛みますが
他人の不幸が飯のタネである以上・・・
一人死ねばごはんが食べられる理なのですな。
Wとんかつはその供養の象徴と言えましょう。
まさにオーソドックスで
順当な今回の脚本・構成・・・
やってくれますねえ・・・この脚本家は。
できるのにやらない・・・
この意地の張り方には茫然といたしますな。
とにかく、健人の死期と岩田さんの謎。
この二つの他にも
ささいな謎は充満していますからな
どこへ寄り道するのか・・・
まったく予測不能です。
ここがたまらない魅力でございまするーーーっ。
とにかくまともな期待をしたりすれば
絶対裏切られるので
「何をしでかしてくれるのか」
そういう悪戯っ子に対する優しい期待で
待つほかはございません。
まあ、キッドはそういう楽しみ方は嫌いじゃないのですな。
いや・・・どちらかといえば大好物なのですなーーーっ。
投稿: キッド | 2012年3月 7日 (水) 16時04分