謎解きはディナーのあとで自家用ジェットで沖縄で(櫻井翔&北川景子)
休眠中のレギュラードラマ(フジテレビ2011秋ドラマ火曜PM9~)のスペシャルである。
久しぶりに1クールのドラマを批判的に見て・・・思うのはターゲット設定の難しさがさらに進化している感じである。
タレント・システムとドラマ・レベルのつり合いもかなり微妙なものになっている。
前クールでは「家政婦のミタ」という視聴率的なモンスターが出現したわけだが・・・とかく黒い噂のある日テレ系ドラマの視聴率だったことを割り引いても・・・幼児向けのドラマが「爆発する」恐怖みたいなものを感じるわけである。
その他ではどんなにわかりやすく作っても、一定レベルの数字しか確保できないし、ちょっとでも難解になれば潮が引くようにお茶の間が逃げていくわけである。
危機だなあ。
そういう意味で・・・ある程度知的で、ある程度難解で、ある程度スカスカの・・・このドラマが14.7%というのは・・・もうなんだか分析不可能なのである。
ま、吹けば飛ぶようなドラマなのでそれほどシリアスにならなくてもいいかな。
で、『謎解きはディナーのあとで スペシャル』(フジテレビ20120327PM9~)原作・東川篤哉、脚本・黒岩勉、演出・土方政人を見た。原作「謎解きはディナーのあとで2」収録の「完全な密室などございません」の登場人物を流用したほぼオリジナル脚本である。密室ものの本格ミステリを装ったパズル・ストーリーだ。全編にちりばめられたピースを集めると真相という完成図にたどり着く趣向になっている。そういう意味ではなかなかに骨太なミステリなのだが・・・ドラマとしてはやや・・・間延びしていると感じる方もいるかもしれない。
だが、登場人物としてはほとんど無意味な・・・美術雑誌のライター服部祥子(国仲涼子)、絵のモデル相原美咲(加藤夏希)、画廊のオーナー為永友江(堀内敬子)がそれなりに妖しいキャスティングだったりして・・・なんとなく・・・最後まで付き合わされることになるのだな。
しかし、パズルである以上、どんな登場人物にもそれなりに意味がある。
祥子、美咲、友江の三人は警視庁国立署警部であり風祭モータース御曹司でもある風祭京一郎(椎名桔平)と一晩で最初の最後のデートをした相手として事件解決のもっとも重要なピースとなるのである。この糸口がなければ事件の真相は闇に葬られていた。
超資産家の令嬢・宝生麗子(北川景子)は警視庁国立署刑事であるのだが、執事としては言動に問題のあるミステリ愛好家の宝生家執事・影山(櫻井翔)に夕食後のひととき、捜査中の事件を巧みな推理力で解決してもらうのが常の甘えん坊である。
キャラクター造形はみごとなのだが・・・この二人は何をみてもモップガール、何をみてもバンビの特殊なポジションにいるので、今回もモゲッといつか言うだろうと期待するし、やっさいもっさいはいつ踊るのだろうと考えてしまうのである・・・個人的事情はもういいだろう。
今回はスペシャルのために・・・影山は香港出張中に事件が発生し、麗子は影からの支援が受けられないという設定なのだが、超資産家である以上、影山不在の場合はそれに準ずるバックアッパーがいるはずである。それについて言及がないのはおそらくご都合主義なのであろう。お嬢様が泥酔して自由行動するなど、あってはならないことなのである。なぜなら、資産家にとって令嬢は資産の一部だからでごさいます・・・じいや的事情ももういいぞ。
影山不在の間の出来事は二つ。
一つは「世界的に著名な画家・松下慶山氏(宝生家にも重要作品のコレクションがあるほどの大家)が密室状態の自宅アトリエで焼死体として発見される事件」の発生である。なお、この世界には死体の身元特定のためのDNA鑑定技術は存在しない前提である。
もう一つは「国立署刑事課の沖縄慰安旅行の不思議体験」であった。
一方で影山は出張先の香港で世界的ピアニスト小鈴孔(北川景子・二役)の脱走事件に巻き込まれ、偶然、沖縄を訪れるのだった。そこで彼はある景色と遭遇する。
さて、「松下慶山焼死事件」では見当違いの直感で正解にたどり着く風祭警部が「松下慶山は生きている」と発言するが、すぐに訂正して「密室殺人事件」と発言する。しかし、捜査の結果・・・「自殺」と再訂正する。死体の右手には本人の指輪がはめられていた。
麗子の捜査で得られた情報は「松下慶山の唯一の自画像である左手に指輪をはめた男の描かれた場所が不明」というものだった。
麗子からの捜査のあらましを聞いた影山は「やはり自殺でございます」と結論して・・・最初のエンディングへ。結局、見せ場は麗子の幼稚園児コスプレだけのドラマだったと思わせておいて・・・第二部突入である。
風祭の発案で沖縄に慰安旅行に来た一行。宿泊先のホテルはSouthern Beach Hotel&Resort OKINAWAでオーナーは風祭の従妹の島袋(池田鉄洋)である。そのホテルのバーの経営者・手塚(佐野史郎)は有名人のサインのコレクターである。第一の事件としてサイン盗難事件が発生する。
ホテルでは麗子は312号室に宿泊し、風祭は315号室に宿泊する。
一行は流しの絵描き鈴木元気(國村隼)と知り合う。風祭は自分のとなりの部屋に鈴木画伯を招待する。
鈴木の下宿先である居酒屋「うちなー料理 あんまー」で一行は沖縄料理を楽しむ。女将(麻生祐未)の元の夫・田沼(高嶋政宏)が悪党であることが提示される。鈴木は女将にほの字である。鈴木は田沼に指輪を奪われたりしている。
飲みなれぬ泡盛で朦朧とした麗子はカラオケでAKBを歌おうと歌番号315を連呼する。
千鳥足の麗子はホテルで田沼とすれちがう。
部屋のベッドで麗子の携帯電話に着信があり、島袋の部屋に誘われる。
麗子は酔った勢いで島袋の部屋に直行し・・・誰かの死体を発見・・・失神する。
目覚めた麗子の目の前に風祭がいて麗子は風祭をノックアウト。
廊下に出た麗子は再び眠り込み、翌朝、312号室で目を覚ます。
島袋の部屋に直行するが、そこでは島袋が婦警の宗森あずみ(岡本杏理)と情交しており、死体は消えている。
麗子の着信履歴にも島袋からの受信歴はなく・・・「すべては夢だった」と風祭に諭される麗子。
しかし、カジキマグロ用の巨大な箱が消失する事件が発生する。
影山の推理でも「大学のサークルの合宿などでよく見られるぐだぐだの訳分からん状態における夢」という結論になり、第二のエンディングである。結局、酔っぱらった麗子のもげっな状態を楽しむだけのドラマだったと思わせておいて第三部開幕である。
レギュラーの時と同様に執事の暴言→クビクビクビ→じゃ、推理しません→説明しなさいよ展開があって謎解きである。
キーポイントは時系列で、「密室殺人」→「沖縄旅行」ではなくて「沖縄旅行」→「密室殺人」だったことである。
それでは各自、推理をお楽しみください。
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→もげっコース月の恋人~Moon Lovers~
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