監獄もまんざら悪くない、さあ、ロックといこうじゃないか(松山ケンイチ)
もはや・・・神がかり的な作品である。
庶民は誰もついてこれないのではないか。
しかし、もの凄く面白い・・・まあ、庶民もたまには極上のものにふれて目をまわすのも一興なんだよな。
なにしろ・・・何から説明していいのか、わからないほどに複雑な展開である。
そもそも「神輿」を「しんよ」と発音した時点で・・・迷子になる人がいるだろうし、比叡山延暦寺と「祇園さん」こと八坂神社の関係だって知らない人は知らない。
で、それがなぜ都に強訴に来るかもわからない人にはわからない。
で、それを朝廷側が差し止めはするが弾圧しないことも理解が難しいだろう。
そこで鎮圧側が強制力を使うと批判されるのが・・・いや、この辺は分かるかな。警察が犯罪者を射殺したりすると問題になるアレですな。
さらに、「神輿」に矢を放ったことで入獄した清盛に鳥羽院が「私を撃ってみよ」と言うのが不明で、さらにエア・弓矢で射られた鳥羽院が歓喜にあふれて清盛をほめそやすのがなぜだか・・・わからない。
そういう人も多いだろう。
キッドは思わず多重人格一同爆笑の展開だったが・・・それを説明するのはかなり骨が折れるのである。
いや・・・わかってもらえない可能性の方が高いな。
君子、危うきに近寄らずなので明解しないことにしておきます。
で、『平清盛・第13回』(NHK総合20120401PM8~)脚本・藤本有紀、演出・中島由貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はファン待望、待ちに待った悪左府こと後の左大臣・藤原頼長の描き下ろしイラスト大公開。ついにキタ━━゚+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゚━━ ッ ! のでございます。そして、なんとも美しいしかし脆い・・・危うさ爆発のシャアーっでございます・・・なんのこっちゃ。寄らば菊門責めでございますからなーーーっ。この手のキャラはロリコンでなければホモ・・・まあ、お約束の展開ですなーーーっ。
世に言う祇園闘乱事件は久安三年(1147年)に起きている。祇園とは祇園神社のことで今の八坂神社である。記録では祇園の社に神に捧げる舞楽である「田楽」を奉納しようとした平清盛に祇園社の神人(下級の使用人)もしくは犬神人(最下級の使用人)が因縁をつけて乱闘事件が発生したのである。祇園社の祭神はスサノオであり、牛頭天王である。そもそも渡来人がなぜ、スサノオを祭るのかという因縁もあるわけだが・・・荒神であるスサノオはその粗暴さゆえに厄除けには逆にふさわしく、疫病を祓う神として信仰を集めたわけである。で、この時代には祇園社は比叡山延暦寺の庇護下にあった。いわば比叡山系祇園組である。で、比叡山延暦寺には組長である天台座主がいる。なにしろ、天台宗の総本山なのである。で、この頃の天台座主は行玄である。行玄は藤原忠実の父、藤原師通の弟なのである。つまり・・・藤原嫡流家の人間なのである。そして・・・名代としてやってくる僧・明雲は村上源氏大納言顕通の子であり、弟の源雅通は藤原家成の姉妹を妻としている。要するに・・・天皇家に仇なす比叡山組のバックには藤原組が糸をひいているということでございます。要するに平家VS比叡山は・・・大王家と藤原家の代理戦争のようなものなのでございます。だから・・・いくら、清盛流罪を藤原摂関家が主張しても、平氏を重宝している鳥羽院が承諾するわけはない・・・ということなのです。ちなみに比叡山の荒法師・鬼若は後の武蔵坊弁慶であると思われます。
清盛と祇園の神人との騒乱を聞いて鳥羽院は御所の階に立ち、曇った空を見上げた。ふと、待賢門院が逝去した夜を思い出す。鵺の啼く恐ろしい夜であった。御殿の屋根に翼を広げた怪異は中宮藤原璋子の命を吸い取った後、枕頭にいた鳥羽院の命も狙ってきたのだった。そこへ、清盛が郎党とともに現れ、平家伝来の鏑矢王(かぶらやおう)の矢で鵺を討ち果たしたのである。怪異の正体は巨大な雉(きじ)であった。愛娘である統子(むねこ)内親王によれば・・・いにしえの大陸の王朝・周の頃にも現れた怪異に似ていると言う。
我が子ながら・・・博識であることよ・・・。
鳥羽院の想念はとりとめなく脱線する。
なんで、あったか・・・そうそう清盛のことであったな。
祇園周辺は祖父である白河院が愛妾を置いていた土地柄である。そもそも・・・清盛の母親は白河院の愛妾の妹だと言う。それゆえに清盛もまた白河院の落胤ではないかと・・・噂されるわけである。
確かに・・・眼のあたり・・・祖父に似ている・・・と鳥羽院は思う。
しかし、そんなことを言えば、自分にも似ていることになる。我が子たちにも似ているし、父である堀河天皇にも似ていることになるだろう。
そもそも・・・平氏でさえも王家の血が流れているのである。
いや・・・祇園のことであったな・・・。荒ぶる神であるスサノオノミコトを祭る祇園社は白河院の崩御後はまたもや比叡山の息のかかる場所となってしまった。
鳥羽院は白河院への反発とは裏腹にその政治手法を模倣してきた。そもそも・・・平氏を頼みとするのは・・・藤原摂関家の横暴に対する王家の対抗手段である。比叡山の背後には藤原摂関家が控えていて・・・何かにつけて王家にゆすりたかりを仕掛けてくるわけである。僧兵という暴力装置を巧みに利用しながら・・・そのことはおくびにも出さない藤原貴族たちの狡賢さに鳥羽院は白河院も感じたであろう忌々しさを覚える。
統子はなんと申して居ったか・・・。
「魔狩り」をしていると統子は言った。王家の忍びたちを使い、都に巣食いだした魔のものを祓うのだという。
確かに・・・あの鵺というばけものなどが跳梁跋扈しはじめたら・・・恐ろしいことだ。
「祇園の社の神輿には・・・魔のものが巣食いだしておりましたゆえ・・・清盛に命じて祓いの矢を射たせたのです」と統子は言った。そもそも、鏑矢王の矢は比叡山延暦寺のご神体のひとつだという。それを白河院が平家に下されたのである。そのことについては比叡山の恨みは深い。
ふふふ・・・その矢を縄張りの祇園社の神輿に射られたのだから・・・叡山の藤原坊主たちもさぞ・・・腸が煮えくりかえっておるじゃろう・・・。
鳥羽院は痛快さに笑みをもらした。
そうか・・・と鳥羽院は次の手を思いついた。
朝義に呼び出された藤原頼長は鳥羽院の提案に眉をひそめる。
「では・・・お上は清盛配流のことは停止なさると・・・しかし、それでは叡山がおさまりませぬ」
「なに・・・どうせ叡山も米櫃がさびしいだけのこと。平氏には財を吐かせるがよかろう・・・それから・・・今後、しばらくは・・・叡山の押さえには平氏ではなく・・・源氏を使うがよかろう」
「・・・それは・・・」
「なにか・・・不都合があるか・・・」
「・・・御意」
叡山の僧兵も藤原摂関家の私兵なら、河内源氏もまた藤原摂関家の私兵。毒をもって毒を制するとはこのことだ・・・と鳥羽院は微笑んだ。
その頃、関東から戻った源義朝は源氏屋敷で居心地の悪さを感じていた。
義朝が京を留守にしている間に次男の義賢がすっかり嫡男きどりなのである。
関東に敵なしの義朝にとって都でのうのうと暮らしていた父親と弟の暮らしぶりはふがいなしの一言に尽きる。
そして・・・転がり込んだのが清盛の屋敷であった。
清盛は清盛で祇園の一件で謹慎中となり、暇をもてあましていた。
「おうりゃ」
清盛に寄り切られた義朝は砂を払いながら叫ぶ。
「兄貴・・・もう一番・・・」
年上の清盛を兄と呼び、義朝は昼は相撲三昧、夜は酒盛り三昧、夜更けには女漁り三昧に双六三昧である。
「まあ・・・待て・・・この間・・・叡山を素行不良で追い出された荒法師がなかなかの剛力でな。おい、鬼若・・・義朝が一丁、揉んでくださるぞ」
名前を呼ばれて顔に幼さが残る以外にはふてぶてしい態度の破戒小僧が控えの場から立ち上がる。
「おう・・・これは面白そうじゃ」
がっぷり四つに組んだ二人。怪力無双の鬼若である。しかし、技巧では義朝に敵しなかった。最後は義朝に呼吸を読まれて投げ飛ばされる。
「まいりました・・・」
鬼若・・・義朝・義経親子二代に渡る降参の歴史の始まりだった。
関連するキッドのブログ→第12話のレビュー
| 固定リンク
コメント