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2012年5月19日 (土)

ハト時計はカッコー時計、そしてツバメ時計(竹野内豊)

小鳥が時刻を告げて鳴く時計を日本では鳩時計と呼ぶが・・・発祥の地・ドイツでは本来カッコー時計なのである。

ポッポーと鳴くのではなく、カッコーと鳴くのである。

だから・・・波留のツバメ時計はカッコーと鳴いているように聞こえる。

「波留が宮本家にやってきた時に一緒に残された時計でメーカーを知っているのは行方知らずの母親だけ」という「過去」が語られるわけだが、ご存じのようにカッコーは「托卵」を行う種族である。

他種の巣に卵を産卵し・・・育児放棄をする奇妙な習性を持っているのだ。

母親が意図的にそれをしたならものすごいブラックユーモアである。・・・まあ、その可能性は低いと思うが。

そして・・・幼い波留が「それ」を知っていたとも思えないので・・・軒下のツバメへの愛着から・・・ハト実はカッコーはツバメに改造されてしまったのである。

今回は・・・「子作りしたかった可南子」と「親になることが恐ろしい波留」の物語は一旦停止したわけだが、ハト時計→カッコー時計→ツバメ時計は「幸福だった波留と可南子の形見」として戻ってくる。

前回、破綻しかかった脚本はなんとか修復されているわけだが、いくつか・・・まだ破損個所があって・・・不安が残ります。

たとえば可南子の弟の「波留よりもっとふさわしい人がいた」発言と可南子の「終った恋の話」発言の矛盾である。このままでは・・・弟は異常人格にならざるを得ない。本来、弟はなんらかの可南子の愚痴を聞き、二人の夫婦仲を「誤解」しているという方向性を残しておきたいものである。

またくりかえされる弟の「可南子の今の状態」が「波留のせいだ」という発言も・・・ややわざとらしく感じる。

ミスリードのつもりが本筋になりかねず・・・危うい感じがする。

ツバメ関係での可南子のリアクションは記憶の修復に望みをつなげるものだが・・・修復されない方が記憶のシステムとしては自然だろう。心因性と物理的な機能障害では作品の重みを変換しすぎると考える。

昔の恋人と夫婦が同席してしまうという修羅場はそれなりに面白いのだが・・・そこに至る過程がやや・・・「偶然」の多用が過ぎている。

偶然同窓会、偶然昔の恋人帰国、「携帯電話」を偶然忘れる・・・返却の場面を偶然第三者が目撃・・・弟と昔の恋人が偶然出会う・・・波留の訪問と昔の恋人が偶然重なる・・・どれか一つはおとしたい。この中なら・・・弟の性格から考えて・・・昔の恋人に積極的に会いに行くぐらいでいいのではないか。そうしないのは・・・まだ弟にも救いの道を残しておきたいと考慮しているのかしら。

しかし、もはや弟はどう考えても異常人格者に仕上がってますが・・・。

すべては前回に蒔かれてしまった種である。

単なるもどかしさのためのもどかしさ、いやがらせのためのいやがらせにならないように着地してもらいたいと祈るばかりである。

この針に糸を通すような物語ではうかつなたったひとつのセリフが命とり。

事情を知っている上で人妻を幼馴染の気安さで夫の面前で名前を呼び捨てにする昔の恋人の無神経さに辟易した人も多いと考える。

どうか・・・弟や昔の恋人も・・・それなりに心のある人でありますように。

で、『もう一度君に、プロポーズ・第5回』(20120518PM10~)脚本・桐野世樹、演出・木下高男を見た。現在、関東では「結婚できない男」が再放送なんどめだ中である。結末が分かっていてなお楽しい物語というものがある。使い捨てで抜群に面白いものもあるが・・・やはり名作は噛めば噛むほど味が出るものだ。この作品の場合、今回のようなどうにもやりきれない回を作ってしまった以上・・・ハッピーエンドにするしか・・・その手の作品にはなれないのである。ただし、不可避の結末で涙を振り絞りまくった「1リットルの涙」の演出陣だけにものすごい幕切れにしてくる可能性はある。そうなればタイトルに偽りありということになるが・・・はたしてどうだろう。今回、後半では可南子が涙を流すわけだが・・・その理由がもはや読み切れなくなっている。一話完結ではないのだから・・・問題ないが・・・ゆっくり前進してきた流れは遮断である。本当にそれで大丈夫なのですかな?

まあ・・・「甘き日々」が失われてしまったという悲哀は格別ですけれどねえ。

というわけで今回は誤読の可能性の高い妄想であることを最初にお断りしておきます。

「少しずつ前に進んでいる・・・」とようやく・・・やりなおしのスタート・ラインにたった波留(竹野内豊)と過去五年間の記憶を失ってしまった可南子(和久井映見)の宮本夫妻である。

そこへ、通り魔のように波留を下層民とみなす可南子の弟・裕樹(山本裕典)がやってくる。

そして、「元通りに戻る必要はない」「姉はあなたと一緒では幸せではない」「姉にはあなたより結婚相手としてふさわしい相手がいる」と言葉の刃物でめった刺しである。

波留は茫然として「それは可南子が決めることだ」と反論するのがやっとである。

少なくとも、可南子が昔の恋人と別れたのは七年前であり、波留と知りあったのが五年前であり、弟がそれを知らないことは考えにくく・・・明らかに裕樹は嘘をついている。

まるで・・・可南子が昔の恋人と波留を天秤にかけていたような発言なのである。

これまで・・・更生を待っていたが・・・もはや、本質的に異常人格者の烙印を押さねばならないようだ。

その頃、可南子はふってわいたような同窓会の知らせを受け・・・会場に向かう。

そして、そこにはふってわいたように米国帰りの昔の恋人・一哉(袴田吉彦)が現れる。

ささやかな余興として「記憶を失った人妻と昔の恋人」の再会を楽しむ軽い悪意に満ちた可南子の女友達たち・・・。もちろん、昔はいじめの常習犯であったというようなそれほどの凄まじい悪意はないらしい。しかし、波留の幸せを祈る一部お茶の間からは死刑判決である。

だが・・・自信満々の男である一哉の指にはキラリと光る結婚指輪。

ほっと胸をなでおろす一部お茶の間だが・・・これは後にホラー映画で「助かった」と思った瞬間に墓場から手が飛び出て足首をつかむ手法であることがわかる。キャーと絶叫するしかないのだ。一哉は見栄を張っているだけで・・・実は離婚していたのだった。堂々たる愛の障害物宣言である。

記憶喪失という過酷な問題に悩む可南子にとっては非日常の昔の友人たちは安らぎの対象となっている。

一哉も七年ぶりにあったのではなく・・・ついこの間別れたばかりの恋人なのである。

その別れの状況はまだ不明だが・・・なんらかの甘い感傷を感じる。

帰る方向が一緒なので一哉とタクシーに同乗した可南子は・・・。

「ご主人はどんな人・・・」と問われ「優しい人かな・・・」と答えるのだが・・・そこには逡巡がある。

ぽっかりとあいた空白が・・・可南子にとっては常に重荷なのだ。見知らぬ夫が・・・自分以上につらい立場に置かれていることさえ・・・可南子の心を苦しめるのである。

その動揺が携帯電話車内置き忘れ事件を生むのだった。

あざといが・・・許容範囲の仕掛けである。

今回、もっとも読めないのは可南子の感じるうしろめたさの正体であろう。

単純に考えれば波留の心痛をよそに安らいでしまっている自分に対してということになるが・・・焼け棒杭に火がついてしまったようにも見える。その場合は不義密通の申し訳なさ百倍である。

「昔の恋人」についてのあれこれを「夫」に隠すのは通常なら当然のことだが・・・この場合は非常に際どいことになってしまうのは言うまでもない。

やはり・・・少し、よろめいていますかな。

ああ・・・読み切れない。

可南子が「思い出を共有する昔の恋人を含む人々」と楽しいひと時を過ごしていた頃。

波留は悶々とした夜を迎えていた。そんな波留の元へ「可南子宛の小包」が届く。相変わらず好奇心旺盛な大家をなんとか撃退した波留。

それは今回の幸せな過去からの贈り物である。しかし・・・もはや・・・幸せな過去の記憶も波留の心を安らがせるものではなくなっている。

波留はどうやら本格的にいばらの森に踏み込んだのである。

そして・・・おとぎ話とは違い、いばらの森はさっと道をあけたりはせず・・・波留の心は血まみれになっていくのである。

可南子はうしろめたさを抱えている・・・そのために弟の「同窓会に誰が来たのか」という問い・・・そういう問い自体が少し異常であることは問わない・・・に対して「昔の恋人との再会」を秘密にしてしまう。弟は姉の態度から敏感に秘密の匂いを嗅ぎ取る。頭の中が姉と義兄の仲を裂くことで99%占められているかのようだ。

その頃・・・波留の勤務先・ミズシマオートでは社長夫妻が夫婦喧嘩の真っ最中であった。娘夫婦の夫婦喧嘩が飛び火したらしい。娘夫婦の夫婦喧嘩は夫の浮気が原因らしく、父親の哲夫(光石研)が婿の肩を持ったことから、母親のさとこ(山野海)は愛する夫への気持ちを抑えて娘の味方になったのだという。

まあ、犬も食わないというやつです。

波留にとってはそうした諍いさえもうらやましい話である。助手の桂(倉科カナ)を呼び出し、無意識に手をとる。もちろん・・・邪気はない。「まだまだ・・・きれいな手だ・・・しかし、もっともっと汚れて爪の奥まで真っ黒くなって・・・それに誇らしさをかんじるようじゃないと・・・一人前とは言えない・・・でも、今日は出張整備は俺抜きで行ってくれ」

「・・・いいんですか」

「もう・・・俺の助手は卒業だ・・・ただし・・・進藤(松下洸平)を連れて行け」

「・・・一人でできますよ」

「バカだな・・・新人を育てるのも大事な仕事だぞ・・・」

喜ぶ桂だが・・・その喜びは波留に認められたことよりも手を握ってもらったことの方が大きいようだ。

もちろん・・・波留は桂の気持ちなど全くわからない。心はレストア中の可南子との思い出にまつわる赤い車に向かっている。

可南子との関係を修復するよりも車を修理する方が波留にとっては楽なことなのである。

その頃・・・可南子は一哉から電話で呼び出されていた。

事情を知らぬ、職場の仲間たちは・・・「新しい彼氏ですか」佐伯美奈(橋本真実)、「そういうのもありですよね」ゆとりん(入江甚儀)とひやかしモードである。

可南子は・・・夫のある身、しかし、その夫は見知らぬ人、私は困惑しているし、その人には迷惑をかけている、申し訳ないという気持ちを抱えながら、気心の知れた昔の恋人と一緒だと気が楽だと感じてしまう。

水は高きから低きに流れるのである。

昼食時に可南子の忘れ物である携帯電話を届けにきて・・・駅前でランチを付き合う一哉である。

結婚生活について問うと口ごもる可南子に一哉は切り込み・・・18年間の付合いの威力で簡単に事情を聞き出す。

「実は・・・俺『も』離婚してるんだ・・・」

自分の夫婦生活が破綻したように可南子の夫婦生活も破綻している宣言である。

そう言いながら「でも・・可南子のご主人が優しい人だというのは本当だろう・・・可南子がそう思っていること・・・俺にはわかるから・・・」

しかし、それもまた「俺はお前のことならなんでもわかる」宣言なのである。

そういう独善的な性格が「別れの原因」だったと推測できるが・・・今、動揺しやすく鬱屈を抱えた可南子にはもちろん好ましく感じられるのだろう。

昔の男に今の夫の事を問われ・・・返答に窮するしかない今の可南子なのである。

この辺りの会話の巧みさは前回・・・かなり不足していた部分でございます。

そんな二人のいこいのひとときを外回り中のミズシマオートの桂と進藤は目撃してしまうのだった。

もちろん・・・桂は一瞬で「不自然な二人の関係」を女の勘でキャッチします。

ミズシマオートの波留はすでに着々と用意されている残酷な仕打ちについては予測不能である。

そこに唯一の味方である・・・王子の忠実な従者・・・養父の宮本太助(小野寺昭)からメールが届く。

可南子さんと一緒にまたツバメを見に来い

仲をとりもってやるぞ

微笑む波留・・・しかし、発信している太助がいるのは・・・病院だった。看護師と軽口をかわしながらなにやら検査の前である。流れからそれが幸せの兆候には見えない。

唯一無二の味方も失ってしまうのか・・・である。

ここで気休めを述べれば・・・何かを失えば何かを得る法則があるということだ。

ついでに予告では「離婚」という言葉が出現するが・・・タイトルを厳密に解釈すれば・・・「もう一度君に、プロポーズ」するためにはお互いが未婚者になるしかなく・・・当然、離婚が前提となる・・・ということである。もちろん・・・別居中という離婚寸前状態のままでそうなってもいいが・・・単なる手続きの問題だからな。

まあ・・・世界が滅んでも波留の幸せを願う一部のお茶の間はあまりやきもきしたくないのである。ほどほどでお願いします・・・なのだ。

しかし、その夜「夫婦喧嘩中の社長を囲む会」開催のリッキー(三浦力)の店では「浮気」が話題になり、じわじわと波留を負いこんでいく。

古参の蓮沼(渡辺哲)が「浮気はいけない・・・だから俺は結婚しない・・・なぜならいつ今よりいい女が目の前に現れるかわからんからだ・・・」と言えば一同爆笑であるが・・・可南子の弟から「姉にはもっとふさわしい相手がいる」と罵られた波留の心はざわめくのである。

「そういえば・・・可南子さん・・・知らない男と一緒にいましたよ・・・」と目撃者・進藤が爆弾発言である。

「そんな・・・あれはなんでもないですよ・・・多分、仕事の関係ですよ」と桂は波留のフォローを装いながら問題を拡大である。

「ドンマイ(きにするな)・・・」とからむ社長だった。

波留は顔で笑って心で泣くしかないのである。異常な状況に置かれているものは・・・通常な世界の何もかもがとげとげしく感じられるものなのである。

なにしろ・・・異常な状況を通常な人々は誰も本質的に理解しないのである。

一人、家路に着く波留。車のヘッドライトが河のように流れて行く道を歩く足取りは重い。

そこに・・・可南子からの着信がある。

「こんばんは・・・」

「あの・・・電話を返せなくて・・・すみません・・・昨日・・・高校の同窓会みたいなのがあって・・・電話を置き忘れてしまって・・・」

「そうだったんだ・・・」

「で、用件は何だったんでしょうか」

「可南子宛の荷物が届いたんだ・・・明日、送っておくよ」

「ありがとうございます」

「でも・・・電話、みつかってよかったね」

「今日、お昼に友達が届けてくれて・・・」

「友達・・・」

「・・・あの・・・美緒(中込佐知子)っていう友達で・・・」

「ああ・・・二、三度会ったことある・・・結婚式にもきてくれたよね」

ああ・・・この人は・・・美緒に会ったことがあるのに私はそれを覚えていない

なぜ・・・届けてくれたのが男ではなく女だって言ったんだろう

私はなぜ嘘をついてしまったの

君は今嘘をついた

激しくすれ違う宮本夫婦だった。いい感じの下ごしらえ終了である。

一方、桂の携帯電話には交際中のタケル(上遠野太洸)から食事を誘うメールが届くが、明らかに気が乗らない様子である。2010年のジュノン・スーパー・ボーイも相手にとって不足らしい。何考えてるかわからない女の何考えてるかわかる表情のヴァリエーション・・・実に持ってます。

一方、EVER GREEN ENTERTAINMENT所属の上遠野太洸の先輩である山本裕典の演ずる異常性格の弟・裕樹は・・・せっかく獲得した仕事を経験不足から先輩社員の長谷川(小久保寿人)に回され、意気消沈する。まあ、姉を義兄から遠ざけることに夢中になってれば・・・そうなるわけである。

そんな・・・裕樹を案ずる恋人の志乃(市川由衣)はなんとか・・・裕樹を支えようとするのだが・・・裕樹は冷酷無比な態度で接する。

「あなたの邪魔にならないようにするわ・・・」

「君に悪いから・・・しばらく距離を置こう」

「え・・・そんな・・・」

「とにかく、君は性欲の捌け口の肉奴隷でしかないわけだし、身分をわきまえてくれ」・・・そんなことは言ってないぞ。

とにかく・・・こんな描写の連続で・・・もはやキャラクター修正は絶望的な気がするわけだが。

そして・・・一人で頭を冷やすために大股で都心を踏みつける裕樹の前に一哉が現れる。

「裕樹」

「一哉さん」

ここだけ・・・胸毛をさらけだすとあるコントを彷彿させるムードになっていると感じるのはキッドだけですか・・・。

都心は狭いよ・・・だな。しかし・・・まあ・・・呪いの成果だと考えれば逃れようもない運命の歯車の音を聴くしかないのでございます。

裕樹はどうやら一哉を男の中の男だと刷り込まれているらしい。

可南子が一哉と再会したことを自分に隠していると知り、なにやら胸が騒ぐのである。

いやあ・・・本当に鬱陶しい奴だな。

そして・・・沢村家に一哉を招待することを画策するのであった。

一哉は一哉でうかうかとそれに乗るのである。

ストレートに考えれば可南子の身体が目当てなのだとしか思えない。

昔の女を抱く状況はそれなりに燃えますからな。

一部お茶の間は非難轟々である。

一方、わかばメンタルクリニックで心療内科を受診する可南子。

例によって心にあることを患者が話すという手法である。

この診療手法にこだわるのは心因性の可能性を示唆しているわけだが・・・たとえ無意識にせよ、可南子が波留との生活に否定的感情を抱いていたというのでは・・・あまりにも波留が哀れであるのでやめてほしい・・・。

どう考えても、手術ミスによる外傷性の機能障害ではないのか。長期記憶貯蔵庫の一部破壊による記憶消去だろう・・・。

ま、どちらにしろ・・・可南子の記憶障害の症状についてはファンタジーの域ですが・・・。

同窓会でともだちとあって楽しかった・・・

昔、交際した人とも話したりして・・・

同じ記憶を共有するものと過ごす時間は気が楽だった・・・

ただ・・・別の感情も湧きあがったのです

・・・うしろめたさのような

可南子は自分の心をもてあましている。そのうしろめたさは・・・波留に対してのものなのか・・・それとも失われている本来の自分に対してなのか・・・謎である。

波留は可南子に届いた小荷物をトラネコ運輸で転送しようとして・・・宛名書きに躊躇する。

宮本可南子・・・と書き換えて谷村可南子と書き換えて・・・暗礁である。

谷村様方宮本可南子殿だろうと・・・思うが・・・そういう問題ではないのだな。

地獄の修羅場を体験するために・・・自らが宅配する気になる波留である。

谷村家に到着すると・・・可南子と母親の谷村万里子(真野響子)が在宅である。

小包を開封すると・・・そこにあったのは・・・「あれ・・・これはうちの時計だ」と波留だけが正体に気がつく。

「去年、壊れて・・・押し入れにしまっていたやつ・・・」なのだが、おそらく時計を修理に出したのであろう可南子にはまったく見覚えのない時計である。

「動くのかな・・・」時計を十二時にあわせてネジを巻いた波留。

扉から出たのは・・・「あ・・・」と可南子が驚くツバメである。

「まあ、かわいい」と万里子。「ねえ、波留くん・・・今日は夕食食べて行って・・・」

「いえ・・・」「食べていきなさい」「・・・はい」

微笑む可南子。

束の間の幸せ。その時間一秒前後。

「ただいま」と突然、帰宅する異常人格者・裕樹・・・「おじゃまします・・・」と一哉を伴っている。

凍りつく・・・可南子。戸惑う波留。呆気にとられる万里子である。

「お久しぶりです・・・」と一哉に挨拶されて笑顔を返す万里子。一哉と可南子の交際は円満に終了したということなのであろう。どんな終了なのか想像もつかないわけだが。

それにしても金縛りにあったように可南子はなぜ・・・言葉を失ってしまうのか・・・。

そして、してやったりと鼻の穴をふくらませる裕樹だった。

あまりの沈黙の長さに耐えきれずCMを挟んで夜景のきれいなシーンを挿入である。

いや・・・いいムードの桂とタケルのデートなのであるが・・・唇を求められた桂は拒絶。

「桂・・・なんでいつも別のことを考えてるの・・・」

「・・・」

「いや・・・別の人のことかな・・・」

図星なので回答を控える桂だった。

仕方なく立ち去るタケル・・・これで出番終了だったらどうしようと後ろ姿が寂しいのだった。脇役のあて馬・・・まあ、これもキャリアですから~。二枚目人生はこれからだっ。しかし、出会い系ゲームサイトのオフ会でかならずタケルが来るとは限らないので一部愛好家の皆様はご注意くだされ。

谷村家のキッチンである。

狂弟「なんで・・・あいつがいるの」

母「だって可南子の旦那さんよ・・・あなたこそ・・・なんで連絡もなしに一哉くんを連れてくるのよ」

狂弟「別に・・・いいだろ」

母「じゃ・・・私も別にいいだろ・・・よ」

狂弟「ムキーッ」

リビングルームでは・・・宮本夫妻と妻の昔の男が硬直中だった。

可南子「一哉くんです・・・」

一哉「はじめまして・・・可南子とは高校の同級生で・・・こういう者です」

と名刺を出すのである。

波留は名刺を持っていない男なので「宮本です・・・可南子の夫です・・・」

一哉「あ・・・事情は伺ってますから・・・」

徐に万里子の泣き夫の仏壇に手を合わせる一哉だった。

リアクションに困る波留だった。

一哉がトイレに行くと・・・万里子が不祥事のおわびである。

「ごめんなさいね・・・変なことになっちゃって・・・」

「いいえ・・・まったく何の問題もないですよ・・・」

いや・・・問題はかなりあるわけだが・・・。とにかく・・・ひたすら可南子は沈黙するのである。

「久しぶりだな・・・お母さんの手料理・・・」と波留としては精一杯の社交辞令である。

波留としては・・・「これが・・・裕樹くん言っていた可南子にふさわしい男なのか」という疑問でいっぱいなのである。

「二人はどのぐらいぶりなんですか・・・」と訊かずにはいられないのである。

「七年ぶりかな・・・」

「七年ぶり・・・」・・・では俺と可南子が出会う前の話ではないか・・・と疑問が膨らむ波留。裕樹は俺と誰かを天秤にかけていたと言っていたのに・・・どういうこと・・・この男ではないべつの男が・・・。

波留の不安な気持ちを見透かしたように・・・波留の入ってこれない話題を振る凶悪婿殺し弟・裕樹だった。

「一哉さんを、姉さんが、家に、初めて、連れて来た、のも春だったよね」

「そうそう・・・」

「えーっ・・・そうだっけ」と思わず釣りだされる可南子だった。

駐輪場でドミノ倒しをして一哉の自転車を壊した高校一年生の可南子は・・・当時は生きていた父親なら直せるはずだと・・・一哉を家に連れ帰ったのである。

「大して仲のよくない同級生の家で・・・そいつの父親を待つ気持ち・・・想像してみてくださいよ・・・」

懐かしい・・・エピソードでほのぼのとする波留以外の一同である。母親は亡き夫が生存していた頃を思わず懐かしむ態勢である。

しかし・・・可南子は気が付いてしまう。波留が全く楽しんでいないことを・・・。

可南子は想像力の豊かな女性である。たちまち波留の心を思い浮かべる。

そりゃ、そうだわ・・・妻は記憶喪失で実家に戻っていて

日常生活にもいろいろ問題をかかえているだろうはずなのに

ただ優しく見守っている人が

妻の実家に来て昔の男に突然引き合わされ

自分の知らない話で自分以外の全員が和やかになっていて

穏やかな気持ちでいられる人がいるだろうか・・・いやいない

可南子の心は「謝罪の気持ち」でいっぱいになるのだった。

「可南子は・・・抜けてるところあるでしょう」

一哉が基本的に礼儀知らずであることが明らかになる場面である。

夫の前で妻を呼び捨てにして妻の短所を並べたてる。世が世なら切り捨て御免だろう。

しかし、平成時代で温和な波留なので・・・。

「そうかな・・・しっかりしていると思いますけど・・・」

ここで狂犬が「いやあ・・・波留さんは姉ちゃんより愚図だから・・・」

「ああ・・・そうか・・・」である。波留は仏様かっ。

「反論してくださいよお」と甘えてみる可南子。しかし・・・一哉には必殺の一撃があったのである。

「昨日だって、携帯電話を忘れて・・・俺が届けたばかりじゃない」

瞬間冷凍される波留と可南子だった。

母の手料理の味も何もあったものではないのである。

なんだって、なんだって、なんだって、なんだって・・・

うそがばれた、なんでうそなんか、うそなんかつく必要もないのに、うそがばれた

なにやら・・・失言したらしいことに気がつく一哉だった。

どうやら・・・本当に悪意はなかったらしい。

この瞬間から弟は何故か・・・存在を消すのである。

まあ、ようやくいたたまれなくなったかな。

っていうか・・・任務終了なんだな。

波留が意識を取り戻すと食後だった。

「それじゃあ・・・これで帰ります。ごちそうさまでした。お義母さんの手料理は最高です。じゃ、また・・・」

精一杯、爽やかに帰り支度をする波留。

そわそわして・・・波留を送りに出る可南子である。

「ごめんなさい・・・うそをついてしまって・・・」

「ケータイのこと・・・いいんだよ・・・そんなこと」

「でも・・・」

「いい人だね・・・元カレだろう・・・すぐにわかったよ・・・」

「でも・・・終ったことですから・・・」

「いいんだ・・・そんなに否定しなくても」

この一言を波留がどういう気持ちで言ったのかも謎だし・・・。

この一言を可南子がどう受け止めたのかも謎だなあ。

「・・・」

「今日はよかったよ・・・俺の知らない可南子のいろいろな面を知ることができて・・・」

一哉につられて思わず呼び捨てになる波留だった。

「おやすみ」

「・・・」

夜の闇へバイクで走り去る波留。

顔を覆い思わずしゃがみこむ可南子。

愛してる? 

そんなこと

いまさら

きけないけど

不器用な笑顔が

愛おしい

主題歌的には可南子は波留に堕ちているのか?

そこへ一哉が現れる。思わず立ち上がる可南子。

ゆっくりと花道の階段を下る一哉。

「じゃあ・・・俺も帰るわ・・・」

「・・・」

「・・・本当に優しい人じゃん・・・」

目を彷徨わせて幽かに頷く可南子だった。やはり、堕ちていたのか。

微妙すぎて読み切れませ~ん。とにかく・・・一哉は一部お茶の間からの死刑宣告は軽くスルーしたようである。

しかし・・・見事に弟の存在を消しきったな・・・演出の親心に感服つかまつる。

だが・・・やはり・・・波留としては相当にストレスたまる展開だったのである。

メットを脱ぎ捨てブーツを脱ぎ捨てすべてを脱ぎ捨てたら洗顔である。

泣いちゃいそうな波留をふと呼び止める記憶は・・・ツバメ時計だった。

もちろん、波留はただちに可南子の日記にすがるのである。

2011年12月24日

波留の大事にしていた時計が壊れてしまったのだ。

この時計には私の知らない波留の時間がつまっている

カッコウをツバメに塗り替えてしまった波留

母親に捨てられてしまった波留

それを乗り越えていった波留の大切な日々

この時計には波留の思い出がつまっているのだ。

直して・・・あげたいなぁ

つい・・・この間のクリスマス・イブ。

まさか・・・あれが・・・最後のクリスマスになってしまうのか・・・。

波留の心にははじめて絶望が忍びよるのである。

思い出が甘ければ甘いほど、現実が苦く感じられる夜の暗闇。

可南子が・・・何を思い泣いているのかも知らぬまま・・・波留の心は揺れる。

私にはどうすることもできないけれど

きっとどこかになおせるひとがいるはずだ

可南子の希望の言葉がまるで別れの言葉のように聞こえてくる波留だった。

可南子は窓をあけ、錆びた手すりに身を預ける。

何かを捜すように風に涙を晒す。

そして・・・宮本家の前庭には桂の佇む後ろ姿があった。

そして・・・宮本家のベルが鳴る。

扉の向こうにいたのは・・・。

1、覚悟を決めた桂

2、家を追い出された社長

3、ごめんなさいしにきた愚弟

4、怪奇ツバメ男

5、通りすがりの生みの母

関連するキッドのブログ→第4話のレビュー

Mako005 ごっこガーデン。ツバメハウスセット。まこうえええええええ~ん。いたたまれなくていたたまれなくて今夜はツバメハウスにひきこもりでしゅ~。とげとげしい世の中のあれやこれやは全部忘れて・・・波留を慰めてあげるのデス~。それにしても可南子も哀れな奥さんじゃ・・・波留の優しさに魅かれはじめている自分がいて・・・でもその優しい人を傷つけちゃう自分がいて・・・元カレになんでもかんでも見透かされて気がやすまる自分がいて・・・もうにっちもさっちもブルドッグ~♪mari今回はすべりこみセ~フですよ。レビューを書いたら乾杯です。果たしてきたのは本当に桂なのか~。一難去ってまた一難ですね~

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コメント

こんばんわ~キッド様~!
仮記事更新の連続でそれだけでも期待は高まり、あんなに切ないドラマが結果爆笑の渦に(ひっそりと己だけですが・・・)
しかもまたもや、ジュリーも登場してヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ!!
もうっ!!ドラマのレビュウ本出してください。キッド様の文章のリズムと空気感にもっていかれています(*≧m≦*)

投稿: はなとめ | 2012年5月19日 (土) 22時46分

キナコハ→→→とわ様、いらっしゃいませ→→→イッタダイズデス

雑事の間に更新しているので・・・細切れで
申し訳ございません・・・。
なんとか、オンエア24時間後を目指しております。
爆笑していただき恐縮でございます。
何よりの励みでござりまする。

「ス・ト・リ・ッ・パ・ー/沢田研二」(1981年)を
発見なさいましたな・・・ありがとうございます。

前回、殿下(小野寺昭)が歌って以来・・・
このドラマとジュリーの歌曲は一体感がものすごい感じです。

このような駄文に最大級の賛辞・・・恐悦至極です。
まあ・・・あくまで本作品あってのレビュウですので
他人のふんどしで相撲をとっているようなもの・・・
お下劣なたとえで申し訳ありません・・・
素晴らしいドラマに出会えたらそれで満足なのでございます・・・。

また、来週も頑張る所存です。(; ̄∀ ̄)ゞ

投稿: キッド | 2012年5月19日 (土) 23時26分

んとね、んと・・・答えは2!
こっから一気にコメディ路線一直線でお願いしますです。
じゃないともう辛くて辛くて見てられましぇ~ん

しかし竹さまと一緒にツバメ時計のツバメハウスに
たたずむ時間はしゃ~わせの極み
1時間に一度のお仕事の合間は狭いハウスの中で
あ~んな事やこ~んな事・・・むはっ

だけどこうしちゃいられない!一刻も早く波留を幸せに
するために、もう一度プロポーズする時間まで
時間を早送りするでしゅ!ぐるぐるぐるぐる全力で
時間を・・・そろそろいいかな。
時間よ~止まれ~生命の~めまいの中で~

そこんとこ、よろしくっ

投稿: まこ | 2012年5月23日 (水) 14時43分

●no choco●まこ☆ミキ様、いらっしゃいませ●no choco●

お嬢様、おいたわしや~。

エリお嬢様ならばダーリンがいじめられて
ヨレヨレになるところを別の意味でお楽しみになられるのですが
まこお嬢様には刺激が強すぎる展開ですな。

後半の地獄の食卓には背筋が凍りましたですな~。

「みんなで食べる食事はおいしい・・・」とは限りませんの見本でしたな。

それにしても「弟」に救いが用意されているのか
じいめは逆に心配ですな。

今回の食後の存在消失を見ると
それなりの配慮はあるようですが・・・。

まあ・・・波留と可南子はかならずや
ハッピーエンドを迎えると思いますので
どうか、心やすらかに~。
そうでない場合は・・・フジテレビで暴動発生の
おそれがございます・・・。

なるほど連続ドラマの途中から早送りシステム。
さっそく開発部に開発を命じますぞ。

ミステリ小説の結末最初に読んじゃう人向きのシステムですな。

そして、幸せな時間は
ストップモーションなのですな。

実にファンキー・モンキー・ベイビーでござりまする。

まこお嬢様、ツバメハウスのボリュームはけして
大きくなされないように。
うっかりすると耳の中でツバメの鳴き声が炸裂しますぞ~。

投稿: キッド | 2012年5月23日 (水) 15時18分

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