ごまかし、まやかし、おためごかし・・・生まれ出づるあやかし・・・その他大勢の役ひとつ(谷村美月)
最初に・・・あえて言っておく。警官が配置された立てこもり事件の現場にたとえ、犯人の家族といえども出入り自由なわけがなく・・・もう、そこでこの絵空事が完全に絵空事化するわけである。
視聴者にいきなり「深夜で予算もなく脚本も演出もグダグダですからそこは割り引いてご鑑賞モード」を強要する姿勢はなんとかならないかな・・・。
まさか・・・そういうのが「お笑い」だと思っているのかな。
断言するが・・・それは絶対に違うからな。
ふざける時でもまじめにやろうよ・・・まあ・・・指名手配犯が出頭してきても追い払う警察という現実があるからな・・・マジです・・・と言われればそれまでだけどな~。
もう・・・ギリギリ許しちゃうか~。
で、『たぶらかし-代行女優業・マキ-・最終回(全13話)』(日本テレビ20120628PM2358~)原作・安田依央、脚本・森下直、演出・遠藤光貴を見た。散々苦労させられた困った愛人でも・・・いざ別れるとなると名残惜しいのが人情である。そのたとえは・・・どうかな。もちろん・・・大好きな女優がとんでもないドラマに出ちゃってるという状態が解消されるのは望ましいことだが・・・なにしろ、地上波では「キャットストリート」以来の連続ドラマ主演である・・・毎週、谷村美月を鑑賞できるというのは・・・やはり素晴らしいことだったのだ。
だから・・・まあ・・・今回は・・・少し感傷的な気分で・・・書いてみます。
おそらく雑居ビルにあるのだろう。冬堂マキ(谷村美月)の所属する代行女優派遣業を営むORコーポレーションの事務所。そこに、マキが借金をしている三流金融会社の社長・南原満(菅田俊)がやってくる。事務所にいたのは13話もあったのによくわからない立場の水鳥モンゾウ(山本耕史)、そしてやはりよくわからない立場の藤ミネコ(白羽ゆり)とマキだった。
南原はいかにも極道関係の人である。そのかなり安い感じの親分が言うことには・・・。
「顧客の一人、藤田敦夫(村田雄浩)がたまたま居合わせた俺の娘・麻美(松本花奈「鈴木先生」の生徒役からここ)を人質にして立てこもりやがって・・・20年前に別れた藤田の娘の綾音に会わせろって要求してやがるんだ・・・そんなこと言われたってこっちは奴の娘の顔も知らないんだ・・・どうしようもねえやな・・・で思いついたんだ・・・奴だって別れて20年もたちゃ・・・娘の顔なんて知らねえんじゃねえかってよ・・・だから・・・マキ、あんたが奴の娘になってくれ・・・俺の娘が無事解放されたら・・・借金チャラにしてやるぜ」
「えーっ、そんなの無理」
「うるせえ・・・こっちは切羽詰まってんだ・・・」
と南原は本性むき出しでドスを抜くのだった。
ミネコを人質に第2の立てこもりである。誘拐横町かっ。
「わかりました・・・さっそく、マキを派遣します」とまるで社長のような水鳥である。
「だって、演ずるためには情報が不足しすぎじゃない・・・」
「それは・・・俺が調べてやる・・・お前はそれまで・・・アドリブでつなげ・・・」
借金棒引き・・・それはマキにとって夢のような条件だったので早速「いかにもお嬢様」に変身するのだった。「テクマクマヤコンテクマクマヤコン・・・20年前に別れたお嬢様になあれ」である。吉田里琴-綾瀬はるかの映画「ひみつのアッコちゃん」楽しみです。
一方、水鳥はコスプレ・モード・チェンジで「探偵物語」の工藤俊作(松田優作)に変身する。もちろん、工藤になる意味は一切ありません。
ま、一部愛好家向けサービスか・・・。
すでに、警官により包囲された南原金融のある雑居ビル。
「報道を聞いてやってきました・・・娘の綾音です」
「犯人に告ぐ・・・要求通り・・・娘さんをお連れしたぞ」
「お父さん・・・綾音ですーっ」
ビルの高い窓から顔を出した藤田は綾音と直接話すことを要求する。
「そんなことができるか・・・」と刑事は難色を示すが、マキは警官の制止をふりきって特攻するのだった。
南原金融で藤田と対峙するマキ。
「お父さん・・・どうしてこんなことをしたの・・・」
「綾音・・・今日が何の日か知ってるかい・・・」
「・・・」
「バカだな・・・お前の誕生日じゃないか・・・」
「ああ・・・そうか・・・バイトが忙しくて・・・すっかり忘れてた・・・」
「バイトしてるのかい・・・」
「うん」
「そうか・・・学校は・・・」
「短大に通っている」
「そうか・・・短大生になったのか・・・ボーイフレンドとかいるのかい」
「そんなのいないわよ」
「そうか・・・いないのか・・・」
うっとりと遠くを見つめる藤田。
「じゃ・・・朋美はどうしてる・・・」
「朋美って・・・」
「バカだな・・・お前のお母さんだよ・・・」
「あ・・・ママのこと・・・」
「そうだよ・・・朋美はどうしてる・・・」
「まあまあ元気にしてるよ・・・」
「そうなのか・・・元気なのか・・・朋美がな・・・」
すると南原は警官隊に向かって新たな要求を突き付ける。
「妻の・・・妻の朋美を連れてこい」
マキを通じてモニタリングしているORコーポレーションの事務所の水鳥は・・・。
「今、新たな人質を用意するから・・・ミネコを解放してくれ・・・」
「いや・・・いくらなんでも奥さんの顔は分かるでしょう・・・」
「クレオパトラな女たちの時代だぜ・・・女なんて三日もあれば別人だろう・・・某暗殺教団の逃亡者を例に出すまでもなくな~」
「なんで・・・匿名なの」
「実名だすと変なゴミトラバがついて削除が面倒なんだよ~」
こうして・・・新たな人質としてあまりの作品の出来の悪さにフェイド・アウトしたのかと思った松平社長(段田安則)が召喚される。
「どこにいってたんです」
「河原で「女優」を歌ってました」
「どんな歌?」
下積みも女優の稼業
恋に疲れた役どころ
セリフ回しもないほどに
ヘイ・ヘイ・ホー
「ああ・・・ハラボーの・・・」
「いや、ケイちゃんの・・・」
今度はミネコが警官隊の阻止線を突破する。
「ようし・・・今度は特上のすきやき用意しろ・・・」
「いい加減にしろ~」
「うるさい・・・」
藤田はダイナマイト腹巻きを披露するのだった。
お約束でどよめく警官隊・・・安いコントだなあ・・・。まあ、そういうのがやりたいんだな、きっと。
「久しぶりだなあ・・・お前が朋美か・・・変われば変わるもんだなあ・・・」
「女なんてそんなものよ・・・あなたは元気だった・・・」
「元気でもないさ・・・こんなことやってるんだもの」
「そう・・・」
おそらく・・・近所の割烹から調達したのであろう・・・「特上」のすき焼きセット到着である。
ようやく・・・藤田は麻美に声をかける。
「もう・・・帰っていいよ・・・」
しかし・・・それまで大人しくしていた南原の娘はすき焼きの匂いにつられるのだった。
「帰るって・・・ここが家だし・・・」
「そうなんだ・・・じゃ、せっかくだから・・・すき焼き食っていくか」
「睡眠薬入りだったりして・・・」
「いや、人質が食べるかもしれないから・・・それはないだろう・・・」
「お父さん、これ食べたら・・・自首してよ・・・」
「いや・・・それはできない。父さんはお前たちと別れてから・・・いいことなんかひとつもなかったんだ。それでも・・・なんとか生きて来た。でもな・・・仕事もうまくいかなくて・・・借金もして・・・昨日・・・一人ですき焼きしたら・・・すごく不味かったんだ・・・そしたら・・・もう、なんだか・・・生きているのが・・・イヤになっちゃった・・・お譲さん・・・若いあんたにはこんな気持ち分からないだろうな・・・」
「そんなことない・・・パパとママがケンカして・・・ママが家出しちゃって・・・パパは迎えに行こうともしない・・・男のメンツがどうとかこうとか・・・もう、それが男らしくないっつーの」
「ハハハ・・・そうか・・・」
娘の本心を聞いた南原は涙目である。
「くそ・・・ワシはお前のために・・・こんなに頑張ってるのに・・・」
すると、人質として縛られた松平が南原を諭す。
「親の心、子知らずや・・・しかしな・・・時には親も子供の前ですべてをさらすことも必要やで」
「なんで・・・急に関西弁・・・」
「演技指導はワシにまかしとくんなはれ」
その頃・・・水鳥探偵は・・・藤田の身辺調査を終えていた。
一方、すき焼きを食べ終えた四人。
「ごちそうさま」
「おいしかったね」
「こんなにうまいのひさしぶり」
「さすが特上よね」
「せっかくだからうなぎでもよかったよね」
「俺は満足だ・・・もうみんな出て行ってくれ・・・死ぬのは俺一人でいい・・・」
「そんな・・・お父さん」
「もう、いいんだ・・・さすがに女房の顔忘れる男はいない・・・あんただって・・・まあ、一目でニセモノだとわかったよ・・・でも・・・最後にいい夢みさせてもらった・・・みんなで食べたすき焼き・・・おいしかったよ・・・」
何故か後ろ髪を引かれる思いのするマキであった。
しかし・・・本来の目的を忘れるわけにはいかない・・・。
藤田を残し・・・三人の女は解放される。
そこに待ち構える・・・南原。
「パパ・・・」
「麻美・・・ワシが悪かった・・・これからママを迎えに行こう・・・ワシは土下座しても・・・ママに許してもらう・・・」
和解する南原父娘だった。
それを見守るマキに水鳥が囁く。
「藤田の娘な・・・出産時のアクシデントで母子ともに死亡してた。20年前な・・・綾音の誕生日は綾音の命日でもあったんだ・・・」
「そんな・・・」
「このままだと・・・藤田・・・自殺するか・・・警官隊に射殺されるかだな・・・」
マキのお人よし女優魂に着火である。マキには世直し大明神でも憑依してんのか・・・。
再び、警官隊の阻止線を突破するマキ。いちおう、くりかえしのギャクである。
世の中のはじこに漂う
よたり女がいきる道
夢に見た晴れ姿を
その他大勢の役ひとつ
ヘイ・ヘイ・ホー
「お父さん・・・あけて」
「やめてくれ・・・お前は俺の娘じゃない・・・」
「私は・・・代行女優です・・・今までもいろいろな人を演じてきました・・・世の中には他人にとってどうでもいい人があふれています・・・でも・・・一人一人が誰かにとってはとても大切な人だったんですよ・・・私は一瞬でもあなたをお父さんと心から呼びました・・・だから・・・あなたは私にとって・・・お父さんです」
「頭おかしいだろう・・・そんなのおためごかしだよ・・・娘は生まれると一声泣いて死んだんだ・・・俺には最初から娘なんていなかった・・・俺はたぶらかされない」
「そんなことない・・・一瞬でも娘さんはこの世で生きた・・・奥さんだって命がけで娘さんを生んだ・・・奥さんも娘さんもきっと言いますよ・・・あなた・・・私たちの分まで生きてって・・・お父さん・・・頑張って生き続けてって・・・」
「・・・」
マキの優しい言葉に・・・心をほどかれた藤田はついに泣き崩れる。
こうして・・・マキは借金苦から解放された。
しかし・・・新たな劇団旗揚げのために代行女優業は続行である。
とにかく・・・だからといって・・・続編だけは勘弁してもらいたい。
関連するキッドのブログ→第12話のレビュー
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コメント
やっぱりキッドさんは心優しい悪魔ですね。
愛が溢れてるんだもの~(ノ゚ο゚)ノ
>いざ別れるとなると名残惜しいのが人情である。
うんうん、これだったんですね~。
最終回だと言う意識は、
ギリギリ許しちゃうか~にもなりますわねぇ(笑)
今回はベタ好きにはビンゴでしたよん。
悪ぶってるいい奴にも弱いの(u_u*)
>誘拐横町かっ。
(≧∇≦)ノ彡 バンバン!
キッドさんの不意を突く言葉遊び大好き♪
そしてドラマよりおいしく仕上げちゃって…
妄想劇場が贅沢です。
まさかの13話までおつき合い頂き感謝します。
リンクまでありがとうございました。
本当~にお疲れ様でした。
それでは、
続編でお会いしましょう(^-^*)/ヾ(゚∇゚*)オイ
投稿: mana | 2012年6月30日 (土) 10時35分
|||-_||シャンプーブロー~mana様、いらっしゃいませ~トリートメント|||-_||
悪魔としては修行の足りぬことおびただしいのでございますな。申し訳ございませぬ。
まあ、数億年も生きていると
もう鬼畜で外道なことをたくさんしているので
いちいち憶えていないのですが
しかし、ふと・・・若い頃のことを夢に見たりしますと
悪行三昧に女の涙・・・
ああ・・・ひどいことしたな~
かわいそうだったな~
と慙愧に堪えないこともございますからねえ。
今回のように・・・
そんなにひどくはないでしょう・・・
私はちゃんと魅力的な女になったでしょう的な展開だと
つい・・・甘くなっちゃいますな~。
やはり・・・仕事に積極的なマキが基本的にないとね。
演ずる喜びというか、なりきり中毒というか
そういう病みつきな感じがベースにあるべきなんですな。
そして、かなりオリジナルなキャラクターになっているんで
水鳥だけでなく・・・それぞれの
過去の物語を織り交ぜるべきでしたよね。
マキに感情移入がしにくいもの・・・。
「身代金は300万円だ」
「そんな金はない・・・」
「仕方ない・・・じゃ、となりの娘を誘拐して・・・」
という短編が筒井康隆にあるのでございます。
結構、成功から見放されていると
作家魂も病みますからねえ。
この作者はあきらかに・・・そういう心情が出てますな。
そして、そういうのに気を取られていると
出来上がった作品を見て愕然としたりします。
しかし、その時は遅いのですな。
あと一歩、言葉を選べば
あとひとつ、仕掛けを足せば
そういう作品は本当にもったいないのですねえ。
一応、藤田の真相を
麻美という別の娘の真相が隠す仕掛けになっているのに
明らかに書いている本人が気づいていない展開でしたから~。
妄想せざるをえないのでございます。
終ってみれば
いろいろ趣向をこらした13話でしたねえ。
もう少し、つなぎの部分が工夫されていればと・・・
残念無念です。
続編か・・・
スタッフ総とっかえで一からスタートして
同じ失敗を繰り返すのか・・・。
同じスタッフで同じ過ちを繰り返すのか・・・
どちらにしろ・・・苦労しそう・・・。
だめんずうぉーかーにはなりたくないものです。
・・・お前、男だろっ。
投稿: キッド | 2012年6月30日 (土) 16時08分