悪たれ小僧が自分の影につばをはいた、命がちぎれてとんでった(松山ケンイチ)
何度も書いているが、フリとオチは構成の基本である。
初心と言ってもいい。
そもそも構成とは全体を分割することなのだ。
たとえば・・・現在というのはすべての過去をフリとするオチなのである。
起承転結というのはフリフリフリオチと考えてもいいし、フリオチフリオチと考えてもいい。
もちろん、フリオチオチオチの場合もある。
序破急はフリフリオチかフリオチオチになる。フリオチフリや、オチフリオチはもはや序破急とは言えない。
そういう意味で・・・常に甘かった清盛が、常に苦かった義朝と・・・立場を変える今回は壮大なオチなのである。
フリフリフリフリフリフリフリフリフリフリオチぐらいな感じ?
清盛は斬りたくない人を斬り・・・義朝は斬れずに終わる。
誰が主役なのかよく分かっている脚本なのである。
清盛はモンスターになり、義朝はただの人になったのだ。
そして・・・怪物を演じる限り、松山ケンイチは無双なのである。
とにかく・・・素晴らしい脚本だと思う。キッドは絶賛を惜しまない。
で、『平清盛・第23回』(NHK総合20120610PM8~)脚本・藤本有紀、演出・渡辺一貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は藤原通憲として生まれ、高階家に養子に行き、出家して信西と名乗った後白河天皇の乳父にして保元の乱の実質的指導者・苦悩の改革者の出家後のお姿イラスト描き下ろし大公開でございます。剃髪後、登場まで長かったのですが、病床からの発表、感じ入ります。マイペースでお願いします。
国家が治安を維持する場合、基本的には法治が理想である。しかし、教育制度がここまで浸透した現代においても武装した警察官の存在や、その実(武)力に基づいた執行がなければ刑法は機能しないのである。発展途上国である平安日本においては、開拓される新しき領土と、それを管理する者の自治権の問題が胎動し始めている。その対立構造がついに支配構造の頂点まで逆流してきたのが、保元の乱なのである。悪左府もまた、理想の法治国家を目指して厳罰主義を貫いたのであるが、それはあくまで摂関政治の復権を目指したものであった。これに対し、合戦して悪左府を死に至らしめた信西は、さらに死刑制度を復活し、恐怖による法の支配を目指したのである。死を賜ることを導入し、法治の権威を高めることに成功した信西。いわば、それは政治行為の責任の所在を明らかにすることに他ならない。当然、その瞬間から、信西は己の死を覚悟したであろう。これ以後、信西は公領と私領(荘園)の抜本的整理に乗り出す。もちろん、抵抗勢力はたちまち、牙をむき出すのである。そうした政治的背景を元に・・・反乱者として・・・平氏の平忠正とその子息たち、源氏の源為義とその子息たちは・・・それぞれの氏の頭領によって斬首の刑に処せられるのだった・・・。
藤原頼長に矢を的中させたのは近江源氏の矢島重貞である。父・重実の代に罪を犯したが、名誉挽回のために兄・重成とともに天皇方に参陣し、実質上の賊の長を射ぬく手柄をたてたのである。
上皇方、敗北の後、謀反者の追討が天皇から命じられ、武者たちは追手として落ち武者狩りに向かう。
矢島重貞も検非違使として・・・本拠地である近江矢島方面に向かった。
矢島武者は比叡山忍びの流れを組む僧兵である。
源氏・平氏の大物たちが捕縛される中、消息を絶っていた鎮西八郎こと源為朝の所在を確認したのは・・・そうした忍びの一人、守山の佐渡である。
「殿・・・大物がみつかりましたぞ・・・」
「もはや・・・大物など残っておるまい」
「いやいや・・・上皇方で一人、南門を守った荒武者・鎮西八郎がおりまする・・・」
「なに・・・」
「近江の北の坂田の里に隠れ潜んでおりました」
「・・・」
「すでに・・・忍びに結界をはらしておりまする」
「・・・参る」
重定は矢島源氏所有の白い船で琵琶湖を北上する。
「手負いとはいえ・・・相手は名だたるもの・・・一矢でしとめねばならぬ・・・」
重定は狙った的を外したことがないと言われる弓矢の名手である。
「里のものに命じて秘湯をすすめさせておりまする。くのいちを手配して・・・獲物を裸にいたしまする」
「弓矢が一番うまくあつかえるのは吾じゃ・・・そこまでせずとも・・・」
「殿、油断は禁物でござる。これは戦なのですぞ・・・」
「・・・殺さぬように・・・動けなくしてみせる」
裸の為朝のかかとを重貞の北斗七星の矢は一撃で貫いた。
「かかれ」
忍びのものたちは為朝に襲いかかった。
「やらせはせぬ・・・やらせはせぬぞ~」
しかし、矢に塗られた痺れ薬が為朝の身体を麻痺させていた。
為朝は捕縛され・・・この手柄で重貞は右衛門少尉に任じられるのである。
関連するキッドのブログ→第22話のレビュー
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