光輝く上皇よ、 あなたの未来の為にと私はつぶやいて(成海璃子)
そ、そこにきましたかーーーっ。
だって、待ちに待った滋子の巻だからな。
夏の子役祭りは大河ドラマにまで押し寄せてきたのだ。
成海璃子といえば「トリック」の山田奈緒子(少女時代)から12年である。1992年組なのでもうすぐ20歳なんだな。
よくぞ・・・ここまで無事に育ってきたよ。ウエイト・コントロールのピンチをのりこえてなーーーっ。
一方で、厳島社の巫女で宋人・桃李を演ずるのは、柊瑠美である。
「すずらん」(1999年)の萌(少女時代)から13年である。「千と千尋の神隠し」で千尋(声)、「野プタ。をプロデュース」(2005年)の蒼井かすみなど強烈な印象を残しつつもうすぐ25歳なのだ。
時は流れるよね~。
で、『平清盛・第29回』(NHK総合20120722PM8~)脚本・藤本有紀、演出・中島由貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はさらば・・・帝の妻になろうとして上皇の后になってしまった王家の女帝・美福門院、ようこそ・・・帝の妻にさせられそうだったけど自ら望んで上皇の妃になっちゃった平滋子の二大美女描き下ろしイラスト大公開で大変お得でございます。すげえーーー女性が苦手とおっしゃる画伯が二枚とも女で勝負とはーーーっ。素晴らしい出来栄えでございましたが、あくまでマイペースでお願いします。
ついに永暦元年(1160年)夏・・・平清盛は正三位参議となり、公卿の席についた。朝廷のまつりごとへの発言権を得たのである。祖父・正盛、父・忠盛の成し遂げられなかった夢が実現したのだった。清盛は数えて43歳になっていた。養母である池禅尼の従妹にあたる美福門院は永暦元年十一月に逝去する。美福門院は清盛より一つ年上だった。清盛自身が白河法皇の落胤とされるわけだが朝廷と平家の繋がりは藤原宗子(池禅尼)と藤原得子(美福門院)の従姉妹関係がかなりものを言っているのである。皇室(王家)の継承は、藤原氏と密接な関わりをもっているが、同時に王家内部の相続問題もからんでいる。白河法皇は一種の独裁体制で王家の私財を独占したわけだが・・・紆余曲折を経て、それは一旦、鳥羽法皇が継承することになる。鳥羽法皇治世以後では、待賢門院の子である崇徳、美福門院の子である近衛、待賢門院の子である後白河、その子二条と帝位が継承されるが・・・実質、王家を支配していたのは美福門院だったと言われる。なぜなら、白河法皇、鳥羽法皇の残した財産を継いだのは美福門院だったからである。追放された崇徳も後白河上皇も実質、貧乏な帝だったのである。しかし、美福門院は待賢門院系の人々が不満を抱かぬように門閥を形勢していた気配がある。まず、後白河の子である二条を継承者として、わが娘の八条院をその母として定めている。次に八条院の妹の姝子内親王を二条の中宮としている。そして姝子内親王の養母を後白河の同母姉である上西門院と定めたのである。二条天皇の立場を補強するために平安京最大の実力者・平清盛の室である平時子を乳母とする周到ぶりである。平時子の異母妹である平滋子はこの年、後白河上皇の妃となるわけだが・・・まさに最後の一手と言えるだろう。美福門院は王家の安泰のために打つべき手はすべて打って身罷ったのである。しかし・・・歴史は人の願いを無残に打ち砕いていくものだ。そして・・・驚くべき悪名を貞女に冠したりもするのである。
風は山から降りてくる
うちは比叡おろしですねん
あんさんの胸を雪にしてしまいますえ
京の都に木枯らしが吹きぬける。鬼神を信じない平家一門のものどもがまつりごとに口出しするようになって凋落の気配を感じている安倍晴明一門の傍流である安倍泰親は平安京の東に武神の気配を感じていた。衰えたりといえども血が騒ぐのである。京の都を覆う闇に異変が生じる。それは陰陽道の秘法を用いるまでもなく明らかであった。
陰陽師たちは闇の噂で宮中に玉藻前(たまものまえ)と称される大陸渡来の妖怪が生息していることを知っていた。噂によればその妖怪は大陸の古代王朝殷を滅ぼした伝説の后・妲己の正体である白面金毛九尾の狐であるらしい。八世紀に来日し、以来200年以上も大和の国にあだなして来たと言う。
そして、今は王家のやんごとなき女性に化けて内裏で瘴気を放っているのだという。保元、平治と続いた戦乱もすべてその化性の為せる仕業だと評判なのである。
安倍泰親は夜が更けるとともに冷たさを増す風の気配におそろしげなものを感じている。
都の東、六波羅の平家館には兵(つわもの)たちが打ち揃っていた。
総大将は平清盛である。そして先鋒を勤めるのは霊能力者・高階明子の血を引く長男・重盛である。その他、平家の御曹司、名だたる郎党たちがこれに従っている。ただし、平時子率いる二条帝警護の一隊が内裏に、平滋子率いる後白河院警護の一隊が白河御所に分派されている。
同時に内裏・白河御所・六波羅にはそれぞれ、王家の巫女である姝子内親王、上西門院、八条院が祭壇を整え、祈祷を続けているのである。
美福門院こと妖狐玉藻前の動きを封じるためであった。今や、平安京は張り巡らされた結界により、巨大な魔法陣と化しているのだ。
「敵は八条院にあり・・・」清盛は宋剣を南西の方角に向けた。
「参る」と重盛が戦闘を切って馬駆けさせる。その手には父親から譲られた破魔の弓矢が握られていた。
一族郎党は遅れじと六波羅屋敷の門を出、賀茂川にかかる橋を渡り、大路に足を踏み入れる。
京の人々は突然の馬蹄の響きに跳び起きた。
「何事ぞ・・・」
「謀反か・・・」
「戦か・・・」
八条殿では寝処で美福門院が覚醒する。
「夕刻から妙に眠気に誘われたは・・・大和の呪法であったか・・・小癪な・・・妾に逆らうなどどれほど身の程知らずか・・・思いしることになろうぞ」
美福門院はしかし、周囲に人の気配がないことに驚愕する。
「これは・・・いつのまに・・・これほどの結界を・・・」
美福門院は寝衣のまま、八条院の広間に出る。
「おのれ・・・」
美福門院であったものは顔色を変えた。美福門院が手なずけた貴族や武士たちが一人もいないのである。怒髪天をついたとき・・・美福門院の人の顔は狐面に変じていた。背後には巨大な九本の尾が現れる。
「おうおう・・・妾の変化の封印が破られたのか」
妖狐は驚愕すると同時に、久しぶりの高揚感を味わっていた。
「なるほどの・・・平家の小童め・・・なかなかやりおる・・・王家の姫巫女たちも・・・なかなかどうしてたいしたものじゃ・・・しかし・・・妾の真の実力をあなどるなかれ・・・参じよ」
妖狐が一声命ずると・・・院の庭には地響きが起きた。庭木が音を立てて倒壊すると・・・地中からは人影が現れる妖弧の使い魔である石兵軍団だった。
およそ、百体ほどの石の武将たちはそれぞれの鉄の武具をもって整列する。
「大和の戎どもの目にものみせてやろうぞ」
おりしも、八条院に平家の武将たちが到着したところであった。
その前に屋敷から飛び出した石兵たちが立ちふさがる。
「これは・・・」
「面妖な・・・」
松明に照らしだされた石兵たちの奇怪さに怖気を感じる平氏の武者たち。
「ひるむな・・・」
平重盛は一声叫ぶと破魔矢を放つ。第一矢は戦闘の石兵に命中する。
電光を放ち、石兵は砕け散った。
「それ、ものども、かかれ」
重盛の声に励まされ、武者たちは獲物を手になだれ込む。
しかし、相手は石である。一撃で刀を折られるもの、組みついて下敷きになるもの、鉄の剣で真っ二つにされるもの・・・周囲には叫びと血の匂いが充満する。
武者と石兵が激闘を繰り広げる間を縫って二人の忍び武者が八条院の境界を乗り越える。
平清盛と大伴の忍び西行だった。
二人は院へと続く廊下に足をかけ・・・お互いに目配せをする。
「ついにこの時がきたな・・・」
「長い歳月でしたな・・・」
「西行・・・ぬかるな・・・」
「清盛殿も御用心あれ」
二人は一気に院の奥へと跳躍した。
凄まじい殺気が襲ってきて、清盛は思わずのけぞった。
その鼻先を青龍偃月刀がかすめて行く。
院の広間に狐面の女がおり、その左右にはひときわ巨大な石の武将が立っている。
「ふふふ・・・小童どもめ・・・よくぞ、まいった。褒美に名高い英雄との勝負を授けよう。石の関羽、石の張飛、大和の猿の首、うちまいらせよ」
清盛の前に青龍偃月刀を構えた石武将が進み出る。
西行は一丈八尺の蛇矛を抱えた石武将と対峙する。
「こいつは・・・たまげた」と西行はさして驚いた風もなくつぶやくと・・・忍び装束の懐から布を取り出す。
そこには「蘇民将来」と墨で記されている。
「波」と西行が叫ぶと上西門院が霊ふらせた鬼神が西行を変化させる。
西行に憑依しているのは牛頭天皇である。石張飛の繰り出した蛇矛の一撃を両腕で受け止めた時、西行の頭は黒い牛のものになっている。
「ぐもっ」と鼻息を荒くした牛頭西行は蛇矛の両端をつかみ、石張飛と力比べを始めた。
その姿を背面の顔でとらえる平清盛もすでに二面宿禰に変身を遂げていた。
石関羽の繰り出す青龍偃月刀の突きを宋剣で払いながら、懐に飛び込むチャンスを伺う清盛であった。
「くらえ円月剣」
清盛はターンをしながら青龍偃月刀の間合いをはずし、必殺の回し切りを放つ。
石関羽の首が切断されて吹き飛んだ。
一方、牛頭西行は怪力で石張飛を抱えあげると残された石関羽の身体めがけて投げ飛ばす。
石の英雄は衝突して砕け散った。
「たわいもないわ・・・大和の神をなめるなよ」
清盛は両面の口をそろえて叫ぶ。
「おのれ・・・化け物ども・・・」
「お前に言われる筋合いはない」
すでに・・・妖狐は完全に獣の姿になっている。熊よりも巨大な狐の姿である。
「清盛・・・お前の栄誉・・・立身出世・・・すべては妾のおかげではないか」
「何を言う・・・人の心を惑わしおって・・・わが友の道を誤らせたもののけが・・・」
「妾が惑わせたわけではない・・・みな・・・己の欲に目がくらんだのじゃ・・・」
「だまれ・・・女狐・・・本当の藤原得子様をどうした」
「それは・・・妾が食ろうてやったわ・・・」
「悪鬼退散」
清盛は怒気を含んだ宋剣を妖狐に突きだす。
しかし、妖弧は素早く身を交わすと、院の天井を突き破った。
「おぼえておれ・・・平清盛・・・我が恨み・・・やがて汝の一族郎党を悉く滅ぼしてくれるわ」
「逃がすか」
清盛は妖弧の開けた穴に飛びあがる。穴は屋根まで突きぬけて行く。
「くらえ」
清盛は宋剣から念の炎を噴出させ、妖弧を狙い撃ちにする。
たちまち燃えあがる妖狐の身体。
「くちおしや・・・」
次の瞬間、鋭い音を立てて妖狐の身体が虚空に舞い上がった。
それは火の玉となって東の空へ飛び去る。
「くそ・・・逃したか・・・」
「・・・案ずるな・・・」
下から凛とした声が響く。
「上西門院様・・・」
いつの間にか、現れた上西門院が庭先に佇んでいる。
「もはや・・・封印はすべて解かれ・・・あれは大和の神の呪縛にかかっておる。後は東国の兵がなんとかしよう・・・」
「しかし・・・」
「案ずるな・・・あれは自分で逃げたつもりでおるが・・・罠にかかっているのだ・・・」
清盛は人身に戻りつつ剣を収めた。聡明な姫巫女である上西門院が何かを仕掛けているのは間違いないのであろう。・・・清盛は納得する。
「清盛・・・西行・・・長き働き・・・大義だった・・・」
「ぐも・・・」
清盛は古いつきあいの元・北面の武士を見て微笑んだ。西行は一度変身すると・・・なかなか生身に戻れないのだった。
これからどうなるのか・・・清盛は確信が持てなかった。ただ一つ言えること・・・それは美福門院が今夜をもってこの世から姿を消したということだけだった。
「お・・・雪じゃ・・・」
京の街にいつもより早い雪が舞い降りていた。
京における死闘は終結したのだ。
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コメント
どうもです
この夏場の暑さに無呼吸も再発
あれこれと四苦八苦してる今日この頃
先ほどまでCS時代劇専門チャンネルにて
日本テレビであった「白虎隊」を見ておりました
この作品のクオリティを
来年の大河でもできるのかと思ったりしますが
まぁこの作品は会津藩の悲劇をこれでもかと
強調してますからねぇ
その辺は大河のメッセージ性と重なるのか
気になるところですが(; ̄∇ ̄)ゞ
もひとつ気になるとすれば
今話題のFUKUSHIMAで
撮影がどこまでできるかってとこでしょうか
さて、此度の内容で巻髪については
「蛇のような髪」ということで
ふと、メデューサやゴーゴンを連想しましたが
そういう伝説もまた
いわゆるやっかみみたいなもんかもしれませんな
ちなみに来月
フジテレビで放送される「剣客商売」を
密かに楽しみにしております ̄∇ ̄♪
投稿: ikasama4 | 2012年7月28日 (土) 23時41分
✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥
おいたわしや・・・ご自愛くださりますように。
熱気に包まれた東京の夜から
ご回復をお祈り申し上げます。
キッドの家人も近所の病院に入院中でして
毎日、洗濯物を取りに病院まで
自転車で往復しているのですが・・・。
最大の難関が道灌山の坂でございます。
源三位頼政の末子、源広綱を祖とする太田道灌(資長)所縁の地で汗をダラダラと滴らせている今日この頃です。
五輪の季節に時代劇三昧・・・
さすがは画伯・・・筋金入りですな。
あくまでマイペースでお願いします。
今・・・三宅(娘)がかっこいいところ・・・。
その凛々しい顔立ちに
姫武将の面影を感じますな。
白虎隊の黒木メイサみたいな・・・。
やはり・・・東北はいつまでたっても
大和にとっての蝦夷なんですな。
哀愁でございます。
来年の大河は・・・もうどうなるのか・・・
皆目見当もつきません。
坂の上の雲を使いまわす気なんじゃないか・・・
と邪推が強まっておりまする。
キャストの無事を祈りたい気分ですな。
一時のハリウッド・スターみたいにならないといいけれど~。
ふふふ・・・後半のヒロインとも言える
滋子の巻髪についてご教授ありがとうございます。
平家一門にかけられた「呪い」が
いかなる形で成就するのか・・・・
それともしないのか・・・。
実に楽しみなのでございます。
「剣客商売」・・・北大路欣也の秋山小兵衛・・・
まさにお父さん犬ですな・・・。
おいしい酒のつまみを作りたくなるドラマになると
いいなあ・・・と考えています。
投稿: キッド | 2012年7月29日 (日) 01時42分