時のない世界で妹(二宮星)とぼくの夏休み(綾部守人)
昼ドラマでタイムスリップといえば「がきんちょ~リターン・キッズ」(2006年TBSテレビ)があるわけだが・・・今回は今のところ、時間旅行をしているのかどうかは謎である。
なんといっても主人公とヒロインが現代から運ばれた異世界が本当に過去なのか、不明だからである。
まあ、「がきんちょ」も時代考証は結構、いい加減だったから・・・これも一種のタイムスリップものと考えてもいいのかもしれない。
昼ドラマでジュブナイルなのだが・・・メロドラマ要素もかなり激しく濃厚で・・・これは夏休み前までにやることはやっておこうという姿勢なのかもしれない。
っていうか・・・あまり深く考えてないのかもしれないなあ・・・。
ま、ともかく・・・ファンタジーではあるだろう。
そのために・・・序盤を軽くさわっておきたい。
で、『ぼくの夏休み・第1~5回』(フジテレビ20120702PM0130~)脚本・樫田正剛、演出・松田秀知を見た。平成24年の夏。青山浩二(中原裕也)と詩緒里(高岡早紀)夫妻の不仲は決定的なものとなり、離婚をめぐる修羅場がちょうど夏休みと重なったので小学六年生の長男・和也(綾部)と小学四年生の長女・はる菜(二宮)の兄妹は詩緒里の父母が住む茨城県に預けられることになった。
詩緒里は和也に一万円を渡し・・・常磐線のような鉄道で・・・兄妹を田舎に旅立たせる。
兄は鬱屈した思いをもてあまし、能天気に振る舞う妹に辛く当り・・・車内では携帯ゲームに熱中である。
「死ね、死ね、死ね・・・」
その言葉を聞き咎めた老婆(森康子)が・・・和也に呪いをかけるためにやってくる。
「昔の若者はみんな・・・戦争で生きたくても死んでいった・・・」
「だから・・・なんだよ・・・」
「死ねなんて・・・言ったら呪われるよ」
「関係ないだろう・・・」
すると老婆は諸肌脱ぎとなり、醜い火傷の傷痕をみせつける。
「私だって空襲に焼かれたんだ・・・」
「うえ、頭おかしいよ・・・この人・・・」
あまりの恐ろしさに途中下車する兄妹である。
老婆はこの路線を日本鉄道・海岸線(私鉄)だと口にするが・・・戦時中はとっくに国有化されています。
そして・・・二人は常磐線にも日本鉄道・海岸線にもない「うしくがわ」という駅で次の列車を待つが・・・やってきたのは蒸気機関車だった。
不審に思う兄妹だったが、二人とも鉄オタではなかったので・・・それほど違和感なく・・・その怪しい汽車に乗り込むのである。
だが・・・車内の人々はすでに・・・どう見ても平成の人々ではなかった。
そして・・二人が到着したのは「土浦北駅」という実在しない駅である。
そこには木造の駅舎が建っており・・・二人が依然に訪れた祖父母の住む街とは様相が違っていた。
やがて・・・和也はそこが昭和19年と知り・・・愕然とする。
「ぼくたち・・・時をかける兄妹になっちゃった・・・」
「なに・・・それ・・・」
「千と千尋の神隠しみたいなことだよ」
「えーっ、あたし、千なの~。おにいちゃん、ブタになっちゃうの・・・」
「なるかよっ」
土気色をした街でパステルカラーの兄妹は極端に目立つのだった。
現実を受け入れない兄は・・・圏外になった携帯の電波を捜しまくる。
妹にはなにがなにやら意味不明の状態である。
「お前たち・・・東京から疎開にきたのか・・・」
大人たちに問われ・・・逃げ出す二人だった。
「私たちのおじいちゃんちはどこですか」
「よせ・・・そんなのいないんだよ」
「どうして・・・」
「俺たちは平成の前の昭和にいるんだよ」
「しょうわ・・・?」
「ずーっと昔に来ちゃったんだ」
「どのくらい前なの・・・」
「すごく前だよ」
「昭和の前はなんなの?」
「江戸だよ」
哀しいくらいに教養のない小学生である。
田舎の子供たちにいじめられ・・・空家に住み着いた兄妹。
平成からもってきたお菓子も底をつき・・・和也は畑から食料を盗むことで餓えをしのぐ。
盗んだ鋏で髪を切り、盗んだ着物で変装するほど悪賢いのである。そこそこの適応力があるのはゲームで鍛えているからであろう。
しかし・・・幼いはる菜には心身ともにきつい昭和十九年だった。
「ママにあいたいよ」
駄々をこねるはる菜を連れて原点である「うしくがわ」駅を目指し線路を歩く和也。
しかし・・・そこにあったのはさかえ駅←うしくがわ駅→かねはら駅の表示ではなく・・・
えかさ←わがくしう→らはねか・・・だった。
・・・こういう遊びも現在の縦書き←(向かって右から左へ)読み、横書き→(向かって左から右へ)読みが戦前は縦書き←読みで、横書きも←読みだったということが「常識」でないとなれば通じなかったりするわけである。
。るあでのため読くな由自不何をれこは人の昔
昔の人はこれを何不自由なく読めたのである。
そして・・・トンネルの手前で線路は途切れていたのだった。
「この駅じゃない・・・」
絶望に襲われる和也だった。
昭和19年の土浦北には詩緒里そっくりの女がいた。
商人宿を営む上条旅館の後妻である上条佐代である。
義母で女将のマツ(うつみ宮土理)は「他人には優しくするもんだ」というヒューマニストだったが・・・夫の大五郎(升毅)は臆病で身勝手で乱暴者という悪辣な男だった。先妻の子で長男の耕作(崎本大海)が傷痍軍人として帰郷してから発狂し、あらぬことを口走るために「非国民」のレッテルを張られてしまったためにもともと歪んでいた性格がさらに歪んでいるらしい。最近は佐代の妊娠をいいことに住み込みの女中・文子(土谷春陽)に手を出している。家には先妻の残した次男勇作(森永悠希)や、妾の子である三男栄次郎(西山潤)も住んでいる。
お地蔵さんに供えられた牡丹餅を妹にあたえて食中毒を発症させた和也は・・・優しい娘(水野絵梨奈)の導きで開業医の五十嵐医院になんとか入院させることができた。
しかし、もちろん・・・支払いのための金はない。
途方にくれた和也は・・・空腹に耐えかね・・・上条旅館に盗みに入る。
そこで母にそっくりな女・・・佐代に出会うのだった。
昭和19年夏に・・・爆撃機の大編隊が茨城県上空を通過するなどありえない過去(九州を除く本土空襲は年末になってから)で・・・幼い兄妹ははたして生き延びられるのか・・・。
ぼくの夏休みは始ったばかり・・・そして八月末まで続くらしい。
ル~ルルル~・・・。
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コメント
『がきんちょ ~リターン・キッズ~』は大好きでしたが…何話か観てみても(というより最初のいきなり虐待シーン?からして) このドラマは一体どんな層に見せたいのか分からないのですねよねー。
投稿: 幻灯機 | 2012年7月 7日 (土) 18時38分
タイトルには男女が何パターンか登場してるんで
これ、ジュブナイルとみせかけた
ただの昼メロっていう可能性もあるんですな。
とりあえず夏休み前に縄で縛って胸をぐりぐりとかは
消化すると思いますが・・・
その後も平気でこういうシーンをぶちこんでくる可能性もありますねえ。
妹→有村架純と言う流れなら
キャスティング的には美山加恋でなくなったら
ハイそれまでよ・・・という話よりはマシですな。
ここまでは・・・わがままな性格だけど少しは妹を思う兄と
ちょっとバカだけとお兄ちゃんを慕う妹の
兄妹の感じはなかなかよくできていますな。
まあ、子供に見せる時は升毅の部分だけ
全部カットすればなんとかなりましょう・・・。
投稿: キッド | 2012年7月 8日 (日) 02時44分
有村架純は、8年後(昭和27年)の妹役という事ですか。
タイムスリップして、最後は、(子供だけに帰れないのはキツイので)現代に戻るものと思い込んでいたんですが、
そのまま、この時代を苦労して行き続けるんですか。
戦中・戦後を描いただけのドラマじゃ、タイムスリップの意味無いし、現代の記憶を持ったままで・・・最後は、どうなるんでしょうか?兄妹の祖父母や 曾祖父母に遭遇したりとかあるかも。ハンティング帽をかぶった男も、現代からタイムスリップして来たみたいだし・・・
僕が今まで見たタイムスリップものとは、ちょっと違う、想像つかない展開ですよね。
3ヶ月やると思っていたら、2ヶ月で終わるみたいだし。
投稿: | 2012年7月16日 (月) 17時40分
現在、公式で発表されておりますな。
http://tokai-tv.com/bokunatsu/topics/03.php
でご確認ください。
有村架純の登場は8/6~で
やはり、はる菜の成長した姿のようです。
子供も大人も楽しめるというよりは
無差別攻撃のようなターゲット選定なのですな。
まあ・・・帰ってこれない時間旅行もの・・・
といえば「夏への扉」とか「マイナス・ゼロ」
「戦国自衛隊」・・・・
最近では「仁」もその一種ですな。
変形としては「スキップ」なんかもあります。
まあ・・・結構、ひとつのジャンルと言えるほど
多数の作品がございますよ。
老後までやっておいて
すべて夢だった・・・という展開も古典ですな。
投稿: キッド | 2012年7月16日 (月) 22時24分