「さよならコーチ(唐沢寿明)」と死体(田中麗奈)が挨拶する夜のVISION(山田優)
結局、二本立てかよ~。
まあ、ミステリとオカルトだし、死体が語って語って語りまくるからな・・・。
とにかく・・・「東野圭吾ミステリーズ」はオムニバスだし、「VISION」は連続ドラマ色の強い展開・・・その日の気分で濃淡変更が可能である。
夏ドラマは意外にというか、やはりというか、取捨選択の難しい展開になっているので・・・ここは二本を消化しておきたい・・・。もう、金曜日と土曜日しか残っていないのである。
(日)平清盛
(月)ビューティフルレイン
(火)浪花少年探偵団
(水)谷間
(木)「東ミ」「V」
(金)おそらく「黒の女教師」
(土)おそらく「ゴーストママ」
・・・こういう感じで・・・。まあ、明日は明日の風が吹くけどな。
で、『東野圭吾ミステリーズ・第1回・さよならコーチ』(フジテレビ20120705PM10~)脚本・坂口理子・高橋幹子、演出・河毛俊作を見た。オムニバス形式だが、案内役の登場するコントが前後につく。案内人はミステリー雑誌編集長・倉敷(中井貴一)ですでに死んでいるがが、死体の傍らの幽霊として語るのである。
「私はすでに死んでいます・・・もうすぐ第一発見者が来るでしょう・・・ちなみに彼女は私の不倫相手でして・・・いろいろとややこしいことになりますな・・・」・・・云々である。
さて、初回ゲストは・・・唐沢寿明である。
なんていうか・・・ガリレオみたいですな。
死体が語るという趣向で一番、ストレートなのは・・・幽霊が語るという手なのであるが、現代では様々な記録媒体があり・・・そういう意味では遺言としてのビデオ・レターはもはや懐かしい手口になるだろう。
さらに五輪シーズンに対して・・・マイナー競技ながら・・・アーチェリー女子の栄光の影の悲劇を題材にしており・・・そういう怨みがましさもそこはかとなく漂ってよろしいですな。
睡眠薬を飲んでタイマーによる電撃で自殺。廃部のきまった水木エレクトロニクス・アーチェリー部の元スター選手・望月直美(田中麗奈)が石上純一コーチ(唐沢)へのビデオレターを残して部室で遺体となって発見される。第一発見者は石上である。
石上には妊娠中の妻・陽子(戸田菜穂)がいるが・・・指導する選手である望月直美ともただならぬ関係があった。
他人の不倫関係を嗅ぎつけるスペックを持つ鈴木和真刑事(西岡徳馬)は直ちに石上を容疑者としてマークする。
やがて・・・自分のストーカーさえも手駒として使う蜘蛛女・直美の恐ろしい計画無理心中の全貌が明らかになる。
コーチ。コーチ。コーチ。コーチ。コーチ。
トップに昇り詰められないスポーツ選手にありがちな思い込みの激しい性格の直美である。それは自分をコントロールできないということなのだ。しかし、集中力は半端ないのである。
死にたい。死にたい、死にたい。死にたい。死にたい。
二人三脚で五輪を目指したコーチに横恋慕、夢やぶれた後はコーチとの甘い生活だけが直美のすべてなのだ。
コーチに発見されることを予測して狂言自殺をはかった直美はすかさずコーチを押し倒すのだった。
好き。好き。好き。好き。好き。
しかし、コーチはあくまで妻を愛する男だった。
殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。
妻への殺気をみなぎらせ、コーチを追い込んでいく直美。
やがて・・・コーチは自殺未遂時のビデオレターを利用した完全犯罪遂行に追い込まれていく。
殺して。殺して。殺して。殺して。殺して。
もちろん・・・コーチは「指のテーピングがないのは・・・おそらく・・・死ぬ前にはずしたのでしょう」とでもなんとでも言い逃れできたわけだが・・・状況証拠で有罪になる場合もあるからな。
何よりも・・・もはや狂気の蜘蛛女の呪いで正常な判断力を失っていたと思われる。
さよならコーチ。さよならコーチ。さよならコーチ。
魔性の女を演じさせると田中麗奈はいい味だすな。やはり一重まぶたの魅力と言える。
とにかく・・・出だし好調である。毎週、このくらいのミステリを味わうことができれば夏ドラマ的には充分だと言えます。
関連するキッドのブログ→犬と私の10の約束
で、『VISION-殺しが見える女-・第1回』(日本テレビ20120705PM1158~)脚本・原案・脚本:飯田譲治、演出・星野和成を見た。「秘密情報員エリカ」で栗山千明、「都市伝説の女」で長澤まさみと美人を美しく演出する演出家である。仏頂面で些少難のある山田優もそれなりに美しく演出しており・・・流石である。
人間は五感というセンサーで現実を認識していると錯覚している生物である。
本当の世界などというものは実在しているかどうかも定かではないのだが・・・少なくとも多くの人間が本物だと信じている世界が実は本当の世界ではないことは明らか・・・そういう立場にたったいつもの飯田譲治の世界が展開し、ファンには待望の一作と言えるだろう。
二流と三流の間で微妙な立場にいるモデル・来栖玲奈(山田優)と・・・謹慎中にも関わらず詐欺グループの一味と接触、情報を買収しようとしていた悪徳刑事・浅野和馬(金子ノブアキ)は奇妙な因縁で出会うのだった。
マネージャーの清末(勝村政信)から夜の接待付きの仕事をふられごねる玲奈。同じ店内に犯罪者の北川(鈴木浩介)と交渉中の浅野刑事が居合わせる。
ところが・・・玲奈を一目見た北川は我を忘れたように「クリスティーナ・・・こんなところにいたのか・・・」とつぶやくのだった。
突然、見知らぬ男に言い寄られ茫然とする玲奈。
この時から・・・玲奈は異次元との境界を彷徨いだすのである。
それは夏ドラマ子役戦線で見かけないと思っていた谷花音が「宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ」の世界に迷い込んでいるようなものなのだ。
そもそも・・・人間が霊的存在を感知できないのは肉体に縛られているからであり、過去に戻れず未来を覗けないのも肉体に縛られているからである。
五感に異常が生じ、狂い出せばたちまち・・・人は見てはいけないものを見て、時間感覚を失ってしまうのだ。
それが嘘か本当かは一度、死んでみればわかります。
やがて・・・玲奈の前に額に血穴を穿たれた北川が出現する。
「俺は寒い場所にいる・・・俺を捜しに来てくれよ・・・クリスティーナ」
しかし、その存在は五感が正常な人間には検出できないことは言うまでもない。
北川を追う浅野刑事は玲奈をマークするうちに・・・「自分でも信じられない話を他人にする」玲奈の苦悩に遭遇するのだった。
やがて・・・北川の霊に導かれた二人は生きている北川に遭遇する。
北川は・・・読んでいた小説の登場人物・クリスティーナを玲奈に見出していたらしい。
「あいたかったよ・・・クリスティーナ」
だが・・・直後に北川は射殺される。その額にはぽっかりと銃創による穴が開いていた。
「私はこの死体に導かれてここにきたの・・・そんなの信じられない・・・一体どうなってるのよ」
「知るかよ・・・」
茫然とする二人。禍々しい夏の夜の夢の開幕である。いい感じだ・・・。脇役のセリフがちょっとくどいことを除いてはだが・・・少し抑えめにした方がいいよなあ。特に崎坂刑事(矢柴俊博)な。脚本家も俳優ももう少し、肩の力を抜いてください。
関連するキッドのブログ→正義の味方
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コメント
やはり飯田譲治力なんでしょうかね~。
「VISION」には、まーったく何の期待もせずに見たおかげもあってか、
思わぬ面白さにビックリしたくらい。
私の大嫌いなこの枠特有のお涙頂戴が無かったことに救いを覚えまする。
来週から突然お涙展開が現れないとも限らないので、ここはとりあえず様子見で…
でも、もしかしたら今期一番になる可能性も出てきましたわ。
深夜枠なのに^^;いいのかこれで…。
「東ミ」は、2時間サスペンスを8話もかけてやった前クールのWと違って、
1時間で良い物ができたなぁ…と。
1話完結は気楽ですね^^先も楽しみです。
投稿: くう | 2012年7月 6日 (金) 11時27分
枠のタイトルにふさわしいミステリアスな展開が
ようやく来ましたな。
ま、ジャンルとしては限りなくスーパーナチュラルホラーですけどねえ。
ミステリは本来は「生」と「死」の間に
横たわる不可思議な境界線を探索するもの。
そういう意味では飯田譲治は日本における
第一人者と言えるでしょう。
世の中がそういうものの存在を
否定する方向にむかっているので
なかなか活躍の場がないのが残念ですな。
今回は思い切りグイグイやってもらいたいと考えますぞ。
「東ミ」は「真夏の夜の夢」としては
申し分ないですな。
アクターもアクトレスもゴージャス。
ストーリーもスクリューが効いている。
後味も爽やかに悪い。
一人の視聴者として堪能したい気分でいっぱいです。
投稿: キッド | 2012年7月 6日 (金) 14時39分