突然、嵐のように、さらば夏の光よ、スプラウト(知念侑李)
「突然、嵐のように」「さらば夏の光よ」そして「ワニと鸚鵡とオットセイ」と言えば、1970年代の山根成之(1936-1991)監督による二十歳そこそこの郷ひろみと一つ年上の秋吉久美子との青春映画である。
実にどうということのない青春映画なのだが・・・そのどうということのなさゆえにはまる人も多いのである。
三篇とも登場人物にそれほどの共通点はないのだが・・・郷ひろみはどちらかといえばダメ人間で・・・「まともな就職」をしていない若者である。
そして、秋吉久美子となんとなく「運命」を感じ合うのだが・・・けしてハッピーには結ばれないのである。
あえて・・・ジャンルをつければ美男美女だけどなんだかんだで失恋映画ということになる。
つまり・・・基本線は「せつない幕切れ」であり、こういうのが心にしみる若者というのはいつの時代でもいるだろう。
キッドはモテモテの失恋知らずの青春時代だったのでまったくピンとこない映画でした。
だが・・・帝国系のエンターティメントとしてはもっと評価されていい作品群ではあると思う。
「スプラウト」(新芽、若枝の意)を見ながらなんとなくそんなことを思い出した。
で、『スプラウト・第1回~第7回』(日本テレビ20120708AM0050~)原作・南波あつこ、脚本・松田裕子、演出・守屋健太郎(他)を見た。ザ・少女マンガである。これといった特徴のないヒロインの池之内実紅(森川葵)が高校一年生のひとときを「運命の人」とのあれやこれやの関係で思い悩むと言う展開である。原作とは登場人物や人間関係に一部アレンジが加えられているが・・・まあ、些事であると言える。
双葉南高校1年生の実紅は入学したてで気分の悪い時に助けてくれた運命の人に仄かな恋心を抱いているのだが・・・それが・・・誰か分からない。
そんなある日、実紅の父親が下宿屋を始めると言いだし、あろうことか、同級生の一人、楢橋草平(知念侑李)が下宿人になってしまう。
一つ屋根の下で暮らすうちになんとなく草平が気になりだした実紅なのである。
もうどうしようもなく恥ずかしい脈絡のなさだが・・・そういうふつうの心理を丁寧に描いていくドラマなのである。
なにしろ、ザ・少女マンガなのだ。
ところが、草平には学校一番の美少女と評判の小澤みゆき(小島藤子)という彼女がいたのだった。
そして・・・実紅は草平にみゆきの「親友」になることを強制されてしまうのである。
こってりとザ・少女マンガなのである。
そうしたもやもやとした日常生活を送るうちに・・・草平の親友で学校一のプレイボーイと噂される片桐隼人(ルイス・ジェシー)が実紅に好意を寄せるようになる。
やがて・・・みゆきにぞっこんの草平に影響されて隼人は真剣に実紅との交際を求めるようになる。
すると実紅のときめきの対象はあっさりと隼人に移ってしまう。
とにかく、ザ・少女マンガなのである。
こうして・・・草平とみゆき、隼人と実紅という二組のカップルが成立するのだ。
ところがそうなると・・・たちまち、草平は実紅のことが気になりだすわけである。
もう、ザ・少女マンガだからな。
そして、みゆきも「本当は隼人のことが好きだった」とか言いだすのだ。
なんとしても、ザ・少女マンガなのである。
まあ・・・この頃の年代は・・・まだ・・・経済的にも肉体的にも精神的にも未熟なのであって・・・だからこそ「燃えるような恋愛」をしやすい体質を獲得しやすいとも言える。
ふりかえれば・・・「なんであんな人をあんなにも好きだったのか・・・不思議な」季節なのである。
ま、それは突然嵐のように終り、そしてさらば夏の光よと言うよりほかなかったりするんだな・・・これが。
とにかく・・・数年後、タクシー・ドライバーとなった草平がホステスとなり、客と同伴出勤する実紅と偶然、再会・・・素知らぬ顔ですれ違うというようなラスト・シーンにはならないと予言しておく・・・当たり前だろうがっ。
とにかく・・・そろそろ「猛暑さん、酷暑さん、炎暑さん、残暑さん」といった「夏の皆さん」にも帰郷してもらいたい今日この頃である。
関連するキッドのブログ→最高の人生の終り方〜エンディングプランナー〜
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コメント
関西では先週から始まりましたので、まだ2話までしか放送されていません。
ざ・少女漫画ですね(笑)
ストーリーはいかんせんですが、映像が非常に美しいので、ちょっとそそられて見続けています。
ロケが多いのも映画っぽくて、低予算?の割にいい感じの仕上がりですよね。
ジャニの若手は全くかっこいいと思わないけど、今の子はああいうのが好きなのか〜(うちの息子のほうが男前かも?)
実は悪趣味と言われようと、ひそかに息子(次男中2)の携帯を盗み読みするのにハマっているんですが、信じられませんがメールのやり取りだけでつきあったり別れたりしてますね〜
実際にデートなんてほぼないのにメールだけで彼氏彼女気分になれるのですから、びっくり。
私からしたら疑似恋愛としか思えないけど、女子からの気まぐれな「やっぱりつきあうのやめよう」メール一つで落ち込む息子をみているとなんだかなあと・・・
だから例え妄想過多でも、実際にふれあった手の感触を大事にする女子ってやっぱり前時代的な少女漫画なんだと思います。
我が息子もちゃんと青春を謳歌して欲しいと、お母さんはスプラウト観ながら何気に思った次第です(笑)
投稿: あまね | 2012年8月23日 (木) 15時50分
ハーメルンノフエノネ~あまね様、いらっしゃいませ~ハルノココロニヒビキアリ
ちょっとむずがゆいようなストーリーですが
叙情的な映像展開がなかなかなのでございますね。
単に美しいだけでなく
登場人物の心情にフィットするような
計算で映像が作られているようです。
基本中の基本ですが
意外とそういう腕前の演出家がいないのですな。
まあ、ある種の才能も必要ですし。
脚本も無理をしないで無難に
しかし堅実に描いており、それも成功していますねえ。
ふふふ・・・親たるもの、子の外面内面を問わず
すべてを把握しておくことは基本ですからな。
キッドは全員の行動を盗聴・盗撮で監視体制下に
おいています。
電子機器の飛躍的進化で監視が
随分と楽になりましたからねえ。
しかし、基本的には放任ですので
どんどんできちゃった結婚していますな。
孫たちも監視しなければならないので
多忙を極めるのでございます。
だれもがそれなりに「かわいい自分」や
「かっこいい自分」を演じられる時代ですが
実際に心身ともに恋愛にひたれるのは
今も昔もほんの一部なのですな。
適齢期がズルズルと下がることによって
ひとときの錯覚のマジックが
効きにくくなっているという傾向はございますけれど。
そういう意味でヴァーチャル・リアリティーは
少女漫画が先行系。
乙女たちはみな「擬似恋愛」を経て
大人になっていくわけですからねえ。
そういう意味で「スプラウト」はなかなかに貴重な一作ではないかと思います。
「手をにぎる」
「キスをする」
その間にある心理的な抵抗というか、重みが
そこはかとなく伝わってきますからな。
早熟な子もそうでない子も
なんとなくそういうものだと
感じるテキストみたいなものですな。
本当にいいものは
いつでも
ちょっと懐かしいものなのでございます。
投稿: キッド | 2012年8月24日 (金) 01時37分