お茶の間を参らせた昔の美少女はダークサイドの女魔王様(杉田かおる)と黒の女教師(小林聡美)
ダークサイドに身を置くことは基本、楽だな。
もちろん、生れついてのダークサイドという場合もある。
しかし、神の僕として日々を過ごした後で、悪魔に魂を売った解放感には独特のものがあります。
まあ、天使サイドとしてみれば、それは本当の解放ではないとか・・・永遠の苦悩に苛まれるとか・・・いろいろ言うわけですが・・・そういう気持ちはあくまで神の側に軸を置いた話。
地獄の業火も・・・悪魔にとっては「燃えるね~」という感じなのでございます。
まあ・・・天使のような子役というものはそもそも小悪魔的なものですからな。
最初から・・・天使属性と悪魔属性を兼ね供えているわけです。
どう考えても・・・ものすごい女優なのですが・・・もはや、けして慈愛に満ちた母親役のオファーは来ない。
いや、きても断ってる可能性すらある。
それでも、時々、時の流れを越えて悪魔は思う。「かわいいよ、杉田かおるかわいいよ」と。
まあ、ストーリーとしては最初から「絶対、あの人が邪悪」という展開はどうかと考えますけどね。
まして、予告編で「オチ」ってどういうことだよっ。
みんな・・・杉田かおるが「愚か者」って言われるところが・・・そんなに見たいのか?
まあ、見たいと思ってる人がいると思っている人は確実にいるのだな。
で、『黒の女教師・第6回』(TBSテレビ20120824~)脚本・大林利江子、演出・石井康晴を見た。夏の子役祭り、クライマックスは杉田かおるの登場である。もちろん・・・子役時代の杉田かおるを知っている人もどんどん少なくなっている今日この頃だろう。「パパと呼ばないで」(日本テレビ1972年)から40年である。チー坊こと橋本千春役を演じた杉田かおるは当時7歳である。時は流れて・・・時は流れて・・・なのである。もちろん、杉田かおるの前にも名子役はいたし、杉田かおるの後にも名子役はいた。しかし・・・これほどまでに「子役」の「人生」をイメージさせる天才子役は空前絶後だと思う。杉田かおるあっての戸川京子であり、中島朋子であり、宮沢りえであり、安達祐実であり、宮﨑あおいであり、成海璃子で志田未来で芦田愛菜なのである。
子役から大人の女優へ・・・ヌードにもなれば濡れ場も演じる。
そして・・・悪い母親の似合う女になっていくのである・・・杉田かおるの場合はな。
なにしろ、「3年B組金八先生」(TBSテレビ1979年)では中学生なのに母親という雪乃役である。
そして・・・『池袋ウエストゲートパーク』(TBSテレビ2000年)では実父に犯された娘・光子(加藤あい)をさりげなく見捨てる母親・和子である。
単なる邪悪ではなく・・・狂気を感じさせる役がフィットするというスターとしての存在感なのである。
それで・・・いいのか・・・とも思うが、是非もないのであった。
さて、もはや、夏休みがどうなったのか定かではない都立国文館高校である。
今回、進路指導でフィーチャーされるのは3年D組の三島恭子(藤原令子)である。所属事務所には広末涼子、山口紗弥加、戸田恵梨香、吉瀬美智子、有村架純と・・・錚々たる顔ぶれが並んでいる。恭子の亡き母親を演じるのも同じ事務所の西山繭子である。基本、曲者美人を集める事務所なのだな。徳永えりとか福田麻由子までいるのである。
そういう意味で・・・今後のしあがってくる可能性があります。
早世した恭子の母親(西山繭子)に代わって親代わりを務めるのが恭子の母親の親友だった音大教授のかなえ (杉田かおる)である。かなえには恭子と同い年の娘・愛(小池里奈)があり、恭子と愛は幼馴染であるとともにかなえから英才教育を施された音楽家の卵でもあった。
しかし、作曲コンクールで常にトップの愛に対し、ずっと2位に甘んじて来た恭子は将来に不安を抱くようになっていた。
そのために・・・音大ではなく、一般の大学を受験することも視野に入れていたのだった。
例によって統計的見地からアドヴァイスする高倉夕子(榮倉奈々)である。
「音大に進学してもプロになれるのはほんのひとにぎり・・・半数は就職もままならず苦労することになる」
理想という名のきれいごとに生きる女・青柳(木村文乃)は「そんな可能性の芽をつむようなアドバァイスはやめてください」とお約束の反発をするのだった。いつもなら・・・青柳の指導失敗コースがあるのだが・・・今回のゲストはそんな無駄は許さないのである。
恭子が常に2位に甘んじていたのには陰湿な仕掛けがあったのである。
早世した恭子の母親の才能に負け、常に二番手だったかなえは・・・恭子の才能をつぶし、飼い殺しにするべく常に画策してきたのだった。作曲コンクールに応募していた愛の作品はすべてかなえの手によるものだった。子供の戦いに親が手を出していたのだった。
素晴らしい才能を持ちながら・・・邪悪なかなえの陰謀により、才能の開花を封じられていた恭子は最後の賭けとして国内最高の作曲コンクールに亡き母親との思い出をつづった「トワイライト・ゾーン」で応募する。
その曲の素晴らしさを知ったかなえは早速、盗作し、恭子の応募したコンクールよりも発表が早く、規模も大きいアジア最高の作曲コンクールに応募するのだった。
そうとは知らずに母の指図通りに「トワイライト・ゾーン」を奏でる愛。それを聴いた恭子の心は乱れる。
「どういうこと・・・それは私の曲・・・」
「何を言ってるの・・・?」
幼い頃から友情を育み、由緒あるコンサート会場で共演することを目指してきた愛と恭子だったが・・・かなえの画策により、恭子の心には愛に対する仄暗い嫉妬の感情が鬱積していた。
「あんたなんか・・・消えてしまえばいい」
「・・・」
幼馴染で親友の恭子から放たれた呪詛の言葉に立ちすくむ愛だった。
それから・・・愛は家出をして消息不明になってしまう。
それを知り、自分の発した言葉に自責の念を感じる恭子。
しかし、夕子は授業を通じて生物学的に正しい認識を語る。
「海洋生物では共食いは一般的なことです。適者生存のための弱肉強食はいたって自然なことなのです」
だが・・・恭子は悪夢にうなされるのである。
なぜなら・・・曲を盗んだのが愛ではなく・・・愛の母親で恭子の師でもあるかなえだと知ってしまったからである。愛に罪はなかったのに・・・無実の罪で友達を断罪してしまったのだ。
それでも恭子はかなえと対峙する。
「母は・・・トワイライトタイム(彼誰時)に包まれた世界でも・・・けして見ることをあきらめてはいけないと言ってました・・・夜の後に必ず朝の景色が現れると・・・そういう思いを込めた・・・私の曲です・・・返してください」
「何を言ってるの・・・凡人にだって一曲くらいは・・・素晴らしい曲ができる・・・でもそれが実力だと思ったら身を滅ぼすの・・・この曲をあなたから奪うのはあなたのためなのよ」
「意味が・・・わからない・・・」
ついに・・・美術準備室に現金(今回は1回分のレッスン料である)を持って駆けこむ恭子だった。
「・・・では課外授業を始めます」
実は・・・すでに愛が駆けこんでいたのだった。愛は母親の恭子に対する仕打ちを知ると同時に・・・それまでなんとか耐えていた母親からの虐待についに我慢できなくなってしまったのだ。
かなえは愛の背中が傷痕でひきつれるほどに鞭打っていたのだった。
アジア・コンクールの授賞式に愛が姿を見せず・・・それどころか受賞を辞退したことを知り、愕然とするかなえ。
そして・・・思い出のコンサートホールに呼び出される。そこは恭子の母が立ち、自分が立てなかった呪うべき屈辱の記憶が残る舞台だった。
そこでピアノを奏でるのは我が子の愛ではなく・・・恭子だった。
「あなた・・・何をしているの・・・愛はどこ・・・」
「あなたの娘はあなたの別れた夫の元ですでに新しい暮らしを始めています」
「何を言ってるの・・・ふざけないで・・・」
「私と私の母の音楽を返してください」
「あなたの音楽・・・そんなものはないわ・・・音楽なんてクソだもの・・・あなたもクソよ・・・みんなクソなのよ・・・あなたのクソな母親は私から何もかも奪って行ったの・・・私はそれを取り戻しただけ・・・クソだもの」
ついに邪悪さを全開にするかなえ。
予告通りに夕子キック炸裂である。
「愚か者・・・夢をかなえたかったら最後まであきらめるなって学校で教わらなかったの?」
「今日はすごくクソきれいごとなのね」
捨てゼリフを残して、虐待の罪で野口巡査(駿河太郎)に逮捕されるかなえだった。
「トワイライトゾーン」は恭子の手に戻り、作曲コンクールの受賞取り消しが取り消されて、音楽家としての第一歩としてパリ留学の権利を得たのだった。
「いい曲だもんね・・・とでも言ってほしかった」と恭子を突き放す画家崩れの美術教師・藤井(小林聡美)だったが・・・その皮肉を笑って受け流す恭子だった。我が道を信じる芸術家の魂が目覚めたらしい。
小林聡美は杉田かおるの一つ年下。「3年B組金八先生」第一シリーズでは同級生である。
いわば・・・二人は子役戦線の同期の桜なのだった。
1982年、杉田かおるが映画「青春の門・自立編」でヌードを披露すると、同年、小林聡美も映画「転校生」でヌードを披露したのだった。
時空を越えた仲良しさんなのである。
そして、灼熱の荒野である芸能界をしたたかに生き残っていく二人は視線を交わしてすれ違って行くのだった。
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