つかのまのたわむれとみんなあきらめて恋の風雅(福田沙紀)
今回・・・出てないだろう・・・いや、前回、前々回とタイトルにしてもよかったから。
悲恋を越えた悲惨の人だからな・・・伝説レベルだけどな。
さて・・・人生50年である。とにかく・・・平家の御曹司は太政大臣にまで登りつめたのである。
この時、六条帝は御年四歳、東宮(皇太子)憲仁親王は御年七歳・・・。親政などおぼつかない。
摂関家は藤原基房が摂政となっているが、摂関家の財産は兄後家の平盛子が継承し、平家一門の管理下にある。
後白河上皇は権力闘争は嫌いではないが・・・実務は大嫌いである。
結局、平家一門の頂点に立つ平清盛は日の本の最高実力者となったのである。
その目指すところは貿易立国である。12世紀の人間としては異常と言っていいだろう。
つまり、偉人である。
その評価が現代日本で異様に低いのは・・・すべて明治維新に遠因があると言えるだろう。
1868年から1945年まで・・・およそ3/4世紀に渡って、異常に偏向した歴史教育が敢行されたわけである。
戦後67年を経て・・・ようやく、織田信長や徳川家康が英雄であることが大衆にも認知されてきたのであるが、平将門、源頼朝、足利尊氏、こういう英雄たちの評価はまだまだ低いのである。
なにしろ、新田義貞だの、楠正成だのという・・・英雄としては小物と言えるものが功臣というだけで祭り上げられた余韻がまだ漂っているのが現代というものなのだ。
偏向教育の恐ろしさの極みと言えるだろう。
日本という国家が未だに存続している重要な貢献者として平清盛は燦然と輝く軌跡を残している。
だが、いかに封印しようとしてもそれが現代に伝承される。
そこに・・・歴史というものの光と影が垣間見えるのだな。
で、『平清盛・第33回』(NHK総合20120826PM8~)脚本・藤本有紀、演出・中島由貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は腐り果てた藤原摂関家の最後の仇花・松殿基房とある時は無賃乗車の代名詞、ある時は平家一の歌詠み人、平忠盛の六男・忠度(ただのり)の二大描き下ろしイラスト展開でございます。いよいよ、後半戦・・・源平の子女が続々成人してまいりますのでどんだけ登場人物多いんだよ・・・でございますが・・・画伯におかれましてはあくまでマイペースでお願いします。
仁安二年(1167年)二月に太政大臣となった平清盛は五月には辞任する。この年、平清盛は数え年で五十歳。当時としてはすでに余生に入ったのである。正室・平時子は42歳。前妻との子である長男・平重盛は30歳となっている。従二位権大納言であり、皇太子補佐官でもあり、国軍司令官の任を清盛から継承し、実質上の後継者だった。平時子の妹で皇太子母となっている平滋子は26歳の女盛りだった。兄の平時忠は37歳。滋子の子を皇太子にしようとした陰謀で追放されたわけだが実際に滋子の子が皇太子になった今、その発言力は馬鹿にできないのである。清盛の弟たちも出世し、経盛は44歳、正四位下若狭守である。教守は40歳、正四位下内蔵頭である。頼盛は35歳、正三位太宰大弐である。忠度は24歳、この時点では無官だがまもなく従四位上伯耆守となる。時子の子である宗盛は21歳で、時子の異母妹、滋子の同母妹である平清子を正室としている。叔母と甥の結婚である。この年の暮れに従三位となり、参議に補任される。正室の嫡男であり、順当な出世だが・・・仄かに波乱の要素を抱えているわけである。この時点で宗盛は滋子の猶子(擬似親子関係)となっている。兄・重盛が後白河上皇に仕え、宗盛が滋子に仕えることで微妙なバランスをとっていることになる。宗盛の弟の知盛は16歳、弱冠ながら従四位下武蔵守である。かくの如く・・・平家は隆盛の時を迎えていた。
後白河上皇の三男、以仁王は知盛より一つ年上である。後白河上皇の従姉妹・藤原成子を母に持っている。成子は後白河上皇との間に二男四女を儲けたが・・・寵愛は薄かったという。後白河上皇にとって刺激が足りなかったのであろう。
幸薄い甥の後ろ盾となったのが後白河上皇の異母妹・八条院だった。しかし・・・母・待賢門院と八条院の母・美福門院の確執を知る後白河上皇にとってはその結びつきは功を奏さなかった。
後白河上皇の心は平滋子にあり・・・その子である皇太子・憲仁親王に向けられていたのだった。
その理由の一つが桓武天皇の血を引く滋子に強く現れた霊力にあったことは言うまでもない。
滋子は日照りの続くこの年の夏・・・雨乞いのために後白河上皇と熊野詣でを行い・・・その舞いによって見事に雨を降らせたのだった。
付き従った人々は滋子の霊力の顕示にひれ伏した。その子である憲仁親王の権威は高まったのである。
その知らせを聴いた清盛は・・・時子に微笑んだ。
「汝(いまし)の妹もたいしたものではないか・・・」
「たまたまかもしれません・・・」
「なんの・・・汝も我とともに熊野の野を駆けまわり・・・源氏物語で霊力を発揮したではないか・・・」
「なつかしゅうございますねえ・・・」
「ふふふ・・・我らは皆、日の御子の子孫だ・・・天の心を知らずして・・・いかがする」
「・・・おたわむれを・・・」
「時を知り・・・天を仰げば・・・何事も叶うものだ・・・」
「なにやら・・・恐ろしゅうございます」
清盛は曇った都の空を眺め・・・気を凝らす。
すると・・・雲はたちまち途切れ・・・強烈な日差しがさしてきた。
「殿・・・せっかくの雨雲を晴らして・・・いかがなさいます・・・」
「これは・・・しもうたわ・・・」
六波羅の屋敷で夫婦は目と目を交わした。
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