ミニスカ黒衣でシャレードがいっぱいのVISION(長澤まさみ)
各地でお盆の送り火が焚かれる日である。
都会では一瞬の静寂があり・・・明日からは夏の終りの日々が始まる。
それにしても・・・このあたりに終戦記念日があるというのは・・・ものすごい天の配剤を感じるわけなのだな。
で・・・不慮の死を遂げた別れたばかりの恋人の葬儀にミニスカートの喪服で現れるヒロイン・・・由緒正しいカレンダーものと言えるだろう。
元カレを演じるのがシークレット・ゲストになっているのだが・・・映画「涙そうそう」ドラマ「天地人」で共演した二人である。
こんな軽いワクではなく・・・二人の堂々としたラブ・ロマンスを見てみたい気がするが・・・そういう時代ではないのかもしれない。
読売新聞・夕刊のテレビ欄を見ると番組表には「謎の血文字Aの秘密!殺された元カレと消えた遺言状の謎」とある。・・・「シャレードがいっぱい」はどこへ行った。
で、『東野圭吾ミステリーズ・第6回・シャレードがいっぱい』(フジテレビ20120816PM10~)脚本・鎌田哲朗(他)、演出・石井克人を見た。映画「スマグラー -おまえの未来を運べ-」の監督による演出である。よくもわるくも映画的な余韻がある作品に仕上がっている。郷愁と呼んでもいい。ただし、そういう意味では1時間は少しものたりないわけである。そもそもハリウッド映画「シャレード」(1963年)と仏・伊合作映画「太陽がいっぱい」(1960年)をもじった原作小説「シャレードがいっぱい」の初出が1990年である。ある意味・・・ノスタルジーの連鎖なのである。
ちなみに「シャレード」と「ジェスチャー」の差別化をしておこう。厳密に言えばジェスチャーとは身ぶり手ぶりである。で、ジェスチャーによって言葉を連想するゲームがシャレードなのである。ここから転じてシャレードは「隠された言葉を当てる」というニュアンスが生じ、それが発展して「謎解き」を指すに至る。
一方で「シャレード」はいわゆるひとつのおしゃれ映画の代名詞である。おしゃれ映画が「シャレード」・・・この言葉のダジャレた感じが素敵なのだな。
だから、「シャレードがいっぱい」となれば「謎解きに満ちたラブコメ」ぐらいの意味が生じる。
しかし・・・「太陽がいっぱい」がさらに加わって・・・「青春のほろにがさ」も生じてくるのである。
だから・・・ラスト・シーンはハッピーエンドというよりも悲哀が漂ってくるわけだ。
よくもわるくもというのはこのあたりで・・・好みが分かれますからな~。
ヒロイン・弥生(長澤まさみ)と別れたばかりの恋人・孝典(妻夫木聡)の微妙な関係をどの程度妄想するかで・・・ラスト・シーンの味わいはかなり変わってくるだろう。
ちなみに原作では・・・弥生はフリーランスの通訳で・・・孝典はただの恋人である。
書道の師範である弥生は一ヶ月前に別れたちょっと生活態度がルーズな男・・・孝典がなかなか引き取りにこない孝典の私物を孝典が暮らすアパートに届けにきた。廊下で書道セットを広げ「馬鹿者」とメモを書くあたり・・・弥生はややエキセントリックな性格であるらしい。
ルーズ(緩)な男とエキセントリック(奮)な女・・・組み合わせとしては悪くないが・・・ルーズさがエキセントリックに気になってくると耐えがたくなる組み合わせでもある。
「あなたのいい加減さが鼻についてくる感じが高まる~」なのである。
まあ・・・金銭的なことか、女性関係か、あるいは両方で孝典は弥生に見放されたのだな。
それから・・・一ヶ月・・・放置しておけばいいのに・・・つい、元カレの部屋にやってくる弥生は・・・孝典を完全に忘れ去ったわけではないのである。
しかし・・・孝典は死体となっていたのだった。
部屋は荒らされており・・・死体の指先には血文字のAが記されている。
第一発見者の弥生に事情聴取する森本警部補(森下能幸)と若宮刑事(森岡龍)のコンビは疑惑の眼差しを向ける。弥生の名字が「青山(AOYAMA)」だからである。
身内のいない孝典の葬儀はひっそりとしたものだった。
そこに孝典の友人を名乗る探偵・尾藤(安藤政信)が現れる。
「孝典は中瀬家の遺産相続にめぐるトラブルにまきこまれたらしい・・・」と弥生に告げる尾藤。
資産家の中瀬公次郎(志賀廣太郎)は弥生の書道教室の生徒だった。
いつの間にか・・・孝典は中瀬家に庭師として入り込んでいたらしい。
「余命いくばくもない公次郎氏の前に愛人の娘・畠山清美(マイコ)が名乗りを上げてから・・・遺産相続をめぐる争いが始った。長女の弘恵(池脇千鶴)と長男の雅之(テイ龍進)が受け取る筈だった遺産について新たな遺言状が書かれたのです」
「それと・・・孝典が殺されたことに何か関係が・・・」
「実は新しい遺言状が紛失したのです。そして孝典は・・・その遺言状を持ち去った疑いがあるのです」
「なんで・・・そんなことを・・・」
「私は・・・それを調べているのです・・・あなたは何かをご存じなのでは・・・」
「さあ・・・」
そういえば・・・と弥生は想起する。「もうすぐ大金が入るかもしれない」・・・そんなことを孝典がほざいていた気がするのだ。おそらく・・・そういうところも弥生が孝典にうんざりしていたポイントなのであろう。
帰宅した弥生を待っていたのは何者かに荒らされた室内だった。
「孝典を殺した犯人は・・・あなたが遺言状を持っているのではと疑っているらしい」
弥生は恐怖を感じた。すると・・・尾藤は・・・。
「あなたは僕が守ります」と宣言するのだった。
やがて・・・少しずつ距離を縮める尾藤と弥生。
手掛かりを探るために中瀬家を訪れる。旧知の長女・弘恵は最初は猫を被っているがたちまち、弥生を超越するエキセントリックさをさらけだす。
「持ってるでしょう。あんた持ってるんでしょう。遺言状よ。遺言状を持ってるんでしょう。出しなさい。今すぐ出しなさい。出せったら出しやがれ」
池脇千鶴ファンおよび一部愛好家興奮の弥生を池に突き飛ばす事件発生である。
さらに・・・長男の雅之は実力行使を仕掛けるのだった。
しかし、腕に自慢の尾藤は弥生のピンチを救う。
やがて・・・尾藤の正体が弁護士の秋山だと知ることになる弥生。
そんなある日、ハイヒールのかかとを折った弥生は・・・尾藤の言葉を思い出す。
「おしゃれは足元からだよねえ・・・」
その言葉とは裏腹に汚れた尾藤の靴についていた装飾用の砂利。それと同じものが・・・中瀬家の庭にあったのだ。
直感によって弥生は・・・都市伝説の女なのか・・・孝典の隠した遺言状を発見するのだった。
「長女の弘恵と長男の雅之に残す財産の全額を隠し子の清美に残す」
そう書かれた遺言書に書道家の弥生は違和感を覚えるのだった。
「全という文字のバランスがおかしいわ・・・」
「どういうこと?」
弥生はAというダイイング・メッセージの意味に思い当たるのだった。
「この字は本当は・・・仝なのよ・・・仝とは同と同じ・・・。つまり、仝額は同額と同じ。それに誰かが・・・一を加えて・・・全・・・全額に書き換えたの・・・」
弥生と弁護士の秋山は・・・一計を案じ・・・おそらく仲間割れで孝典を殺した犯人に罠を仕掛けるのだった。
もちろん・・・犯人は・・・。
すべてが終わった後・・・弥生は秋山の案内で・・・孝典が購入する予定だった海辺のカレーハウスの店舗を訪ねる。
そんなところでは絶対に商売にならない・・・ロケーションである。
「こういうところが・・・本当にダメ人間でしょう」
「・・・でも、そんな彼を嫌いになりきれなかったんじゃないの」
「・・・」
「仇討ちまでしてさ・・・」
「本当に馬鹿者ね・・・」
心に残る元カレの泣き笑いの表情に・・・不意に涙腺が緩む弥生。
エキセントリックな女だからである。
そういう役がそろそろ板についてきましたな。
関連するキッドのブログ→都市伝説の女
で、『VISION-殺しが見える女-・第6回』(日本テレビ20120816PM1158~)脚本・原案・脚本:飯田譲治、演出・星野和成を見た。玲奈(山田優)めぐる事件を心理学的に解明しようとする二人の心理学者。その一人・・・栄修大学名誉教授心理学博士で行動心理学の権威の田口教授(酒井敏也)が「催眠暗示の可能性」を示唆した後で何者かに殺害されてしまう。玲奈の留学の謎を探る謹慎中の刑事・和馬(金子ノブアキ)だったが唯一の手掛かりだった玲奈の怪しい母親(朝加真由美)は失踪してしまうのだった。一方で明光大学心理学研究所准教授の長岡(野間口徹)とともに「殺人を誘発するゲーム」の謎にせまるマネージャーの清末(勝村政信)はいつしか・・・自分の中にクリスティーナの影を感じ始めていた。そんな清末が長岡を襲っているVISIONを感じた玲奈。和馬とともに現場に向かう。しかし、真犯人は長岡だった。長岡の正体を知った清末が闘争する現場に踏み込んだ玲奈と和馬は疑惑の眼差しを清末に注ぐ。
「俺じゃない・・・殺人を誘うゲームを教えたのも・・・田口教授を殺したのも・・・長岡だ」
しかし・・・一瞬の隙をつき、清末とともに長岡は高層階の窓から身を投げる。
その時・・・清末のパソコンからは「クリスティーナのゲーム」のアイコンが消失する。
こうして・・・数多くの謎を残したまま・・・事件は振り出しに戻るのだった。
各ドラマとも五輪後体制に移行中だな。
関連するキッドのブログ→第5話のレビュー
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コメント
キッドさん!おはようございます
先日はドラマレビューに全く関係ないコメントに終始してしまい大変失礼致しましたm(_ _)m
冒頭を見逃してしまい 私が見たのは喪服にしてはスカート短すぎるでしょのシーンからだったんですが このドラマを見ている間中ずっとそんなことばかりに目がいってしまいました
映画 シャレード大好きで懐かしいから500円くらいでDVDを買った記憶が…もちろん太陽がいっぱいのアランドロンも!
何故にここまで脚を見せる?とか明らかに狙ったアングルとか…
長澤まさみちゃんはずっとこの路線になってしまうのかとちょっと複雑な気分で見終わった印象といえば深夜ドラマみたいだったなーと
なんでシャレードがいっぱいっていう題名だったんだろうと不思議に思っていました
キッドさんの説明を聞いてやっと意味がわかりました
そうか そういうことだったんですね
ラストシーンはシークレットの彼に驚きはしたものの 特別なものはなかったんですが(スカートが長くてホッとしたくらい) 弁護士の彼が距離感を保って泣いている彼女を見守っているのにちょっと違和感があったんです
遺言状公開シーンの後 部外者が次々と消えてラストシーンまでは
映画的なちょっと切ない夏の出
投稿: chiru | 2012年8月17日 (金) 08時09分
ふふふ・・・もはや懐かしい春のお色気祭りふたたび・・・でございますね。
基本、ミニスカートで
転倒、落下、尻もちなどの
合わせ技で・・・一部愛好家熱狂のシーンの数々。
昔の映画ではお約束のソフトなセクシーさが満載でした。
映画「シャレード」といえばジパンシーのファッションが・・・ある意味「旬」だったわけですが・・・。
そういう「匂い」を感じさせるコーディネイトでしたな。
書道教室の「固い・・・もっとあっはん」的な
ユーモアを含んだエッチな展開も爽やかでした。
本来、女優「長澤まさみ」はこの路線なのですな。
スターだけどこの路線・・・これが東宝女優の在り方です。
共演陣も豪華で・・・2時間ドラマで見たいスケール。
キッドは今回の作品がシリーズの白眉と考えます。
映画「シャレード」は製作者のうっかりミスで
著作権が失効してしまった世にも珍しい映画。
ものすごい量のソフトが流通しています。
一家に一枚DVDですな。
豪華スター共演で楽しいですよね。
割り切りが早いと言われる女性ですが
どこか・・・「見捨てた男に優しさ」を示してくれるという夢想も
「欲しい」感じがあるもの。
元カレが「死者」になることで「女気」を見せるというのは
一種のお約束ですが・・・
その上でヒロインを魅力的に感じるかどうかは
好みの問題もありますからね。
キッドはすごく正解だったと思います。
関東では深夜で再放送がある予定なので
冒頭部分を確認してみたらいかがでしょう。
夏の出・・・来事なのか
夏の思い・・・出なのか
わかりませんが・・・おっしゃりたいことはわかります。
まさに・・・そういう感じの秀作だったと思うから。
投稿: キッド | 2012年8月17日 (金) 17時08分
キッドさん こんにちは(*^-^)
昨日は拙い+尻切れ(字数オーバーのせい?) というなんとも残念なコメでしたが 私が漠然と感じていたことを文字にしていただいたことでドラマを見た直後よりずっと ミステリーではあるけれど切なくて爽やかな余韻の残る素敵な物語だったなぁと幸せな気分になっています。
冒頭からしっかりと見返してみたいんですが調べ方が悪いのか 再放送がいつなのかわからなくって(゚ー゚;
お手数かけっぱなしで恐縮ですが放送日を教えていただけたら嬉しいです!
投稿: chiru | 2012年8月18日 (土) 15時26分
キッドの知る限り、コメント欄には
字数制限はないはずですが
時々、重たくなったり障害発生したりは
ココログにはよくあることなので
どうかご容赦くださりますように・・・。
とにかく・・・映画でしか見ない俳優や
映画的と言える配役で
いい味だしていましたな。
「リーガルハイ」に通じる完成度でございましたね。
全国的にはどうなのか不明ですが
関東ローカルでは
フジテレビで8/21(火)の深夜・・・
あけて8/22(水)午前1時50分から再放送の予定のようで
ございます。
ただし、悪魔の申すことなので。
どうか、番組表などでご確認くださいますように・・・。
投稿: キッド | 2012年8月18日 (土) 15時40分