だましゑ歌麿IIはさやゑで(水谷豊)・・・私は罪な女(内山理名)
三夜連続テレビ朝日である。
順番前後してるじゃねえか・・・ま、いいか。
多岐川華子の出演していた「だましゑ歌麿」(2009年9月)はレビューしそこねたらしい。
水谷豊と中村橋之助で「相棒」と「新宿かわせみ」をダブルで楽しめるわけである。
もっとも水谷豊は喜多川歌麿なわけで・・・右京さんでない。
ただし、相棒の江戸一番の版元・蔦屋重三郎(岸部一徳)で、元・柳橋の芸者おこう(鈴木杏樹)である。
春朗こと葛飾北斎(原田龍二)だし・・・実に相棒っぽいです。
で、『だましゑ歌麿II』(テレビ朝日20120915PM9~)原作・高橋克彦、脚本・古田求、演出・吉川一義を見た。喜多川歌麿は生年も出生地も謎の男だが・・・本名は信美つまりしのびである。つまり、忍者だったのである。「だましゑ歌麿」ではその出生の秘密にも触れているが・・・実際には公儀隠密で陽忍なのである。だから・・・絵師としては驚くほど身軽で剣の腕が立っても問題ないのだ。・・・そんなに断言されてもな。
続く「さやゑ歌麿」を原作とするのが本作である。さやゑとは鞘絵のことで・・・トリックアートの一種である。
遊園地などにあるマジックミラーをご存じだろうか・・・鏡の凹凸を利用して、実際の姿を変形して映すアレである。
この原理を逆に応用して、肉眼では意味不明の絵が、マジックミラーで変形されることで真の姿を示すという趣向である。
鞘絵の場合は刀の鞘の丸みを利用して鞘に映すと絵が浮かび上がる仕掛けである。
ドラマでは円筒型アナモルフォーズ(歪像画)という技法で表現されている。
吉原の女将・志乃(萬田久子)が歌麿に描かせたあの絵なのである。
さて、この時代劇は「長谷川平蔵(古谷一行)の裏話」でもある。
長谷川平蔵といえば実在の鬼と恐れられた火附盗賊改である。つまり、裏鬼平犯科帳の要素もあるのだな。
今回も鬼平犯科帳では寛政3年(1791年)の頃に捕縛後、獄門にさらされた盗賊・葵小僧の後日談になっている。
実は処刑された葵小僧は替え玉だった展開である。まあ、忍者もののセオリーだな。
基本的に自由を愛する歌麿が善玉、圧政を敷く老中・松平定信が悪玉として描かれるのもこのシリーズの特徴と言えるだろう。
歌麿は豊臣秀吉の絵を描いて罪人となるわけである。関ヶ原の合戦から200年立っているけれど豊臣方は敵というルールである。戦後67年もたっているのに・・・という理屈が軍事独裁政権に対しては何の意味ももたない一つの例証と言えます。
中国のような軍事独裁政権を相手にする時には覚悟が必要なのですな。
ねえ、アグネス?
葵小僧は実在の盗賊で・・・徳川家の家紋である葵の御紋をつけた提灯を掲げて商家に押込強盗を行い、押込先の婦女を必ず強姦するという凶悪な手口をもって江戸中を荒らしまわったと言う。将軍家のご落胤と称したわけだが・・・このドラマでは葵小僧は実際に将軍家のご落胤という設定なのである。
そのために・・・松平定信の腹心・松平主計介(渡辺いっけい)が火附盗賊改に派遣され、葵小僧(堀部圭亮)と仕組んで長谷川平蔵に偽物を捕縛させたという筋書きである。
そんな時代背景の中・・・歌麿は絵師として・・・「婦女人相十品」「婦人相学十躰」などの清新な作風の「美人大首絵」で特に人気を博していた。
モデルとなって歌麿に描かれた女たちの一人、武蔵屋喜太郎(甲本雅裕)の妻で元は女郎であるお妙は・・・描かれる快感と同時に歌麿の死んだ妻・おりよの亡霊に憑依され・・・歌麿に恋焦がれてしまう。
大店のお内義という身分を捨て歌麿を追いかけて大江戸八百八町を彷徨う恋に憑かれた女になりはてたのだ。
そんな折・・・お勝(吉井怜)など歌麿に描かれた女たちが次々と惨殺されるという事件が発生する。
捜査に乗り出した南町奉行所の同心・仙波一之進(中村橋之助)は殺害方法から葵小僧を連想する。死体の身元を割り出すために似顔絵描きとして呼んだ春朗から・・・殺されたのが歌麿のモデルたちだと知った仙波。
やがて・・・葵小僧の残党である定吉(デビット伊東)が殺されたことから・・・新たな容疑者が浮上する。
蝶々の異名をとる売り出し中の役者・蘭陽(染谷将太)である。
実は・・・蘭陽は葵小僧の身代わりになって殺された男の舎弟だったのだ。
そして・・・今や葵小僧への復讐に燃えていたのである。
その闘志を秘めた色気に惚れた歌麿は「あんたを描きたい・・・」と頬を染めるのだった。
実は歌麿狂いのお妙は定吉に命を狙われたところを蘭陽によって救われていた。
お妙は歌麿の心が自分にないと知り・・・自暴自棄になるのだった。
「だったら・・・あたしはどうすればいいんだい」
昔、お妙と同様におりよに憑依された経験を持つ仙波の妻・おこうは「忘れるしかないのよ」と諭すが・・・お妙は耳を貸さないのである。
そして・・・ついには潜伏中の葵小僧の慰み者にまで身を落すのだった。
恋に溺れる馬鹿な女を内山理名が好演します。
一方、手柄を狙う仙波の同僚・高山(梶原善)は葵小僧の一味である源兵衛(本田博太郎)を追い詰めるが返り討ちにあってしまう。
「へ・・・こんなもんかよ・・・」
本田博太郎相変わらずの渋さである。
お妙の身を案じる歌麿は・・・ついにすべての真相を突き止める。
やがて・・・葵小僧を罠にかけた歌麿の大殺戮が始るのだった。
まあ・・・時代劇ファンには堪えられない展開の数々ですな。
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