今週末はお彼岸である。
暑さ寒さも彼岸までですから~、そろそろお願いします。
最近の連続ドラマとしては全12回は長い方である。
淡々とよどみなく展開してフィニッシュ。
申し分のないドラマだったな。
まあ、豊川悦司と芦田愛菜の父娘、それを見送る中村産業の皆さんを見ていると・・・つまり、中谷美紀、蟹江敬三、丘みつ子、三浦翔平、でんでんを見ていると・・・東京下町を舞台にした刑事ドラマができるとつい思ってしまうのだな。豊川悦司が男鰥夫の子持ち刑事・・・。丘みつ子が課長で、蟹江が係長、中谷刑事は豊川刑事となんとなくラブ。ヴェテランと新人のでんでん・翔平コンビ。いいな・・・だらだらとずっとやってもらいたい・・・はぐれ刑事かっ。
序盤は涙で綴られた物語だが・・・本当はどうしようもなく哀しい最終回に涙一切なし。清々しい展開である。
やはり、日曜日の夜はこういうほのぼのした物語がいいのだ。
・・・っていうか、秋ドラマがものすごいことになっているので・・・とにかく・・・のんびりしたいのだった。
で、『ビューティフルレイン・最終回』(フジテレビ20120916PM9~)脚本・羽原大介、演出・水田成英を見た。世界は一人の若年性アルツハイマー病の患者を中心にまわっていく。ほんの小さな世界である。しかし、その世界で輪を作る人々はけしてそれを不幸とは思わない。煩わしいとも思わない。なにしろ・・・他人の世話をやくのが三度の飯より好きな人々なのだ。それを示すのが・・・城都大学医学部付属病院脳神経内科の古賀医師(安田顕)のエピソードである。不治の病の特効薬の開発のために患者を伴って渡米する打診を受けていた古賀は・・・担当する患者・圭介(豊川悦司)に話を持ちかけようとする。しかし、圭介とその擬似家族たちを一目見るなり・・・単身渡米を決意するのである。医療では太刀打ちできない奇跡を見てしまうからだ。ほのぼのに打ち負かされたのである。甘い設定と言うのではない・・・それは本当に単なる心の持ちようで・・・すぐそこにある幸福というものだからだ。
You don't have to worry, worry,
守ってあげたい
あなたを苦しめる全てのことから
・・・いつかすべてを忘れてしまう圭介に美雨(芦田愛菜)は訊ねる。
「父ちゃんの夢って何?」
「なんでそんなこと聞くんだ?」
「いつも、父ちゃんにお世話になってるから・・・美雨も父ちゃんの夢をかなえてあげようと思って・・・」
「・・・急にそんなこと言われてもな・・・」
「じゃあ、考えといて」
「うん」
「今日中だよ」
「今日中?」
「うん」
すぐに忘れてしまう人には酷な課題だが・・・子供というものは残酷で容赦のないものなのだ。
中村産業の経営者夫婦には夫婦喧嘩の種は尽きない。
地元のお祭り「梶原ふれあいフェスティバル」の実行委員長を夫の富美夫(蟹江敬三)が引受けてしまったために、お祭りでバザーを担当する妻の千恵子(丘みつ子)はおかんむりなのであった。
「どうすんの・・・手が足りないわよ」
「そんなこと言ったって、男が一度引受けたんだもの」
「しょうがないわね」
「アカネにも手伝ってもらうし・・・」
「だめよ、アカネにはバザーを手伝ってもらうんだから」
娘のアカネ(中谷美紀)の取り合いなのだった。
「なによ・・・どういうこと」
そこへ、従業員の宗田(でんでん)と若輩者の秋生(三浦翔平)も参加する。
「朝から何をもめてんですか」
「わきあいあいなんですよね~」
「お、難しい言葉を使ったな・・・漢字で書けないくせに」
「そりゃ、関係ないじゃないですか~」
和気藹々である。
ちなみに圭介は毎年、焼きそば屋台の担当であるらしい。
まさか・・・腐ったキャベツで・・・集団食中毒発生か・・・というお茶の間の心配をよそに圭介は秋生に訊ねる。
「お前、夢あるか・・・」
「夢なら今朝も見ましたけど・・・」
「馬鹿・・・」と話に割り込む宗田。「俺の夢は万馬券・・・そしてその金でハワイ旅行だな」
「ハワイ・・・いいっすね~」
「お前、言ったことあるのかよ」
「ないですけど、テレビでみましたから~」
「馬鹿だね」
「で、夢がどうしたんですか・・・」
「いや・・・ちょっとな・・・」
(旅か・・・)と圭介は思う。なにしろ・・・旅では一度失敗している。船着き場まで行ってチケットを忘れたことに気づいて結局、行けなかった大島旅行である。
(あの・・・うめあわせを・・・できるうちにしないといけないな)
その夜、圭介は美雨に告げる。
「父ちゃんの夢は決まった」
「何?」
「美雨と旅行に行く・・・そこで美雨に見せたいものがある」
「旅行・・・」
「父ちゃんの夢をかなえてくれるか?」
「うん・・・見せたいものって・・・何?」
「それは・・・秘密だ」
「えーっ」
圭介と美雨が二人で旅行すると聞いた中村夫妻は心配顔になる。なにしろ・・・旅行失敗の前科があるのである。
「大丈夫かねえ・・・」
「三連休の最後の日は祭りだぞ・・・」
「だから・・・土曜に出発して日曜には帰ってくるつもりです」
「じゃ・・・焼きそばは大丈夫だな・・・なにしろ、圭さんの焼きそばは美味いからな~」
「焼きそばよりも・・・大丈夫なの・・・二人で・・・」
「細かいメモも作りますし・・・旅先からマメに連絡入れますから・・・」
「よし・・・わかった・・・」
しかし・・・千恵子はまだ不安である。
圭介と美雨が去るとアカネがやってくる。
「きっと・・・今のうちに美雨ちゃんと・・・思い出を作りたいんじゃないかな」
「ああ・・・なるほどな」
「でも・・・大丈夫かねえ」
翌日、お祭りの分担で中村産業一同が和気藹々をしているところへ・・・古賀がやってくる。
「焼きそばは圭さん一人じゃ大変だから俺も手伝うよ」
「いやいや、僕一人で射的と綿あめは無理ですよ」
「私が焼きそば手伝うわ」
「そうですよ、射的で宗田さんがでんでん太鼓をたたかないと笑いがとれないじゃないですか」
「どういう意味だ」
「待ってよ・・・アカネはバザーに専念してよ」
「よし、実行委員長の俺が焼きそばをだな」
「いえ、焼きそばは一人で大丈夫ですよ」
「いや、俺が今、話をまとめるから」
「まとまらないじゃないですか」
「なにい?」
「あ、先生」
ようやく、アカネに気がついてもらった古賀だった。
「職場の皆さんと暮らすと聞いて・・・ちょっと心配だったんです」
「・・・」
「いい人たちなんで・・・安心しました」
「・・・」
「実は・・・私の兄も・・・あなたと同じ病気だったんです」
「・・・」
「あなたたちを見ていて・・・私も兄を・・・家族としてもっと支えていたら・・・と後悔するほどでした」
「・・・」
「私・・・新薬開発のために渡米します・・・薬ができたら・・・真っ先に連絡しますから・・・」
「ありがとうございます」
一緒に渡米しようとは切り出せない古賀だった。
木下家のベランダにアカネがいた。どうやら・・・二人はそういう関係になったらしい・・・妄想的にはな。
「こっちからの眺めもいいわね」
「こっちは禁煙だよ」
「私・・・煙草やめたんだ・・・」
「本当?」
「できると・・・いいわね・・・新薬」
「うん・・・だけど・・・俺は今できることを精一杯やっていくしかないから・・・」
そこへ美雨が学校から帰ってくる。
アカネがこちら側にいることのただごとならぬ空気を敏感に感じ取る美雨だったが素知らぬ顔である。
「どうしたの・・・アカネちゃん」
「うん、旅行の荷造り手伝ってあげようかと思って・・・」
うまくごまかしたアカネだった。
「ありがとう」美雨は圭介とアカネの手を引き・・・ごまかされたフリをするのだった。
「じゃ、早く準備しよう・・・早く、早く~」
「はいはい」
土曜日の朝。
「じゃ、行ってきます」
「ああ、心配だな、やっぱり、俺、ついていこうかな」
「およしよ・・・ついていくんならアタシが行くよ」
「・・・楽しい思い出作ってきてね」
新宿までのバスを待つ二人。ふとすれちがう中学生らしいカップルに圭介の心は揺れる。
15才の美雨へ
美雨、誕生日おめでとう。
15才といえば中学3年生・・・
美雨にもそろそろ好きな男の子ができるころですね。
美雨がどんな男の子を好きになるのかすごく気になるけど・・・
実際にその男の子を見たら父ちゃんは嫉妬してしまうかもしれません。
でも誰かを好きになるというのはとても素敵なことです。
恋をするとドキドキしたりワクワクしたり胸が締め付けられそうになったりします。
だけど美雨が好きになった相手が必ず美雨のことを好きになってくれるとは限りません。
時には失恋して傷つき泣きたくなる日もあるでしょう。
だけど美雨には傷つくことを恐れないで・・・
いつも 自分の気持ちに正直に生きていってほしいです。
どんなときも自分に正直に生きていれば・・・
たとえ傷ついてもきっと美雨の将来の役に立つと思うからです。
二人はロマンスカーに乗って箱根湯本に到着した。
猪に用心しながら旅館の送迎バスを待つ二人。
「ねえ 父ちゃん、喉渇いちゃった」
「何か買ってきてやろうか?」
「オレンジジュース!」
「よし。 じゃあ ここで待ってろ」
しかし・・・自販機の前で立ちすくむ圭介。
「どうしたの・・・」
「これ・・・どうするんだっけ・・・」
病気の階段をまた一つ昇った圭介だった。
しかし、美雨は動じない。
「お金、貸して」
「・・・」
「ここにお金を入れて・・・オレンジジュースのボタンを押すの」
「・・・」
「ほらね・・・よいしょ・・・おいしい・・・父ちゃんも飲む?」
「おう・・・ありがとう」
その頃・・・中村産業では夫婦と出戻り娘が寂しい食卓を囲んでいた。
「なんだかねえ・・・」
「前は・・・こうして三人だったじゃないか」
「だけどさ・・・」そこへ・・・圭介から電話が入る。
「無事、旅館に着いたって・・・」安堵する三人だった。
旅館では圭介と美雨が浴衣に着替えてあやとりに興じていた。
「そろそろ・・・寝ないとな」
「ねえ・・・明日、見せてくれるものって何?」
「それは内緒。でも・・・父ちゃんのもうひとつの夢を教えてやろう」
「もうひとつの夢?」
「美雨の花嫁姿を見ること」
「花嫁姿って・・・」
「美雨の結婚式だよ」
「結婚式ってどうするの・・・」
「よし、教えてやる」
結婚式の予行演習を始める二人だった。
「美雨・・・結婚おめでとう」
「ありがとう」
「そういう時は・・・長い間お世話になりましたって言うんだ」
「長い間、お世話になりました・・・」
「やっぱり駄目だ・・・結婚式は中止にしよう」
「え~、なんで~」
「父ちゃんは美雨を一生離さないぞ~」
「え~、結婚式の続きがしたい~」
「い~や、嫁には出さん」
戯れ始める二人。
美雨の悲鳴にかけつける従業員一同だった・・・おいっ。
18歳の美雨へ
誕生日おめでとう。
進路はもう決めましたか?
18歳の美雨がどんな勉強をしているのか・・・
それとももう社会に出て働いているのか・・・
残念だけど今の父ちゃんには分かりません。
だけど、美雨がやってみたいと思ったことは全部やってみたらいいと思います。
相談にも乗ってやれなくて申し訳ないと思うけど・・・
美雨ならきっと自分で自分の道を決め夢を持って生きていってくれると信じてます。
日曜日の朝。二人は芦ノ湖に向かう。
ところが途中でかまいたちが発生し、大切なメモ帳が橋の上から川に落ちてしまうのだった・・・おいおい。
「父ちゃん・・・」
「父ちゃん、どこへ行くって言ってた」
「芦ノ湖・・・そこで美雨に見せたいものがあるって・・・」
「・・・」
「忘れちゃったの・・・」
「うん」
「大丈夫だよ・・・きっと芦ノ湖に行ったら思い出すよ」
美雨に手をとられ・・・圭介は歩き出した。
しばらくすると歩き疲れた美雨を圭介がおんぶする。
その時・・・晴れた空から雨が降ってきた。
圭介は思いだした。
美雨の名前の由来を・・・。
亡き妻と見たお天気雨を・・・。
そして・・・美雨に見せたかった光景を・・・。
「きれいな雨だねえ・・・」
「美雨・・・父ちゃん・・・思い出したよ・・・」
圭介は妻にプロポーズをした場所を美雨に見せたかったのだった。
二人は湖畔にたどり着いた。
「ここで・・・父ちゃんはママちゃんに結婚を申し込んだんだ・・・そして・・・美雨が生まれたんだよ」
「・・・」
「その時、父ちゃんもママちゃんも・・・世界で一番幸せだった」
「・・・」
「だから・・・もしも・・・美雨がいつか・・・悩んで苦しんで泣きたいくらい哀しく成った時は・・・この光景を思い出してほしい・・・」
「・・・」
「父ちゃんとママちゃんが美雨が生まれてすごく幸せだったことを・・・思い出してほしいんだ」
「・・・」
「たとえ・・・父ちゃんが何もかも・・・全部忘れちゃったとしても・・・」
「大丈夫だよ・・・父ちゃん、美雨が全部覚えといてあげるから」
「美雨・・・」
二人はロマンスカーに乗って新宿に帰ってきた。
疲れて眠りこんだ美雨を圭介は何よりも愛しく思った。
そして日曜日。
バザー会場では菜子(吉田里琴)が助っ人に参加して「いらっしゃいませ」で出番を確保である。
幸せな人々の笑顔は絶えないのだった。
20歳の美雨へ
美雨 誕生日おめでとう。
大人になって初めての誕生日父ちゃんからのプレゼントは受け取ってくれましたか?
もしちゃんと受け取ってくれたら・・・
それがおそらく父ちゃんから美雨への最後のプレゼントになると思います。
美雨初めて自転車の乗り方を練習したときのこと覚えてますか?
小学校2年生だった美雨は転んでも転んでも・・・
頑張って立ち上がり練習を続けましたね。
何か困ったことがあったとき。
どうしていいか分からなくなったとき。
下を向いてばかりじゃ何も解決しません。
自転車と同じように前を向いてゆっくり少しずつでいいから・・・
前へ前へです。
あしたが来るのが楽しみだと思えるようなそんな毎日を生きてください。
もしもこの世の中に神様がいるとしたら・・・
父ちゃんはたった一つだけ・・・
美雨を幸せにしてやってくださいとお願いします。
圭介と美雨・・・そして中村一家は・・・記念撮影をした。
掛け声は「だいじょう・・・ぶい」だった。
その後の父娘の消息は誰も知らない・・・とりあえずスペシャルがあるまでは。
時は川
きのうは岸辺
人はみなゴンドラに乗り
いつか離れて想い出に手をふるの
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