死と彼女とぼくと少女と木の下で(三根梓)
さて、夏ドラマもほぼ終了である。
五輪・・・猛暑・・・ヤングなでしこそして日中開戦前夜・・・。
いろいろあったけど・・・楽しかったよね、夏・・・なのである。
そして、やってまいりました季節外れのスーパー・ナチュラル・ホラーのようなもの。
スーパー・ナチュラル・ホラーと言いきれないのはあまりホラーではないからだ。
かといって・・・「ゴーストママ捜査線」のようなコメディーもどきでもない。
どちらかといえば・・・「霊能力者もの」と言えるだろう。
まあ・・・コミック原作なのでそのあたりは深くはつっこまない。
何度も言うが・・・統計的に「幽霊」を見る人は少数派である。
ところが・・・幽霊譚の歴史は古い。見ない人は見ないなりに興味があるわけである。
基本的にキッドは相対的に考えることにしている。
原子は目に見えないが広島を破壊するだけのエネルギーを秘めている実在である。
同様に人間には発見どころか予測も不可能な原子の原子も、原子の原子の原子もあるだろう。
キッドは「原子の原子」を「霊子」と呼んでいる。
人間や宇宙もこの霊子によって構成されているのである。
幽霊もその一形態に過ぎないのだ。
で、『死と彼女とぼく』(テレビ朝日20120921PM1115~)原作・川口まどか、脚本・落合正幸、演出・塚本連平を見た。『ドラゴン桜』の演出家である。なんとなく職人気質を感じるのである。最近では『都市伝説の女』を演出してました。ホラー系では映画『着信アリ2』や『ゴーストシャウト』もあるが・・・特に後者は完全なる失敗作と言えるだろう。亡霊が見えるヒロイン(滝沢沙織)である・・・懲りないのだな。しかし・・・まあ・・・そういう失敗を経て二度目は少しは上手に・・・。
登校しているのかどうかも不明だが・・・女子高校生らしい時野ゆかり(吉岡千波→三根梓)は「死者」を「霊視」する能力を幼少時に得た。重症化した肺炎により生死の境を彷徨ったことが原因らしい。つまり、現実的な生活をするにあたり遮蔽されている霊界との通信機能が解除されてしまったわけである。
「霊能力者」=「精神障害者」という図式である。どちらも同じサイキックなのだな。
しかし、正常人を装える精神異常者はいくらでもいる。
ゆかりの場合は母親(山下容莉枝)が理解かある方だったらしく、家庭内では霊が見えるゆかりを特に異端視していない。
だが、一歩外に出ればゆかりは孤独な存在である。単に霊視能力を隠しているわけではない。
霊視能力を得たと同時にゆかりは霊的誘蛾灯になってしまったらしく、彷徨える悪霊を呼び込む体質なのである。そのために幼馴染(瀧澤采愛)が悪霊に憑依されて苦悶した過去があり、それ以来、友人を作らないで生きている。
だが、それでは寂しすぎると原作者が考えたので同じ霊能力を持ったボーイフレンドの松実優作(市川知宏)が配置されている。二人ともなんちゃって高校生であることは言うまでもない。
優作はテレパシストでもあり、遠くからでもゆかりの「助けを呼ぶ声」が探知できるのである。・・・お菓子を食べてまったりしています。
そして・・・街は幽霊であふれています。
そこには浮遊霊あり、呪縛霊あり、悪霊ありのなかなか、ゴージャスな展開ですな。
そういう無数の霊の中から・・・ゆかりはお気に入りを選別します。
なんだか・・・わけのわからない不気味なものは敬遠して・・・かわいい幽霊をチョイスするのです。
今のお気に入りは・・・古めかしい衣装の女の子(平澤宏々路)です。
名前さえ名乗らない女の子ですが・・・ゆかりは彼女が哀れで愛おしいのです。
まあ・・・少女趣味なのですな。
しかし・・・恐ろしい霊もいます。
「尋ね人」を装って「死」へいざなう「死神」もその一人。
悪霊とは気付かずにうっかり誘いに乗ってしまうゆかりですが・・・危ういところで優作に救われます。
凶器となったのは落下する竹内ナツミ(櫻井淳子)・・・。悪霊はナツミの下敷きにしてゆかりを自分と同じ存在にしようと目論んだのです。
ナツミは即死でした。
幽霊となったナツミは周囲の人々に訴えかける。
「誰か・・・助けて・・・早く・・・救急車を呼んで」
「無駄なのです」
「なんでよ・・・」
「あなたはお亡くなりになったのです」
「うそ・・・」
幽霊のナツミは自分の死体を見下ろして茫然とするのだった。
「なんで・・・落ちたんですか・・・」
「落ちたんじゃない・・・落されたのよ・・・そうだ、私、殺されたんだ」
ナツミはデザイナーで同僚の大沢(袴田吉彦)にデザインを盗まれ、それを告発しようとして大沢にビルの屋上から突き落とされたのである。
安全管理の悪い屋上多すぎである。
怨み多い女のナツミは大沢を呪い殺そうとするが「霊的世界に鈍感」な大沢には通じない。
邪悪な呪いを受けたのは大沢の娘・真由子(恩田乃愛)だった。
父親が跳ね返したナツミの呪詛の念をかぶり、現代医学では解明できない霊的障害を被ってしまうのだった。
一方、霊的に拡散しつつあるナツミはもう一つの「心残り」を想起する。
残されたナツミ一人息子アキト(演じるのは「コドモ警察」のスマートこと秋元黎である)のことである。
これにより、ナツミは復讐者ナツミと子を思う母ナツミに分霊する。
ゆかりは母の念のナツミとスマート君の元へ向かう。
「自殺」と報道されたためにスマート君は級友に「お前の母ちゃん・・・お前を置いて死んじゃった~、お前、おいてけぼり~」と囃したてられていた。
義憤にかられたゆかりは「そんなこと言うと化けてでるわよ」と子供たちを脅すのだった。
スマート君にはいい迷惑である。
「よけいなことを言って波風をたてないでください」
「・・・」
「私は・・・自殺なんか・・・してないのに・・・」
ナツミの霊は落ち込むのだった。
「大沢さんに自首してもらうしかありません」
「そんなこと・・・あの男がするかな」と首をかしげるどこでもボーイフレンドである。
「邪悪な人にも・・・きっと良心があるはず・・・」
二人は大沢と対決する。大沢は実は邪悪な霊を宿していた。
「あなたは・・・このままでは地獄に落ちます・・・」
「君たち・・・気は確かか・・・」
「ナツミさんはあなたのことを恨んでます・・・あなたは平気でも・・・そのとばっちりであなたの娘が苦しんでいる」
「俺が殺人犯になったら・・・娘がどうなると思ってんだ」
「それでも今よりましなのです」
「それより・・・君たち二人にも死んでもらった方が・・・」
「ナツミさんの息子は・・・ナツミさんが自分を置いて死んだと思って苦しんでいます」
「そんなこと言われてもな・・・」
「その苦しみがそのまま・・・あなたの娘さんに・・・」
「うるさい・・・うるさい・・・うるさい」
凶暴化した大沢はゆかりとボーイフレンドを襲う。
しかし・・・その頭に苦悶する娘の真由子のビジョンが浮かび上がる・・・。
子を思う親の気持ちが重なって・・・悪霊は大沢を離脱する。
「俺は・・・とりかえしのつかないことを・・・」
「・・・」
「俺は・・・どうすればいいんだ」
「自首してください・・・」
「そうすれば・・・娘は助かるのか・・・」
「はい」
「ふふふ・・・人を呪い殺すことができる女を殺すなんて・・・失敗したよ・・・」
「・・・」
ナツミは自殺者から殺人事件の被害者になった。
ゆかりはスマート君に逢いに行く。
「ママはあなたを捨てたわけじゃないのよ」
「ママが僕を置き去りにするわけないって・・・僕は信じてたから」
スマート君がそう言った時・・・ナツミは昇天したのだった。
ゆかりのお気に入りの少女はいつの間にか消えていた。
ゆかりは少女を拾った木の下に佇む。そこはかって少女の家のあった場所だった。
今は公園になっているのである。
「私・・・あの子に何もできなかった・・・」
「生者が死者にできることなんて・・・本当は何もないのかもしれないよ」
「そうかもしれない・・・でも・・・なにかしたいと思うのはしかたないじゃない」
「まあ・・・それが・・・君なんだものね」
「・・・」
そして・・・街には今日も死者が彷徨うのである。少なくとも・・・二人の霊視能力者にとっては・・・。
おためし版であるが・・・なかなかイケてましたな。
三根梓はこれがテレビドラマ・デビュー作・・・。特に可もなく不可もなくでございます。
関連するキッドのブログ→サイレントヒル
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