エコエコアザラクとは無縁な再生魔術の女のVISION(山田優)
「浪花少年探偵団」、「東野圭吾ミステリーズ」はともに20世紀の東野圭吾の原作小説の再利用である。
秋ドラマのこの2本は21世紀もすでに12年が過ぎつつある今、ちょっと一昔前の世界観でズレている感じが・・・漂っていた。
つまり・・・なんとなく・・・変なのである。
しかし、まあ、20年前とそれほど変わらない暮らしをしている人は多くいるわけで・・・別に気にならなかったりもするだろう。
だが、気になるに人には本当に「ああ、なんだかなあ」という感慨を抱かせるドラマ化作品に仕上がっていたと思う。
脚本家をはじめとするドラマのスタッフたちは・・・もう少し、頭をひねるべきだったよなあ。
方法は二つある。
一つは・・・過去の話としてノスタルジックに描くこと。これはこれで時代考証が大変だし、過去の街並の再現などそれなりにお金もかかるが・・・それなりにリアリティーが確保されるだろう。
もう一つは完全なる現代への移植である。この場合は、たとえば科学技術の進歩、それにともなう社会文化の変化、そして風俗や時代感覚の変容に対応しなければならない。
たとえば・・・20年前にはそれほど一般的でなかったネット社会がこうなっている以上どうするのか。20年前にはそれほど確実でなかったDNA鑑定を使ったトリックが確実になってしまった現代ではどうするのか。20年前にはなかった北朝鮮による拉致被害が関係していたらどうするのか。20年前にはこんなに険悪ではなかった日中関係についてどうするのか・・・後半、あんまり関係ないぞ・・・といった換骨奪胎的アレンジが必要となる。基本はスタッフの創意工夫で製作費的には安上がりだ。なにしろ、アイディアに金を惜しむ業界である。
だがアレンジャーたちに熱意が不足してそれに失敗すると・・・ゾンビ(生ける屍)のような作品に仕上がるのである。
もちろん、一部愛好家にはそれもまた楽しいことだったりします。
で、『東野圭吾ミステリーズ・最終回・再生魔術の女』(フジテレビ20120920PM10~)脚本・篠崎絵里子、演出・河毛俊作を見た。再生には様々な意味があるが呪術的にはネクロマンシー(死者蘇生)ということになる。本編の主人公の一人、中尾章代(鈴木京香)は不妊治療の専門医で復讐者である。復讐のために手段を選ばないと言う点では「完全なる悪」であり・・・倫理的には非道といえる手段でとある復讐を果たす。
最後がひねってあるので・・・道をはずしていないようにも見えるが・・・乳幼児を復讐の道具に使っていることには変わりがないのだな。
不妊症に悩む千鶴(西田尚美)とその夫根岸峰和(小澤征悦)が『中尾レディースクリニック』のボランティア事業である里親募集に応じ・・・一人の乳幼児が夫妻に渡されるところからドラマはスタートする。
子供を養育できない女子高校生の生んだ子であり・・・根岸夫妻の養子になるという前提でしばらく試験扶養期間に入るのである。
視点は婿養子である峰和に移っていく。社長(竜雷太)の娘を妻にしたことで出世したらしい峰和は非情な性格を漂わせる。
そんな・・・峰和をなぜか誘惑するようなそぶりを見せる章代。
・・・まあ、なにしろ、タイトルからも外れるくらいなので・・・このブログでは章代は対象外女優の演じるヒロインであり、このあたりのニュアンスはよくわかりません。まあ、好みによっては迷惑に感じない方もいるのかもしれませんな。
で、好みだったらしく誘惑に乗る峰和だった。
だが、それには応じない章代は突然・・・七年前の出来事を物語はじめる。
章代にはホステスのアルバイトをしながら画家を目指す妹・神埼弓子(矢田亜希子)がいたのだった。弓子には・・・恋人がいたのだが、その男は社長令嬢との結婚を選択したという。その後・・・妹は殺害される。室内が荒らされていたために警察は当時、犯行を重ねていた窃盗団によるものとして捜査を勧めていたが結局、犯人は未だ特定されていないという。
しかし、章代は犯人は妹の恋人だと断定したのである。
そして・・・その男が峰和だと決めつける。
「なぜ・・・」
「女の直感ね」
「・・・」
「私は妹の膣内から精液を抽出して冷凍保存しておいた・・・」
「え」
「そして・・・私の卵子を使い、体外受精と代理母によって一人の子供を作り上げたの」
「ええ」
「その子供が・・・あなたの養子候補よ・・・」
「えええ」
「やがて・・・子供は私とあなたによく似た子供に育つ・・・奥様はどう思うかしら・・・」
「そんな・・・その子にどんな罪があるんだ」
「それは復讐に狂ったマッドサイエンティストには禁句なのよ」
こうして・・・追い詰められた峰和は自殺である。
しかし・・・実は・・・子供は単に女子高校生が生んだ私生児ですべては「嘘」だったというオチである。
まあ・・・とにかく・・・窃盗団に偽装して殺すなら・・・自分の体液が残っている時に殺さないという「現代」としての感覚がある。原作初出時から七年遡った1970年代後半の鑑定技術と一般常識で成立する「話」なのである。
次に、機会を選んで章代を殺す。
最後に子供を別の子供とすり替える。
峰和なら・・・そうするだろうと思うのだった。
キッドが今回、頭から離れなかったのは再生魔術の女とその妹という設定である。
魔術の女といえば黒井ミサであり・・・その妹といえば・・・「エコエコアザラク」(1997年テレビ東京)の黒井アンリ(今村理恵)なのである。
その妹のために姉のミサ(佐伯日菜子)は壮絶な復讐劇を繰り広げるのだった。
妹のために復讐する姉萌えである。・・・特殊なジャンルだな・・・。
そして・・・姉はともかくとして・・・妹の二人は・・・キッドが顔の区別のつかない1978年生まれの二人の女優が演じている。ちなみに1978年は体外受精が公式に成功した年なのだ。
つまり、同じ男性と女性の精子と卵子を使えばこうなるというミステリーが・・・。
関連するキッドのブログ→先週の東野圭吾ミステリーズ
シナリオに沿ったレビューをお望みの方はこちらへ→mari様の再生魔術の女
で、『VISION-殺しが見える女-・第11回』(日本テレビ)も見た。クリスティーナ・ゲームの黒幕らしい甲斐谷正憲(升毅)と玲奈(山田優)の新しいマネージャー・新津道雄(康喜弼)は繋がっていた。だが、玲奈は新津に誘拐されかかる。謹慎休職中の刑事・浅野和馬(金子ノブアキ)の連絡で脱出した玲奈だったが走行中のトラックのライトを浴びると記憶喪失になって失神してしまう。いろいろあって結局、甲斐谷に拉致されてしまう玲奈。新津は殺され、和馬の手元にはクリスティーナ・ゲームが残される。事情を知らず、玲奈の公開捜査を開始しようとする警察上層部。事情を知る刑事たちはもしも玲奈の顔が大々的に公開されたら・・・数万人のクリスティーナ・ゲーマーが一斉に殺人を始めて収拾がつかなくなると恐怖する。日本語ヴァージョンしかないなら・・・日本語圏を狙ったテロリズムである。甲斐谷の背後にはアンブレラ社が・・・バイオハザードかよっ・・・行方知れずの玲奈を捜すにはクリスティーナゲームによる波動通信しかない・・・思いつめた和馬はついにプレイヤーと化すのだった。呪いだな・・・新しい呪いの話だ。
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