クリスティーナ(山田優)はドリー(クローン羊)のVISIONを見るか?
そもそも、映画「ブレードランナー」(1982年)は映画「卒業」(1967年)の焼き直しである。
ま・・・少なくともキッドはそのように考える。
「卒業」で主人公のベンジャミン(ダスティン・ホフマン)はヒロインのエレーン(キャサリン・ロス)の母親であるミセス・ロビンソン(アン・バンクロフト)の不倫相手であり、肉体交渉を重ねたあげくにエレーンとの恋に落ちる。様々な悪意に満ちた経過があって二人は引き離されるがエレーンの結婚式に乗り込んだベンジャミンは花嫁を強奪して青春の旅立ちをするのである。
「ブレードランナー」の主人公・デッカード(ハリソン・フォード)はレプリカント(人間そっくりなロボット)犯罪専門の刑事としてバッティ(ルトガー・ハウアー)ら反逆レプリカントと対決し、これを破壊する・・・しかし、愛してしまったレプリカントのレイチェル(ショーン・ヤング)を手にかけることができずに駆け落ちするのである。
基本は「ロミオとジュリエット/シェイクスピア」の悲劇を否定したハッピーエンド版である。
敵対する組織に属する二人が社会に背を向けることで結ばれるわけだ・・・。
「ブレードランナー」の原作である「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?/フィリップ・K・ディック」・・・原作者その人は「俺の書いた話と違う」とつぶやいたわけだが・・・ここは原作をもじることにした。
つまり「VISION-殺しが見える女-」は「ロミオとジュリエット」→「卒業」→「ブレードランナー」というラインに乗っているのである。
疑問に感じる人も多いだろうが・・・パクリの本質とはそういうものなのである。
経団連の会長が「領土問題などないでは儲からない」と発言して首相を非難することのできる国家は麗しい。しかし、こと「戦略的ゲーム」的に考えれば馬鹿丸出しの失言であることは間違いないだろう。
しかし・・・ある意味では経団連会長も日本人でありながら中国経済と駆け落ちしたのだと考えればラインに乗っているのである。
ちなみにこれはあくまでたとえ話なので・・・政治的意図はまったくないことをお断りしておく。
で、『VISION-殺しが見える女-・最終回』(日本テレビ20120928AM0018~)原案・脚本・飯田譲治、演出・星野和成を見た。1996年にはヒツジの乳腺細胞核の核移植によるクローン羊・ドリーが誕生している。1997年、ホノルル法(体細胞を核を除去した卵子に直接注入することにより、細胞融合を行わずクローン個体を作製する技術的手法)を用いた初めてのクローン・マウス作成。2001年、クローン猫作成。2004年、クローン猫リトルニッキーを商業用ペットとして作成。2005年、倫理的に問題のあった韓国の研究者がクローン犬を作成。そして・・・世界には倫理に影響されない闇の社会がある。そこでは当然、クローン人間は作成されている。構造的に短命だったり、基本的人権に問題があったり・・・などということは闇の社会では問題にならないのである。もちろん、クローン人間は奴隷あるいは家畜的に使用されている・・・少なくとも一部愛好家の妄想的には。
甲斐谷正憲(升毅)によって拉致されてしまった玲奈(山田優)。
城南警察署の崎阪警部補(矢柴俊博)たち一部の捜査チームは「クリスティーナ連続殺人事件」の真相に迫る。その結果、「クリスティーナ・ゲーム」のプレイヤーが玲奈の実在を知ると殺人衝動が抑圧できなくなる確率が高まることが判明する。しかし、そうした推測を認めない警察上層部は行方不明の玲奈の公開捜査を決定する。もしも、公開捜査が開始されれば「クリスティーナゲーム」を配布された二千人のゲーマーが一斉に殺人を開始する恐れがあるのである。
それを阻止するためには玲奈を確保するしかないと思いつめた謹慎休職中の刑事・浅野和馬(金子ノブアキ)はついに禁断の扉を開く。自らが「クリスティーナ・ゲーム」のプレイヤーとなるのである。
生れついての霊能力者である玲奈は闇の科学者によって霊的波動を増幅するナノマシーンを脳内に埋め込まれているため・・・「クリスティーナ・ゲーム」のプレイヤーとは霊的波動による超時空相互通信が可能となるのだった。
公開捜査開始のタイムリミットが迫る中・・・警察官殺しのプレイヤー浜倉(森山栄治)はさらに和馬の警察学校時代の同期生である赤井刑事(五十嵐大輔)を殺害する。
それを知った和馬は殺人のターゲットとして浜倉を選び出すのだった。
和馬の意図を知った崎阪や同僚の秋山(吉家章人)、玉田(安倍康律)の制止を振り切り、和馬はゲーマーだけが知りえる情報で浜倉を探知するのだった。
甲斐谷との相互通信により、「和馬」というキーワードを得た玲奈は奇跡的に記憶を回復する。
「驚いたな・・・愛という奴の・・・副作用は・・・やはり研究価値がある・・・」
やがて・・・クリスティーナ・ネットワークに侵入した玲奈は自分そっくりの女・クリスティーナと逢うのだった。
「あなたは・・・」
「私は来栖玲奈・・・あなたは私ではない」
「どういうことなの・・・」
「・・・」
「問いかけても無駄だ・・・」と甲斐谷が言う。
「彼女はもはや・・・情報に過ぎない・・・」
「・・・」
「本当の来栖玲奈は三年前に死亡した・・・私のコピー元である警視庁科学捜査研究所の主任研究員である甲斐谷正憲が死亡したようにだ・・・君も私も闇の組織によって作られたクローン人間なのだよ」
「・・・そんな・・・」
「そして我々は実験動物のように改造され・・・殺人衝動を制御するためのデータ収集の道具となったのだ・・・世界には人間を単なる家畜としか考えない人間たちがいるのさ」
「私が・・・来栖玲奈のクローン・・・」
「知っているか・・・同じクローン猫でも性格は個体によって変わるのだ・・・邪悪な来栖玲奈のクローンであるクリスティーナ・・・君が清純な性格を獲得したようにだ・・・」
「私が・・・クリスティーナ」
「我々、クローンはテロメアの長さが短いために寿命が短いなどの欠陥を持っている・・・そういうものを作り出すような・・・世界の裏に潜むおそろしいものには敵対など不可能なのだよ」
「・・・」
「もうまもなく・・・実験のための最終段階だ・・・それが終われば・・・」
「和馬がきっと助けに来てくれるわ・・・」
「彼はすでにゲームに参加した一人の実験材料にすぎない・・・」
「そんなことは私がさせない・・・」
その頃、和馬は警官殺しの浜倉との格闘を制し、拳銃の狙いを定めていた。
夢から醒めたように命乞いをする浜倉。
「やめてくれ・・・俺が悪いんじゃない・・・ゲームだ・・・ゲームのせいなんだ・・・」
【やめて】【【和馬】】【【【そんなことはやめて】】】
発砲する和馬。しかし、弾丸は浜倉からそれていた。
「ゲームのせいだと・・・すべての責任は自分にあるんだ・・・たとえ・・・ゲームがお前に人殺しをさせたとしても・・・実行したのはお前だし、そもそもゲームを始めたのはお前だ・・・この世から戦争がなくならないのもみんなお前の責任なんだよ・・・」
「そ、そんなことまで・・・」
「それが実存主義ってことだ」
浜倉の身柄を拘束した和馬はクリスティーナと一体化し、甲斐谷に挑戦状をたたきつける。
甲斐谷は安全を期すために公開捜査の開始を早めるように組織の触手である警察幹部に連絡する。
刑事たちとともに玲奈の救出に成功する和馬。
「もう・・・公開捜査が始まるぞ・・・」
「大丈夫・・・最後の手段があります」
「なんだよ・・・」
「現場の刑事が口裏を合わせれば死体なんてすぐに増やせるじゃないですか・・・」
「・・・」
「どうします・・・二千人の殺人鬼を解放するか・・・ちょっとした偽証をするか・・・」
「・・・」
こうして・・・来栖玲奈の死亡が報じられた。
栗栖玲奈は実在しなくなったのである。
甲斐谷は意表を突かれ歯ぎしりをする。しかし・・・遅かれ早かれ実験は再開されるだろう。すべては時間の問題なのである。
こうして・・・和馬は法的には存在しないクリスティーナを抱きしめる。
「いいの・・・私はクローン人間、いつ壊れてしまうかもわからないのに・・・」
「愛なんて・・・みんなそうじゃないか・・・」
「私たち・・・どうなるのかしら・・・」
「少なくとも・・・しばらくは・・・幸せになるんじゃないかな」
「きっと・・・そうかもね」
二人を乗せた幻のバスが走り出す。
二人にとって無意味となった世界を置き去りにして。
二人は見つめ合い微笑む。
闇に覆われた世界に一筋の光が射すのだった。
その光の源は求めあう男と女の波動の底力である。
国連軍に素手で立ち向かうような二人の戦いはこれからなのだ。
しかし、予算の関係で続きは描かれない方にカシオミニをかけてもいい。
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