二夜連続ヒロイン二階堂(真木よう子)VS赤の他人に優しい人の目覚め(宮﨑あおい)
今回は「ひまわり、遅咲きだっていいじゃないか」(生田斗真)VS「娘よ、もっと高く跳べ」(阿部寛)でもよかったけどな。
いや、「出番ありませんでした」(庵原涼香)VS「盗んだクーナを抱きしめて」(蒔田彩珠)でもよかったぞ。
それなら「意外と出番が多かった」(木村文乃)VS「私もそこそこありました」(菅野莉央)でもいいじゃないか。
だったら「私は本当は独身なのにっ」(国仲涼子)VS「俺がクーナかっ」(阿部サダヲ)でも・・・おいっ。
まあ・・・それだけ火曜日は楽しいのである。
いくらでも妄想が膨らむのである。
なにしろ、「遅ひま」は第二回で柄本佑の主役回。
「ゴーマ」は過疎の村でハロイン風なのである。
もう、やりたい放題ではないか。
水、木、金、土、日、月ときて火のダブルヘッダー・・・。
さすがに・・・身がもちません。
で、『遅咲きのひまわり〜ボクの人生、リニューアル〜・第2回』(フジテレビ20121030PM9~)脚本・橋部敦子、演出・石川淳一を見た。この日は満月である。月は満ちて欠けてまた満ちる。人生はこのくりかえしを千二百回も体験すれば終了する。ああ、もう何度満月を見ただろう。満月もまた地獄への道標なのである。二百回ほどの満月体験者は青春の光と影を見ているし、三百回になると挫折というものの味を知っているのが普通である。もちろん・・・何事にも例外はあるのだった。
実在の四万十市は人口3万5千人ほどの自治体である。隣接する自治体には人口1万5千人ほどの土佐清水市や人口8万人の宇和島市(愛媛県)がある。ちなみに宇和島市は面積469.58km²で四万十市は面積632.42km²である。さらに東京都荒川区は人口20万5千人で面積は10.20km²なのである。人口密度で言えば荒川区は1km²あたり2万人であり、四万十市は56人だ。だからなんだということなのだが・・・荒川区はちょっと息苦しくて・・・四万十市はちょっと寂しい気がするのだ。
ちなみに高知県の県庁所在地・高知市の人口密度は1km²あたり1110人である。四万十市と比べたら大都会と言えるのだ。
四万十市のターミナル駅は中村駅である。高知市の高知駅までは特急電車で二時間ほどかかる。
主人公はそういう四万十市の片隅で生きています。
山沿いの土地の農民として細々と生きている老人たちの一人、大河内欣治(ミッキー・カーチス)が足を負傷してしまい、稲刈りができなくなってしまう。四万十市役所臨時職員の小平丈太郎(生田斗真)は代役として慣れない稲刈りにチャレンジすることになる。
同時にリハビリテーションのために欣治を四万十中央市民病院に通院させるのである。
そこで・・・丈太郎は同い年の青年でリハビリアシスタントの松本弘樹(柄本佑)と出会う。
欣治は「4番でエースのまつもとひろきくんか・・・」と一目で認識し握手を求める。
その手を松本弘樹はとることができない。
かって・・・無名の進学校だった県立四万十南高校を県大会の決勝まで導いた男は・・・大学進学後に野球人として挫折し、それ以来、十年・・・鬱屈した日々を送っていた。
丈太郎は知らないが医師の二階堂かほり(真木よう子)は弘樹の同級生で元恋人である。
世話役の藤井(桐谷健太)が「少年野球チーム」のコーチを求めていたので丈太郎は弘樹を勧誘するがあっさりと拒絶されるのだった。
一方、二階堂かほりは二つ年上の看護師・森下彩花(香椎由宇)が年下の男と同棲していることを知る。しかし、その男が弘樹だとは夢にも思わない。
そんなある日、通勤のために使っている森下のバイクがパンクし、たまたま通りかかった丈太郎は森下を自宅まで送り、デートに誘うのだった。
その姿を二階堂は目撃する。
丈太郎が森下をデートに誘ったのは森下が高知市出身者だと知ったからである。
地域おこし課課長の日下哲也(松重豊)の哀しい話。
「私は岡山出身なのです。高知市にある大学で四万十市出身の恋人ができました。四万十市に戻った恋人のために・・・四万十市役所に就職したのです。しかし、恋人とは別れ、それ以来独身です。四万十市の女に手を出す時は注意が必要です」
・・・を聞いていたからだ。高知市出身の森下なら大丈夫と判断したのである。
何が大丈夫なのか分からないが・・・丈太郎には四万十市に骨を埋める気持ちは毛頭ないのは明らかだった。
ウキウキしている丈太郎に老婆心から注意を促す二階堂。
「年上の美人ナースにだまされてもしらないわよ」
「なんで知ってるんだよ」
「・・・」
「まさか・・・あんた・・・俺の事を好きなのか」
「馬鹿か、お前」
ともかく・・・寂しい町の話なのである。この狭い人間関係がすごくしっくりきます。
世話役の藤井もかっての同級生で二階堂の姉でもある人妻で芽衣(庵原涼香)・結衣(高嶋琴羽)姉妹の母である島田さより(国仲涼子)にひそかに横恋慕していたりするのだ。
今年の稲刈りは丈太郎がピンチヒッターを勤めたができれば欣治にリハビリしてもらい仕事に復帰してもらいたいのだが、欣治は気落ちしたのかリハビリを受けようとしないのである。
そんな、ある日、丈太郎は老人たちから「遅咲きのひまわり」の話を聞かされる。
季節外れのひまわりが時々咲くというのである。
「遅咲き」ということが丈太郎の心にフィットするのだった。
せっかく、ナース森下とのデートにこぎつけた丈太郎だったが、少年野球チームの臨時コーチを依頼されてしまう。
すると森下は「じゃあ、私もつきあう」と告げるのだった。
丈太郎は有頂天になりいろいろと妄想が膨らむのだった。
そんな丈太郎を見かねて二階堂は森下の真意を探る。
すると森下は「良い身体している男と付き合うのが好きなのだ」と率直に応えるのだった。
一方で森下は丈太郎に頼まれ弘樹にコーチの件を打診する。
そして・・・漸く・・・かっての恋人が鬱屈していることを知るのである。
「久しぶりにあって・・・どう思った・・・」
「・・・」
「ガッカリしただろう」
「そんなことは・・・思わないが」
二階堂は丈太郎に「彼は・・・今の自分に納得していないのかもしれない」と告げるしかないのだった。
挫折知らずの丈太郎は・・・その前の栄光の高揚も知らないのだが・・・ピンと来ないのだった。
とある理由から丈太郎に好意をよせる年下のお嬢様・春菜(木村文乃)もかけつけて、盛り上がる日曜日の少年野球の練習。
そこへ通りかかる弘樹だった。
丈太郎は勝負を挑んで弘樹にコーチを引き受けさせようとするが弘樹は頑なに拒むのである。
納得のいかない丈太郎は欣治を通じてある夏の日の四万十の伝説を知る。
十年前、愛妻に先立たれ失意の日々を送っていた欣治は県大会の決勝をひとりで投げ抜く四万十のヒーロー・弘樹の雄姿をテレビ中継で見て・・・胸を熱くしたのだった。
「四番・・・ピッチャー・・・まつもとひろきくん・・・」
弘樹は欣治の心の英雄だったのだ。
丈太郎はもう一度弘樹を訪ね事情を話す。
「この間はごめん・・・輝かしい過去があるあんたが・・・うらやましかっただけなんだ」
「・・・」
「俺はまだ・・・そういうの知らないから」
「え・・・まだ・・・って・・・あんたこの年でこれから輝けると思ってんの」
「・・・思ってるよ」
無言で対峙する二人だった。
しかし・・・弘樹は欣治を訪ね・・・その手をとるのだった。
「一緒にリハビリがんばりましょう・・・」
その日・・・丈太郎はついに「遅咲きのひまわり」を発見する。
なんだかうれしくて胸が熱くなる丈太郎なのである。
そんな丈太郎を・・・呆れ顔で見つめる弘樹だった。
けれど丈太郎の熱い胸の内とは裏腹に今日も四万十市のシャッター商店街では新たにシャッターが降りるのだ。
遅く咲いたからって・・・なんかいいことあるのかよ・・・と言わんばかりに。
もう、いろいろと沁みるよね。
で、『ゴーイング マイ ホーム・第3回』(フジテレビ20121030PM10~)脚本・演出・是枝裕和を見た。旅に出た家族である。しかし、父と娘は二人旅、母は一人旅である。父の旅先には謎の女・下島菜穂(宮﨑あおい)がいて、父である坪井良多(阿部寛)の心は揺れる。しかも、母である坪井沙江(山口智子)は良多のかっての同僚で映画監督の山中健太郎(宅間孝行)と仕事とはいえ寝食を共にしているのである。
山中はこれみよがしに良多の無能をこきおろしつつ沙江を口説く気満々なのであった。
山中は自分が本物で・・・良多は偽物と言い切る。
しかし・・・沙江にとってはどちらも偽物に過ぎないらしい。
もちろん・・・これは比喩であるが・・・紗江は空虚に蝕まれている女なのである。
良多と沙江の娘である小学4年生の坪井萌江(蒔田彩珠)は夫婦の危機に焦燥感を募らせていたのだった。
しかし、子供であるからいざとなったら無力であると自覚している萌江は祖父の話してくれた伝説の小人クーナに逃避せざるを得ないのだった。
萌江にとって「母親のお弁当をクラスメートに販売して得た一週間の謹慎」は「ミスター・グットバーを捜して」彷徨う男性遍歴の始りだったのだ。
一方、娘と妻の電話連絡から・・・妻の浮気の兆候を探ろうとしつつ、なんとなく謎の女に心ひかれる良多。
しかし、森でクーナの赤い三角帽を発見したことにより、その精神は崩壊し始めるのだった。
やがて・・・良多の夢には長野のタクシードライバー・徳永太郎(阿部サダヲ)とそっくりのクーナが出現するのである・・・夢かよっ。
良多の意識不明の父親・栄輔(夏八木勲)の幼馴染で謎の女の父親を名乗る歯医者・鳥居治(西田敏行)に歯の治療を受けた後、良多は父親のカバンにあった鍵でクーナ事務局の引き出しを開ける。そこにはクーナに関する覚書ノートが隠されていたのだった。
良多はノートを手に長野の森に足を踏み入れるのだ。暇だからである。
すると・・・そこに菜穂がやってくる。
二人は社耶町役場住民生活課職員として菜穂が仕事を世話したチェン(テイ龍進)の働く中華風料理の店で食事を共にする。
そこにやってきたのは顔なじみの地元の土建屋の親父たちだった。
ダム建設をめぐり彼らとは確執があるらしい良多の父・栄輔なのである。
そして・・・親父たちは突然、新たな情報を良多に与えるのだった。
菜穂の母親である「くみ」はかってこの村のマドンナ的存在で英輔に捨てられて歯医者の鳥居と結婚したらしい。そんな男だからダム建設に反対したのも何か裏があると憶測するのである。
「いやな話を聞かせてもうしわけありません」と侘びる菜穂。
「いや・・・金と女に汚い男でしたから・・・言われても当然ですよ」
「私にはとてもいい人に思えましたけれど・・・」
「外面がいいだけなんだ」
「・・・」
「赤の他人には優しいふりが出来る男なんです・・・」
「そうですか・・・赤の他人には・・・」
良多のバランス感覚が発動してなんとなく気が咎めるのだった。
「あの・・・遠慮しないで見舞いには来てください・・・もっとも父親はまだ眠ったままですが」
良多の中では再び疑惑が頭をもたげていた。
やはり・・・菜穂は父親の隠し子で不義密通の果ての異母妹なのではないかという疑惑。
それともかっての恋人である母親「くみ」の面影を菜穂に見た父親は菜穂を愛人にしたのではないかという疑惑。
さらには自分の娘と知りつつ愛人にしたのではないかという疑惑まで巻き起こる。
そこには当然、異母妹と知りつつ良多が菜穂と魔性の愛に溺れる妄想も含まれているのだった。
一方、父親と同様に歯医者を訪ねた萌江はクーナ事務局から木彫りのクーナを盗み出すのである。
クーナ事務局の公式見解ではクーナもフロドもノームの一種と語る菜穂だった。ノームとはヨーロッパ起源の大地の精霊である。ものすごく洋風なのだった。
しかし、ノームもアイヌの小人伝説にあるコロポックルもその姿は相似していて・・・基本的には長野にノームのクーナが在住していても違和感はないのだった。
コロポックル(蕗の葉の下の人)は先住民であるアイヌの人々よりもさらに古い先住民である。
つまり、アイヌ(人間)とカムイ(神)をつなぐ失われた環がコロポックルなのだ。
考古学的に実在が証明されれば世紀の大発見になるのだろう。
しかし、彼らは遺骨を残さない存在なのかもしれず・・・あるいは不死なのかもしれない・・・未だに存在を示す決定的な証拠は得られていないのだった。
ましてや、良多が偶然、クーナの赤い三角帽を入手する可能性は低いわけだが・・・神秘というものはどこでどう啓示されるかわかったものではないのだな。
その頃、仕事で使う小振りの重箱を求める小旅行に出た沙江とアシスタントのじゅんじゅんこと潤(菅野莉央)は旧家で美しい重箱を入手する。
母から娘(中村ゆり)に伝えられたとう重箱の由来に感動する潤に沙江は「プロはあくまで見た目」を重視することが肝心だと告げる。
潤は母親に教えられたというもののたま(物質に宿る神性)に触れつつ、肝心なのに心がない沙江の空虚を皮肉る。
しかし、「自分は母親から何ももらわなかった」と感じる沙江には通じないのだった。
沙江の心は母を得られなかった不幸な生い立ちに基づく空虚に蝕まれているのである。
その頃、沙江が幽かな絆を感じ、自分の支配下にあると信じている夫と娘・・・良多と萌江は菜穂とその息子・大地(大西利空)にすっかり心を奪われていた。
無心になって子供たちと遊ぶ良多は転んでひざをすりむき・・・母親として見守る菜穂に手当てをされて空虚な妻に傷心した心が癒されるのを感じる。
沙江の誰も信じることができない空虚な心から夫である良多と娘である萌江の二人は解放されようとしていた。
魔術的な気配のたちこめるハロイン風の夜。
魔幼女と化した宮内姉妹(石井杏子・梨子)や越野きらり(浜尚美)はクーナの使徒として巡礼の途についている。
良多は悪しき妻の匂いの残るズボンを洗われて、頭に蝙蝠を記した黒衣を纏う。
闇に燃える炎。
もはや、良多は身も心も菜穂の虜になりつつあるのである。
ところで、魔界調べによるとハロウィンのコスプレ人気度は・・・。
第一位 魔女
第二位 悪魔
第三位 かぼちゃの精
・・・である。またもやベスト3を逃した魔王様の怒りが恐ろしい今日この頃である。
息子の危機、あるいは愛人を息子に奪われる危機を察したのか。
魔女である正妻の敏子(吉行和子)の見守る中・・・栄輔は長き夢魔の呪縛から解き放たれるのだった。
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