秘密警察長官始めました~(森田剛)
おい、ここで「私と彼とおしゃべりクルマ」(AMAMIYA)をひきずるのかよっ。
・・・っていうか、「彼」がタイトルを飾る日が来ようとは・・・まあ、重要人物ですがね。
清盛の妻の弟で、後白河法皇の妻の兄・・・まさに史上最強の姉と妹を持つ男である。
ある意味、凄い星の下に生れている。
それだけに・・・「実力はない」と評価されがちの男だと思われる。
しかし・・・これだけ系累に恵まれながら結構、浮き沈みの激しい男なのである。
そして・・・なんと平家没落後も没落しなかった男なのである。
なかなかのやり手だったと想像できる。
仁を重んじ、義に殉ずる者を愛する人々からはとんでもない男だが・・・悪魔としてはかなり高く評価されるべき人間だと考えます。
で、『平清盛・第38回』(NHK総合20120930PM8~)脚本・藤本有紀、演出・渡辺一貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は、万歳、万歳、万歳三唱、ついにキターッ、熱海の捜査官から待ちかねた高倉天皇中宮にして安徳天皇の国母となる建礼門院・平徳子のトレビアンな描き下ろしイラスト大公開そして、俺、やっぱり悪い奴な平関白時忠の描き下ろしイラスト大公開でもう、乾坤一擲、血圧上昇的歓喜でお得中のお得でございます。なんて素敵な叔父と姪なのでございましょう。ちりとてちん的には妄想盛子(貫地谷しほり)が実際にシークレットキャスティングされてもいいのに・・・と考えるのはキッドだけでしょうかっ。
嘉応三年(1171年)四月に承安と改元された元年の暮れ、平清盛と平時子の息女・徳子は・・・後白河法皇と建春門院平滋子の子である高倉天皇の女御となり、翌承安二年(1172年)二月に中宮となった。これによって平清盛は後白河法皇と義理の兄弟であると同時に高倉天皇夫妻の父親同士となったのである。清盛の血縁工作はよどみなく進展して行く。後白河法皇を中心に考えれば実の同母姉の上西門院がおり、妻・平滋子の姉、平時子の夫である平清盛という義理の兄がいる。その清盛には異母弟が多数おり、また義理の弟の平時忠がいる。兄弟姉妹だらけである。後白河法皇と上西門院の母は待賢門院である。それに対して異母妹の八条院は美福門院を母に持つ。美福門院存命中は父の鳥羽院にこよなく愛された八条院である。待賢門院の子である後白河法皇は不遇の時を過ごしたこともあった。そういう経緯が・・・後白河法皇と八条院という異母兄妹に幽かなわだかまりを作っている。母・美福門院の財を受け継いだ八条院は豊かな財力を持っている。後白河法皇が寵愛した藤原成子の御子である以仁王を八条院が猶子としたのは一種の政治的配慮によるものだった。つまり、待賢門院系と美福門院系の融合である。しかし、平家の勃興により、それは形骸と化していた。美福門院系の政治的参入の余白はなかったのである。八条院に愛されるほど才能に恵まれた以仁王と不遇とそのとりまきたちの鬱屈は日々、蓄積されていったのである。
平時忠にとって八条院は義理の妹の夫の異母妹である。つまり、二人は義理の兄妹にあたる。そして、終焉を迎えつつある魔都・平安京で暗躍を繰り広げる最大のライバルなのであった。
上西門院統子は四十五才となっていた。しかし、その美貌はまったく衰えない。斎宮という処女巫女の功徳か・・・と屋敷に招かれた滋子は思う。三十路を迎えた滋子も美貌に遜色はないが・・・漫然とした羨望を覚えるのだった。後白河法皇の姉であり准母でもある統子は男子であれば伝説の聖徳太子を上回る治天の君となっただろうと噂されている。しかし、天は女という性をこの人に与えたのだ・・・と滋子は考える。
同時に滋子は上西門院に女御として仕込まれた日々を懐かしく思う。
「息災のようじゃな・・・なんでもうわばみのように酒を過ごされるとか・・・」
「・・・申し訳ありませぬ」
「よいのじゃ・・・わが弟が今あるのも汝のおかげと思うておる・・・」
「もったいなきお言葉・・・」
「あれは・・・まだ跳ぶか・・・」
「時折・・・ただ、跳ぶ気配あれば上西門院様より教わりし秘法で呪縛いたしまする」
「あれの護身のための天狗おろしだったが・・・まさか、このようなことになるとはの・・・」
「・・・」
「どこぞの山に跳ぶほどなら良いが、月にでも跳んだらことだからのう」
「月に・・・でございますか」
「察するに月は海の中のようなもので息ができぬらしい」
「息が・・・」
「月に跳べば即死じゃ」
「おそろしゅうございます」
「ふふふ・・・汝の実の兄、義理の兄もなにやらおそろしいらしいぞ・・・」
「・・・」
「いや、何かとがめ立てをしているわけではない。清盛のすることも時忠のすることも・・・皆、意味があり、定められたことなのじゃからな・・・」
「さようでござりまするか」
先の世を見ることができると言われる統子の言葉に不思議な思いを抱きながら滋子は次の言葉を待つ。
「それよりも気になるのは妾の妹の一人・・・八条院のことである」
滋子は五つ年上の義理の妹の顔を脳裏に浮かべる。対妖弧戦争では共に戦った同志であるが・・・最近では以仁王の親王宣下問題によって疎遠になっている。
「あれに・・・なにか憑いたらしい・・・」
「・・・」
「おそらく・・・妖狐の名残じゃろう・・・」
「しかし・・・妖狐は滅ぼされたのでは・・・」
「ああいうものはけして滅ぼすことは叶わぬのじゃ・・・いわばすでに滅んでいるようなものじゃからな」
「それでは・・・」
「あらかたは封じたが妖気となって漂っていたものが・・・寄り代として八条院を選んだのであろう・・・それも因縁じゃ・・・」
「中宮太夫の兄(時忠)が申すには・・・八条院様は陰陽師を集めておられるとか・・・」
「うむ・・・それもよからぬ素姓のものたちじゃ・・・闇の陰陽師たち・・・」
「闇の陰陽師・・・」
「それで・・・もしもの時のために護符を作った・・・」
「どのような護符でしょうか」
「汝の命を守るためのものじゃ」
「・・・」
八条院の屋敷には行者姿の者たちが集っていた。
その中央に座すのが八条院暲子である。
行者たちは真言を唱えている。
気を操るための曼荼羅が床に敷かれ、それは一つの方位を示していた。
「オン・バサラ・ダトバン」
「オン・アビラ・ウンケン」
金剛界大日如来、胎蔵界大日如来の真言によって高まった気は雷鳴を轟かせる。
紫電がほとばしったのは鞍馬山だった。
「魂降りましたぞ・・・」
「うむ・・・」
八条院は重々しく頷く。
その頃、鞍馬山中で修行していた遮那王は怪異に出会っていた。
巨大な猿に遭遇したのである。
「これは魂消た・・・お主は何者じゃ」
「我は沙流王じゃ・・・ずっとこの地に封じられておった」
「異国の神か・・・」
「そうじゃ・・・この国の鬼の一族が我の一つ目を封じこの山に閉じ込めたのだわい」
「するとお主は目が見えぬのか・・・」
「いかにも・・・しかし・・・目などなくてもお前を食らうことはできるぞ」
大猿はそう言い放つと遮那王に跳びかかった。
しかし、すでにそこに遮那王はいない。
「面白や・・・猿飛の術か・・・」
「さあ・・・術の名など知らぬ・・・」
樹上から遮那王は沙流王を見下ろしている。
「どうやら・・・お前は食えぬものらしい・・・どうじゃ・・・とりひきせぬか」
「とりひき?」
「そうじゃ・・・封じられた目を捜せ・・・さすれば・・・汝に猿飛の奥義を授けるぞ・・・」
「ふふふ・・・そんなとりひきには応じられぬ・・・」
「何?」
「なぜなら・・・お主を食うのは・・・この遮那王じゃからじゃ・・・」
遮那王は太刀を閃かせた。源氏の秘剣・鬼食いの太刀である。
次の瞬間、妖魔は断末魔の叫びをあげる。
「ふふふ・・・もらったぞ・・・鬼一方眼・・・沙流王の魂を食ろうてやったわ」
「お見事でござる」
闇の中から鬼一方眼と呼ばれた一人の行者が立ちあがった。
「これで遮那王様は完全なる猿飛の術を得ましたぞ」
「うむ・・・力がみなぎってくるぞ・・・」
樹上から降り立った遮那王は三つ目だった。
遮那王の額に開いた第三の目こそ・・・封印された沙流王の目であった。
闇の陰陽師たちは邪法を用いてそれを遮那王に移植していたのだった。
遮那王は再び樹上に跳びあがると木々の間を笑いながら去って行った。
関連するキッドのブログ→第37話のレビュー
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