ホットドッグ一本300円、100本売って三掛けで三人で割って手取り三千円、川の字で感じる同じ匂いの吐息PRICELESS(木村拓哉)
魔法瓶の発明は19世紀末のドイツである。
日本では1911年に国産第一号が開発されている。
つまり・・・2011年は日本の魔法瓶誕生百周年記念年だったのである。
おそらく・・・それが、なぜ今、魔法瓶なのか・・・という一つの答えである。
魔法瓶の魔法とは「熱伝導の遮断」・・・つまり、「断熱」ということだ。
世界の熱は対流によって均一化していく傾向がある。
つまり、熱すぎれば冷め、冷たすぎれば温められる。
太陽という圧倒的な熱源が絶対零度の支配する宇宙と温度を絶え間なく交換する。
その中間で大気によって絶縁された地球は程よい温度に保たれている。
つまり・・・地球は巨大な魔法瓶なのである。
しかし、実際の魔法瓶はいかにして内部を大気と遮断するかに苦心する。
そのために二重壁が作られ、擬似真空地帯を置くことにより、内部の熱が移動しないことを主眼とするのである。
夏は・・・氷がとけない。
冬は・・・お湯が冷めない。
ああ、魔法だ。少年の日にそれを感じて大人になった人は多いだろう。
しかし・・・その感動をたやすく忘れ去った大人も多い。
夏に冷房を切り、魔法瓶だけに頼り、冬に暖房を切り、魔法瓶だけに頼る。
魔法瓶の有り難さをかみしめる一日があってもいいと思う。
なにしろ・・・単なる魔法瓶は・・・電力を消費しませんから。
で、『PRICELE$S?あるわけねぇだろ、んなもん!?・第5回』(フジテレビ20121119PM9~)脚本・櫻井剛、演出・鈴木雅之を見た。「マルモのおきて」の脚本家登場である。序盤が終了して軌道に乗った段階でダイアローグ(対話のセリフ)にノリが生じている。増長な部分もあるが、一挙にセリフ量が増えて饒舌なドラマになったことで活気に満ちて来た感じがしますな。そこに新脚本家投入で拍車がかかったわけである。ある意味、ゴージャスなのでございます。それが一種の楽しさを形成しているのだなあ。
決めゼリフだった・・・あるわけねえだろ、んなもん・・・も今回はあまりこだわらない。
実は・・・今回は誰もが感じる・・・金田一二三男(木村拓哉)と二階堂彩矢(香里奈)の恋愛関係について登場人物が問いただすシーンがあり、そこではそれぞれが「あるわけないでしょう・・・そんなこと」と言える機会があったのだが・・・言わないのである。
最初は転がり込んだ第三の無職人・模合謙吾(中井貴一)が金田一に問いただす。
「君は・・・二階堂くんと出来ているのか」
「モアイさんって、結構・・・間違える人なんですね・・・」
お茶を濁すのである。
後半では金田一の恋人である広瀬瑤子(蓮佛美沙子)が二階堂を召喚する。
「一緒に暮らして・・・一緒に働いて・・・ずっと一緒・・・彼のことを好きなんでしょう?」
「本当になんとも思ってませんから・・・」
言わないのである。
ただ、ホットドッグ営業一日目を終えた三人が・・・なんとなくホットな気持ちになって和んだ時・・・金田一が「なんか・・・ホットドッグ屋にやる気だしてきましたね」とモアイに問うと「そんなものあるわけないでしょう・・・」とさりげなく答えるのである。
この辺り、ゲーム感覚の強いメインライターだと、決まり文句をかなり不自然であってもぶっこまずにいられないので・・・今回の起用は自然な会話の成立ということでは大成功と言えるだろう。
まあ・・・些細なことではありますが・・・。
三人の妖精の最初の夜
幸福荘の金田一の部屋に新たに転がり込んだモアイは傷心である。
しかし・・・たちまち部屋のシェアについて不具合が生じる。
男と女と男が眠るにはあまりにも狭いのである。
まあ、二階堂が金田一と同居するのもすでに常軌を逸しているのだが・・・二人は変人なのでまったく問題なかったらしい。
ところが・・・モアイは常識人として物議を醸すのである。
そうなると・・・二階堂も・・・モアイに対する敵意が頭をもたげる。もちろん・・・深層心理的には二階堂の中に金田一に対するもやもやとしたものがないわけではないので、それを隠すためにも一層の攻撃性が生じるのだった。
金田一はすでに・・・屋台を使って何かを始めようとしているのはお茶の間も了解している。
それを伝えようとするが聞く耳を持たない二人。
これだけの流れでなかなかに弾む会話である。
「時間制にしたらどうか」「やはり三等分」などといい加減さを爆発させる主人公。
ここでモアイは「大家さん」とかけあうという設定で幸福荘の住人たちの登場機会を作りに行く。
鞠丘貫太(前田旺志郎)両太(田中奏生)の兄弟には「ザコキャラ」扱いされ、トイレ清掃中の鞠丘一厘(夏木マリ)には睨まれ、1号室の占い師・豪田武雄(酒井敏也)には「破談の相」が出ていると告知され、2号室の怪人・大島陽輝(渋川清彦)には「俺の下で働かないか」と勧誘され、3号室の富沢萌 (小嶋陽菜)とは「モアイです」「モエです」と意味のない挨拶をかわし・・・4号室に出戻ってくるのだった。
臆病な人間が変な人たちと遭遇するのはそれだけで楽しいことなのだな。
モアイが4号室に戻ると・・・鞠丘兄弟に呼び出された金田一が退出。
気まずいモアイと二階堂が残される。
「会社を辞めたことを後悔しないように・・・会社の悪口を言ってくれ・・・」
モアイもあらためて変な人の仲間入りをしたのである。
ここで・・・二階堂は今回の重要なテーマ・・・「ミラクル魔法瓶の社員食堂は不味すぎる」を口にする。
今回、四号室の三人は何故か・・・ネズミ化していくのだが・・・実に分かりやすい擬獣化だな。ネズミは悪戯好き。ネズミは小心者。そしてネズミは堅実なのだ。
そして・・・ネズミは可愛いのである。
ある意味、現実離れした生活を始めた三人が可愛く見える計算である。
ついに・・・金田一は「考えたいいこと」を明らかにする。
「三人で屋台でホットドッグを売ろう」である。
「そんなの無理だろ・・・」とモアイ。
「採算とれるの・・・」と二階堂。
「大丈夫でチュー」なのである。
ここで無理なくプロのマスター藤沢(升毅)の登場である。バー「キングスコート」の名物メニューの下請け移動販売を金田一は計画していたのだった。
その美味さに思わず説得されるモアイだった。
しかも・・・モアイの役割は「調理人」だった。
いつのまにか、金田一社長、経理二階堂、社員モアイの流れなのである。
「そんな・・・妻(宮地雅子)に二度と包丁持つなと言われたほどの料理下手の俺が・・・なんで」
「尻ごみぱかりで残念な人ね・・・豊臣秀吉だって、やる時はやったのよ」
豊臣秀吉は戦国武将である。織田信長の家臣時代、朝倉勢と浅井勢の挟撃に遭い絶体絶命の織田軍にあって・・・生還不可能と思われた退却戦の殿軍(最後尾)に名乗りをあげ、一躍、「金ヶ崎の退き口」の猛将として武名を轟かせた。
「そうです・・・あなたが炎のストッパーです」
炎のストッパーとはプロ野球・広島カープの津田恒実投手である。1989年に防御率1.63、12勝5敗28セーブを挙げる活躍で最優秀救援投手、ファイアマン賞に輝いた。
「その人・・・故人だよね」
広島カープファンの金田一、戦国武将マニアの二階堂・・・はたしてモアイの必殺技はなんなのだろう・・・それはおそらく・・・。
記念すべき屋台の営業開始場所はミラクル魔法瓶の正門前だった。
なにしろ・・・社員食堂が不味いというマーケティングができているのだった。
お客第一号・・・ほぼサクラである榎本小太郎(藤ヶ谷太輔)の活躍で・・・完売する仲良しトリオのホットドッグ屋だった。
「キングスコート」で祝杯をあげる三人。
「これはもっと売れそう・・・」と喜ぶ金田一。
「でも・・・百本売っても手取り3000円だよ・・・高校生のアルバイト以下だよ」と二階堂。
「俺は就職の面接に行く」とモアイである。
「えーっ」と驚愕する金田一。
「やめるなら・・・とっとと出て行ってください」と深層心理に従う二階堂だった。
「戦う君の夢を戦わないやつらが笑うだろうと満島ひかりも歌っているのに」
「中島みゆきじゃないのか」
「たまたまオンエアしていたCMの話題はそこまでだ」
とにかく・・・男二人との添い寝を断固拒否する二階堂・・・金田一とだけならいいわけだよね。
避難した先は路上アイドル・富沢萌のお部屋。
しかし、そこには語るも睡眠不足聞くも睡眠不足の地獄のアイドル伝説~全章~が待っていたのだった。
一方、金田一も後悔満載のモアイの愚痴に徹夜で付き合うことになるのだった。
完全なる睡眠不足の三人を一厘は暖かい目で見守るのである。なにしろ、家賃収入があったからである。
営業二日目・・・順調に売り上げを伸ばす金田一二階堂。
その頃、社内では重大な営業方針の転換が実行されていた。
「え・・・魔法瓶をやめるって・・・どういうことですか」と血相を変えるのはミラクル製作所の辻所長(志賀廣太郎)である。おそらく・・・魔法瓶部門は独立採算制の色合いが濃いのだろう。
それを部門ごとリストラする・・・ミラクル魔法瓶社長の統一郎(藤木直人)の留まるところを知らない経営合理化戦略である。それはもはや暴走の域に達しているようだ。
「じゃ・・・ミラクル魔法瓶じゃなくなっちゃうじゃないですか」
「社名も来週、変更するつもりだ」
「そんな・・・アンフェアな・・・」
「とにかく・・・すべては決定済みのことです」
「あんたは・・・社長の器じゃない」
「・・・」
怒りに燃えて社を後にする辻は金田一の屋台と遭遇する。
すかさず・・・モアイの部下だった金田一を発見する辻。
「どうしたんだ」
「クビになっちゃいまして・・・」
「俺もだよ・・・」
「なんか・・・すいません」
「あんたがあやまることじゃないだろう・・・そうだ・・・いくつか包んでもらおうか・・・」
「じゃ・・・移動します・・・」
機動力を発揮してミラクル製作所に移転する金田一二階堂だった・・・。
ここで、モアイとの「ものづくり」の昔話に花を咲かせる辻。
二階堂の心にもモアイに対する視点の変化が生まれるのだった。
しかし・・・魔法瓶部門の社員の行く末を心配する金田一にはさすがに唖然とするのだった。
自分たちだって明日をも知れぬ身の上なのである。
「あんまり・・・平気だとヒーローになっちゃいますよ」
「そうかな・・・俺はとにかく・・・毎日500円稼ぐのに夢中なだけの男なんだけど」
その頃・・・モアイは再就職のための面接を受けていた。
やがて幸福荘に合流した三人。
金田一は辻との出会いをモアイに報告する。
「昔は・・・冷たいものを冷たいまま、温かいものを温かいままにするために試行錯誤をくりかえしていたもんだ・・・なんてったって魔法の瓶を作るんだからさ」
そういう当たり前の日々が当たり前でなくなるのが・・・世界経済の恐ろしさなのである。
もちろん・・・そうしたくなければ鎖国すればいいのだな。
ま・・・できませんけどね。
就業前の一時。屋台を準備中の二階堂の前に実はお嬢様だった瑤子が登場。
美味しいケーキの店で金田一と二階堂の関係を詰問である。
しかし・・・ピンと来ない二階堂だった。
二人のただならぬ気配に聞き耳をたてる店内の客一同。
苛立ち席を立った瑤子お嬢様だが・・・そうまで言われるとちょっと・・・と思い出す二階堂だった。一応、女子ですから~。
なにしろ・・・ヒーローがヒーローであることを気付かぬヒロインを演じるのは大変なのだった。
まあ、うっかり気付かない演技に関しては流石の域に達しています。
そして・・・モアイは辻を訪ねるのだった。
「あの頃は楽しかったなあ・・・お客の喜ぶものを作っていた実感があった」
「・・・」
「お前、クビになったんだって?」
「なんとか再就職が決まりそうです」
「それはよかった」
「あなたはどうなさるんですか」
「俺は・・・もういいよ・・・魔法瓶にすべてを捧げたんだ・・・他のことなんて・・・意味がないよ」
モアイの心の中で何かが点火したのだった。
下界を見下ろす統一郎は・・・虫けらのような金田一が気になりはじめていた。
「あの・・・ホットドッグ美味いのかな・・・」
先代から汚れ仕事を引き受けて来た財前(イッセー尾形)はまだその本性をさらけ出していないが・・・統一郎坊ちゃんに対しては忠実である。
「退去するように申しましょうか・・・」
「いや・・・食べてみたい・・・」
やってきた統一郎の割りこみを許さない金田一。
素直に応じる統一郎。しかし・・・社長が最後尾につくと・・・モーゼの十戒の如く、社員の列は割れ、道が開くのだった。
「なんだか・・・悪かったかな」と無表情でつぶやく統一郎。
金田一と統一郎を観察する・・・謎の広瀬親子である。
「あの・・・今更、会社に戻せなんて言わないけど・・・」と統一郎に迫る二階堂。「ホントのことを教えてくださいよ」
「情報漏洩の罪じゃないか」と財前。
「じゃ・・・魔法瓶事業はなぜ急にやめるんです・・・多くの人が職を失うんですよ・・・分かってますか」
「経営者には合理的な判断が求められる・・・ただそれだけのことです」と統一郎。
「うそつき・・・社長は何かを隠してるでしょう・・・それが分かるまで私は追求を諦めませんから」
「君たち・・・二人で何ができる・・・」
そこへ・・・モアイが登場するお約束の展開だった。
モアイは新作・魔法瓶にスープをつめてやってきたのである。
微笑み合う金田一とモアイだった。
「社長・・・あなたこそ・・・一人で何をしようとしているのですか」と金田一。
「一人・・・」と統一郎。
「スープいかがですか・・・200円ですけど・・・」と二階堂。
「いや・・・結構」と立ち去る統一郎だった。
再びサクラ登場で・・・ホットドックとスープで500円が飛ぶように売れるのだった。
二人の社長の対決を何か思惑ありげに見つめる謎の広瀬社長(草刈正雄)だった。
そして・・・ついに仲良しトリオは川の字を達成したのだった。
どんなプレーの果てなのか・・・中央・二階堂でW腕枕である。
これは・・・痺れるぞ~。
ワンツー。
Jumpin' Jack Flash/The Rolling Stones
私は嵐の中で産声をあげたのよ
もうマリア様もびっくりの濡れ濡れだったわ
だけど後悔はしてないの
なんでもこいの気分なの
さあ、いらっしゃい
後ろから前からどうぞ
後ろから前からどうぞ
後ろから前からどうぞ
関連するキッドのブログ→第4話のレビュー
ごっこガーデン。川の字満喫セット。アンナ「アハハハハ~、ツボ満載の面白さぴょ~ん。そして、夢のダーリンと川の字セットきましたぴょん。もう・・・これ、おかしくって涙がでちゃうレベルの恥じらいなのですぴょーーーん。1話に続いて面白さ爆発の5話なのでした~。じいや、アンナはこの後、質素な朝食でモーニングをいただきま~す。スタンバイしくよろ~、そしてツボりました」まこ「うらやましー・・・まこもフジッキーと竹さまで川の字するのでしゅ~。じいやまこちゃんランドにセッティングしちくり~。それから金田一がいつ、レッツ・ゴー!を言うのかも興味津々だじょ~。今日も一日、早く統一郎が幸せになりますように祈りましゅ~・・・おっとーっmanaさんの記事によれば三人で屋台を押してる場面でレッツゴー三連発が~・・・聞き逃したのでしゅ~・・・くすん」くう「大丈夫しょと駄目しょの中間で二階堂が妥協しょの真空地帯を作り出す・・・まさに川の字トリオの誕生だね。もはや三人はファミリーなんだよね・・・それに対してある意味父親に裏切られた統一郎・・・孤独の日々は最終回まで続くんだね~・・・最後は救ってもらえるよね~?」みのむし「そうなりますように・・・」ちーず「まだまだ悪夢ちゃんで」ikasama4「なかなかプライスレスまで届きませんな~」
| 固定リンク
« MONSTERSとは見た目で醤油と黒酢の見分けが出来ず、味見もしない料理人のことですか?(山下智久) | トップページ | 箱入り娘の冒険(真木よう子)VS踊れ踊れママのラーメンサラダ(宮﨑あおい) »
コメント
じいや、いつもありがとう
ごっこガーデンのモアイさんに爆笑しちゃいましたww
うちのブログのタクヤファンの方からこんなコメをもらいました。
↓↓↓
キッドさんのドラマ評が楽しくて、嬉しくて
思わずコメントしちゃおうかな~って思うときがあるのです。
彼、凄い。
ブロガー仲間のブログをきちんと読んだ上でご自分のブログを書いてる。
ブロガー仲間のブログちゃんと読んでる。
もうね、愛がいっぱい
褒めすぎてゴメンナサイww
恥ずかしかったら公開しなくてもいいよww
楽しいレビュー毎日ありがとう。
投稿: アンナ | 2012年11月21日 (水) 10時26分
執事たるものの当然の努めにおほめの言葉をいただき
恐悦至極でございまする。
モアイロイドはエンドレス愚痴機能、どこでも尻ごみ機能搭載ですぞ~。
執事たるもの、おほめの言葉は
生きる喜びでございます。
どれだけ褒められても
てれたりはいたしませぬ~。
しかし・・・凄いなどと
年が年なので
もはやなかなか言われることがありませんな。
ああ、そういう話は
テンメイ様にまかせろと・・・
それもそうでございますね。
しかし、執事たるもの
ほどよいユーモアも必要ですからな。
昔のようにじっくりと
ロムれない今日この頃ですが
できる限りは失礼のないように
熟読いたしておりまする~。
お嬢様もお忙しいところを・・・
じいめのために
お時間をさいていただき
感謝感激録画再生でございます。
どうか、毎日をすこやかにお過ごしくださいませ~。
投稿: キッド | 2012年11月21日 (水) 17時10分