貧富の差、美醜の差、賢愚の差・・・あらゆる落差に飛翔と墜落の悩ましき妄想の悪夢ちゃんもげっ(北川景子)
あなたの心に忍びよる影。
それは・・・現実、それとも悪夢。
たとえば・・・「白鳥の湖」と聞いてあなたが思い浮かべるものは何か?
チャイコフスキーのあのメロディー。
ピエリーナ・レニャーニのオデット姫。
ブラック・スワンのナタリー・ポートマン。
北海道の水辺に浮かぶオオハクチョウ、コハクチョウ。
バレリーナのトウシューズの中の金色の画鋲。
ジャネット・リンに憧れた草刈民代。
それらの脳内で再生された記憶をすべて解析して視覚化するコンピューターはどれだけ、計算能力を要するのだろうか。
その中から・・・時間経過による物語を紡ぎ出す恣意的な解釈も行う自律性も要求されるのである。
基本的は脳内電位のすべての変化についての観測を長時間行い、一人一人の個性と、共有点を参照し、あらゆるノイズを排除して超再現するソフトウェア・システムを含むのである。
断言しよう・・・それは現時点では不可能です。
しかし・・・まあ、他人の夢についてあれこれ言っても始らない。
そしてまた・・・不可能を可能にするのもそういう他愛のない誰かの夢なのである。
だが、脳内の特定の部位を刺激し、悪夢を見させる機械についてはすでに実用可能だとも考えます。
そういう機械があることがすでに悪夢ですけどね。
で、『悪夢ちゃん・第6回』(日本テレビ20121117PM09~)原案・恩田陸、脚本・大森寿美男、演出・菅原伸太郎を見た。女児小学生によるバレエ・シーンの連打で一部愛好家熱狂の展開である。ロリータ・コンプレックスではありません。どちらかといえばアリス・コンプレックスですな。もう、聞きあきたでしょうが、心理学的にはコンプレックスとは劣等感のことではありません。劣等感はコンプレックス(心理的複合体)のごく一部です。
たとえば、自分の身長の低さを劣等点だと強く感じている人が「チビ」という言葉に激しく反応して激怒したり、号泣したり、悲哀感を持ったり、失禁したりすること。
つまり・・・特定の認識が特定の情動に結びつき、コンプレックス(結合体)を形成していることが・・・心理的なコンプレックスなのです。
で、ロリコンの場合は、妻の連れ子のティーンズに欲情する男を描いた小説「ロリータ」的に女子中高生に執着する男の欲情を指すので、小学生女子のチェチェ姿に激しい欲情を抱いてもロリコンと呼ぶのは間違いです。
・・・誰向けの説明なんだよ。
だから・・・博士の元助手・志岐(GACKT)が小学生に欲情していてもロリコンではないと断言できるのです。
・・・そこかよっ。
しかし、「不思議な国のアリス」の作者・ルイス・キャロル的な幼女趣味であってもなんら問題はないのです。そして、この場合はアリコンです。
・・・もう、いいよ。
二人のバレリーナ
悪の秘密結社の下部組織と思われるバレエ教室でバレエ教師田中(ふせえり)に指導を受ける二人の女児。・・・このままでは魚ロイドに・・・だから「キューティーハニーTL」をまぜるのはやめろっ。
5年2組のお嬢様・佐藤未来(田爪愛里)と貧しいシングル・マザーの娘・清水莉音である。
二人はバレエを通じて友情を育んでいたが・・・貧富の差に対して強烈なネガティブ・コンプレックスを抱く莉音の母親(森尾由美)の影響で亀裂が生じかかっていた。
そんな二人を一瞬で変態と分かる存在感を漂わせる照明係の河原(森下能幸)は幼女誘拐監禁暴行殺人犯の目で見つめるのだった。・・・今回、役名いい加減すぎるだろっ、矢口バレエ・スクールだし、変態・河端だろう・・・すべては夢でござる・・・いや、妄想でござる~。
おりしも・・・明恵小学校付近では少女が誘拐され、死体となって発見されるという恐ろしい事件が発生していたのだった。
バレエ教室の送迎も父兄が車でするのが常識的だった。
しかし、パートで迎えが遅くなる莉音の母。暗闇の中で莉音の心は少しずつねじれて行く。
「貧乏人だからといって金持ちの子に負けてはいけない・・・才能でみかえしてやれ」と娘を無意識に洗脳する母親。
貧血で倒れ、保健室に運び込まれた莉音の様子から、「悪い母親の支配の影」を読みとる保健室の魔女・琴葉(優香)だった。なぜなら、彼女は母親依存を強要する母親憎悪コンプレックスの持ち主だからである。これは母親支配からの卒業マザコンと言えるだろう。琴葉はマザコンであるがゆえにサイコパスという典型的なキャラクターなのである。
琴葉は「莉音の悪夢」を録画して、志岐に意見を求める。
前回、予知夢によって一攫千金が可能と知った帝都工科大学大学院生の山里(和田正人)はマネー・コンプレックスから、金の匂いのしない夢を持ってきた琴葉に嫌悪を感じる。
しかし、琴葉の心理など手に取るように分かる志岐は「彼女の問題を解決するためには・・・悪夢ちゃんの予知夢が必要だ」と言葉巧みに琴葉を誘導するのだった。
すべての母親に復讐するために保健室の先生となった琴葉と夢録画研究で科学者としての野心を見たそうとする志岐の目的は一致したのだった。
サイキックとサイコパスの間で
その頃、彩未(北川景子)の現実改変によって乱れ始めた時空は結衣子(木村真那月)と彩未の無意識を常時結合する気配を見せていた。
結衣子の夢に彩未の夢のキャラクターであるゆめのけ(声=玉井詩織)が浸透し始めたのである。
「先生は私が邪魔みたい」
「そんなことはないよ」
「私は先生よりお母さんに逢いたい」
「お母さんはいない・・・そのために彩未先生がいるんだよ」
「・・・」
「今夜は悪夢を見させない」
「いつもそうしてよ・・・」
「それはできないんだ・・・君が魔法少女になりでもしない限りは・・・」
「なれるの」
「それはアニメの話だからドラマではまだ無理なんだよ」
一滴の涙を流して眠る結衣子に祖父の古藤博士(小日向文世)は孫萌えコンプレックスを感じるのだった。
莉音の無意識に連結した悪夢ちゃんの予知夢
白鳥である佐藤未来は魔女と化した清水莉音の母親に襲われる。
そして、川から河童が現れて白鳥を襲うのだった。
しかし、悪夢の内容は夢王子(GACKT=二役)の活躍で救われる・・・。
悪夢ちゃんの「夢札」を見た彩未は・・・「白鳥の湖になんで・・・河童が・・・しかも夢王子まで・・・」と唖然とする。
「ブラックスワン・・・悪夢のような映画だった」と「白鳥の湖」についての知識が「その映画」だけらしい学者バカをさらけ出す古藤博士だった。
夢分析のためのヒントを求めて、「バレエ教室の発表会」を鑑賞する彩未と結衣子。
結衣子は彩未に擬似マザコンを形成しているので喜びを感じる。
しかし・・・せっかくの晴れ舞台で・・・音楽にチャイムが重なり、莉音は失敗してしまう。
その後で未来が華麗に踊ったことにより、莉音の母親の貧乏被害妄想が発動し、バレエ教師に「お金で妨害を頼まれたんでしょう。貧乏人は死ねばいいと思っているでしょう」に詰め寄るのだった。
愛する母の壊滅ぶりを見て莉音の心もまた歪みまくるのだった。
白鳥と黒鳥のアラベスク
莉音はバレエを汚したと莉音の母親が妄想する未来をナイフで脅し誘拐して川に流してしまう。
そこへ現れた連続誘拐犯。
莉音は恐ろしい予感を感じるのだった。
一方、目的のためには手段を選ばないサイコパスである琴葉は例の睡眠導入剤で結衣子の夢札を手に入れる。
その夢札を入手した志岐は・・・。
二週連続児童行方不明にあわてふためく校長(キムラ緑子)は「デ・ジャヴかしら」とボケをかます。「いや、錯覚でなくてリアルに同じ状況発生です」と3年1組担任の稲本先生は(川村陽介)はツッコミの腕に磨きがかかっている。
そこへ莉音が学校に助けを求めて駆け込む。母親に迷惑わかけられないコンプレックス発動中なのである。
突然、登場した刑事(田中哲司)の手に握られているのは志岐がプリントアウトした「悪夢ちゃんの悪夢」に登場する河童の画像だった。
匿名の目撃情報として寄せられた画像から・・・河原が割り出され・・・監禁されていた未来は無事救出される。チャイムを鳴らしたのも河原だった。愛する未来のために偽のお嬢様である莉音に鉄槌を下したらしい。お嬢様にしか愛を感じられないコンプレックスを持つ変態だったのである。
「助けを呼んだのは莉音ちゃん」と未来に伝える悪夢ちゃん。
「そう・・・」と貧乏人には援助の手を差し伸べなければならないと教育されている未来は偽善コンプレックスによる慈愛の微笑みを浮かべるのだった。
夢と言う名の捏造電車
その夜・・・睡眠遊行した彩未は・・・幼い頃の記憶の一部を取り戻す。
母親のいない子が母親のいる子に感じる羨望。
夢の中の謎の少女・詩都子(吉倉あおい)に対する殺意。
「私は人殺しだ・・・」
無意識に封印された記憶の告発に・・・驚愕する彩未。
そこへ・・・古藤博士が深夜の訪問をする。
博士は「志岐が夢札と予知夢の実在をマス・メディアに報じたこと」を告げる。
「だから・・・夢王子が事件を解決したのね」
と悪夢ちゃんの夢を解釈する彩未。
「いや・・・志岐くんが科学者としての野心を解放してしまったのだ」
と現実の解釈をする古藤博士だった。
サイコパス大戦の開戦である。
関連するキッドのブログ→第5話「ホー夢」のレビュー
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