箱入り娘の冒険(真木よう子)VS踊れ踊れママのラーメンサラダ(宮﨑あおい)
自慢の親、自慢の子供、自慢の家族。
そういうものは他人にとってどうでもいいものである。
どうでもいいものを自慢しても虚しくならないところが儚いのだなあ。
恥ずかしい親、恥ずかしい子供、恥ずかしい家族。
そういうものは他人にとって面白いものだ。
面白いものを恥じていたたまれないところが楽しいのだなあ。
しかし、限度を越えれば・・・自慢しなくても誉めてもらえる。
そして・・・限度を越えれば夜逃げするしかないのである。
どういう子供でどういう親でどういう家族でも・・・基本的には面倒くさくてそして・・・捨てがたいものだ。
なにしろ・・・自立した人間というものがほとんどいない世界では。
で、『遅咲きのひまわり~ボクの人生、リニューアル~・第5回』(フジテレビ20121120PM9~)脚本・橋部敦子、演出・石川淳一を見た。多数派の獲得について考えることは多い。たとえば・・・憧れたい人と蔑みたい人はどちらが多いのだろうか・・・という問題がある。全体は常に個人に還元されるので自分が憧れたいのか蔑みたいのかを考えてみる。憧れたいのだが蔑んでしまう自分を軸にすると・・・やはり、蔑まれるものが多数派を獲得できると考えるのである。日本という国で言えば、都会と田舎では田舎が基本的には多数派である。単純に日本の人口が1億人、東京都民が1千万人とすれば、日本人の90%は田舎者ということになる。東京都民のうち900万人が田舎の出身者なので本当に都会者と言えるのは1%なのである。だから、多数者を獲得しようとしたら都会者をターゲットにしたら絶対に失敗する。
そこで・・・田舎を舞台にしたら・・・いいと思うのだが・・・これがなかなかなのである。
どこか特定の田舎を舞台にしてもなかなか普遍的な田舎にはならないのだなあ。
それでも・・・漠然と田舎を想像する都会の人間には・・・ワンダーランドとして楽しくて楽しくてしょうがない場合があります。
さて・・・恋少なき時代にも人々は恋に憧れる。
「男女七人夏物語」みたいなことを田舎でしてみるという企画である。
「男女七、八人秋の四万十物語」なのである。
主人公は田舎出身の都会者で四万十に都落ちしてくる。三年契約の四万十市役所臨時職員の小平丈太郎(生田斗真)だ。
地域の老人の世話をしながら、「地域おこし協力隊」のイベントに協力するのが仕事。
そして、その老人たちの通う病院の看護婦になんとなく恋をしている。
ただし、この恋は基本的に性欲を満たしたい気持ちに基づいている。
四万十市出身で、東京の医大で研究医をしていた二階堂かほり(真木よう子)は教授に性的な奉仕活動が不足していたために故郷の四万十中央市民病院の臨床医として派遣されてしまう。癌の免疫治療というライフワークの道を閉ざされたかほりは鬱屈する。「才能がないから臨床医になった方がいい」という教授の言葉をうのみにしたかほりは悶々とした日々を過ごす。教授が再考して研究医として呼びもどしてくれるという淡い期待を抱かずにはいられないのである。性も実力のうちという世情に疎いかほりは真の実力を発揮できないタイプなのである。
ひょんなことから丈太郎とかほりは「四万十にやってきた仲間」となって・・・恋より友情を強制される設定になっている。どう見てもお似合いの二人なのに本人たちはまったくそう思わないという古典である。
高知市出身で地元の女ではないということで「あとくされがない」ために丈太郎のターゲットになった看護師・森下彩花(香椎由宇)は・・・就職できない丈太郎に見切りをつけた紗江子(大塚千弘)によって傷ついた心を看護してくれそうな感じの年上の女である。しかし、若くて性的に強い男を求める狩人的言動もみせる。そして・・・登場人物の中では最後まで謎を残している人間である。月命日に彼女が墓参りするのは誰なのか・・・。
そんな彩花と同棲しているのが・・・かほりの高校時代の恋人で、市民病院リハビリアシスタントの松本弘樹(柄本佑)である。かって高校球児として四万十市のヒーローだったのだが、挫折して陰気な性格になっている。無職で飲んだくれの父親が心の重荷になってなんとなく彩花と暮らしているのである。
ここまでが基本の四人である。
丈太郎は「彩花さんの誕生日が四月だったので次のプレゼント・チャンスはクリスマスなんだよな~」などといつまでも少年時代の恋愛の夢を追いかけている。
その頃、彩花は弘樹に「あんたにとって俺はなんなんだ」と問われ、「私はあなたにとってなんなの」と切り返したりしているのである。
彩花と弘樹の関係を知っているかほりはなんとなく気をもむのである。丈太郎が傷つくことになったら可哀相だと思うのである。その好意は・・・潜在的には恋心なのかもしれないが・・・かほりにはどこか・・・自分以外の人間をすべて見下している気配がないではない。あるいは研究対象の保有者にしか見えないのかもしれない。それは人間としてはかなり危険な領域であり・・・人間の愚かさの塊のような丈太郎によって人間性の回復が図られている過程なのであろう。
さて・・・そんな丈太郎に気のある素振りを見せていた市会議員の娘の今井春菜(木村文乃)の事情が明らかになった今回。木村文乃・・・主役教師の引き立て役のダブルの後はまたもや不倫している脇役である。どうしてそういうキャスティングされちゃうの?・・・という役者履歴はともかく・・・箱入り娘として育てられた春菜は高知市に留学した短大時代・・・絶好の獲物として大学講師の松浦徹(岡田浩暉)の不倫相手として弄ばれてしまったのである。松浦は妻と別れる気はさらさらないが・・・おそらく高知周辺都市に元教え子の愛人を散在させる性の狩人なのであろう。思い出した頃に春菜をつまみ食いしているのである。
春菜も弄ばれていることは薄々気が付いているのだが・・・呼び出されるとつい応じてしまうほどには調教されてしまっているのだ。
松浦は・・・家庭に乗り込んでくるほどの勇気もなくプライドは高い女子大生をそれなりに選別しているものと思われる。
まあ・・・性行為にしか生きている実感を見出せないタイプで「愛を恐れることは人生を恐れることと同じ」などとほざいて世間知らずの女の子を食い物にしているのだった。
松浦と春菜の・・・春菜にとっては久しぶりの愛の営みに燃えた後始末をするのが・・・古民家を改造した「わけありカップル」によく利用される民宿を支援する四万十市地域おこし協力隊隊長の藤井順一(桐谷健太)である。寝乱れたままの布団を前に彼女いない歴十年の下半身が疼くのである。
家業の金物店の経営も行き詰まり・・・絶望的な気持ちを併せ持つ順一は開き直って最近、初恋の人である島田さより(国仲涼子)にアプローチしている。
さよりはかほりの姉で夫があり二児の母でもあるが・・・日常生活に強い倦怠感を抱いている。地元を離れたことのない順一に共感する部分もあり・・・ひっそりとただならぬ関係へと足を進めているように見える。
さよりと順一は・・・松浦と春菜の愛液にまみれた布団を干しながら・・・距離を接近させていくのだった。
彩花を慕う丈太郎。
丈太郎を危ぶむかほり。
かほりへの心を残す弘樹。
弘樹と間接キッスをすることにためらう丈太郎。
この四人の追いかけっこ展開に不倫中の春菜と不倫一歩手前のさよりと順一がオープニングで「あなたに逢いたくて」と歌う七人なのだった。
そして狭い町なので・・・春菜の不倫を目撃する彩花だった。
隣の家にビールを借りにいった栃木県宇都宮出身の丈太郎は田舎にもさらに田舎があることを思い知るのだった。
さあ・・・この物語はどこに向かって行くのだろうか・・・「元どおり以上」になるのであれば・・・余るのはだれなのだろう。
一番、オーソドックスなのは丈太郎とかほりのハッピーエンド。そうなると彩花と弘樹は結婚するだろう。そしてさよりは家庭に戻り・・・市会議員に立候補した順一は箱入り娘の春菜と結ばれるわけである。
丈太郎とかほりが都会に戻っていくまでにはまだまだ先が長い・・・次のシーズンがあるとすれば・・・丈太郎は彩花とも春菜とも交際することになるかもしれない、かほりは弘樹となんとなく復活し、さよりは順一とかけおちする・・・などという波乱も妄想できるわけである。
そういう関係の男女六人(さよりを除く)が集合した忍びのマスターが経営する「サンリバー」の丈太郎以外の五人の気まずさ・・・爆笑でございました。
都会にで行けばどうにかなった時代の終焉・・・そうした日々の中で・・・とにかくその場その場を一生懸命に生きる丈太郎が獲得したのは「普通救命講習修了証」・・・その成果に微笑むかほりだった。
その直後・・・彩花の部屋を直撃しようとする丈太郎を思わず追いかけるかほりである。
いや・・・追いかけて・・・どうするつもりだ。
彩花と弘樹の同棲生活を知った丈太郎を慰めるつもりなのか。
「東京に戻るなら貸しを返してくださいね」というナース・青山(田口淳之介)の真意「とりあえず一回やらせてくださいよ」を翻訳できないかほりに・・・はたして丈太郎を慰めることができるのだろうか・・・なにしろ・・・高校時代、登下校を一緒にすることが交際だった地味な女だからねえ・・・まさか・・・処女なんじゃないだろうな・・・つづくである。
で、『コーインク・・・コーインクってなんだよ・・・▲ゴーイング マイ ホーム▼・第6回』(フジテレビ20121120PM10~)脚本・演出・是枝裕和を見た。沙江(山口智子)が危機を回避するフラグのたった今回である。お茶の間の沙江応援団はホッと胸をなでおろし、悪魔はチッと舌打ちなのである。
死んだクラスメートの机を倉庫から運び出した萌江(蒔田彩珠)は早速、問題になったらしく・・・例によって夫の良多(阿部寛)に父親としての役割を期待する母親の沙江だったが・・・今回は両親として夫婦並んで萌江に対応するのだった。
「死んだめぐみちゃんの机が片付けられるのが嫌だった」・・・娘の心情を理解できた沙江なのである。
実家に戻って母と会話をした効果で・・・沙江は幼い自分を回復したのだった。
「私もお父さんが死んだ時・・・萌江のもうひとりのおじいちゃんにあたる人ね・・・お母さん・・・ばあばがお父さんの服とか遺品とかをすぐに捨てようとしたのが・・・嫌だったのね」
「なんで・・・捨てようとするのかな」
「そうね・・・前へ前へと進んでいこうとするからかな・・・」
「昔のことは忘れて・・・」
「忘れなきゃやっていけないからかも・・・でも、そうするのがいやだって気持ち、お母さん分かるような気がする。萌江のことなんでもかんでもお見通しじゃなくても・・・それはわかるな」
「そうなんだ・・・」
娘は母親に心を許すのだった。
そして・・・娘の信頼を受けて杓子定規な担任教師・園田(千葉雅子)に叛旗を翻すのだった。
「どうしてそんなに急いで机を片付けなくちゃいけないんですか」
「それは学校側の方針ですから・・・人は前を見て生きていかなくちゃならないわけですから」
「でも・・・気持の整理をつける時間は人によって違うものでしょう」
「周囲に合わせる協調性も必要でしょう」
「たしかに・・・机の上に座ったクラスメートを突き落とした萌江の行為は暴力ですから許されません。でも・・・萌江の心に「整理」を強要するのも・・・暴力なのではないでしょうか。目には見えないけれど残酷で無慈悲な行為でしょう・・・」
「・・・」
有名人のモンスターペアレンツにたじたじとなる園田だった。
他人の子よりも我が子を思う気持ちがなくては親なんてやってられないのである。
そうでなければ帰るべき家も守れません。
回復しつつある栄輔(夏八木勲)は頑固で冷徹な人格を取り戻しつつあった。
そんな栄輔に柿を剥きつつ、敏子(吉行和子)は言う。
「良多が・・・あなたの代わりにクーナを捜してるみたいですよ」
「そんなことは頼まん」
「結構、あの子のこと頼りにしているでしょう」
「そんなことはない」
歳月が作る老夫婦の和んでいるのかどうかも分からない和みだった。
良多は部下の真田(新井浩文)を連れてクーナの里へ向かう。
なにしろ・・・出会う女とすべてねんごろになってしまう伝説の人である・・・だからテレビ東京の話をからめるなと何度言ったら・・・タクシー運転手の徳永も「ここはいい女が多いんですよ」とそれなりの話題をふるのだった。
「世界観」や「メッセージ」を求める真田は下島菜穂(宮﨑あおい)を一目見るなり色めき立つのだった。
・・・さすがだ。
菜穂に仄かな思いを寄せる良多は真田がモテキ的に危険な男だとは気がつかない。
しかし、菜穂目当てでクーナを取材する長野日報社社会部キャップの畠山(中村靖日)は危険を察知するのだった。
菜穂の戸籍上の父親である治(西田敏行)は「あの広告屋・・・独身だってさ・・・あの撫で肩の新聞社よりいいと思うぞ・・・」などと父親ぶるのだが・・・菜穂には冷たい視線を送られるのだった。
真田は自然体でライバルをつぶしにかかる。
「取材中に帽子が偽物だと分かったんで・・・新しい目玉として・・・沙江さんに参加してもらいましょう・・・」
「ええっ」と動揺する良多だった。
「沙江さんがクーナ捜しに参加して手料理食べられると告知すれば・・・ファンが殺到しますよ」
こうして・・・沙江は「クーナ捜しに夢中の家族」の一員になれたのだった。
芸が家庭を助けたのである。
「お母さんも参加するよ・・・仕事だけどね」
「それでもいいよ・・・自分の好きなことを仕事にできる人は少ないんだから」
「ええっ」
「・・・ってお父さんが言ってた」
子は鎹である。
沙江が萌江に殺されている頃。
背の高さで罠作りを手伝いまたもや大地(大西利空)にアピールする良多。
父親同様に将を射んとすれば馬から射よなのである。
ご褒美に菜穂の手作りの「ラーメンサラダ」を御馳走になるのだった。
父親と同様にマヨネーズ好きを指摘される良多・・・。
「私は父ほどマヨネーズが好きではない」と謙遜する良多だった。謙遜なのか。
マヨラーは基本的に馬鹿だからな。
菜穂の胸の中では・・・栄輔の捜してくれた「失踪した夫」に会いにいくか否やという気持ちが揺れていたのだった。
菜穂を残して失踪する男の気持ちが誰もが理解できないところだが・・・そういう男だからこそ菜穂と結婚できるという現実は随時見受けられます。
その夜・・・消しゴムを使ってクーナの足形を作る良多。
やはり足形を作った治と遭遇するのだった。
二人は警察官の梶(山中崇)に発見され、厳重注意を受ける。
「そんなことして・・・子供が信じたらどうするんですか」
「だって潮干狩りだって貝を埋めるし」
「イモほりだってイモ埋めるし」
「サンタの衣装来たパパを全員逮捕しますか」
意気投合する二人である。
そして・・・ついに奥の手の出汁を娘に伝授する沙江だった。
「ダシって何?」
「縁の下の力持ちよ」
「縁の下って何?」
「家の下で・・・家を支えているところよ・・・」
「ふうん」
「ダシも・・・料理を支えているの」
「ふうん」
「飲んでごらん・・・」
「・・・薄い」
「ダシだからね」
こうして沙江は母の座は確保しました。めでたしめでたしである。
まあ・・・夫の方は小さいのでいつでもキャッチできるからな。
あげるよと言って
差し出した君の
指先風に震える
四つ葉のクローバー
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アサリと潮干狩りについての現状については天使テンメイ様のこちらをご参照ください。
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