アナタはワタシ、ワタシはアナタ、だから一緒にもげっ~悪夢ちゃん覚醒(北川景子)
晴れた日には永遠が見えるわけだが・・・。
輪廻転生が教義から削除されてしまったキリスト教では「我々は何者か我々はどこからきてどこへ行くのか」という問いに答えがない。
だからこそ、西洋世界で科学は発展してしまったのである。
逆に曼荼羅の世界を見てしまった東洋世界では限りない停滞と妄想が花開く。
東洋人は西洋のめくるめく物質的発展に憧れ、西洋人は東洋の奥深い精神的瞑想に憧れるのである。
まあ、どっちもどっちだな。
グローバル化の進展で東西は混じり合う。
そのカオスの果てに何かが生まれるのか。
それとも果ての果てがくるのか。
東西の果てに棲む私たちにはなじみ深い問題である。
しかし・・・クリスマスには讃美歌を歌い、お正月には神社仏閣に詣でる。
私たちはなんでもありなのである。
で、『悪夢ちゃん・最終回(全11話)』(日本テレビ20121222PM09~)原案・恩田陸、脚本・大森寿美男、演出・佐久間紀佳を見た。人にはそれぞれ世界観というものがある。それぞれの世界観は共通している部分もあるし、相違している部分もある。世界観はそれぞれの個性と密接に関係している。世界をどのように見ているのかが個性そのものと言っていいだろう。盲人にとって世界は暗黒だし、聴覚障害者にとって世界は静寂である。そして、心の不自由な人にとって世界はなんともいえないものなのである。歯の不自由な人にとっては世界はかたいものばかりだ・・・もういいだろう。
歴史に不自由なものは過去に学ぶことが少なく、自然科学に不自由なものは迷信深い。・・・まだ言うのか。しかし・・・現実に不自由なものが夢の中でも不自由とは限らない。夢の中では空を飛べないものが空を飛ぶからである。
時に人はそこに可能性を見出すのである。
悪夢先生こと彩未(北川景子)が自分の予知夢によって警察に逮捕されてしまったと勘違いした悪夢ちゃんこと古藤結衣子(木村真那月)はショックで意識を喪失してしまう。
普通の人間なら一過性のものである意識喪失が・・・集合的無意識という神の領域に接合された超能力者である悪夢ちゃんにとっては永続的なものになる。
悪夢ちゃんは眠り姫ちゃんになってしまったのだった。
悪夢ちゃんの祖父である古藤教授(小日向文世)は「孫は・・・無意識の世界に行ってしまったのかもしれない」と語る。
「目ざまし時計をかけてもだめなんですか」
「意識の世界は捨てられ、肉体だけがこちらに残されているのだ・・・おそらく・・・このまま肉体は滅びるだろう」
しかし、教え子の一人が危機的状況になってしまっても教師としての悪夢先生はたくさんの教え子たちのことも考えなければいけないのだ。
明恵小学校は冬の学習発表会の季節なのだ。
しかし、悪夢先生が担任を受け持つ5年2組の児童たちは・・・異常な知的水準にあるので「児童誘拐事件の真相」だの「行方不明の犯人の動向」だのを研究発表すると言いだし、悪夢先生をたじろがせるのだった。
「そんなの発表できるはずないっしょ、学校の空気読みなさい」
すると・・・児童たちは・・・空席に視線を注ぐ。
悪夢ちゃんの不在について児童たちは意識せずにはいられないのである。
事件の関係者である近藤七海(大友花恋)は言う。
「そんなにこわくはなかった・・・優しいおばあさんが世話をしてくれたし・・・」
七海の無意識に接触している悪夢先生はそれがシスターマリカ(藤村志保)だと知っているのだった。
養護教諭ライダー・琴葉(優香)に相談した悪夢先生は・・・再び・・・悪夢ちゃんの病室を訪ねる。
「悪夢ちゃんの夢札を見せてください・・・」
「しかし、私はここを離れるわけには・・・」
「夢札を貸してもらうだけでいいのです」
海の藻屑と消えた志岐(GACKT)の研究所に助手(和田正人)を呼び出した二人のサイコパスは志岐の「獏」で悪夢ちゃんの悪夢を視聴する。
予知夢の中でシスターマリカは教会に火をかけて自殺を図ろうとしていた。
ついにシスターマリカとの対決を決意する悪夢先生だった。
悪夢先生にとってシスターマリカは一種の聖域で・・・タブーだったのである。
やがて・・・真相が明らかになる。
「未来を示した絵」を描いていたチビ悪夢先生(平澤宏々路)は「人身売買組織に属していた児童養護施設・夢見る羊の家の前施設長をシスターマリカが殺害している絵」を描いていたのだった。
施設の子供たちを守るために悪魔に魂を売った前施設長を殺害したシスターマリカは「予知絵」を封印したのである。
しかし・・・組織はシスターマリカの犯罪を知り・・・結局、シスターマリカは組織に従うことになるのだった。すべては・・・子供たちの命を守るためだったのである。
結局、人身売買に関わることになったシスターマリカは苦悶の日々を送るのである。
成長した悪夢先生が罪を問いに現れた時、シスターマリカは「死」を決意したのである。
おそらく・・・人生にも信仰にも疲れてしまったのだろう。
だが・・・予知夢ですでにシスターマリカの行動を呼んでいた悪夢先生は焼身自殺を阻止し、交際を開始したらしい琴葉&助手は消火活動に励むのだった。
警視庁を代表して春山刑事(田中哲司)は養子縁組サイト「Kids talent models Agency」を経営するシスターX(能世あんな)を確保するのだった。
「今度は・・・少なくとも・・・組織の尻尾くらいは捕まえて見せる」と宣言する春山刑事。
しかし・・・巨大な悪の組織はそう簡単には壊滅できないのである。
けれど・・・悪夢先生にとってはとりあえず、当面の危機が去れば、それでいいのである。
なんてったっていざとなれば超能力が発動するのだ。
残されたのは悪夢ちゃんのサルベージであった。
悪夢先生は・・・教会で入手した一枚の絵を古藤教授に見せる。
それは・・・悪夢ちゃんの母で・・・悪夢先生の幼馴染の菜実子(三本采香)が描いた「ゆめのけ」(声=玉井詩織)であった。
悪夢先生が菜実子の飼い犬・ユメノスケを欲しがったので・・・その代わりとして贈られた「絵」だったのである。
教授はついにすべての真相を明かす。
それは・・・悪夢ちゃんの出生の秘密だった。
ちび悪夢先生の予知夢
教壇に立つ悪夢先生。
そして・・・「冬の学習発表会はミュージカルがやりたい」と元気はつらつな悪夢ちゃん。
「あれは誰・・・」とちび菜実子。
「あれは菜実子ちゃんの子供」
「私は・・・どこにいるの」
「菜実子ちゃんはいないの・・・死んじゃったから」
恐ろしい予言に茫然とするちび菜実子だった。
そして・・・菜実子の母親(吉倉あおい)は死亡し、悪夢先生は菜実子に責められて記憶を失う。
成長した菜実子は悪夢先生を責めたことを後悔するまでに成長する。
やがて高校生となり、予言通りに死に至る病を発症した菜実子は悪夢先生の悪夢を実現するために何者かの子を宿す。
そして、菜実子の教師だった甘澤(キムラ緑子)に将来の悪夢先生の指導を頼むのだった。
教授は娘に託された孫を育てた教授は・・・「運命」に従って悪夢ちゃんを甘澤校長と悪夢先生とに邂逅させるのだった。
「すると・・・ユメノケは・・・死んで無意識の世界に帰った残留思念としての菜実子ちゃん」
「無意識の世界は死後の世界なのか・・・」
「いいえ・・・無意識の世界は生前の世界であり、今、現在であり、そして死後の世界なのです」
「あの世だな」
「あの世でもありこの世でもあるのです」
「・・・どうして君にはそんなことが分かるんだ・・・」
「分かったのではありません・・・ただ知っているだけ・・・」
「なぜ・・・泣いている・・・」
「だって・・・私はずっと・・・菜実子ちゃんの優しさに包まれていたんですよ」
「私のところにはちっとも来てくれないのにな」
「きっと・・・来ていますよ・・・ただ忘れているだけ・・・」
「君は明晰夢が見られる超能力者だからか・・・」
「・・・」
「だとしたら・・・君はもはや神にも等しい人間じゃないか・・・」
「いいえ・・・私はただの新米教師です・・・だからひきこもっている生徒を無意識から引きずり出して見せます」
悪夢先生はレム睡眠に落ちた。
無意識に潜むゆめのけ=あの世の菜実子の力を借りて、無意識に溶け込んだ悪夢ちゃんを自分の明晰夢に召還する悪夢先生。
「先生・・・どうしてここに・・・」
「あなたを連れ戻しに来たのよ」
悪夢先生の背中で本心を告げる悪夢ちゃん。
「しぇんしぇい・・・私は怖い・・・私の悪夢が誰かを不幸にすることが・・・」
「確かに・・・この世に悪夢は存在する・・・でも・・・未来は自分の手で変えられるのよ」
「本当・・・?」
「本当よ・・・」
ここは悪夢先生の世界である。
悪夢先生にはどんな願いでも叶えることができるのだ。
そこで・・・悪夢先生は・・・悪夢ちゃんの悪夢をすべて甘い夢に変換するのである。
もちろん・・・それは「現実」ではない。
しかし・・・子供を導くために大人は嘘をつくものなのである。
たとえ・・・世界が邪悪な悪魔の支配する地獄だったとしても・・・正義は必ず勝つと教えるのが教育というものだからだ。
悪夢ちゃんは・・・不仲の親子が仲良くなり、嫉妬深い性格の女の子が慈悲深くなり、死すべき運命のものが助かる甘い幻想に浸るのだった。
「ね・・・現実は自分の力で変えられるのよ」
「うん・・・」
「そして・・・これからはいつだって私があなたの傍にいるわ・・・だってあなたは・・・私の家族になるために生れてきたんだから」
「・・・しぇんしぇい・・・おかあさん・・・」
無意識の世界から悪夢ちゃんは現世に帰還した。
そこには・・・クラスメートたちが待っていた。
悪夢ちゃんの長い悪夢は終ったのだ。
しょして どこまでも
ちゅじゅく夢を見た
天使が舞い降りてきた
しょして どこまでも
ちゅじゅく空のもとで
自由になりたい~
そして・・・見事な音痴(の演技)を披露する悪夢ちゃんだった。
(エピローグ)
飛鳥時代に創られた法隆寺大宝蔵院の銅造観音菩薩立像は悪夢を良い夢へ変えるというご利益があると信じられたため・・・夢違観音(ゆめちがいかんのん)の別名がある。それは庶民に受けたらしく、全国にのれん分けされているのだ。
その一つに参る・・・教師と教え子であり・・・養母と養子である彩未と結衣子。
そこに彩未の恋人で・・・結衣子の実の父親である志岐がやってくる。
夢のようなハッピーエンドなのである。
もちろん・・・それは・・・世界が悪夢先生の夢に過ぎないからなのだ。
悪夢先生は今、暗い児童養護施設で売られる時を待っている憐れな幼子なのである。
一番、仲のよかった男の子が先に買い手が付き、売られてしまったので・・・仕方なく絵を書きはじめるのだった。
理想の恋人である夢王子の絵を・・・。
関連するキッドのブログ→第10話のレビュー
悪夢ちゃんガーデン特設セット。くう「高校入試で気絶していたので更新遅くなっちゃったのです。さてさて、小学生がたくさん登場するけれど・・・これは大人のためのドラマでしたね。子供の前で大人がどうあるべきか・・・子供にとって大人とは何か・・・そして、大人はいつ子供でなくなるのか・・・様々な含蓄がありましたーーーっ。腹をわったサイコパス万歳」ちーず「え~と、今#6です。結局、夢王子は高校生と・・・さしつかえなくロリコンですかね・・・なんとか年内には最終回まで・・・大金を拾ったらどうしよう・・・やはり・・・届けるべきでしょうか・・・五千円までは神様がくれたお小遣いじゃダメですか?・・・ダメですよね」シャブリ「すべてはフィクション・・・悪夢ちゃんと悪夢先生と夢王子の夢のスリーショットも夢じゃ夢じゃ夢でござ~る。とにかく、これは良いドラマだったのでありました」ikasama4「聖なる養母と聖なる幼女・・・じゃなかった養女の物語でしたな~」
(じいや)
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コメント
じいやーーーこんばんわーーーo(_ _*)o
殺す気かクールが次々と終了していきます。
おっしゃっていた通り、今回は「高校入試」を先に書いたら力尽きて
「悪夢ちゃん」はやっと終わったばかりです。
そして「悪夢ちゃん」で疲れたので「清盛」に手が付けられない状況です( ̄∇ ̄;)
それでも、面白いドラマでこの世が溢れていてほしいのです!
ってことで…
これは良いドラマでした。
同じ様なテーマでも浅い描き方しかできないドラマもあります。
視聴者に考えようとさせてくれるドラマが私は好きです^^
北川さんもね~良い女優さんですよね。
当たり役になりました^^
投稿: くう | 2012年12月23日 (日) 21時21分
❀❀❀☥❀❀❀~くう様、いらっしゃいませ~❀❀❀☥❀❀❀
お疲れ様でございます。
どんな高い山も頂上までくると後は下山しなければなりません。
もちろん、遭難の危険はつきまといますので
帰宅するまでが遠足なのでございます。
予知夢で・・・
後五日の命だと言われたら
死んでも死にきれない・・・
「高校入試の最終回・・・見られないのかよっ」
でございます。
しかし、悪夢ちゃんの世界では
「獏」で「最終回を予知した人」の夢が見られるわけです。
しかし・・・ミステリを夢判断しなければならないのは
楽しいのかどうか・・・微妙ですなーーーっ。
歪んだ校歌がさらに歪んでいたりしてーーーっ。
みんなアザラシ仮面だったら
誰が誰やら~ですからな。
悪夢ちゃん→高校入試→平清盛
なんと・・・高い山だったことでしょう。
きっと高校入試の山頂から眺める光景は
もう泣くほど寂しい感じ・・・。
「悪夢ちゃん」は実に奥深いドラマでしたな。
脚本家の計算に演出力が追いつかなかった前回を
除き・・・ほぼパーフェクトな展開。
ただ・・・日本のドラマとしては
一つの到達点ですねえ。
菜実子の予知された死への
苦悩と受容。
そして・・・志岐と菜実子の
はかなくも美しく萌えた日々。
科学者としての野望に偽装された
父親としての慈愛の二重奏。
古藤→菜実子
志岐→結衣子
このパズルな感じが
リピートを要求してくるわけですが・・・
「悪夢ちゃん」に再登頂するのは一体いつになることやら。
そして・・・もう一枚皮をむくと
暗黒の現実がにじみでる仕掛け。
まあ・・・そこ抜きでも充分面白いわけでございますけれど。
やはり・・・底知れぬ魅力に痺れますからな~。
夢王子フィギュアも食玩で出してもらいたい。
シークレットは白鳥&黒鳥で・・・。
とにかく・・・秋ドラマ山脈は高くけわしかった。
夏ドラマ山地にこの半分の高さがあれば・・・。
っていうか、もう少しばらけろよっ。
高校入試の八合目で給水しながら
ふと思う今日この頃です。
投稿: キッド | 2012年12月23日 (日) 22時58分
ぶははは!!
ごっこガーデン 力作!!
「悪夢ちゃん」、いい作品でした。
※ジェリー・アンダーソンさんが逝かれてしまった…(涙)
投稿: シャブリ | 2012年12月27日 (木) 14時26分
▯▯black rabbit▯▯シャブリ様、いらっしゃいませ▯▯black rabbit▯▯
子役の宝庫でしたな。
車庫から車を出す時ならずとも
エレベーターにのるだけで
あの「曲」が鳴り響く世代には
痛恨の一撃ですな。
「UFO」の「SURVIVAL」の回は
「月面遭難もの」として
キッドの心に永遠に刻まれておりまする・・・。
黙祷・・・
投稿: キッド | 2012年12月27日 (木) 15時36分