身も心も・・・身も心も・・・大奥~宿命~なのじゃ(多部未華子)
大震災後の最大余震襲来である。
気象庁発表によれば震源地は三陸沖で地震の規模(マグニチュード)は7.3と推定される。東京でも去年の三月を思い出させる長い揺れがあった。
東北から関東にかけて幅広く震度5弱の揺れがあり、宮城県には津波警報が発令された。
固唾を飲んでテレビ画面を注視する。
誰もが祈っただろう・・・どうか、助けてくださいと。
その対象は自分ではなく・・・不特定多数の誰かであっただろう。
偽善ではなく・・・そういう心を人間は備えている。
まもなく・・・総選挙である。その祈りの心を忘れずに投票に臨むがよろしかろう。
助けてくれそうな人を選ぶべきなのである。
まあ、すべては運命(さだめ)ですけどね~。
この間、散歩中に女子児童が乗った自転車二台とすれ違った。
「日本に生まれたくなかったよね~」
「どこがよかった~」
「パリとか~」
選挙権のない小学生の切実なぼやきをどうか真摯に受け止めていただきたいものです。
で、、『大奥 ~誕生~[有功・家光篇]・第9回』(TBSテレビ20121207PM10~)原作・よしながふみ、脚本・神山由美子、演出・渡瀬暁彦を見た。最終回を目前に様式美というか、あくまで綺麗にまとまっていると感じるこのドラマ。前回が春日局の死による旧時代の終了。今回は万里小路有功の大奥総取締の就任で新時代の幕開け。そして・・・最終回は・・・まあ、それはまた来週。たたみかけるような展開であっという間の一時間である。今季のドラマはまったく淀みがないな~・・・あ、アレを除いては~。
女・家光(多部未華子)による「女将軍宣言」・・・居並ぶ諸侯たちは声もなかった。
なにしろ・・・主だった大名たちも皆・・・男装した女子だったからである。
六人衆筆頭の松平信綱(段田安則)の嫡男/娘である松平輝綱/しず(小澤美和)がその代表であった・・・。
女子による相続が公のものとなり・・・男女逆転史は表舞台に躍り出る。
寛永二十年(1643年)に春日局が死去し、寛永二十一年十二月(1645年1月)に改元され、正保元年となるために西暦と元号がややこしいことになるのだが・・・そのためか・・・やや今が何年なのか・・・結構分かりにくくなっている。
前回は女公方お披露目は寛永二十一年(1944年)の八朔と考えたのだが、今回は寛永二十年(1944年)の秋に単なるお披露目があったと考えることにする。
正史では寛永二十一年(正保元年)五月(1944年6月)にお夏の方が徳川綱重を生んでいるので計算が合わなくなるからである。
逆転史なので・・・女家光の産んだ長子とお夏の方が生んだ綱重の誕生日が違っていても問題はないのだが・・・そこは歴史SFの醍醐味を大切にしたい。
逆転しているのに細部は同じというのが面白いところなのである。
難産であったために出産は早産だったのかもしれないが、女・家光がお夏の方(市川知宏)によって身ごもったのは春日局の死の前後であったと思われる。
なぜ、父親が特定できるのか・・・疑問を感じる人も多いと思うが、おそらくは月経周期による交代制がとられていたのであろう。月のものが来たら、精子供給者は交代するという仕組みである。月のものが遅れればそれは懐妊の兆候ということになる。
春日局の死後、実権を握った女家光は強権を発動して、愛するお万の方(堺雅人)に褥を命ずるのだが・・・時すでに遅く、女家光は妊娠していたのである。
冬が来て、寛永二十一年(正保元年)の正月には年始御礼儀があり、すでに女大名は女装で参列していることになる。
つわりに苦しみながら女・家光は将軍として政務をとるのである。
そして・・・夏にお夏の方を父とする長子(おそらく女・綱重・・・正史では幼名・長松)を出産するのであった。
女・家光は月経の再開を待って・・・お万の方を褥に呼ぶが・・・愛する女が他の男の子を二人も生したことにより・・・お万の心は折れていたのである。
正史の家光の政策はある意味、苛烈であった。
士農工商の身分制度の確立は田畑売買の禁止によって拍車がかかるし、島原の乱鎮圧では女子供皆殺しである。百姓・町人支配は圧政といっていいほど過酷である。また参勤交代制度を外様から譜代大名にまで拡大し、幕府権力によって徹底支配の制度を確立していく。
現代的視点で見れば軍事独裁の圧政であるが・・・そのために二百年におよぶ恒久平和をうちたてたのである。
女・家光にはさらに男子の死亡率が80%という奇病「赤面疱瘡(あかづらほうそう)」の蔓延という状況がある。
これに対し、大奥の男子を吉原に押し込め、強制的な公男娼制度を確立したことはもっともなことなのである。
基本的に江戸時代の封建制度は果てしない現状維持の継続を目指している。
たとえば・・・分家はそう簡単には許されない。あくまで長子相続である。なにしろ、富の分配量は決まっているのである。相続するのは本家のみが基本である。そのために次男以後は部屋住みの身分になるのである。
まあ、こちらの世界ではその心配はあまりないわけである。
ただし、長女以後は産む機械としてかなり、人権に問題のある扱いになっていく可能性はある。五人に一人は男子相続が可能となるわけだが・・・女だらけの世界ではかなり肩身がせまいことになると思われる。
このドラマが面白いのはそういう妄想がどこまでも広がっていくことだろう。
ちなみにこの世界では剣術指南役は澤村伝右衛門(内藤剛志)であるが、正史では言わずとしれた柳生宗矩(大和国柳生藩主)である。宗矩は正保三年(1646年)に死去するのでまだ存命中である。柳生藩はその後柳生三厳が相続するのだが・・・この世界では何人かいた宗矩の娘か、三厳の娘が相続するのかもしれない。そうなれば女柳生なのである。
女・柳生十兵衛・・・むひょ~ですな。
また、松平伊豆守は公儀隠密の影の支配者であるから・・・おいおい・・・服部半蔵影の軍団やら、伊賀の影丸なんかも・・・みんなくのいちになって・・・もういいだろう。
とにかく・・・女・家光は女将軍となり、二女の母となり・・・そして嫉妬の果てに心の折れたお万の方と対峙するのである。
たとえ他の男に身は抱かれても心はお万の方のものと・・・逢瀬を心待ちにしていた女・家光。
しかし・・・お万の方は男として・・・感情のおもむくままに身も心も女・家光を独占したかったのである。しかし・・・春日局から後事を託されたお万の理性はそれを許さないのだった。
「有功・・・そなたの腕に抱かれることを夜毎夢にみた・・・」
「上様・・・どうか・・・お褥を辞退させてくださいませ」
「・・・なんじゃ・・・他の男に抱かれた女など抱く気にならぬと申すか」
「・・・違うのや」
「・・・」
「上様の・・・肌をどれほど恋しく思ったやろう・・・こうして上様と二人きりになり・・・上様と褥をともにすることを・・・どれほど苦しく待ったことか・・・それは地獄の苦しみだったのや」
「・・・有功・・・わしを・・・わしの心を信じられぬと申すか・・・そのような哀しいことを申すのか」
「上様・・・それがしも・・・男なのでござる・・・上様の心だけやなくて・・・身も心も欲しいのや・・・上様にはお子があらっしゃる・・・けれど・・・それがしには・・・あなた様しかおりませぬ・・・。今夜、上様を抱いたとて・・・その後に続く地獄に耐えられぬかもしれませぬ・・・いつか上様を憎んでしまうかもしれませぬ・・・お願いでございます・・・どうか・・・この生き地獄から・・・男と女の恐ろしい業から・・・それがしを解き放ってくださりませ・・・」
「・・・よう・・・ようわかった・・・有功・・・そなたは・・・きっと男なのであろう・・・そしてわしは女じゃ・・・心の在り方がちがうのじゃな・・・それほどまでにそなたを苦しめて・・・すまなんだ」
二人は歌った。
言葉はむなしいけど
ぬくもりなら信じよう
涙は裏切るけど
優しさなら分かち合える
身も心も 身も心も
その頃、稲葉家では未だ夫(平山浩行)の死を受け入れぬ母親・雪(南沢奈央)を当主となった女・正則(山本舞香)がいさめていた。
「家光様の影武者はきっと・・・そなたの父上なのです」
「母上・・・いい加減、愚痴はおやめなされ・・・父上が生きていると申さぬならば父上はお亡くなりになったのです・・・それがまことのことなのです」
「・・・」
「宿命を受け入れぬものは・・・武家の家には不用です」
「・・・」
「稲葉家の当主として命じます・・・今後、世迷いごとは申さぬこと・・・返事は?」
「はい」
女・正則は家長として・・・覚悟を決め、なすべきことをした。女・正則は小田原藩十万石を背負って立つ大名なのである。もはや女として母に同情することは許されぬことなのだ。
娘の厳しさに母は涙したが女・正則は泣かなかった。春日局の血が流れているからである。
正史と逆転史は男と女が入れ替わってもそこはかとなく相似して進行していく。正史ではまだ存命している三代将軍家光は側室たちに順調に子を産ませていくのだ。逆転史では側室は男になったが・・・その名は正史に準じるのである。
現在、四代将軍家綱、そして、六代将軍の母となる綱重までがこの世に生を受けたことになる。
次回はいよいよ・・・最終回。人相見の僧侶の予言通りになれば・・・玉栄(田中聖)もまた・・・将軍の父として子を授かるのである。そして・・・女・家光は・・・。正史の家光と同様に・・・。
関連するキッドのブログ→第8話のレビュー
ごっこガーデン。女将軍お披露目セット。まこ「すべてはさだめ・・・やってらんない時にすべてを丸くおさめる魔法の言葉なのでしゅ~。宿題を忘れたり、勉強をさぼったりしてもすべてはさだめなのだじょ~。有功さまにお種さえあればの~。八方丸くおさまったものを・・・切ないの~。涙ちょちょぎれるの~。ひとつにとけてああ~と言えればよかったのに・・・」くう「なんとも切なくて純情可憐なお二人ですなあ。上様はやってることは凄いけれど心は乙女・・・そして知性豊かな有功様も本質的に一本気な男子・・・もう・・・そんな固いこと言わないで・・・ふまじめに生きてもいいよって誰か言ってあげて~」ikasama4「もう・・・最終回のシーズンですか・・・来年は湊かなえですか」シャブリ「上様のお立場がいかに変わられようと私は…私の心はあの頃と少しも変わりませぬ・・・地震も揺れるが心も揺れる~」mari「シナリオに沿ったレビュー取材できました」お気楽「復活の日はまだ遠い・・・」
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コメント
誰の子供ってどうしてわかるの?と逆転史だからおこる疑問に回答をいただきありがとうございます スッキリしました!笑
7話以降は正史を知らない者には多少 単調に感じてしまう部分もあるのですが 役者さんの熱演と 近頃のドラマではあまり描かれない 人間の本質を突いてくるので毎回、感情を揺さぶられ涙してしまいます
今話は やはり 久々の逢瀬の二人の演技☆
そしてここまで深く人の心のうちを描いてくるのかと
本当 純文学小説を読んでいるようです
それにしても 見ごたえのある演技でした
アイドルドラマにありがちなPVとは真逆の綺麗にとるを廃し 役になりきった二人の迫真の演技
素晴らしかったです!
最終回予告を見て さすがの私もちょっと正史をもう少し把握しておこうと思い Wikiですけれど家光とお万の生涯を調べてみました この世に生きた年月には随分と違いのある二人なんですね
このドラマ 堺さん目当てに見始めましたが ここまで骨太なドラマだとは思ってもいませんでした
あと1話 楽しみたいと思います
その後 映画見に行っちゃうのかな~(ちょっと癪)笑。
投稿: chiru | 2012年12月 8日 (土) 13時59分
シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃいませ・・・大ファン
一種の輪番制ですな。
父は誰でも良い・・・としないところがミソなのですな。
その方が励みになる・・・と春日局が考えたのかもしれません。
春日局は古い女でございますから~。
主人公・お万の方と女・家光を軸に考えると
二人はずっと褥不足ですからな。
欲求不満極まる今回まででございましたでしょう。
まあ、メロドラマは基本、主人公に
なかなかやらせないものですから~。
で・・・じらしておいて
ようやくの逢瀬なのに・・・。
抱かないと・・・。
またもや抱いてくれたらいいのに~展開。
今週はみんなそんな感じです。
まあ、ある意味、それでいいのかとは思いますな。
お万の方のいじらしい女心と
女・家光の凛々しい雄々しさ・・・
まさに男女逆転でございます。
この二人でなければ
涙もここまで光らないというところですねえ。
ふふふ・・・歴史改変SFの醍醐味は
本当の歴史はどうなっているのかと
ふと興味がわくところですからね。
そして・・・本当の歴史とやらが
本当に本当なのかと
疑うようになれば・・・しめたものなのでございます。
なにしろ・・・悪魔というものは
正史なんてないさ・・・みんな嘘さ・・・という立場でございますから。
恋愛ものとしても
歴史ものとしても
ザ・時代劇としても
実験作としても
実に濃厚な本作。
キッドは毎回脱帽しておりますぞ~。
最終回も絶対に面白いってわかる
作品はそうはないですからねえ。
ふふふ・・・映画は女・家光の娘たちの時代・・・。
玉栄は西田敏行になってるそうですが
時の流れは本当に恐ろしいものですな。
投稿: キッド | 2012年12月 8日 (土) 15時47分
フフフ…
美少女への移り気が激しい私…
投稿: シャブリ | 2012年12月 9日 (日) 01時08分
▯▯black rabbit▯▯シャブリ様、いらっしゃいませ▯▯black rabbit▯▯
美少女の系譜はいくつもありますが
中谷美紀ラインで
宮崎あおい→二階堂ふみの線上にのってますかな。
佐伯日菜子→柴咲コウ→大政絢の線上にもいきそう。
もう・・・たまりませんな~。
投稿: キッド | 2012年12月 9日 (日) 04時19分