悪夢ちゃん昏睡~シンデレラはパエトーンの夢を見るか・・・もげっ(北川景子)
もう少し予算があったらよかったのにな・・・という展開だったな。
とにかく・・・相手は巨悪である。
ほとんど・・・ショッカーとか、パンサークローとか、ブラック・ゴーストレベルの悪の組織なのである。
現実にそのレベルの組織と言うと、中国共産党の工作組織や、北朝鮮人民共和国の工作組織ということになるだろう。
もちろん・・・西欧諸国にも伝統の秘密結社や悪名高いCIAもあるのだが・・・さすがに日本国内で児童誘拐は実行しないだろうと推定できる。
その他に日本には「ヤクザ」が米国には「マフィア」がいるが・・・これはある程度、公権力に抑圧された組織になっている。
また「養子縁組=人身売買」の組織の中には宗教的に善悪定かでないものもある。
実際に日本国の国民を拉致誘拐したことが明らかになっている朝鮮民主主義人民共和国の凶悪さは異常と言っていい。しかし、その国を友好国としている中国も本質的には同じと言っていいだろう。
日本は自分自身を「白」とする独善的なものながら欧米諸国からそこそこ「人身売買」に関わっている国として糾弾されているのが現状である。日本は国際的な人身売買の「受け入れ国」「中継国」「送り出し国」の三つの要素すべてで有罪とされているのだ。もちろん、実際は無罪の国なんてどこにもないわけである。
これは「売春」を徹底的に弾圧していない以上、どこからかだれかが「売春対象」を調達してくるビジネスが成立するわけで・・・たとえば大物芸人が・・・そういう風俗店について語ることの是非について問うようなものである。
本人たちは「だって現実にあるんだからしょうがないだろっ」って言うかもしれない。
なにしろ・・・どんなに立派な国であっても・・・金銭目当てで家族ぐるみで連続殺人を決行し逮捕されたら自分で自分の首を絞めちゃう国民とか、突然、自分の母親を殺して学校で銃を乱射して大量殺人を実行する国民とかは出現するのである。
たまたま、ガス田ガス田ってうるさいから国境線を塗り替えることに決めて、領海侵犯、領空心配を発狂したようにはじめる国家があってもちっともおかしくないのである。
他人の国から中学生を拉致監禁する国が戦略核を保持するご時勢なのである。
そういう意味では世界はまさに悪夢なのである。
ここでは「児童の国際的な人身売買組織」と「超科学を軍事目的で真剣に研究している国家」と「善意の養子縁組支援組織」がカオスになって存在していると思われる。
そういう組織と・・・日本国の公権力が渡りあう以上・・・物凄い組織と組織の戦いとして描ければベターなのであるが・・・ここでは一介の刑事が物凄い決断力で・・・凶悪事件を解決したことになっている。
画竜点睛を欠くとはこのことか・・・。
で、『悪夢ちゃん・第10回』(日本テレビ20121215PM09~)原案・恩田陸、脚本・大森寿美男、演出・佐久間紀佳を見た。これまで指摘してきたように悪夢ちゃんの予知夢と悪夢先生の未来改変は場合によっては宇宙を消滅させる危機をはらんでいる。なぜなら未来は絶対に改変出来ない場合があり、それを改変するということは宇宙を破壊することと同じ場合があるからだ。ここまで・・・悪夢ちゃんこと古藤結衣子(木村真那月)の夢はデフォルメ(誇張)されたイメージとして超科学の夢記録装置「獏」によってAV化されており、悪夢先生こと彩未(北川景子)はそれを解釈することで事件を解決してきたのだが・・・実際は未来を改変したのではなく、改変されたように見えて本来予定された未来だったと言い逃れることも可能な表現になっている。さらに悪夢先生と化した彩未はある意味、超絶サイキックとして描かれつつあったのだが・・・今回はトーンダウンである。
ものすごいことやってきたのに・・・「私はそんなにすごくないんですよう」と弁解しちゃってます。
しかし、意識を集中するだけであらゆる人間の無意識にコンタクトできるんだから・・・情報戦においてはほとんど全知全能なわけですが・・・。
「中国の首脳部は本当のところ・・・どうなの?」
「2050年までにハワイ以西はすべて中国の領土にするつもりです」
「ひえーっ」・・・なのである。
悪夢ちゃん、悪夢先生を入手するために各国諜報機関は物凄い争奪戦を繰り広げること確実なのである。
で・・・今回、案の定・・・志岐貴(GACKT)は悪夢先生に対する愛の使徒であることを明らかにするわけだが・・・もう、悪夢ちゃんの存在を公表した時点で取り返しのつかない失策を犯していることは明らかなのである。
しかし・・・まあ、キュリー夫人が人道に対する罪で死刑になっていない以上、科学者のやることは人道的でなくてもしょうがないということなのでしょうな。
さて、とにかく・・・現時点では謎の組織は二つあると言っていい。
一つはトミー・リー(川平慈英)の組織する某国工作員チーム。彼らの目的は超・戦略的人体兵器である悪夢ちゃんの入手である。
もう一つは児童誘拐も辞さない養子縁組サイト「Kids talent models Agency」を経営するシスターX(能世あんな)の属する組織である。この組織に児童養護施設「夢見る羊の家」施設長で悪夢先生の養育者であったシスターマリカ(藤村志保)が属しているかどうかは謎である。シスターマリカは知らぬうちに人身売買組織の隠れ蓑として施設を利用されているだけかもしれない。
トミー・リーの組織があざらしマスクを着用しているので・・・シスターXの組織とはなんらかの関係がある可能性はある。
ともかく・・・トミー・リーの組織と接触した志岐は・・・緊急避難のために悪夢ちゃんを連れ込んだ悪夢先生の部屋を急襲するのである。
拳銃を示して「一緒に来てくれ」という志岐に悪夢先生は断固拒否の姿勢を貫く。
志岐は悪夢先生の決意にたじろぎ、二人の予知能力者は脱出する。
二人が逃げたのは明恵小学校の保健室であった。
翌日の職員室で教師たちが不安を口にする。各クラスから一人ずつ児童が行方不明となったままだからである。悪夢先生が担任を受け持つ5年2組からも近藤七海(大友花恋)が消えているのだ。
児童たちは・・・悪夢先生の隠された能力を知るものが中心に・・・「はやく七海を助けてほしい」と期待が集まる。
教師としての自覚に目覚めた悪夢先生は・・・唯一の手掛かりである志岐の犯行を告発しに授業をさぼって警察に赴く。
しかし・・・対応した刑事は女児誘拐犯を志岐の協力で逮捕した過去のある春山(田中哲司)で悪夢先生の訴えを証拠不十分として退ける。
仕方なく悪夢先生は明晰夢により、七海の無意識にコンタクトするのだった。
そこに登場したのは七海を海に連れ去ろうとするシスターマリカだった。
児童養護施設「夢見る羊の家」を訪ね、マリカを追及する悪夢先生だったが・・・マリカは「児童施設の子供たちを危険な目にあわせることはできない」と悪夢先生を退ける。そこにシスターXも現れるが・・・悪夢先生の直感は冴えわたらないのである。
その頃、養護教諭ライダー・琴葉(優香)によって古藤教授(小日向文世)の元に送り届けられた悪夢ちゃんは新たな夢を見ていた。
悪夢ちゃんの悪夢
シンデレラとなった悪夢先生は船上で夢王子である志岐とダンスを踊る。
しかし、ガラスの靴はかかとが折れ・・・悪夢先生は灰かぶり姫となる。
「君は現実を思い知るだろう」
冷酷に告げる志岐をふたご座流星群の星降る船上でカボチャで殴り倒し、志岐は海の藻屑と消える。
殺人犯として警察に逮捕される悪夢先生だった。
最後の手段として志岐へ会いに行く決意を固めた悪夢ちゃんは夢の内容を告げずに阻止する。
「しぇんしぇい・・・あの人のところに行っては駄目・・・」
そのために決意が鈍る悪夢先生だった。
しかし、その夜、何者かによって悪夢ちゃんは誘拐されてしまうのだった。
琴葉とともにかけつけた悪夢先生は夢判断を行う。
そして・・・流星群とオリオン座から・・・船の航路を割り出し、誘拐船を特定するのだった。
船はいかにも東アジアの工作員が利用するような貨物船「龍鶴」だった。
かよわい女教師が二人・・・国際的な誘拐犯に挑むのである。
これ以上、無謀ことがあるだろうか。いや、ない。
しかし、まんまと誘拐船に乗り込む二人。
「私が・・・騒ぎを起こすから・・・その間に悪夢ちゃんを救出して・・・」
「でも・・・あなたは人殺しをしてはだめよ」
「わかっている・・・約束する」
そして・・・悪夢先生はかぼちゃ色の船の備品である浮標を凶器としてとりあげるのだった。
悪夢先生を待ち構える志岐。
「せっかくだから・・・ダンスをするかい・・・」
「あなたも・・・夢札を見たのね」
「そうだ・・・そして君はここに来た・・・君はもしかしたら・・・」
「そうよ・・・私も悪夢ちゃんだったのよ・・・でも私は明晰夢の中に能力を封印した・・・そして人の心を読むことができなくなった・・・だから・・・あなたを信じてしまった・・・あなたのような人を愛してしまったのよ」
「それを聞くことができて・・・うれしいよ・・・さあ、時間だ」
シンデレラ・ストーリーは基本的に女性の男性に対する依存願望を示していると言われる。所謂、人生の丸投げである。そのストーリーを否定すればある意味で男性は存在価値を失うのである。一方でシンデレラ・ストーリーは他力本願ながら不幸な境遇からの自立も意味している。魔法が解けた後でも・・・王子が自分を捜す手掛かりを残すからである。自分本来の姿を示すことが幸福につながることを暗示しているのだ。
しかし、その夜はふたご座流星群の夜だった。
ふたご座の双子は半神半人である。神である兄と人である弟。弟は死すべき運命だったが兄の情けにより神の恩寵を受け、神としての寿命を受ける。
これは悪夢先生と志岐の関係を暗示している。
また、ふたご座流星群のスターダストの本体は小惑星のパエトーンである。
パエトーンは父アポローンの太陽の馬車に乗り、自分が神の子であることを証明しようとして制御不能になり、地上に大災害をもたらした末に雷神で神々の王ゼウスに雷の矢で射落とされてしまう。
神である悪夢先生に詰られた志岐は自ら墜死することによってその罪を購う定めなのだった。
志岐が海の藻屑に消えるとどこからともなく刑事たちが現れる。
志岐は自らが誘拐犯になることにより、警察を呼び寄せたのだった。
ここは・・・海上保安庁の巡視船が停船命令を出すシーンがあればスペクタクルだったんだよなあ。
演出力不足となりました・・・まあ、夢落ちの可能性は含んでいますけれどね。
なにしろ・・・今回の悪夢先生の行動は校長先生(キムラ緑子)の指摘通りに教師として逸脱しすぎてますから~。
そして・・・児童たちは無事救出され・・・何故か学校に戻ってくるのだった。
子供が行方不明になってるんだから・・・親が半狂乱だろうに・・・。
ここも「夢」でないと演出がおかしいことになりますな。
しかし、何よりも凄いのは助手(和田正人)の長い告白である。
「すべては悪夢ちゃんと悪夢先生を守るための行動だったんです。志岐先輩は悪夢先生を殺すとあいつらに脅されていたんだ・・・そして先生はあなたを・・・」
「そんな・・・馬鹿な・・・」
警察から解放され七海の無事を確認して自宅に戻った悪夢先生は残されていた拳銃を取り上げる。
それは水鉄砲だった。
「シンデレラが王子を殺しちゃダメじゃないか・・・」
自らの姿の映る鏡を水鉄砲で撃ちながら・・・。
涙する悪夢先生は自責の念に苛まれるのだった。
同時に・・・「悪夢先生が志岐を殺してしまった」と誤解した悪夢ちゃんはショックで昏睡状態に陥る。
「医学的に問題はない」と医師は告げるが・・・悪夢ちゃんは覚醒する気配を示さない。
はたして・・・誘拐組織は実在するのか。
シスターマリカは敵か味方か。
そして・・・志岐は本当に死んだのか。
大いなる謎を残して物語は最後の夢へと向かうのである。
関連するキッドのブログ→第9回「皆夢」のレビュー
シナリオに沿ったレビューをお望みの方はこちらへ→くう様の悪夢ちゃん
| 固定リンク
« 大奥~慶安四年のフィナーレ~1651年と書いていろこいと覚えるのじゃ(多部未華子) | トップページ | スチューデントEVSティーチャーM・・・そしてアベンジャーXふにゃふにゃ(長澤まさみ) »
コメント