ハードルの低い女(木村文乃)VS仄暗い森の奥から(菅野莉央)
恋する女、恋して失敗する女、恋に溺れる女、恋してはいけない女・・・木村文乃の・・・この路線はいつまで続くのだろうか。
「だんだん」で舞子、「夏の恋は虹色に輝く」で二世女優、「蜜の味」で不倫中国人女医、「梅ちゃん先生」でやたらと男の影がある女、「浪花少年団」でヒロインの見合い相手に横恋慕する女、「黒の女教師」でダメダメな女教師・・・そして・・・ここである。ものすごく上品な顔立ちで・・・お嬢様役にはうってつけだが・・・必ず汚れ役である。
つまり・・・事務所が小さかったのだな。もはや25才で、ちょっと発掘されるのが遅すぎなんじゃないか。
一方、菅野莉央は子役あがりである。
何と言っても、20世紀末から続いたホラーブームの終焉を飾る映画「仄暗い水の底から」(2002年)で黒木瞳の娘・郁子役。水川あさみの幼少期である。そして、名作映画「ジョゼと虎と魚たち」(2003年)で主人公・ジョゼ(池脇千鶴)の幼少期を演ずる。ちなみに「ジョゼ」には新井浩文や江口のりこや中村靖日も出演している。この二本だけで永遠に残る子役と言える。
まもなく十代の終りであるが、貴重な脇役として、「オトメン」とか「任侠ヘルパー」とか数々のドラマに花を添えている。
今回の役柄も・・・名目上のヒロインである山口智子の心を映す鏡として重要な役柄なのだが充分に機能していると言えるだろう。
どちらの花もいつでも散ってしまいそうな花だが・・・末長く咲き誇ってもらいたいものだ。
で、『遅咲きのひまわり~ボクの人生、リニューアル~・第8回』(フジテレビ20121211PM9~)脚本・橋部敦子、演出・石川淳一を見た。高知市の人口はおよそ34万人である。人口3万5千人ほどの四万十市と比べれば一目瞭然の大都市である。東京都足立区の人口がおよそ68万人なのでその半分くらいの人が住んでいるわけである。ドラマの中で「東京」はよく口にされるが東京23区の一つの区でも高知市の倍の人が住んでいるのである。そういうものを実感しないまま・・・田舎で暮らしていくというのは・・・まあ、恐ろしいことだと思う。
で、人の多さになれるには・・・いきなり東京ではなくて神戸市くらいで手を打つといいと思う。神戸市は人口およそ154万人。100万人を越える大都市としては手頃なのではないか。それから大阪市に移っておよそ人口267万人。それから東京特別区人口およそ900万人にチャレンジすると体も順応するのではないかと思う・・・何のためにだよっ。
とにかく・・・高知市に行くのにも恐怖を感じる四万十市地域おこし協力隊隊長・藤井順一(桐谷健太)なのだが・・・どうやら勇気を出して電車に乗ったらしい。
と、同時に市会議員の娘の今井春菜(木村文乃)も四万十市から姿を消し・・・人々は「まさか駆け落ち」と噂するのだった。
順一と不倫寸前だった島田さより(国仲涼子)は「まさか、それはないと思う」と断言。
妹の二階堂かほり(真木よう子)は思わず怪訝な顔になる。
春菜と高知市在住の妻子ある大学講師・松浦徹(岡田浩暉)との出張不倫現場を目撃した看護師・森下彩花(香椎由宇)は「春菜は別の人と交際していたと思う」と言葉を濁して報告する。
かねてから春菜にアタックされていた三年契約の四万十市役所臨時職員の小平丈太郎(生田斗真)は驚愕するのだった。
「でも・・・順一は家のことで悩んでいて・・・そのことを分かってやれなかった俺が悪いのかも・・・」と丈太郎は悔やむのだった。
「いや・・・どう考えても、そりゃ、あんたの責任じゃないでしょ」と丈太郎を慰めるかほりだった。
順一の逃亡先の手掛かりを求めて順一の父で天神橋商店街の「ふじい金物店」主人・藤井利男(嶋田久作)を訪ねる順一。
「帝都にまではいかないと思う・・・中学生の時に家出して・・・切符は買ったのに高知市に行くことも出来ずに帰ってくるほどの根性なしだから・・・」
「じゃあ・・・もう、大人なんで高知市には行ったかもしれませんね」
「・・・」
噂を聞き付けて春菜の父・今井貞夫(大石吾朗)がふじい金物店に乗り込んでくる。
「うちの娘とかけおちしたんですか」
「いや・・・うちの息子はバカですけど他人様を巻き込むようなことはしないと思います」
「・・・」
とにかく・・・高知市に行ってみようと決心する丈太郎だった。
その頃・・・市民病院には四番ピッチャー松本弘樹(柄本佑)の父親(日野陽仁)が急患として運ばれてくるのだった。
藤井家、今井家、松本家と若者たちの親も苦難の日々を送っている。
「死んだ方がよかったな」という父親に「じゃ、救急車なんて呼ぶな」と応じる松本弘樹を「そんなこと言ったらもしもの時に悔むことになるよ」と叱る(平手打ちを含む)ナース森下だった。
高知市にやってきた丈太郎である。土地勘がない上に相手は高知県最大の都市なのだ・・・そんなに簡単に見つかったらリアリティーがないので二人を発見できないのである。
その頃・・・懲りずにまたもや妻子ある男の家を急襲しようとした春菜はクリスマス・ムード一色で仲睦まじい愛人一家を見ると気持ちがくじけて退散、高知駅周辺を彷徨っていたのだった。
そんな春菜に目を付けた標準語ペラペラの高知のチンピラ二人組である。
「おねーさん、どうしたの、おれらーとカラオケ行かんかー」
「先輩、無理ですよ、こんなきれーなおねーさん」
「コージ、だまっとかんかー」
「いく、いくー」
「おーっ、いいのりやね」
はっきり言おう。春菜はお酒が入ると下半身ゆるゆるなのである。
たちまち意気投合する春菜と高知市の若者・ハジメ(仮名)とコージ(仮名)だった。
一軒目でかなり酔った春菜は「もうウチをメチャクチャにして~」モードである。
「先輩~」
「くくく・・・わろうちゃいかんけど・・・やれるって・・・コージ・・・これはやれるって~」
「ううう・・・元気がでるちゃーーーー」
妄想ゲストの下半身のボルテージは高まりまくり、高知市の夜は熱く燃えるのだったが・・・。
そこへ・・・四万十出身者としての流れで遭遇してしまう順一だった。
順一は街頭でローカル・ソング「新々なかむら音頭」を絶唱中である。
雨の四万十川いかだで下りゃ
唄もヨサコイ晩に来い
水に流した夢まくら ソレ
故里よいとこ中村よい町城下町
順一・・・ふるさと愛しすぎである。たちまち酔いがさめてガードが固くなる春菜だった。
「そりゃ、ないぜよ~」
「ジュンちゃんに言いつけちゃる~」
やる気満々だった妄想ゲスト出演の二人を残し逃走する順一と春菜だった。
地域おこし課課長の日下哲也(松重豊)から連絡を受け、ようやく二人と合流する丈太郎だった。
「なんで・・・黙って家出なんか・・・」
「お前は関係ないだろう・・・」
「関係ないことないだろう」
「どうせ・・・おれらーのこと田舎ものだと馬鹿にしてるくせに」
「そんなことないよ・・・」
「だけどいざとなったら栃木の実家に帰るんだろ・・・」
「帰る実家なんてないよ・・・弟が跡をついでるし・・・俺だっていくあてなんてないよ」
「え・・・そうなの」
「だけど・・・自由じゃないですか」
男二人に割って入る春菜だった。
「私なんか・・・親のいいなりで・・・頑張って不倫したけど・・・弄ばれただけで」
「えーっ」
この後、春菜の赤裸々な告白を聞く二人。
二人の脳裏には「処女じゃなかったのかよーーー」という言葉がうつろに響くのだった。
これは辛抱たまりません。
もう春菜はしょうがない娘なんだな~。
その頃、松本の父親は容態が急変、気道閉そくで絶命のピンチに陥っていた。
「院長を呼んでください」というかほりに厳しい眼差しを送るナース青山(田口淳之介)は院長からの指示が切開による気道解放であることを告げる。
「私、やったことありませんから」
「ドクターXですかっ」
「私が介助しますから」とナース森下が決意を促す。
覚悟を決めた「はじめての気道確保のための気管切開」に挑むのだった。
一方、高知市の三人は恐ろしい偶然で新しいお相手と浮気中の松浦と遭遇。
虚栄心のために丈太郎を婚約者だと告げる春菜に松浦はねっとりとからんでくる。
「君はラッセルは好きかい」
「バートランド・ラッセルは数学者であって文学者じゃないでしょう」
「・・・」
「生涯に四度結婚しているけどそれなりに筋の通った人だと思いますよ・・・下半身無節操のあんたより」
「なにをっ」
「しぇからしか~(九州地方の方言・問答無用の意)」
割り込んで松浦をぶっとばす順一だった。
二人を四万十市に連れ帰り、ホッと一息の丈太郎。
救命処置を成功させたかほりが待ち伏せていた。
昼間から祝杯をあげる二人。夜勤明けのかほりはそのまま眠り込み・・・二人の間に新たなる空気が流れ込むのだった。
ようやくかよっ。
で、『▲ゴーイング マイ ホーム▼・第9回』(フジテレビ20121211PM10~)脚本・演出・是枝裕和を見た。坪井一家の味噌蔵探訪である。良多(阿部寛)、沙江(山口智子)、萌江(蒔田彩珠)は表面上はまったく見えないが危うい一家離散の危機を乗り越えてここに来たのである。萌江の心に疼く「死」への怯え。沙江の心にあいた「不信」と言う名の空洞。そして良多の持つ「未知」への憧憬。それらが・・・「クーナ」という共同幻想によって埋められたのである。今、三人は目に見えない「絆」を感じつつ「味噌」を味見するのだった。
「マヨネーズ以外にもおいしいものがあるのよ」
「そんなの知ってるさ」
「本当かしら」
「うふふ」
仲睦まじい家族だった。
味噌を勧めたのは夫(加瀬亮)に捨てられた菜穂(宮﨑あおい)だった。
捨てられた女が壊れかけた家族を知らず知らずのうちに修復したのである。
人間はこうして繋がっている。
「味噌の風味はその土地土地の様々な細菌によって醸し出されるんですよ」
味噌蔵の主の言葉が沙江の心に沁みるのである。
沙江は思わずアシスタントの潤(菅野莉央)を東京から呼び寄せる。
「思うところがあってね・・・」
「出番があって嬉しいです」
「・・・私、一人で料理を作ってたと思いこんでた・・・でも、違うのよね・・・お母さんとか、娘とか、あなたとか・・・いろいろな人がいて・・・私の料理になってるんだなあって」
「・・・ふふふ、私、細菌あつかいですか」
「なのよね~」
総合芸術の基本の境地である。
良多の夢は続いていく。
「クーナは目に見えないものを握ってるのかな」
「そうだよ・・・悲しみとか・・・憎しみとか・・・いろいろとこわいものをね。目に見えないものが素晴らしいものとは限らない」と告げる夢の中のクーナ(阿部サダヲ)である。
「そうか・・・」
「人間は・・・もっと畏れるべきなのさ・・・目に見えないものを・・・」
クーナの可愛い悪意に微笑む良多だった。
萌江は慈しんだクーナの人形をそっと返す。
そこにやってきた栄輔(夏八木勲)の幼なじみで菜穂の父親である治(西田敏行)である。
「おじいちゃん(栄輔)はもうすぐ死んじゃうの」
「誰が言ったの?」
「おじいちゃん・・・」
「そうか・・・でも人はみんないつか死ぬんだから・・・そんなに悲しいことじゃないんだよ」
「・・・」
「でも・・・早すぎると・・・悲しいかもしれない」
萌江がクラスメートの死に心を痛めているのを知ってか知らぬか不明ながら・・・治と萌江の心は通じ合う。
妻に先立たれ、今、親友にも先立たれようとしている治。
クラスメートを失い、今、祖父を失おうとしている萌江。
二人の心はひとつだった。
クーナの帽子が獣皮であると考えた良多は「本物かもしれない」と菜穂に告げにやってくる。
しかし、結局それを口にすることはないのだった。
帰ってきたクーナの人形を挟んで栞作りをする二人。
最高にエロティックな場面である。見えないけど見える人には見えるのである。
そして・・・クーナ捜しのイベントが始った。
人々はそれぞれの工夫でクーナを捕獲しようと森の中に踏み込んでいく。
自称クーナ研究家の錦織(古舘寛治)の罠は本格的で・・・。
「それじゃ・・・死んじゃうでしょう」
「生け捕りじゃないと駄目なのか」
「駄目でしょう」と一同に顰蹙を買うのだった。
しかし「やつらは仮住まいだから捕獲するのが難しいんだ。土地に遠慮しているからね。やつらを見習って人間ももっと遠慮するべきなんだよな」と語る錦織。
「はじめて良い事言った」と一同に褒められるのだった。
沙江の自慢のおにぎりで満足する参加者たち。
結局、クーナは見つからなかった。
秘境探索ものではお約束の場面がある。
固定された画面から、登場人物が画面外に歩き去る。
誰もいなくなった画面に怪しい影が動く・・・というものだ。
このドラマでは・・・そこには何も映らない。
なにしろ・・・相手は目に見えない存在だからである。
しかし・・・見える人には何かが見えるのだ。・・・病気なんじゃないかと心配される場合があるのでご注意ください。
森の中から戻ろうとした坪井一家と治、そして菜穂と息子の大地(大西利空)は道に迷ってしまう。
迷いの森の道なき道が開かれたのである。
「これは・・・」と記憶を頼りに治は森の奥に進む。渓流を渡るとそこはかって治たちがクーナを目撃した禁断の場所だった。
そこにはクーナの墓であるリンドウの花が群生していた。
「そうか・・・こんなにたくさん・・・死んじゃったのか・・・ごめん・・・ごめんな」
人間は強欲に増え続け、クーナは遠慮して減り続ける。
善悪を越えて哀愁が漂うのである。
良多の罠には・・・何かがかかるが・・・それは音はすれども姿は見えないものだった。
罠の下にはただ穴があいているだけだった。
「逃がしてあげて・・・」
「そうだね」
「捕まらなければ・・・また捜すことができるから」
「そうだね」
一同は森を後にする。
俗物である坪井敏子(吉行和子)と伊藤多希子(YOU)の母娘は東京で喪失する不安に耐えている。
多希子にお似合いの夫である健次(安田顕)はストーブを修理してゴルフバッグを入手した。できれば土地も欲しいらしい。
そして・・・栄輔は息子の作ったくだらないCMを見て微笑むと旅立ったのである。
この世とあの世をつなぐ目に見えない扉を開いて。
今際の言葉は「焼きそば」だった。
日本全国の老いた父や老いた母の年賀状作りを手伝い、リクエストに応えて焼きそばを作る・・・それほど若くない娘や息子に幸あれと祈る。
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