二次元の虚構世界から三次元の虚構世界へ・・・。
これほど虚しいフィクションは滅多にあるものではないのか・・・それとも普遍的なものなのか。
とにかく・・・夢にまで見た世界がそこにあるのだな。
「ウルトラマン」に熱中する子供なら怪獣ガバドンが出現するところだし、ガンダム世代なら「コロニー」が落下してくるわけである。
そして、もたらされるのはこの世の破壊である。
当然のように「はらちゃん」もこの世をぶっこわすわけである。
しかし・・・極私的漫画の主人公だから・・・破壊するのは創造神の小さな小さな世界なのである。
ああ、ロマンスです。ロマンスが繰り広げられています。
それはそれとして2013年冬ドラマのラインナップは・・・。
(日)「八重の桜」脚本・山本むつみ
(月)「ビブリア古書堂の事件手帖」脚本・相沢友子
(火)「書店員ミチルの身の上話」脚本・合津直枝
(水)「シェアハウスの恋人」脚本・水橋文美江
(木)「最高の離婚」脚本・坂元裕二
(金)「夜行観覧車」脚本・奥寺佐渡子
(土)「泣くな、はらちゃん」脚本・岡田惠和
・・・となっている。実力派のヴェテランが男女そろって・・・基本的にロマンスを繰り広げている。大河ドラマは別として、オリジナルが三本、原作ありが三本。それぞれの脚本家の力量もそれに応じているというところだろう。
選択の傾向としてファンタジー色が濃くなっている。現実というフィクションが薄明な感じを示しているからだろう。世界的な飢餓、世界的な貧困、世界的な抗争、世界的な混沌が夜明けとともに押し寄せてくるのだな。
っていうか、結局、谷間ないのかよっ。
で、『泣くな、はらちゃん・第2回』(日本テレビ20130126PM9~)脚本・岡田惠和、演出・菅原伸太郎を見た。理解力と虚構力は似て非なるものである。このドラマを解する子供たちはかなりの理解力とそれに準じた虚構力を要求されるだろう。物心とは別に幼いころからぬいぐるみと話し、お絵かきをしながら物語を構築したり、そこにあるものをないと信じたり、そこにないものをあると感じたりする・・・そういう力が要求されるわけである。
そんな力があったってなくたって人は生きていけるのだが・・・あればあったで煩わしいし、ないとなれば人生は味気ないものになる・・・何かを楽しむためには不可欠な能力ではある。
そういう力を強化してしまうドラマであることは間違いないな。
かまぼこ工場「ふなまる水産」で働く薄倖そうな女・越前さん(麻生久美子)の棲む三次元の世界。
パートのおばちゃんたちの中ではやや若い越前さんはパートのおばちゃんたちのたくましくも傲慢な態度に今日も圧迫を受けている。「与えられた仕事くらいはきちんとやろう」という勤勉さが自堕落で適当なおばちゃんたちには全く通じないのである。
結局はおばちゃんたちの鼻息に吹き飛ばされるしかない小心者である。
そんな越前さんに忌々しさを感じる悪魔さんこと紺野清美(忽那汐里)だった。「正論を吐くなら吐くで最後まで貫徹しろ」と憤慨するのである。
しかし、越前さんよりやや若い悪魔さんが感情的になるのは越前さんが恋仇だからなのである。
悪魔さんが片思いをしているのはふなまる水産の若手社員・田中くん(丸山隆平)で、田中くんは越前さんに片思いをしているのだった。
悪魔さん→田中くん→越前さんである。
恋模様は他にも田中くんの上司の玉田(光石研)→謎のパートリーダー・矢口百合子(薬師丸ひろ子)が垣間見える。
矢口は明らかに一般常識とは異なる「何か」を秘めた存在である。
今回は「はらちゃん消失」の三人目の目撃者となる。
しかも、はっきりと消失を目前で確認しながら・・・動じないのだ。
もちろん・・・俗なる超能力であるテレポーテーション(瞬間移動)を信じているだけかもしれないが・・・越前さんの愛読するコミック「矢東薫子漫画全集」と「矢」が共通していたり、「はらちゃん」の存在をある程度、解明している様子があり・・・二次元三次元境界になんらかの関与をしている人物だと推定できる。
一方、越前さんの内的宇宙の表出物である極私的コミック「泣くな、はらちゃん」はノートの中に二次元的世界を実在させている。
そこでは「はらちゃん」(長瀬智也)、「ユキ姉」(奥貫薫)、「マキヒロ」(賀来賢人)、「あっくん」(清水優)、「笑いおじさん」(甲本雅裕)たち、コミックの登場人物たちがドリンク各種はあるけれどおつまみの存在しない居酒屋で不機嫌な造物主・越前さんに翻弄されて生きているのだった。
そんなある日、システムは明らかにされないがノートに対する物理的な衝撃により、二次元=三次元境界線を突破する奇跡が起きて、越前さんの世界に実体化した「はらちゃん」はノートが広げられるまで三次元世界に滞在することができるようになる。
「はらちゃん」は「造物主」である越前さんに直接影響を与え・・・ギターの弦とメロディーを二次元世界に持ち帰ることに成功するのだった。
しかし、それと同時に「はらちゃん」の内的宇宙も変化の兆しを見せるのだった。
越前さんのことを思うだけで胸が痛むようになってしまったのだ。
神様にいてほしいとお願いすると
神様はずっと一緒にいると答えてくれた
だけど神様は約束を守ったりはしない
いつの間にかどこかに行ってしまったんだ
越前さんの世界では本社から「新作のかまぼこ」のアイデア募集が通達された。
社員は強制参加で、パートタイマーは一応参加をお願いされるのである。
その上で、越前さんの母親(白石加代子)から「娘がマンガを描いている」と聞いた玉田は「新作のかまぼこアイデア募集」の告知ポスターをノーギャラで描くように一応依頼するのだった。
軽く興味を示した田中くんに悪魔さんの越前さんに対する嫉妬心は燃えあがるのだった。
とにかく頼まれたら断れない越前さんだった。
何よりも越前さんがつくる「かまぼこ」と悪魔さんのつくる「かまぼこ」と長沼さん(稲川実代子)のつくる「かまぼこ」が同じ値段で売られているというのがこの世の不条理なのである。
やがて・・・越前さんの極悪な弟・越前ひろし(菅田将暉)が矢東薫子漫画全集を換金するために盗み出した弾みで・・・この世に召還される「はらちゃん」だった。
越前さんの生みの親である越前秀子に泥棒と間違われ、家を出た「はらちゃん」はこちらの神の運命の糸で結ばれる田中くんと遭遇。
田中くんから猫と「マンガの猫」を教えられ、奇妙ななつかしさを感じる「はらちゃん」だった。
一方、かまぼこ工場では神と悪魔のハルマゲドン第一章が始っていた。
「私はあなたみたいな人が嫌い。え、なんでっていうその顔も嫌い。イライラするわ。世の中のことなんて自分には関係ないみたいな。私なんかまるで。私なんか全然。私なんかさっぱり。私なんてとんでもない。そのくせ、自意識バリバリ強くて、傷付くのを極度に恐れて、・・・そして自分だけを愛している」
「どうして・・・そこまで私に対して攻撃的なの・・・」
もちろん、越前さんを好きな田中くんを好きだからである。
「ちゃんとやってください。やるんならちゃんとやれっていうことです。嫌なら断れ・・・やるならちゃんとやれってことですよ」
「・・・」
「私もやるから・・・かまぼこポスター戦争勃発です。宣戦布告です」
「・・・」
「一度くらい本気で勝負しなさいよ」
悪魔さんが退出すると漸く「その勝負、お断りします」とささやく越前さんだった。
そこへ矢口百合子の制止を振りきって「はらちゃん」が乱入してくるのだった。
「なんですか・・・これ・・・マンガですか」
「悪かったわね・・・マンガで・・・すみませんでした」
「どうして神様・・・いや越前さんがあやまるんですか」
「・・・」
「越前さん・・・悪魔さんと戦うんですよね」
「戦いません」
「それはダメです。神様だからご存じでしょうが私はいつも言ってますよね。仕事なんだからちゃんとやろうよって・・・」
それは・・・越前さんが書いた「はらちゃん」のセリフなのだった。
「もういいです・・・分かりました・・・描きなおします・・・それでいいんでしょう」
「ありがとうございます」
「なんで・・・私に構うんですか」
「あなたのことが気になって気になって仕方ないのです。逢いたくなって逢いたくなってそして胸が痛いのです」
「そりゃ・・・恋かもしれないね・・・はらちゃん」と矢口百合子が口をはさむ。
「なんて・・・ピュアなんだ」と「はらちゃん」を知能に不自由な人と思っているらしい田中さん。
「これは恋ですか・・・越前さんは恋をしていないのですか」
「してません・・・」
「片思いだね・・・はらちゃん」と断定する矢口百合子だった。
そこへ玉田が警官(小松和重)を連れてやってきて連行されてしまう「はらちゃん」だった。
貧しい一家が三十円でもやしを買いインスタント豚もやしを食べ終わるほどの間を置いて、留置場に「はらちゃん」を訪ねる矢口百合子・・・。
「百合子さん・・・さっきの話の続きをしてください」
「恋には片思いと両思いがあるんだよ」
「片思いって悲しいですね・・・」
「そうとは限らないよ・・・美しいのさ・・・片思いは・・・この世界はほとんど片思いでできているんだから」
いにしえの昔・・・何千万人もの人々を片思いさせたスーパーアイドルが言うか・・・である。
「大事なものなんですね・・・大切にします・・・片思い」
その時、帰宅した越前さんがノートを開き、「はらちゃん」は二次元の世界に強制帰還してしまう。
だが・・・百合子は「うんうん」と頷くのだった。何者なんだ・・・百合子。
自分の造形物である「はらちゃん」によって心を動かされた越前さんはやる気を出してかまぼこポスターに取り組むのだった。
仕事が一段落した越前さんは「矢東薫子漫画全集1~8巻」の消失に気がつき愕然とする。
その衝撃で再び、召還される「はらちゃん」だった。
「はらちゃん」の登場に愕然とする越前さんだったが・・・「大切な漫画を捜しましょう」という「はらちゃん」の言葉に心を動かされる。
「好きなんですよね・・・その漫画に片思いしているんですよね・・・美しいんです・・・大切なことなんです・・・片思いは・・・」
手をとりあって走り出す二人だった。
愛してるって口に出さなくてもいい
ただそばにいてくれるだけでいい
永遠でなくたって構わない
そのうち・・・心は静まるから
古本屋で「矢東薫子漫画全集1~8巻」は売りに出されていた。
現在、古物の売買には身分証明書が必要なので弟の犯行は即座に判明するわけだが・・・それは不問にしたらしい越前さん。
三万円で買い戻すのだった。
御礼に「はらちゃん」にかまぼこを買い与えるのだった。
その二人の後ろ姿を目撃する田中くん。
いつもの場所で歌う悪魔さん(サングラス・ヴァージョン)に遭遇する。
恋の歌とか嫌いなんだよね
恋するために生まれて来たとかあり得ない
でも 恋をした でも 片思い
そんな自分に笑う
「良い歌ですね」と悪魔さんの正体を知らぬまま・・・微笑みかける田中くんだった。
その頃、この世には帰る場所のない「はらちゃん」ととりあえず別れようとする越前さん。
どこまでもついてくる「はらちゃん」にその場に留まるように命じる。
角を曲がって越前さんがノートを開いたために消失する「はらちゃん」・・・。
何故か・・・胸が高鳴る越前さんだった。
まあ・・・知能が不自由な人を路上に置き去りにすることに些少は問題もあるわけだが。
しかし・・・「はらちゃん」はもう自分の世界に帰還して・・・仲間たちにかまぼこを分け与えていたのだった。
一人残されてロンリー
結局あるのはメモリー
すべてが終わったみたいだけど
現実感はまるでなし
ただたださびしいだけ
ただただ胸がはりさけそう
できれば神様を信じたい
そして神様に信じてもらいたい
結局、この世ではかまぼこポスター大戦で越前さんが悪魔さんに圧勝し・・・あの世では頬にハートの烙印を捺された「はらちゃん」が神様との両思いを夢見るのだった。
そして今夜も世界の片隅で誰かがエルヴィス・プレスリーを思い出す。
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