書店員ミチルの秘密の部屋の真夏の夜の夢(戸田恵梨香)
「の、の、の、の、の」・・・「の」が五つ~。・・・多すぎだろう。
やはり、平仮名では一、二を争う可愛さだな。「の」は。
争うのは何だよ。・・・「く」だ。いや・・・「へ」だろう。・・・「く」・・・「へ」・・・喧嘩すんなよ。
やはり、「の」だな。うん、「の」だ。
いい加減にしておけよ。
で、『書店員ミチルの身の上話・第4回』(NHK総合201301292255~)原作・佐藤正午、脚本・演出・合津直枝を見た。長崎から飛行機に乗って羽田に着いたミチルは一夜が十日になり、二十日を過ぎても故郷に戻らなかったのです。ナレーションを勤めるミチルの未来の夫(大森南朋)はいつになったら登場するんだと茫然としている人はきっと多いだろうな。ののの・・・じゃなかった・・・ふふふ。
「お姉ちゃん、もう帰ってこないよ」と妹の千秋(波瑠)がつぶやく。
「そんなことないだろう・・・有り金が尽きたら戻るしかないじゃないか」と父親の継徳(平田満)は声を荒げる。
しかし・・・ミチルは宝くじ1等に当選し、2億円を入手していたのだった。
この時点で経済的に父親を圧倒していたのである。
銀行は金を神と崇める施設である。みつば銀行お客様サービス課の山本(堀杏子)は神に仕える巫女として2億円預金者のミチル(戸田恵梨香)にホストクラブのホストのような恭しい態度で応接するのだった。
高額当選した者の不安や疑問の解消に役立つよう弁護士・心理カウンセラー・ファイナンシャルプランナーなど専門家のアドバイスを基に作成された「宝くじ読本」を供物として差し出されるミチルである。
「何と言っても高額でございます。くれぐれもお間違いのないよう1,000万円以上の高額当選者の方にはそのような手引書をお渡ししております」
ミチルは生れてこのかた・・・このような恭しい態度で崇められたことは一度もなかった。
不倫相手の豊増一樹(新井浩文)によるお姫様扱いに心が揺れたミチルにとって、この応接は甘美そのものである。
「まずは当選金を安全な場所に置くことですが・・・古川様は全額、当行にお預けいただけましたのですでにクリアされたと申せます。しかし・・・古川様は今、極度の興奮状態にあると存じ上げます。興奮にまかせて当選したことをあちこちでお話になったり、大盤振る舞いをなさったり、急いで仕事をお辞めになったりすることはお控えくださりますように。極力、以前と変わらない生活を心がけてくださることをお勧めいたします」
「・・・」
「ご当選なさったことは古川様を人生の勝利者にしたわけではありません」
「・・・」
「当選したことを誰に伝えるのかはくれぐれも慎重にお考えくださいませ。人間は秘密を守れない生き物だということをお忘れなきように・・・」
「はい」
ミチルはこうして野に放たれたのだった。
そんな事とは露知らず・・・すでにミチルの心では過去の世界となった長崎で「夏休みのキャンプ」でのミチルとの情事を腰が抜けるほど楽しむつもりだった上林宝飾店の後継者の久太郎(柄本佑)が今にもカクカクと腰を振りそうな勢いでミチルの同僚で実生活では妻の初山春子(安藤サクラ)に縋っていた。
「ねえ・・・ミチルちゃんから・・・何か連絡ありませんか・・・僕はたっぷりセックスする予定が狂って気がおかしくなりそうなんです・・・僕は何かミチルちゃんを怒らせたのではないでしょうか」
「さあ・・・そんなことはないと思いますが・・・」
ミチルが豊増一樹とのセックス満喫旅行に出かけたこと以外は知らない春子は答えに窮するのだった。
さすがに「他の人とセックス三昧です・・・」とは言えないからである。
痺れを切らした久太郎はミチルよりも古株の店員・タテブーこと立石武子(濱田マリ)を問い詰める。
豊増一樹のもう一人の浮気相手であるタテブーは久太郎と話すうちにミチルと豊増一樹の関係を一瞬疑う。
その気配で久太郎は漸くミチルの不可解な行動の裏に男の影を感じるのだった。
一方、ミチルは愛人の豊増一樹に秘密を打ち明けようと考える。
しかし、豊増一樹が「夏休みに妻の実家で過ごすためにしばらく会えない」切り出したことで我に帰るのである。
自分を遊び相手と考えている男に重大な秘密をもらすのは危険なのだ。
秘密を分かちえない男との関係は虚しい。
自明の理を今更ながら思い知るミチルだった。
しかし・・・とミチルは思う。
2億円あるんだから・・・とりあえずいいか。
大金には男を忘れさせる価値があるのだった。
そんなミチルに二人の怪しい女が接近する。もちろん、特に怪しいわけではないが、資産家はすべての人間は怪しいと考えるべきなのである。そうでないと人知れず埋められてしまう可能性があるからだ。
一人はミチルが仮住まいする部屋の主で幼馴染の竹井輝夫(高良健吾)の大学の後輩である高倉恵利香(寺島咲)である。
ミチルは竹井が同性愛者と思いこんでいたので恵利香は女友達の女友達という認識だった。
一方で美人行員の山本はミチルの担当者としてアドバイスをする。
「心機一転、東京で新生活を始めたらいかがですか。幸せをつかむ絶好のチャンスが目の前にあるのかもしれませんよ」
山本にとってミチルの預金は運用対象である。美味く運用して将来はスイスに行きたいと考えているのかもしれないのだった。
しかし、ミチルはその気になった。
ミチルが引っ越すと言うと竹井は顔を曇らせ、恵利香は顔を輝かせる。
恵利香はミチルの引っ越しを積極的に支援するのだった。
「小さい頃の竹井先輩はどんな人だったんですか・・・」
「いつも歌ってたな・・・私の後を追いかけてね・・・女の子みたいで・・・まるで妹のように・・・好きだった歌は・・・」
骨まで溶けるような
テキーラみたいなキスをして
夜空もむせかえる
激しいダンスを踊りましょう
カリビアン・ナイト もっと私を見て
燃えつくすように
「ユーミンの真夏の夜の夢ですか・・・」
やがて・・・引っ越しの手伝いなどをしてくれた恵利香に少し心を許すミチル。
「ミチルさんは・・・竹井先輩の恋人なのかと思ってました」
(なわけないでしょ・・・竹井はゲイなのに)
「だけど・・・違うんですね」
(当たり前でしょ・・・竹井はゲイなんだから)
「私・・・竹井先輩とつきあってるんです」
(あっそう・・・えーっ・・・竹井はゲイなのに)
「私・・・ミチルさんの新生活を応援しますから・・・ミチルさんも私を応援してください」
(いや・・・それは・・・竹井はゲイ・・・のはず)
果たして・・・竹井はゲイではないのか・・・それとも恵利香は付き合っているつもりでただのお友達なのか・・・いや・・・やはり・・・竹井はミチルを神とあがめるストーカー的な熱愛者なんじゃないのかな。
もっとも・・・竹井が何であれ、恵利子がどうであれ・・・ミチルにはどうってことのない話である。
なにしろ・・・ミチルは2億円の預金がある女なのだ。
一応、豊増一樹と家具もない部屋の床の上でそこそこ燃えるようなセックスもしたりして・・・。
なんだかんだと家具も揃った頃。
恵利香は引っ越し祝いとしてガラスの器をミチルに贈った。
いかにも・・・重量、硬度的に凶器になりそうなアイテムなのである。
その夜、ミチルの部屋でささやかなお祝いをするために竹井の到着を待っている二人・・・。
そこへ・・・どのように嗅ぎつけたのか・・・久太郎が出現したのだった。
「僕だよ・・・ミチル・・・いるんだろう・・・開けてくれよ」
ミチルにとって過去の亡霊が出現したようなものだった。
そして・・・次週・・・久太郎は本当に亡霊になるらしい。
もう・・・夜更けのドラマとしては殿堂入りの面白さでございます。
濡れ手に粟の2億円の預金通帳を持っている女のタイトロープな感じ半端なしだから。
関連するキッドのブログ→第3話のレビュー
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コメント
こんにちは~。
>あっそう・・・えーっ・・・竹井はゲイなのに
そうでした!
それでスッキリ納得。
ミチルは…
満更おバカさんでもなく、小悪魔でもなかったんだ(笑)
キッドさんの描写がリアルすぎて、一樹とミチルが
おバカップルに見えて仕方なかったんですもん。
しかし今回は驚きましたね~。
ここで久太郎が死んでしまうなんて。
ナイスなタイミングーヾ(゚∇゚*)オイオイ
もう次回が待ち切れません!
私の体内時計では、
3日ぐらいで一週間が来るので大丈夫(ノ∇≦*)キャハッッッ♪
それでは、今年もよろしくおつき合い下さいませ(^-^*)/
投稿: mana | 2013年1月30日 (水) 16時25分
あけましておめでとうございます。
ミチルはきわめて普通の夢見る女でございましょう。
君は本当は宝石なんだと言われれば輝く。
一緒にいたいと思ったらどこまでも追いかける。
邪険にされたら畜生と思う。
利用できるものは利用する。
未練もあれば邪推もする。
まさに、普通の女の中の普通の女でございます。
キッドはミチルの性生活の描写に
ものすごくエロではなくて萌えを感じまする。
かわいいよミチル、かわいいよ・・・ですな。
もう久太郎のうざさは超絶的でしたので。
そろそろ殺されて・・・然るべき・・・でしたな。
宝くじが当たると・・・隠された人間の中の悪魔が目を覚ますのですな。
はたして・・・夫が妻に
妻が夫に
当選の事実を伝えるものなのか・・・。
キッドは絶対に隠しますぞ。
つまり、あなたの夫が
あるいは・・・あなたの妻が
宝くじに当選しているかもしれないっ。
そして、それをあなたに隠しているかもしれない。
そう妄想できるのがこのドラマの醍醐味。
家族なんて2億円あったら・・・
吹けば飛ぶようなものかもしれない・・・
まさにサスペンスでございます。
ののの・・・いや、ふふふ
投稿: キッド | 2013年1月31日 (木) 05時26分