日本一うざい夫(瑛太)・・・無自覚と最高の離婚(尾野真千子)
まあ、饒舌だからってうざいとは限らないと思うが・・・周囲の人々がさすがに困るレベルである。
祖母の濱崎亜以子(八千草薫)が「将来は犯罪者になるしかない」と推察していた孫・濱崎光生(瑛太)・・・。
本人に自覚がないというのは・・・本当に恐ろしく面白いのである。
動物が好きな人間に悪い人はいないというが・・・始末に負えない人間も多いのだな。
そういう変な男が踊り出すラブコメ・・・これは見逃せないなあ。
で、でっていう『最高の離婚・第1回』(フジテレビ20130110PM10~)脚本・坂元裕二、演出・宮本理江子を見た。「わたしたちの教科書」「mother」ととぎれどぎれに傑作を書き下ろす脚本家なのだが・・・ここのところ・・・ハズレないのだな。もう凄い脚本家になっちゃったのかもしれないなあ。
とにかく・・・日常生活の不満を小牧歯科医院の歯科衛生士・海野菜那(芹那)相手に治療中にぶちまける光生である。もう歯科医院一同、生きた心地がしないレベルの不気味さである。
「ドアを閉めないんです。ドアは開け閉めするからドアでしょ。妻の好きな三浦春馬はドアの開け閉めはキチンとすると思うんですよ。洗面所が濡れていても平気なんですよ。いやでしょ、水滴の跡とか、タオルがしわしわになっていたりしたら、窓を閉めるときに網戸を閉めないんですよ。季節とか関係ないでしょ。なにか不純なものが紛れ込まないように窓を開けても網戸があるということに安心感があるわけですよ。東京じゃ真冬だって蚊はいるんです。富士山のふもとじゃどうかしらないが東京は冬でも網戸は網戸なんですよ。ああ、できたら猫とだけ暮らしたいですよ。結婚生活なんて一年中梅雨みたいなもんですよ。そして拷問ですよ。ギザギザの石畳に座って膝の上の石を乗せられて無実の罪を白状させられるような日々ですよ。野球なんて最高にばかばかしいでしょ。バットでボールを打って何が楽しいんだか。スポーツなんて競馬で充分ですよ。だって馬が走るんですよ。最高でしょう。第73回菊花賞(2012年)を見ましたか。父ステイゴールドよりも母の父メジロマックィーンの血が濃いのか芦毛のゴールドシップが直線で持ったまま先頭に立つと他馬を寄せ付けず押し切って皐月賞に続いて二冠制覇ですよ。映画を見るために待ち合わせすれば必ず遅刻なんですよ。しかも始っちゃった映画を平気で見るんですよ。冒頭十分見逃してばっかりですよ。映画は全部ミステリになっちゃうんですよ。引き出しだっていつも開けっ放し、洗濯物は干しっ放しです。け、結婚生活ってみんなこんなもんなんですか」
夫以外の夫の家族とは気の合う妻・濱崎結夏(尾野真千子)に夫の祖母は言う。
「女は損よねえ・・・女は好きになっちゃうと男を許してばかり・・・男は好きになると許せなくなるのよねえ」
「わが軍の被害は甚大ですね」
「あんな子を好きになってくれて・・・有り難いと思っているのよ」
「えへへ・・・」
妻は夫の祖母の興したクリーニング店を引き継ぎ、夫は自動販売機設置会社の営業をしている。そのつきあいで草野球をした夫は運動不足がたたり軽いギックリ腰を発症。
学生時代の恋人であるアロマ系のマッサージ師の上原灯里(真木よう子)に再会する。
繊細なマッサージのテクニックでたちまち・・・昔の恋に燃えあがる夫。
光生と灯里・・・明るい感じの二人がなぜ別れたかはいまのところ、伏せられている。しかし、夫・光生の性格が一朝一夕で出来たとは思えず・・・ものすごく相手を傷つけていることは間違いないのである。そして・・・そのことをきっと彼は無自覚なのだ。
とにかく・・・積極的に昔の同棲相手にアタックを開始する光生なのだった。
その頃、光生の周囲には自転車に乗った色男・上原諒(綾野剛)が出没する。
ガールフレンド(小野ゆり子)とさりげなくいちゃいちゃする姿は光生の妄想を激しくかきたてるのだった。
光生と灯里が食事中に震度4の地震が発生。
光生は唐突に妻との出会いを語りはじめる。
「あの日・・・僕は神保町の勤め先から当時住んでいた府中のアパートまで30キロメートルを帰宅難民として歩いていました・・・ふと・・・得意先の受付の女の子が目にとまったんです・・・なんとなく声をかけて・・・なにしろ特別な日だったので・・・なんとなく気持ちがハイになって・・・なんとなくやすらいで・・・なんとなく手をつないだりして・・・好きとか嫌いとかじゃなくて・・・なんとなく一緒に暮らし始めたんです」
「・・・いい思い出じゃないですか」
「・・・え」
光生は口説き損なったのだった。
そんなある日、光生は灯里から夫を紹介される。
もちろん・・・それは上原諒なのだった。
軽い喪失感を感じつつ帰宅した光生を待ちうけていたのは妻の「離婚届出してきた」の一言だった。
「意味わかんないんだけど・・・」
「あなたには・・・一生わからないかもね」
あの地震の日、夫のために料理を作っていた妻は揺れる部屋で軽く足の裏を切ってしまった。
その時、夫が妻に送ったメール。
「盆栽は大丈夫かな?」
・・・突然、一人寝の身の上となった光生だった。
あはは。あはははは。あははははははははは。
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