スティングみたいなラッキーセブン~騙しの初心者たち~その微妙な手口(松本潤)
さて、今回はズバリ映画「スティング」(1973年)みたいなことがしてみたかったらしい。
で、タイトルの元ネタは「スティング」のネタ本であるとされる「The Big Con: The Story of the Confidence Man(騙しの天才たち:その華麗なる手口)/David Maurer」から頂いてみた。
要するに「詐欺をもって詐欺を征する話」である。
まあ、現代のギャングたちが「オレオレ詐欺」で稼いでいるのは「スティング」が悪いという考え方もありますな。
気がつけば・・・「スティング」も40年前の映画である。ジョージ・ロイ・ヒル監督が没して十年も経つんだもんな・・・。
ひょっとすると名画愛好家でなければ・・・お若い人の中にはその存在さえ知らない人も多いかも・・・。
お正月は・・・深夜にそういう映画もたまには流してほしいよね。ま、レンタルすればいいんだけどね~。
ま、だからこそ・・・「スティング」ごっこは許されるという考え方もありますがーーーっ。
で、『ラッキーセブンスペシャル』(フジテレビ20130103PM9~)脚本・井上由美子、演出・松山博昭を見た。悪はそもそも知的なものなので・・・ことさらにコン・ゲーム(知能犯罪)というのもおかしい話なのだが・・・ジャンルというものはそういうものなのだな。あえて分けているのである。「ゼブラーマン」で浅野さんの考える「実力を行使しないことが善」みたいな白黒はっきりつけた考え方なのである。で、ビッグ・コンと言えば大がかりな詐欺ということになる。「ニセの場所、ニセの人々を本物だと信じ込ませる」のがポイントである。誰にって・・・そりゃカモ(騙される人)にである。
一般的に騙されるのは正直者と相場が決まっているが・・・実はそうでもない。
カモというのは・・・「不利を有利に変えようとするもの」なのである。
たとえば・・・「息子の示談金をふりこむおばあちゃん」は「息子が罪を償うべきだと考える正直者」ではなく「息子の犯した罪を消せるものなら消したいという欲望にかられるもの」と考えることができるわけである。
詐欺師というのはそういう人の邪心につけこむ犯罪者なのである。
まあ・・・悪魔の言うことなので聞き流してください。
今回はラッキーセブン探偵社は詐欺に詐欺で応じようとする。それ自体は痛快なことなのだが・・・正義の味方が犯罪を犯してはまずいので・・・そこをなんとか言い逃れなければならないのである。
公序良俗を守るドラマ作りって苦しいのよね。
依頼者は湧永勝(中丸雄一)・・・老舗和菓子店の三代目だった。
しかし、二代目経営者の湧永隆造(平田満)は巨大な負債を残して失踪してしまったのだった。
「僕もボンボンですが父もボンボンなのです・・・自殺したりしないかと心配なんです」
北品川ラッキー探偵社の藤崎瞳子社長(松嶋菜々子)は鼻の聞く犬こと時多駿太郎(松本潤)と木のぼりの上手な猿こと新田輝(瑛太)に隆造の捜索を命じるのだった。
聞き込みをすると浮かび上がったのが・・・二代目経営者に親切な天才経済学者の天野教授(及川光博)だった。
その美人秘書である栗原みづき(石原さとみ)に「ジャスミンの香り」を嗅ぎつけた俊太郎は胸をときめかせるのだった。
隆造は天野教授の経営セミナーに足繁く通い、秘書のみづきとも交際していたらしい。
そして・・・どうやら狙われるのはガードの甘い二代目経営者ばかりらしい。
そこで「レストラン」を経営する二代目経営者に変装した俊太郎はセミナーに潜入捜査を開始する。
そこへ天野に恨みを抱く被害者が襲撃、期せずしてみづきの身を守ることになった俊太郎は探偵の本分を忘れて色恋方面に流れ始めるのだった。
ついに隆造が天野の前に姿を見せる。
しかし、暴力的な闇の組織と繋がっている天野には屈強な非合法ガードマンが付随していたのだ。
返り討ちになりそうな隆造を俊太郎は鍛えた格闘技でなんとか救出する。
「天野から紹介された金融業者から融資を受けるために五千万円の保証金が必要だと言われて・・・用意したんです・・・そしたら・・・振り込まれるはずの金が振り込まれなくて・・・金融会社に行ったらもぬけのからでした・・・」
「・・・」
「私がバカでした」と隆造は飛び降り自殺を図るのだった。
目の前で隆造に飛びおりられた俊太郎はものすごくもやもやするのだった。
その頃、警察は詐欺事件の黒幕の磯部(嶋田久作)を取り逃がすが、末端の情報提供者を確保する。
桐原由貴(吹石一恵)は一計を案じ、探偵・旭淳平(大泉洋)を留置場に送り込むのだった。
そうなのか・・・そうでも妄想しないと警察の留置場が狭すぎるんだよ。
ボギー「世界には留置場は星の数ほどあるのによりによってなぜここにきた」
・・・という運命ではダメですか。・・・絶対にダメだ。
淳平はしがない探偵であることを情報提供者に信じ込ませることに成功し、磯部への接触ルートを割り出すのだった。
復讐心に燃えた俊太郎は天野から五千万円を騙し取ろうとするが・・・所長は「それ、犯罪だから」と認めない。
そんなことで妥協することのできないお子様な俊太郎はビッグ・ストア詐欺を開始する。
廃屋を「レストラン」に改造し、店を担保に天野から五千万円を融資してもらう作戦である。
一週間はかかりそうな改装工事を一日で終えるために水野飛鳥(仲里依紗)と茅野メイ(入来茉里)もかけつける。
ゼブラクイーンなみの底力で「レストラン」は完成するのだった。
ふふふ・・・昨日は瑛太、一昨日は仲里依紗・・・の記事になっているのが「流れ」というものです。
まあ・・・命の恩人の俊太郎と愛人の天野の間で揺れる秘書みづきの女心の挿入もあるのだが・・・まあ、あくまで彩り程度である。
ここからは・・・「お金を騙し取ろう」とする者同士のいわば「カモ」VS「カモ」の対決である。
俊太郎は「三億円を借りるための保証金の一部を融資してもらい五千万円をだまし取ろう」としているし、天野は「保証金の一部である二千五百万と担保にとった店をだまし取ろう」とするのである。
しかし、小切手では・・・俊太郎は勝てないのだった。
そこへ・・・新田が投資会社の営業員として乱入する。
「もっといい融資先があります」と話に割り込むのだった。
別室に行った俊太郎と新田に・・・天野が割り込む。
「その融資先はやめた方がいい。倒産寸前の会社だから・・・その男は詐欺師ですよ」
「ちくしょう・・・今日はこの辺にしといてやる」と退散する新田。
「先生の情報のおかげで助かりました」
「いえ・・・それでは契約を・・・」
「先生、今ので急にこわくなりました・・・先生を疑うわけではないのですが・・・現金でお願いできませんか」
「いいでしょう・・・」
天野は五千万円を用意する。
そこへ社長が登場である。
「そこまでよ・・・」
「どういうことです・・・」
「あなたと磯部がつながったということ」
「・・・」
「あなたが先ほど入手した情報は私の部下の筑紫(角野卓造)が流したでたらめの情報なの・・・その情報をあなたがどうしって知ったのか・・・通信履歴でわかるのよ・・・なにしろ・・・向こうでは後藤刑事(金田明夫)が磯部を逮捕しているし・・・」
「あなたは私が逮捕するからです・・・」と桐原刑事が手錠を取り出すのだった。
「そりゃ・・・まいったな・・・しかし・・・こりゃ、囮捜査だから・・・違法だろう・・・」
「なんですか・・・それ・・・」と桐原刑事。
「さあ・・・知りません」と社長。
「知らないって・・・五千万円・・・そこにあるだろう・・・」
「この五千万円って・・・湧永隆造さんの五千万円なので・・・私の方から返却しておきますよ」
「なんだって・・・」
「とにかく・・・被害総額何十億円の事件だから・・・五千万円くらい辻褄合わなくても警察としては構わないと判断します」
「そりゃ・・・無茶だ」
「だまれ・・・極悪人・・とっとと歩け」
「ひーっ」
「まあ・・・相当、甘い結末だけど・・・お正月だからいいわよね・・・俊太郎、何か言うことあるでしょう」
「ごめんなさい」
「まあ・・・でも・・・末っ子の我がままをフォローするのがラッキーセブンですものね。みんなも適当に出番あったし、まあまあの出来だったわよね」
「そうですね」とあきらかに共犯なのにお目こぼしされたらしいみづきは頷くのだった。
とどめの一撃(スティング)である。
まあ・・・お正月なのでこのくらいにしとくけどね。
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