泣くな、はらちゃん(長瀬智也)と言ってもきっと泣くのよね(麻生久美子)
♪~しゃくなげの花をください。五本の束でください。お金ならあります。ウチにはそんなもりありゃしねえ。おととい来やがれ。・・・そうですか。・・・誰が三日月くんの歌を歌えといった。
ちなみにしゃくなげの花言葉は「危険」「警戒せよ」である。割と好きな花だと言える。
五本の束だと「危険」「警戒」「危険」「警戒」「キ・ケ・ン」って感じだな。
もちろん・・・麻生久美子は美しい女優である。
美しいということはそれだけで悪の香りがするものなのでしゃくなげはその警告を伝える花としてふさわしいのだ。
一方で長瀬智也といえば・・・白線流しの大河内渉、池袋ウエストゲートパークの真島誠と二枚目と三枚目どちらのキャラもできる貴重な帝国武将である。しかし・・・最近では後者の方が圧倒的に面白い。つまり、「歌姫」よりも「うぬぼれ刑事」なのである。
だから・・・マンガの世界の住人という今回のキャラクター設定は絶対に面白いと断言できるのだ。
そして長瀬智也×麻生久美子なら絶対にロマンチックである。
まさに期待を裏切らない仕上がりでございます。
で、『泣くな、はらちゃん・第1回』(日本テレビ20130119PM9~)脚本・岡田惠和、演出・菅原伸太郎を見た。例によっていかにも津波に襲われそうな港町である。おそらく三浦半島風なのであろう。かまぼこ工場「ふなまる水産」で働く薄倖そうな女・越前さん(麻生久美子)はパートのおばちゃんたちと折り合いが悪く、物凄くフラストレーションがたまっている。そんな越前さんを謎のパートリーダー・矢口百合子(薬師丸ひろ子)は生温かく見守るのである。
ちなみに作中に矢東薫子漫画全集が登場し、越前さんの描く極私的愚痴マンガ日記の「泣くな、はらちゃん」と相似したキャラが描かれている。
単に・・・お手本なのかもしれないが・・・一世を風靡した創作者が零落してパートタイマーになっているのはよくあることである。
矢口か、越前さんのどちらかが矢東だったのかもしれない。
そんな越前さんに現実世界で思いを寄せるのがタニシじゃなくてふなまる水産の社員・田中くん(丸山隆平)である。「ボーイズ・オン・ザ・ラン」で新境地を開いていて存在感がある。
そんな田中くんに想いを寄せているのが越前さんの同僚の紺野清美(忽那汐里)である。シンガー・ソング・ライターなのでかまぼこを作るのは仮の姿なのである。
田中くんへの恋を歌ったのはこんな歌。
恋の歌とか嫌いなんだよね
どれもみな同じ
わからない
歌いたくない
似合わない
でも恋をした
でも片思い
一瞬の笑顔と・・・越前さんと田中くんに向ける屈折した表情でそれを表現する紺野清美・・・なかなかなのである。
パートのおばさんたちは世知辛い。弱いものは踏みつけにして生きている現実の世界の住人である。
越前さんはそんなおばさんたちに踏みつぶされると怨み辛みを鉛筆書きの自家製コミックにぶつけるのだった。
だから・・・コミック「泣くな、はらちゃん」の主人公・はらちゃん(長瀬智也)の棲むノート内宇宙は暗く呪詛に満ちた居酒屋で・・・はらちゃんは呪いの歌を歌うのだ。
世界中の敵に降参します
戦う意志はありません
世界中の人の幸せを祈ります
誰の邪魔もしません
静かにしています
だからお願い
そっとしておいて
おかしいですか?
人はみなそれぞれちがうものでしょ
冒険でしょでしょ
でしょでしょでしょ・・・と。
越前さんが憲法九条的な毒を吐き終わるとノートは閉じられる。
そらに きらきら おほしさま
みんな スヤスヤ ねむるころ
みんなは キャラを 脱ぎ捨てて
おどる マンガの チャチャチャ
・・・を始めるのだった。
その中でいかにも越前さんの分身であるユキ姉(奥貫薫)はビール・サイダー・カクテル・ウイスキー・ハイボールなどを背に世界の危機と神様の存在についてはらちゃんに語るのだった。
「この世界の外には神様の棲む世界があるの」
「・・・」
「そこではギターの弦が六本で・・・歌にはメロディーがあるのよ」
「・・・」
「私・・・そこに行ったことがあるもの」
「・・・」
「神様が・・・暗い気持ちになれば・・・この世界も暗くなる」
しかし・・・内的宇宙の住人たちには夢のような話でしかない。
ところが・・・越前さんの破壊的な家族たちは・・・ノートを粗末にすることで異次元の扉を開いてしまうのだった。・・・なんでだよ。
越前さんの弟・ひろし(菅田将暉)はあろうことか・・・姉のノートを窓から投げ捨てる人でなしぶりを発揮するのである。
こうして・・・現実世界と虚構世界の境界線は破綻し・・・その亀裂から「はらちゃん」はこちらへと侵入したのである。・・・たまにあることなのだな。
こちらの神様のはからいにより・・・たちまち運命に導かれて田中くんと遭遇し、「神様」である越前さんに接近する「はらちゃん」だった。
田中くんの上司の玉田(光石研)は一目で純朴な「はらちゃん」を気に入り、雇用する気になるのだった・・・こちらの世界はどんだけ人手不足なんだ・・・。やはり、みんな海岸線を警戒中だからか。ここにいる人たちは基本、捨て鉢なのか。
「神様、幸せになってください」とストレートに直訴する「はらちゃん」・・・。
たちまち、警官(小松和重)のお世話になってしまうのだった。
謎のパートタイマーである矢口百合子は留置施設の「はらちゃん」に告げる。
「あなたはまちがっている・・・世界を変えようと思ったら自分が変わらないとだめよ」
なぜか・・・矢口は・・・いつでも自信満々なのである。何様なんだ。まさか・・・高倉健に背負われた過去があるのか。「お父さん怖いよ。何か来るよ。大勢でお父さんを殺しにくるよ」とか予言してたのか。
・・・おい。
お約束で越前さんがノートを開くと・・・漫画世界に召還されてしまうらしい。
留置施設から忽然と姿を消す「はらちゃん」だった。
「はらちゃん」の乱入でさらにストレスを感じた越前さんは作品世界に暴力の風を吹かせる。
「殺すしかない」から「死ね」に飛躍してマシンガンが連射されるのだった。
ダダダダダダダダダダダ
ダダダダダダダダダダダ
ダダダダダダダダダダダ
ダダダダダダダダダダダ
ハチの巣になるキャラクターたちだった。
今度は越前さんの母親の秀子(白石加代子)がノートをハエ叩きとして使用し、二次元三次元境界線は再び破損する。・・・まあ、よくあることだよな。「ハレンチ学園」とかだな。「ドラ」とか「クレ」とかでは逆流日常茶飯事だしな。今度はきゃりーぱみゅぱみゅだしな。
今度は紺野清美と遭遇した「はらちゃん」・・・紺野の弾き語りにより「メロディー」を入手したのだった。
そして・・・ふたたび越前さんに迫るのだった。
「神様が幸せになるために・・・命をかけてなんでもします」宣言である。
「あなた・・・何者なの」
「「はらちゃん」です」
驚いた越前さんだが・・・足元にノートを発見・・・恥辱で赤面するのだった。
「勝手に読んだのね・・・」
「この世界は素晴らしい・・・ギターの弦は六本あるし・・・歌にはメロディーがあります」
「何言ってんのよ・・・」
その場を立ち去った越前さん。
ノートを開くと・・・紺野清美の前から消失する「はらちゃん」だった。
警官に続き、紺野も異常現象の体験者となったのである。
自宅に戻った越前さんはふと・・・ギターの弦を描き加え、♪~も描き添える。
こうして「泣くな、はらちゃん」の世界にメロディーが生まれたのだった。
だからお願い
かかわらないで
そっとしておいてくださいな
後ろ向きな歌詞を恋の歌のメロディーで明るく歌い上げるマンガの世界の仲間たちだった。・・・不憫だな。そして、かわいいよ、はらちゃんかわいいよである。
関連するキッドのブログ→最後から二番目の恋
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コメント
キッドさん☆こんばんは(^O^)/
久々の長瀬君主演ドラマ しかも河野Pということで1番楽しみに初回を待っていましたが なかなか始まらないし 題材が奇想天外なんで不安な気持ちも強かったです
もう始まってすぐに惹きこまれました(^^)
でもこの枠に合っていない気がして退屈だと感じる人のほうが多い気がしましたが はらちゃんが田中君と会うシーンあたりからテンポがよく楽しくなって安心しました
丸山君 コメディー演技上手ですね♪
紺野さんもいい味だしてました
次回以降 コメディー色を少し強くしてみんなに愛される はらちゃんになって欲しいな なんて思ってます
投稿: chiru | 2013年1月20日 (日) 21時46分
シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃいませ・・・大ファン
まさにあっと驚く設定でございますね。
しかし、前季が「悪夢ちゃん」その前が「ゴーストママ」の枠でございますからね。
いつも通りといえばいつも通りでございます。
「二次元世界から三次元世界に出てきちゃいました」
という「はらちゃん」はなにしろ心の中が白紙ですからな。もう、かわいいのなんのって・・・でございます。
これは素晴らしいファンタジーでございますなあ。
やはり、麻生久美子のドラマにおける出てくるだけでゴージャスな感じは不滅と言えましょう。
悪魔さんの演技力抜群さも冴えてましたな。
踊るだけでなく歌えるところがさすがでございます。
歌えるメンバーが揃っているので
今後も面白い歌が続出したら
ハッピーですなあ。
どちらかといえば
哀愁漂うラブロマンスになっていく・・・と
思いますがはたして・・・。
キッドの妄想では
越前さんはかっての漫画家矢東薫子で・・・
パートリーダーの矢口さんは
「はらちゃん」と同じく
マンガから飛び出したキャラなのでは
ないかと・・・。
投稿: キッド | 2013年1月21日 (月) 01時52分