書店員ミチルの身の上話の身の下話の終焉、金の入り目が縁の切れ目ですか?(戸田恵梨香)
大島弓子の「ノン・レガート」で、主人公は宝くじ3000万円が当たり、弁財天にお賽銭を1円投入。
これに対し弁財天は「だめだわ・・・あんた・・・」とつぶやく。
このドラマの主人公のミチル(戸田恵梨香)の無軌道な生き方に・・・同期入社の春子(安藤サクラ)は「あんた・・・このままじゃ駄目かもしれない」と忠告する。
つまり、安藤サクラは弁財天の転生なのである・・・それはどうかな。
まあ、フィクションの系譜的にはそうなると考える。
前回までは原作者の願望のままに性欲に支配されて我を忘れていたミチルだったが・・・ついに「大金」という「全能の力」に接し、ますます我を失うのである。
あは・・・あははははははははははははははははははははははっ。
で、『書店員ミチルの身の上話・第3回』(NHK総合201301222255~)原作・佐藤正午、脚本・演出・合津直枝を見た。出版社の光潤社営業部主任・豊増一樹(新井浩文)とのアバンチュールのために上京してしまった長崎の広林堂書店の店員・古川ミチルはだらだらと帰郷を十日間も伸ばし、ほぼ無断欠勤、ほぼ無断外泊の日々を過ごしたあげくに預金全額引き出しという父親の釣り船店ふるかわ丸主人(平田満)による兵糧攻めに遭うのだった。そのために・・・茫然自失のまま・・・なんとなく同僚たちに頼まれた宝くじの当選確認のために最寄りの宝くじ売り場に立ち寄るのだった。
「あ・・・お譲さん・・・おめでとうございます・・・高額当選、1等2億円です・・・」
「え」
「1等の当たりくじを生きているうちに拝めるなんて・・・」
バラくじにたいして「すりかえ用のくじ」を宝くじ売り場のおばちゃんは確実に一枚用意しているにちがいないという妄想を越えて・・・当たりくじを拝む東京の宝くじ売り場の女(田島令子)だった。
「換金はみつば銀行で・・・」
急激な体温の上昇により乾燥したミチルはアバンチュールのことも失念し、当選発表の掲載された新聞を購入すると東京の寄宿先である幼馴染の大学生・竹井輝夫(高良健吾)の部屋に戻るのだった。
1等2億円07組165874
「07組・・・165・・・874・・・・・・・・07組・・・16・・・58・・・74・・・・07組16587・・・4」
どう見ても当たっているのである。
その日から読む本
おめでとうございます。今あなたは、突然訪れた幸運に驚きと喜びを感じていることでしょう。同時に初めての経験を前にして、少しばかり不安をおぼえているかもしれません。
このハンドブックは、そんな不安や疑問の解消に役立つよう、弁護士、臨床心理士、ファイナンシャルプランナーといった専門家のアドバイスを得て作成されたものです。内容的には、当せん直後から徐々にやっていくべきことが順を追って書かれています。
ただし、このハンドブックで触れているのはごく一般的なことですので、当せん者が現在から将来にかけて直面するかもしれない、すべての不安やトラブルを想定したものではありません。そして当せん金の使いみちなどに関する最終決定の責任は、言うまでもなくあなた自身にあります。このハンドブックを読みながら、それらをゆっくり整理していきましょう。
もはや・・・行き交うすべての人々が凶悪な強盗に思えてなりません。
あのサラリーマンも、あの主婦も、三輪車の幼児も私の当たりくじを狙っているのです。
できるだけ・・・一人になりたい気分のミチルである。
その頃、故郷では一樹のもう一人の愛人・タテブーこと立石武子(濱田マリ)がミチルのことではなく、ミチルに購入を頼んだ宝クジのことを思い出しています。
「あ・・・今日は宝くじの当選発表・・・」
ミチルの上司の沢田早苗(浅田美代子)も「あの娘はどうでもいいけど・・・宝くじは回収しないとね」
すぐにミチルに郵送するように春子に指示する二人だった。
待ち合わせのしゃぶしゃぷ屋で待ちぼうけを食らう一樹。仕方なく電話である。
「ミチルちゃん・・・どうしたの・・・具合でも悪いの・・・」
「あ・・・あの・・・私・・・なんだか・・・クラクラしちゃって・・・」
「大丈夫・・・?」
「・・・ええ」
「じゃ・・・今日はゆっくり寝て・・・明日電話してね」
「・・・ありがとう」
ミチルは幼い日の亡き母(鍵本景子)の神・イエス・キリストへの祈りをふと回想する。
「私が死んだあともこの子をお護り下さい。どうか・・・この子が幸せになりますように。
どうか・・・お護り下さい」
(この世に産んだお母さん・・・私、幸せになれるかも・・・)
この世に生れた子供の多くは・・・自分が幸せだとはたいして思っていないわけなのだな。
なにしろ・・・ほとんどの子供たちは宝くじで高額当選しないのである。
幸せって高額当選だけですか・・・いや、失言でした。それだけに決まってますよね。
第一部
今すぐやっておきたいこと、やってはいけないこと(中略)
第二部
落ち着いてから考えること
1.当選者にしかわからない悩み、知っておこう
・ひとりでも人に話せば、うわさが広まるのは覚悟しよう
その時、長崎の春子から電話が・・・。
ミチルが応答するとすかさず割り込むタテブーだった。
「私たちの宝くじのことだけど・・・買ってないなんてことはないでしょうね」
「買いました」
「どこで・・・買ったの・・・」
「東京です」
ミチルは嘘をついた。もう、嘘をつかずにはいられないのである。買ったのは長崎のバスストップ前の宝くじ売り場の女(大島蓉子)からだった。
宝くじ売り場の配役・・・濃厚だな。
「あきれた・・・あの日から東京に行ってたの・・・まあ・・・いいわ。私と沢田さんが五千円でそれぞれ16枚、初山(春子)さんが三千円で10枚、全部で42枚・・・ちゃんとあるわよね」
「あ・・・多分」
「じゃあ・・・すぐ送ってちょうだい」
「お釣りの200円もね・・・沢田さんの200円は餞別だって」
「わかりました・・・」
ミチルは・・・強烈な誘惑にかられながら・・・もちろん、持ち逃げのである・・・とりあえず枚数をチェックする。
10枚・・・10枚・・・10枚・・・10枚・・・2枚・・・42枚・・・おや。
当選した宝くじは・・・サイフにしまってある。
宝くじは43枚あったのである。
(なぜだ・・・なぜなんだ)
そこへ、家主の竹井が大学の友人の高倉恵利香(寺島咲)を連れて帰宅するのである。
「ミチルさん、宝くじよく買うんですか」
(なぜだ・・・なぜなんだ・・・)
「でも変わった人たちですね・・・宝くじを他人に買わせるなんて・・・万が一1等が当たったらどうやって分けるつもりなんでしょう」
(なぜだ・・・なぜなんだ)
「ミチルちゃん、トマト洗って・・・」
(なぜだ・・・なぜなんだ)
「竹井先輩ってどんな子供だったんですか」
(なぜだ・・・なぜなんだ)
「ミチルちゃん・・・おいしくなかった?」
「わ・・・私・・・デザート買ってくる・・・」
疑問を解決するために外出して一人になるミチルだった。
・・・その頃、ミチルの交際相手である上林久太郎(柄本佑)は春子を待ち伏せしていた。
「ミチルちゃんがあんな嘘までついてどうして休み取ったのかって事を考えると・・・僕ってちょっと駄目っていうか・・・鈍感なところあるでしょ・・・きっとミチルちゃん僕に言えない悩みがあったんだと思うんだ・・・僕・・・それに気付いてやれなくて・・・それで・・・ ミチルちゃんが帰ってきたらちゃんと話し合って2人でやり直そうと思って・・・僕たちやり直せるかな」
「きっとできると思いますよ・・・」
あくまで当たり障りのない春子だった。
タテブーは一樹とのツーショット写真を見ながら自慰にふける。
沢田は当選を夢見ながら母親を介護する。
ミチルの妹の千秋(波瑠)は父親をなじるのだった。
「兵糧攻めってひどくない・・・姉ちゃんが初めて自分からなんか始めたんだから・・・優しく見守ってあげればいいのに・・・姉ちゃん、本当は短大に進学したかったのに・・・勝手に就職も決めちゃったり・・・」
「広林堂で上等じゃないか・・・何が悪い」
親の心、子知らずというが・・・親の心をはるかに越えた事態というものは存在するのだった。
しゃぶしゃぶを食べそこなった一樹は妻の妙子(遊井亮子)から精のつく料理を強要されていた。不妊治療に励む妻にとって今夜は自力本願の日にあたるのだった。
鬼女の騎上位で30過ぎて半端なく劣化しつつある精子を搾りとられる一樹・・・。どうやら・・・かかせない一樹の濡れ場らしい。描写するのも憚れる激しさだった。
ガシガシガシガシガシ・・・・・。
夜の公園のベンチに一人・・・ミチルは考える。
(あの日・・・宝くじを買おうとして・・・預かった一万三千円を出して・・・そしたら一樹さんを発見して・・・お釣りを100円もらって・・・)
電卓を出して計算するミチル。
12900÷300=43
(400円あるはずのおつりが100円だったのは・・・一枚余計に買ってたからか・・・)
つまり・・・ここにミチルのものである1等のクジが一枚とそうでない八等300円が4枚入ったほぼハズレクジの42枚があったのだった。
ミチルは42枚の宝くじと後腐れのないようにお釣りの200円を春山宛で宅配便にするのだった。
ミチルの頭には打ち上げ花火が上がり続けている。
(お母さん・・・ミチルは幸せになってもいいんだよね)
ミチルと2億円の旅が始まるのだった。
もちろん、そこは疑心暗鬼の棲む世界なのである。
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