八重の桜の花言葉は理知に富んだ教育なのです(綾瀬はるか)
若殿の松平容保(綾野剛)に苦境を救われた山本八重子(幼少時・鈴木梨央)は感激する。
私の事 武士らしいど
卑怯やねえど 仰せになった
私 お役に立ちてえ
いつか 強くなって若殿様に 御恩さ 返してえ
兄つぁま 私 鉄砲さ やりてえ
・・・これは名演。まるで綾瀬はるかが乗り移ったようだった。
このブログを始めてから三度目の大河ドラマの幕末である。
しかし、今回は明治に突入して行く話なのだ。
なにしろ・・・主人公は昭和七年(1932年)まで生きぬきますからーーーっ。
幕末から明治は鬼門である。「篤姫」はなんとか完走したが・・・「龍馬伝」と「坂の上の雲」はブログ休止中に完結してしまった・・・。明治になると妄想が妄想ですまなくなるからなのか・・・。
はたして・・・今回はどうなりますやら。
で、『八重の桜・第1回』(NHK総合20130106PM8~)作・山本むつみ、演出・加藤拓を見た。ほぼ、NHK専属の脚本家である。「ゲゲゲの女房」(2010年)の成功が記憶に新しい。「御宿かわせみ」とか「慶次郎縁側日記」も良かったよね。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は水戸徳川家・高須松平家・会津松平家の系図付の上で攘夷派・徳川斉昭、佐幕派・松平容敬の寿命もあるから二大描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。
甲斐武田家の軍師・山本勘介の末裔を名乗る家系はいくつかあるが・・・これは徳川家康が武田家滅亡後に遺臣たちを積極的に登用したためである。勘介直系ではないにしても駿河国から三河国に広がる山本一族の裔が徳川家の家臣団に組み込まれていったのは事実である。山本八重もまたその血脈を受け継いでいる。八重は弘化二年(1845年)十一月の生れである。弘化五年、孝明天皇の代始のため改元となる。その嘉永五年(1852年)二月陸奥会津藩の第8代藩主・松平容敬は死去し、会津松平家第9代は養子の松平容保が継承する。八重はこの時数えて八歳であった。まもなく、十七歳年上の兄・山本覚馬は江戸にて佐久間象山の塾に学ぶ。洋式砲術の研鑽を積み、会津に帰藩後、日新館教授となり蘭学を伝えることになる。その遊学中の嘉永七年(1854年)一月、日本開国任務を帯びたペリー提督が旗艦サスケハナ号など7隻の軍艦を率いて再来日。幕府は三月に日米和親条約を調印する。尊王攘夷運動が高まり、幕末の混乱が萌芽する・・・明治維新まで後、14年。八重十歳の春だった。
会津藩の鉄砲指南役・山本権八は山本勘介を開祖とする甲州流軍学をもって藩に仕えた一族の末裔である。勘介の血脈はその弟、娘婿などによって幾筋かにわかれ、越前松平家、越後長岡牧野家などの家臣となっていた。
その中でも武田鉄砲忍びの流れを汲む山本家に生まれた八重は当然、鉄砲くのいちであった。
徳川太平の世を経て、伝来の鉄砲術は「火縄銃」の技術の伝承に尽きている。
しかし、火薬を扱うことのできる技術はそれだけでも科学の素養を必要とする。
鉄砲術とはすなわち、銃器銃弾の作成、その効果的運用までを含むのである。
だが、西洋では火縄銃は点火の方法がマッチロック式からホイールロック式にそしてフリントロック式へと着実に進化し、雷管の発明により武器としての性能を高めて行った。
18世紀のオランダの制式採用銃であるゲベール銃は雷管式で命中精度は火縄銃に劣るものの射程距離、威力ともに上回る。日本では文政十三年(1831年)に高島流砲術の始祖である秋帆が最初に使用したと言われる。
高島秋帆は密貿易の罪を問われ獄中にあったが・・・各藩はこぞってその教えを受けたと言われる。
やがてライフリング(施条)技術が開発されるとゲベール銃(滑空式)に代わってフランス式のミニエー銃(施条式)が主流となる。英国のエンフィールド銃、米国のスプリングフィールド銃など・・・小銃はライフルの時代となったのである。
そして、前装式から後装式のスナイドル銃によってほぼ一つの完成形となる。
幕末とは銃器の進化の歴史なのである。
後に山本八重子の愛用するスペンサー銃(管状弾倉装填式の手動レバーアクションライフル)はまだ完成途上であった。それは安政六年(1860年)に完成する。
十歳の八重が使用するのはまだ古式ゆかしい火縄銃であった。
山本家には古式の銃器の絵図が伝わっている。
その中に戦国時代に使用された短筒の図面があり、八重は独自の工夫で七歳の時にそれを試作したことがある。
射程距離は短かったが野兎などはしとめることができた。
兎の鍋をつつきながら、権八は遅くできた末の娘に目を細めた。
「おめは・・・筋がええ」
「んだか・・・」
「鉄砲撃つのは楽しいか・・・」
「おもしれえ・・・」
「ならば・・・おめは・・・絶えて久しい鉄砲くのいちさ・・・なるといいべ」
「てっぽうくのいち・・・」
「んだ・・・戦の世ならば・・・それで飯が食える」
「戦なんてあるのだろうか・・・」
「さ・・・それは・・・わからね・・・だども・・・熊はいつでもおるからの」
「熊っこか・・・」
八重は熊の巨大な体躯を思い浮かべて身ぶるいした。
権八は声をあげて笑った。
「数えで十二になったら・・・山さ入って熊さ狩るぞ」
「熊狩り・・・」
八重の瞳に今度は燃えるものがあった。
権八は娘の無邪気な表情の変化を楽しんだ。
徳川幕府の安寧の夢はまだ破られていなかったのだ。
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