最高の離婚はアロエ(苦い)、最高の離婚はアロマ(芳しい)、最高の離婚はアロハ(瑛太)
アロハは優しい気持ちである。
突き詰めれば愛はすべて自己愛なのだが、そもそも自己というものが曖昧なものなのである。
たとえば母親と子供の自己は限りなく一体化している場合がある。
体に重きを置けば、子は母の自己の一部だし、母は子の一部なのである。
それが心の形成にもおよび、未分化の母子という関係が生じる。
自己と他者が限りなく境界線を曖昧にすれば・・・そこには自己を愛するように他者を愛する状態が記録される。
そのメモリーこそが愛の原型と言えるだろう。
人々はその成長過程で、様々な個性化の道をたどる。極めて短い母子連帯のものもあれば、愛を育む方向を失うものもいる、原点に執着するものもいれば、独立を志向するものもいる。時には自己愛を捨て慈愛に目覚めるものもいる。
愛はゲームである。
「自分以外には誰も愛さないもの」が「誰かに愛してもらいたいと願う」ゲームなのである。
で、『最高の離婚・第4回』(フジテレビ20130131PM10~)脚本・坂元裕二、演出・加藤裕将を見た。濱崎光生(瑛太)は明らかに発達障害者である。光生と結婚するということは身体障害者と結婚するのと同じなのである。自覚していようがいまいが、濱崎結夏(尾野真千子)の離婚届提出は・・・夫の介護に疲れた果てなのだろう。もちろん、夫婦の立場が逆転していることもあり、男女雇用機会均等法の時代でもあり、離婚は急増するし、孤独死は当然の帰結なのである。実に合理的な成り行きと言える。
しかし、個体としての生存能力の高さは別問題なのである。
優秀な個体同士で再度、巣を作り直すもよし、とりあえず、何もかも忘れて朝まで歌い騒ぐのもよしなのだ。
そして、そういう集合離散の果てに発達障害の子供たちはどんどん増えて行くのだな。
発達障害のものが自分が発達障害だと認めることはある。
心が乱れないものもいれば、痛切な悲哀に襲われるものもいる。
持病なのでそれなりに対処する方法もある。
光生は「好きな人に好かれず、好かれた人を好きになれない自分が普通でないことを認めようとして認められず、好きな人に謝罪と同時に好意を受け入れてもらおうとしたのに好きな人(上原灯里=)の好きな人(上原諒=綾野剛)を好きな人(有村千尋=小野ゆり子)が上原家に投げ込んだ石が自分のものではないと言えば好きな人が入籍してないので上原という姓じゃなくてコンノさんのままなんだと自分のこだわりを言い出しかねず、そうなると好きな人にもっともっと嫌われかねず、優先順位も決断もあったものじゃないのでいろんなことがちゃんとできない。つらいつらい。自分は人間じゃない。ガラクタのロボットだ」と灯里から返された石を握りしめ雪の降る街を去っていくのだった。
灯里は光生のストーカー行為がエスカレートして、「刺されたらどうしよう」と不安に思うのだった。
結夏は静岡県的基本人格が全国標準の大村(KEIJI)に通用しないことに驚愕しているところを清掃員のアルバイト・初島淳之介(窪田正孝)に発見され、何故か意気投合する。なぜならば淳之介は静岡県人だったのである。二人で痛飲したあげくに初島家に宿泊した結夏はどう考えても理由ありで身を寄せ合って暮らす父親・妹などの淳之介一家に安らぎを感じるのだった。どういう経緯で静岡から東京へこの一家が流れついたのか問わないのが富士山を静岡県側から見て育った人々の美点らしい。幸せを求めて何かを始めてこうなってる可能性は大なのである。
しかし、淳之介の妹・果歩(信太真妃)・・・「モテキ」の林田尚子の娘・由真である・・・シャブリ様、ありがとうございます・・・に「おばちゃん」と呼ばれることだけは我慢できないらしい。
第四の女・日野明希(遊井亮子)とのテトリス的情事を終えて朝帰りする諒は通りすがりの老夫婦と語らう。
「とりあえず坊主にしちゃうっていうのはどうなんでしょうね」
「空気になっちゃえばいいんですよ」
「そうですねえ」
「夫婦生活もビジネスである以上、上手にマネジメントしないとね」
「でも擬似恋愛をビジネスにしているものがマジ性交しちゃダメなんでしょうねえ」
「でも・・・ほら・・・夢のような恋愛気分も、地獄のような失恋気分もサービスだと思えばサービスなんじゃありませんか」
「そういう心境に至るのはやはり亀の甲より年の功ですよね。僕にもずっと一緒に暮らしたい人がいるんです」
朝帰りした諒は擬似妻の灯里が希望する温泉旅行のパンフレットをお土産に持って帰ってきたのだった。
一方、元妻が勝手にブラシを使うなどの様々なストレスを抱えた光生の頭頂部付近には500円玉クラスの円形脱毛が発症していた。
帰宅した元妻はそれを発見するや大喜びをするのだった。
なぜならば・・・自分との離婚で夫がストレスを感じていると思いこみ、ちょっと嬉しかったからである。
元夫は出勤し、元妻は元夫の祖母の亜以子(八千草薫)とプロレス観戦に出かける。
諒が大学に戻ると第二あるいは第三の女である千尋が待ち構えている。千尋は諒と灯里の関係に割り込もうと攻撃的な行動にでるが、諒が反応しないために「私は二番目でいいの」と折れる。しかし、そこに第三あるいは第二の女である光永詩織(大谷英子)の着信があったために暗い嫉妬の炎を燃やすのだった。
千尋は詩織の働く雑貨屋に出向くと、詩織を灯里の営むアロマテラピー&古式マッサージの店「Se Terang」に誘導するのだった。
詩織は灯里が諒の擬似妻とは知らずに「アロマオイルに恋人を思い出す」などとのろけるのだが・・・そこへ諒が帰宅してすべてを悟って涙にくれるのである。灯里も詩織の正体を悟り「きっと新しい恋人が現れますよ」と慰めつつ引導を渡すのである。女の直感恐るべしなのだった。
お茶の間の男性一同、灯里と千尋と詩織と明希と他に何人いるんだか知らないがとにかくうらやましいのだった。そして今度生まれ変わったら諒になりたいとそこはかとなく思うのだ。
光生はいつもの歯医者で歯科衛生士・海野菜那(芹那)相手に頭の上のミステリーサークルを公開する。
「片思いの人に関わるのはやめた方がいいですよ」
「片思いじゃありません」
「とにかく、関われば関わるだけどんどん大きくなるかもしれません」
「しかし結婚していないのに結婚してるなんて・・・」
「不祥事を隠しとおせる時代じゃないと・・・みんな知っておくべきなんですよね」
「僕は監督じゃありません」
まさに不毛な話だった。
まあ、柔道やってなきゃただのデブに「柔道やってなきゃ、ただのデブ」って言われてもお前が言うなって話だよな。
姉(市川実和子)が働く「金魚CAFE」で諒と遭遇する光生だった。
「なんで・・・婚姻届を出さないんですか」
「その日、家内が熱を出しまして、僕一人で出そうとしたら、知り合いの犬が行方不明になったって電話がありまして、捜すのを手伝ったら日が暮れちゃいまして、家に帰ったら家内が凄く喜んだので提出してないことを言い出し損ねまして・・・今も持っているんです」
「意味がわかりません・・・結婚する気がないならなぜ結婚するなんて言ったんです」
「家内に結婚したいって言われたので・・・」
そこに灯里が諒を迎えに来て、光生は自分が結婚したかった女に結婚したいって言われた男の婚姻届を期せずして入手してしまうのだった。
灯里はなんとなく光生のためにアロエを買ってしまう。
アロエを買ってくれた元妻の好意を感じることのできない光生は戸惑う。
「ありがとう」の一言が言えない元夫に元妻は絶望を感じるのだった。
しかし・・・元夫は妻の好きなロールキャベツを作って恩を返そうと思うのだった。
だが、妻は仲良しになった淳之介一家のためにロールキャベツを作ろうとしていたのである。
すれちがう・・・人との接し方を知らない男と人と接することのできない男との接し方を知らない女だった。
それでも・・・元妻は・・・人生の喜びを・・・幸せのおすそわけを元夫に持ち帰る。
しかし、喜びを分かち合うということがわからない元夫はひたすらにいら立つのだった。
「最初から合わないと思っていた・・・でも、一緒に暮らしているうちに・・・私があなたのことをいつも思い出すように・・・あなたが私のことを思い出すようになってほしかった。でもあなたは変わらない。子供がほしかったからそう言えばあなたはいらないと言った。結局、あなたは自分のこと以外はどうでもいい男だった」
「やりなおそう・・・もう一度、結婚しよう・・・子供も作ろう」
「何言ってんの・・・テディベアを見て熊の死体を連想するような男と何をどうやり直せばいいのよ」
「死体じゃないよ・・・獲物だよ」
相互伝達機能の不全だった。
その頃・・・擬似夫の度重なるテトリス的男女関係についに耐えきれなくなった擬似妻も家を飛び出していた。
ラーメンで暖をとる二人の女たち。元妻のポケットから転がり落ちる擬似妻の婚姻届。
孤独な男女は何故か性風俗的規制の対象となるソシアルダンスを踊り続けるのだった。
夜毎、地震が続くので、住居倒壊の夢を見るかのように。
関連するキッドのブログ→第3話のレビュー
| 固定リンク
コメント
ののの キッドさん☆アロハ~(o^-^o)
雪の残る早朝の公園に座るモテ男、提出されていない婚姻届けを見つけてしまう擬似妻
最初から最後まで1時間がもう ギュッギュッとつまっていて 何もかもが素晴らしかった 最後のエンドロールがまた凝っていてスゴクいいですね!オノマチの長台詞も もちろんよかったけれど擬似妻がアロマ店で引導を渡すシーンもかなり好きかも(笑)リアルタイムで見ていたんですが録画も一応していたことに今日になって気がついて 本当にラッキーでしたo(*^▽^*)o
たまらずもう1回見ました
役者さん4人とも すごくいいですね!
無駄のない洗練されたドラマだなぁという印象を持ちました
投稿: chiru | 2013年2月 1日 (金) 20時25分
シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃいませ・・・大ファン
ののの chiru 様☆イェーイ( ̄▽ ̄)
ナウなヤングかっ。
元妻、元夫、擬似妻、擬似夫・・・・
怪しい二組の夫婦のようなものの・・・
怪しいやりとりが楽しいドラマですよねえ。
擬似夫をとりまく女たちの暗躍も楽しいですな。
目下のところ、トラブルメーカーは女子大生ですな。
雑貨屋の女は・・・純情可憐だったのですな。
おそらく人妻は性の狩人なのでしょう。
擬似妻の沸騰点は近い感じでございます。
なんとなく・・・生い立ちが謎なのは
擬似夫だけですよねえ。
残りの三人は家族が登場したり
回想の一人語りがあったりしましたからねえ。
テトリス擬似夫の生い立ちの開示が
待ち遠しい・・・今日この頃です。
すべてのシーンがハラハラドキドキであり
すべてのシーンがまったりウキウキであるという
アクロバットなドラマでございますよね。
のんびりと見るもよし、
みっちりと見るもよし・・・
これは傑作です。
そして最後は急降下アトラクションのダンスが
サービス。
いたれりつくせりですな。
今季はレビューしているドラマが
すべていい感じですが・・・
あえてランクをつけるとすると
(日)A
(月)B
(火)A
(水)B
(木)S
(金)A
(土)A
・・・という感じ
投稿: キッド | 2013年2月 2日 (土) 06時50分