究極のフィクションで、ごめんね。(薬師丸ひろ子)
海辺のかまぼこ工場に薬師丸ひろ子と、麻生久美子と、忽那汐里がお勤めしている。
それがすでにすげええええええありえない、マンガの世界なわけである。
しかし、ひょっとしたら・・・そういう奇跡もありえるかもしれない・・・と思わせるのがドラマなのである。
そうなると、趣味のマンガからギターをかかえた長瀬智也が飛び出してくることもあるかもねえ。
・・・ということになるのである。
それが理解できない、馬鹿馬鹿しいとなると・・・。
つまり、普通にドラマを見て笑ったり、泣いたりすること自体がすでにおかしいことになってしまう。
それどころか、現実の世界で感動したりすることも変なことになるのである。
「夢の世界」の虚しさと・・・それさえも失えばただ虚しいばかりの「現実」が残るだけだったり。
そういうギリギリのところで成立している恐ろしい物語でございます。
で、『泣くな、はらちゃん・第6回』(日本テレビ20130223PM9~)脚本・岡田惠和、演出・松山雅則を見た。恐ろしいことに・・・ふなまる水産の工場長・玉田(光石研)が死亡するととりあえずの工場長代理に指名されたのは越前さん(麻生久美子)だったのだ。工場における正社員は・・・玉田工場長、越前さん、田中くん(丸山隆平)、おそらく悪魔さん(忽那汐里)で・・・年功序列的にナンバーツーは越前さんだったのだ。
「そんな・・・私が工場長代理なんて・・・矢口さん(薬師丸ひろ子)お願いしますよ」
「なにいってんの・・・私はパートなんだから責任者になんかなれないよ」
「・・・一番偉いくせに・・・」
しかし、本部の指令には逆らえず、工場長代理は越前さんに決定したのだった。
責任者としての判断とか雑用とかが重圧となってのしかかり、ストレス発散の必要に迫られる越前さんだった。
【「冗談じゃないわよ、私は静かに何事もなく一日を終えたいだけなのよ」とユキ姉(奥貫薫)は鼻息を荒くするのだった。バブルの頃のボディコンシャルな水着も着こなし、アイドル冬の時代にアイドルを完遂しやがて女優となって薬師丸ひろ子と麻生久美子の谷間をつなぎ40代前半枠を埋める薄倖そうな女が爆発するのだった。「責任を押しつけられたり、何かを判断したり、誰かに何かを命じたり、そんなのごめんだわああああ」・・・「そうだ」とはらちゃん(長瀬智也)はマキヒロ(賀来賢人)やあっくん(清水優)と一緒の合いの手要員にレベルダウンである。造物主がキャラクターに対して恥じらっているからである。「どうする、たまちゃん」とユキ姉が尋ねれば、たまちゃん(光石研)は「破壊するしかないな」と応じるのだった。ユキ姉はハイパーバズーカ砲をとりだして・・・ぶっ放す。笑いおじさん(甲本雅裕)にいたってはたまちゃんとキャラクターがかぶっているために登場さえできないのだった・・・】
越前さんはスカッとした。
マンガ的宇宙では主役の座をユキ姉に奪われた、はらちゃんがちょっと唇をわなわなさせているとは神様もあずかり知らぬことなのである。
そんな越前さんの背後に・・・家宅不法侵入の悪魔さんこと紺野清美が迫っていた。
「なんで・・・ここに・・・」
「そのマンガみせてください」
「・・・これは他人に見せるようなものでは・・・」
「お願いします」
相手に下手に出られると弱い越前さんである。・・・まあ、高圧的な態度にも弱いわけだが。
マンガの中にマキヒロを発見した清美は興奮するのだった。
「出してください・・・出せるんでしょ」
「・・・ええっ」
清美に懇願されて・・・キャラクター呼び出しの儀式を行う越前さんだった。
夜空の星に
願いをかけて
祈ればきっと
夢は叶う
「マキヒロ~」
【マキヒロ】と【はらちゃん】が召還されたのだった。
造物主が目に入らず、【マキヒロ】は清美の元へ。ちょっと面白くない越前さんだった。
しかし、二組のカップルはそれぞれのデートを開始するのだった。
【マキヒロ】と清美は場末の遊園地へ。
【はらちゃん】と越前さんは本当の居酒屋へ。
しかし・・・【たまちゃん】も召還されていたのだった。【たまちゃん】を工場長のゴーストだと勘違いして絶叫する長沼さん(稲川実代子)だった。
そして・・・悲しい事に【たまちゃん】はゾンビの鉄則で・・・玉田工場長とは似て非なるものなのである。
居酒屋の料理に感動する【はらちゃん】・・・越前さんはデート気分でウキウキである。
しかし・・・レモンが目に沁みた後で「チューまたの名はキスもしたことだし、次のことをしましょうか」と言い出す【はらちゃん】にいろいろなナニのことを想像した越前さんは赤面するのだった。
「そんなこと・・・」
「結婚はダメなんですか」
「そっちかよ」
「越前さん、なぜ顔が赤くなっているんですか」
居酒屋の客たちはイチャイチャするカップルを見て見ぬふりをしているらしい。
そこへ・・・限りなく伝説の漫画家の矢東薫子本人だと思われる矢口百合子が登場する。
「おやおや、お二人さんアツアツだね~」
「そんな・・・」
「実はチューまたの名キスもしたんです」
「あらまあ、そうなの・・・」
「もう・・・」
「越前さん、また顔が赤くなってます・・・大丈夫ですか」
「うふふ」
「越前さん、結婚しましょう」
「あ・・・もう、約束の時間だ・・・そういうわけでごめんね」
ノートは開かれ、【はらちゃん】は帰還する。
「プロポーズされちゃったねえ」
「やめてくださいよ」
「なんだか・・・楽しそうだねえ」
「そんな」
「でも・・・せつないよねえ・・・ごめんね」
「なんで・・・百合子さんがあやまるんですか・・・」
「楽しければ楽しいほど・・・せつないんだよねえ」
「・・・」
「幸せな終りを考えてあげないとね・・・神様なんだから・・・」
お茶の間一同、神様の神様もなーっとつっこむのだった。
遊園地で楽しいひとときを過ごしていた清美も両思いの相手である【マキヒロ】が消えてしまいせつなさダイナマイトである。
いつもの神社で恋の歌を歌う清美。
「・・・でも恋をした・・・でも片思い・・・そんな私に笑う」
そこへ・・・運命に導かれてやってくる田中くん。
サングラスの歌手が悪魔さんだと知り、動揺するのだった。
しかし、清美は「もう遅い・・・あんたが悪いんだからね」とつぶやく。
理由も知らず「すいません・・・」と謝る田中くんだった。
「泣くな、はらちゃん」の世界では・・・たまちゃんが恐怖におののいていた。
長沼さんという恐ろしいものをみてしまったからである。
あっくんと同じように神様の臆病さを反映しているキャラクターらしい。
恋のせつなさに沈むマキヒロとはらちゃん。
ユキ姉は何かを知っているかのように囁く。
「神様との恋はあきらめた方がいいよ・・・深入りすると最後は殺されるから・・・」
「・・・?」
翌日・・・街は幽霊の噂で一瞬賑わうのだった。
マキヒロを諦めきれない悪魔さんはくのいちモードで越前さんの家に侵入。
ノートをふった勢いで二階の窓から転落・・・たまちゃんに続いて第二の犠牲者かと思いきや、【はらちゃん】の登場である。
命は無事だったが【マキヒロ】でないことにガッカリする悪魔さんだった。
そこへ・・・田中くんがやってくる。
「田中さん・・・教えてください・・・結婚とはなんですか」
「越前さんと・・・結婚するんですか・・・越前さんのお母さんに・・・娘さんをくださいって言ったんですか・・・」
「わかりました・・・それをすればいいんですね・・・ありがとう、田中さん。あなたは本当にいい人だ」
取り残された田中くんは「・・・いい人じゃ・・・だめじゃん」とぼやくのだった。
越前さんの家の前で・・・土下座する【はらちゃん】である。
「娘さんをください」
「いいわよ~」とあっさり了承する母親の秀子さん(白石加代子)だった。
秀子さんはお気に入りの【はらちゃん】にチャーハンを振る舞うのだった。
「皆さんは・・・どうして一緒にいるんですか」
「家族だから・・・かな」
「家族ってなんですか・・・」
【はらちゃん】の素朴な疑問にうれしそうに応える秀子さん。
アルバムで・・・越前さんの成長過程を見せるのだった。
「ああ・・・あんなに小さい人が越前さんになった」
生れた瞬間から【はらちゃん】だった【はらちゃん】には想像を絶することだった。
姉の【恋人】の出現に・・・生涯を寄生虫として過ごす覚悟らしい弟・ひろし(菅田将暉)はふてくされていたが・・・会話に割り込むのだった。
「こいつ・・・俺より馬鹿じゃないか・・・こんな男と結婚させられないよ・・・俺にメリットなんにもないじゃない」
「やめてよ」
たちまちおこる姉弟喧嘩・・・。
仕方なく【はらちゃん】を連れ出す越前さんだった。
「あのね・・・はらちゃん・・・私たちは結婚できないの」
「それは・・・私がマンガの世界の住人だからですか・・・」
泣くな、越前さんである。
「抱きしめましょうか・・・」
「抱きしめて・・・」
越前さんをそっと抱きしめる【はらちゃん】だったが・・・越前さんを自分が苦しめていると悟り・・・自らノートを開き・・・自主帰還するのだった。
越前さんはノートを拾い・・・胸に抱く。
「大好きだよ・・・はらちゃん」
そして・・・越前さんは工場長代理として前向きに仕事に挑むのだった。
心から願うのなら
欲張りすぎってことはない
運命の女神は
きっと微笑んでくれる
「泣くな、はらちゃん」の世界ではユキ姉がつぶやく。
「私たちの死に方は二通り・・・マンガの中で殺されてしまう場合と・・・書くのをやめられて・・・忘れられて・・・ひっそりと死ぬ場合があるのよ」
ごくつぶしの弟は小銭を求めて姉の机をさぐり、何気なくノートをとりだして古新聞の山に無造作に置く。
床に落ちてた100円玉を発見して喜ぶひろし・・・。
そして、ノートは資源(廃品)回収業者に引き取られてしまうのだった。
【はらちゃんと愉快な仲間たち】は放浪の旅に出たのである。
関連するキッドのブログ→第5話のレビュー
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コメント
キッドさん☆こんばんは(*^o^*)
越前さんの家を出て海辺で話す二人
空の色が刻々と変わって海がきらめいていて二人の会話も切なくって ちょっとおかしくってずっと覚えておきたいような素敵なシーンでした
このドラマ
私の想像を超えていて 予告を見ると ちょっとトイストーリーっぽい?気もしてラストの予想がつきません
来週はもう3月
このドラマを見れない日が近づいていると思うと寂しいです(v_v)
投稿: chiru | 2013年2月24日 (日) 21時13分
シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃいませ・・・大ファン
ドラマを見終ると語りたい自分と
何も言いたくない自分が激しく葛藤いたします。
もう、これでいいじゃないか。
もう、充分楽しんだじゃないか・・・と思うのですな。
何も言わなくてもいい。
言葉はいらない・・・と思うのでございます。
しかし、ブログを続ける以上
何か言わずにはいられないのでございます。
好きな女優がこれだけならぶと
もう目移りしてしょうがないとも言えます。
それぞれに魅力的ですからねえ。
笑いおじさんとたまちゃんのポジション争いも
気になりますし・・・。
愛し合っているのに
別れるしかない二人の心と心の究極の形。
なにしろ・・・本質的には
はらちゃんは越前さん自身なのですからねえ。
まさに身を引き裂かれる思い。
実に味わい深いのでございます。
そんなキャラクターたちが
どうやら大冒険をするらしい次週。
待ち遠しいと同時に
どうか・・・来週が永遠に来なければいいのにと
思うのですな。
まあ、結局、来ちゃうわけですが~~~っ。
投稿: キッド | 2013年2月25日 (月) 05時28分
シフトアップというか、今回から第二章に入った感じですね。
しかし一体同収拾つけるのか(ほめ言葉)。
これが諸星大二郎だったら実は弥勒菩薩だった越前さんが人類の滅びた超未来で独り、マンガを描き続けるのだろうか。これが手塚治虫だったら人類の滅びた超未来で越前さんはマンガを書き続けるのだろうか。これが富野由悠季だったら人類の滅びた…(滅びばっかりかい!)。
「マンガの世界の仲間が家族です」旨を述べるはらちゃん。
「それはそうとも言えるけれど、それもある、たしかにそれもあるけどでも((c)働きマン)、それはやはり血縁を基本にした家族とはちょっと違うのよ…」と思う越前さんの目が、つまり「はらちゃんだって分かって言っているのかもしれない」と思うその眼差しの奥にある心が切ない。
投稿: 幻灯機 | 2013年2月25日 (月) 11時48分
✪マジックランタン✪~幻灯機様、いらっしゃいませ~✪マジックランタン✪
・・・でございますねえ。
今回、悪魔さんが二階から転落したところで
頭頂部から着地で死亡。
マンガで復活・・・。
そうやって次々と人間が死亡して行き
最後は大津波で・・・越前さんだけが
九死に一生を得て
マンガの世界に全員が移動・・・
大長編マンガとして描かれていく・・・
というダークな結末の妄想が
頭をかけめぐりましたことを報告しておきます。
人類は滅びてもマンガは滅びず・・・
なのでございます。
越前さんは不滅か・・・。
「木更津キャッツアイ」も全員死後の世界の
物語でしたが・・・これもそうなのですな。
作家というものは基本的に
人類滅んでも俺がいれば
平気だもんね~というタイプがおりますから~。
それでも・・・マンガの世界の仲間・・・
理想の恋人のはらちゃん・・・
というよりも理想そのもの・・・
そういうものよりも
不完全でしょうもなくて敵対的で不都合な
「他人」をもとめてしまう
「私」の困惑が炸裂するのですな。
「はらちゃん」でいいのに
「はらちゃん」ではやはり無理・・・。
ああ、人間は悲しい生き物でございます。
投稿: キッド | 2013年2月25日 (月) 15時11分
お久しぶりでございます。このドラマ、久々に「おっ!今日ははらちゃん!」と毎週土曜を楽しみに見ています。切なくておかしくて不思議な感じが大好きです。
私が数年前にはまってたのが、同じく土曜9時の「Q10」でした。役者さんもかぶってますし、懐かしい雰囲気も似てますね〜。でも、70年代生まれの私は、「Q10」や高校生達の切ない恋愛や葛藤する姿に涙しつつも、自分との年の差にふと我に返ってみたり…。
その点、こちらはかなり無理がないです〜。全体に漂う雰囲気も、よりくたびれた感じというか、なんというか。
とにかくはらちゃんがよいですが、悪魔さんも大好きです。私、この女優さんは、今までそんなに関心がなかったのですよ。でも、今回の役で凄くいいなあと思いました。
越前さんはどんな結末を選ぶのか、どんどん切なくなるのか、でもはらちゃん達がそうはさせじと笑わせてもくれそうで、とにかく楽しみたいと思ってます。
投稿: ギボウシ | 2013年2月27日 (水) 15時28分
オチツキレイセイシズカナヒト~ギボウシ様、いらっしゃいませ~ワクイエミダイスキ!
やはり・・・楽しみなドラマがあるということは
人生を明るくいたしますな。
わくわくしたり、しんみりしたりニヤニヤしたり
眠っていた何かを呼び覚ましてくれるドラマは
素晴らしいものです。
あまり奇想天外すぎると
理解不能の場合もありますが
このドラマの場合、マンガの世界から
振られて飛び出てジャジャジャジャーンな感じが
すでにノスタルジックです。
ランプの精がこすられて出てくるくらいだから
たたいてゆすれば、はらちゃんくらい出てくるだろうなのです。
70年代生れの方には
ピンとこないかもしれませんが
ポケットをたたけばビスケットが二つなのでございます。
「ぱふっ」で胸きゅんの「Q10」も素晴らしかったですねえ。
公式の「泣くな、はらちゃん」のおまけマンガその5では
たまちゃんがちょっといやなキャラに育て上げられたりして微笑ましゅうございました。
http://www.ntv.co.jp/harachan/sp02/omake05.html
ご存じなければお暇なときにどうぞ。
まあ・・・青春していていい人々は
それだけでちょっとねたましいですからねえ。
百合子が50代目前、ユキ姉が40代、越前さんが30代、
悪魔さんがピチピチと・・・
恋する女たちがそれぞれのポジションで
孤独に生きているというのもなかなかなのですな。
くたびれているけれど・・・それほど不幸せじゃない感じが漂ってる。
つまり、優しいのですよね。
絶えまなくギスギスしている朝ドラマとは好対照でございますよ。
悪魔さんは金八最終世代・・・成人して
オスカーの中では
実力派女優の道を歩みだしたというところでしょうか。
清純と小悪魔の中間的な顔立ちなので
ツンデレ役は順当なところなのでしょうな。
キッドはポッキーのCFで踊り狂っていた頃から
萌えでした。
ドラマの結末も楽しみですが
完結しないでいつまでも続いてもらいたいくらいです。
投稿: キッド | 2013年2月27日 (水) 16時14分