夜行観覧車から降りない女の娘に生れて(杉咲花)
夜行観覧車に乗ったら夜景を見ずにはいられない。
そして、時々は一緒に乗っている家族や恋人と微笑みを交わすものだ。
しかし、女が見つめるのは少し先を昇るゴンドラだけなのだ。
その異常さを反対側の席で見つめているものが穏やかな気持ちでいられるはずはない。
おかしいよ・・・あんた・・・おかしいよ・・・。
だが、その気持ちは女には伝わらない。
女は食い入るように・・・自分のゴンドラの窓に顔をつけてうっとりと他人のゴンドラを見つめる。
その背中を同乗者は見守ることしかできないのだ。
女が興味があるのは頂点を目指すゴンドラだけ。
やがて・・・一つ上の観覧車は頂点に届く。
女は思う。
さあ・・・今度は私が・・・一番高い場所にいくのだわ。
で、『夜行観覧車・第4回』(TBSテレビ20130208PM10~)原作・湊かなえ、脚本・清水友佳子、演出・山本剛義を見た。脚本家が変わっても強固な世界観によどみなしである。ちょっとした歯車が狂って登場人物全員が悪に染まっていく素晴らしい世界である。まともな人間はほんの一瞬・・・影のようにゆらぐだけなのである。たとえば・・・高橋家の長女・比奈子(宮﨑香蓮)は亡き父親の在りし日の姿を思い浮かべ涙ぐむ。しかし・・・事件の当日も弟と母親の間の感情的なもつれに耐えきれず友人の家へ逃避していたのだし、隣の家の娘の素行が荒れている原因に自分が一役買っているとは夢にも思わない愚鈍さを持っている。驚いたことに遠藤家の妻・真弓(鈴木京香)と大学の同窓生だった無理矢理な設定の結城哲也刑事(高橋克典)も娘の反抗期に手を焼く旧友に離婚した後五年間も逢っていない小学六年生の息子の話をしたりして和む・・・とみせかけて冷酷な捜査官の目で事件関係者である女を疑り深く見ているのである。
誰ひとりとして・・・好ましい人間は登場しないのである。それが世界のあるべき姿だからである。
刑事たちは高橋弘幸(田中哲司)殺害後から消息不明になっている妻の淳子(石田ゆり子)と次男の慎司(中川大志)を追うと同時に、被害者に借金していた遠藤啓介(宮迫博之)にも疑いの目を向けている。
借金のことを聞かされた真弓は真相を確かめるために夫の勤務先であるヤマベ工務店を訪ねるが夫は不在。直後に順子と啓介が同じ喫茶店から前後して出てくるのを目撃する。どちらを追うべきか・・・躊躇した真弓は結局、二人を見失ってしまう。
順子の妹である田中晶子(堀内敬子)の家に引き取られることになった比奈子を発見した真弓は我が子のように比奈子を慈しむ。
(ああ・・・可哀相な比奈子さん・・・この子が自分の子だったらどんなにかよいことだろう)
帰宅した真弓は実の娘に頼まれたヨーグルトを買い忘れている。
夫からは会社に泊まるとメールが来る。それを目ざとく見つける娘。
「なに?・・・夫婦喧嘩・・・どうせ、あんたがイラッとすること言ったんでしょ」
(いやだ・・・こんな子はいやだ・・・)
真弓は幸せだった頃の写真を見る。隣の一家とキャンプに出かけた記念写真。そこに娘がいないことには気がつかないし、それを飾っていることがどんなに残酷なことなのか・・・思いもおよばないのである。
今日も完璧な悪い女子中学生の志保を演じる吉田里琴である。
犯罪に巻き込まれてしまった慎司に対して手のひらを返すのだった。
そんな志保に精一杯の抵抗をする彩花を演じる杉咲花。
年上としては負けられない演技合戦である。
「慎司はそんなに・・・悪い子じゃないよ」
「ふうん・・・セレブ同志・・・わかりあえてるのね」
CLUB Rico会員一同、女優魂に拍手喝采と同時にお茶の間受け的前途に不安も覚えるのだった。まあ・・・女優は与えられたポジションで戦い抜くしかないわけですが。
一方、世間はエリート医師の殺害と家族の行方不明に猟奇的な匂いを嗅ぎつけ好奇心を炸裂させる。
たちまち晒される高橋一家なのであった。
しかし・・・京都大学の研究室にこもる高橋家の長男の良幸(安田章大)は父親が殺されたことも知らず研究に没頭・・・恋人の明里(滝裕可里)からの差し入れをのんびり受け取っていたのだった。
比奈子は叔母の晶子からラーメンを与えられ、庶民の家の狭さに愕然とする。
血の近い順子に犯人でいてほしくない叔母はそれとなく甥の慎司の犯人説を口にする。
しかし、晶子の夫は・・・父親側の親戚にとって母親が犯人だろうが・・・その子が犯人だろうが関係ないと断定するのだった。心配するのは殺人犯の身内であることが発覚することなのである。
比奈子はいたたまれない気持ちになった。
清修学院高等部では教師やカウンセラーが腫れものに触るように彩花に接する。
被害者の家族であれば残留できるが加害者の家族になれば追い出される空気が充満するのである。
比奈子の友人である歩美を演じる荒井萌も関わりたくない感じを精一杯醸し出すのだった。
慎司への思いを秘めた彩花はマスコミの殺到する家へと向かう比奈子を発見する。
「よしなよ・・・あんなところで袋叩きになるのは」
「ほっといて・・・」
(怖い・・・家庭内暴力の・・・凶悪な中学生・・・昔は可愛がってあげたのに・・・やはり坂の下は獣の棲む世界)
(そうなのね・・・そんなにお高くとまるのね・・・自分の立場がわかってないのね)
「知りたくないの・・・昨日何があったのか・・・」
「何か・・・知ってるの」
「行きましょう」
「どこへ」
「坂の下に・・・一緒に坂を下りましょう」
暗い坂の下の地獄のようなカラオケ・ルームに連れ込まれる比奈子。
(こわい・・・)
(高校生のくせに中学生におびえているなんて・・・なんなの)
「私をからかってるだけなんでしょう」
「それが人からものを聞く態度・・・お嬢様・・・でもあなたの家は大変なんだから・・・私が大人になるしかないわね」
「・・・」
「昨日の夜、慎司とあんたたちの母親が大声あげて喧嘩していたのよ」
「嘘・・・」
「嘘じゃないわ・・・私の母親に聞いてみたっていいよ・・・一緒に聞いたから」
「じゃ・・・どうして・・・止めてくれなかったの」
「あのさ・・・私の家にあんたの家の誰か止めにきてくれた・・・?」
「・・・」
「そういうことでしょ・・・」
「私・・・帰る」
「せっかくだから記念写真撮ろうよ・・・もしも制服を着れなくなったら・・・メールしてあげるわ」
それが復讐であるとも気付かずに不気味さのあまり思わず中学生の彩花を突き飛ばす高校生の比奈子だった。
「ひどいよね・・・そうやって私を馬鹿にしてるんでしよ・・・慎司と二人で見下して・・・」
「見下してなんて・・・それはあなたの僻みでしょう・・・」
「僻み・・・って、あんた・・・もうこっちの人間じゃないの・・・私・・・帰るね・・・元気を出してくださいなっと」
「・・・」
彩花の棲むこの世の地獄に引きずり込まれた比奈子は唯一の希望である兄の棲む京都へと縋るように向かうのだった。
同類を憐れむ気持ちと復讐を果たした気持ちを胸に帰宅した彩花。
比奈子に会ったことを彩子から聞いた真弓は頬を薔薇色に染める。
「元気だった・・・比奈子ちゃん・・・」
彩花は記念写真を見せる。
「なんてことをするの・・・比奈子ちゃんは今、すごく大変な時なのに・・・こんなことをするなんて・・・」
彩花は母親の愚鈍さに幾度目かの絶望を感じる。今、地雷を踏んでるよ。お母さん。私のすごく大変な時に入れなかった中学の制服を着た記念撮影を楽しい旅先から送ってきたのは誰だったのかなあ・・・。
「比奈子ちゃんは家族がバラバラになりそうなのよ・・・こんなひどいことをするなんて・・・」とさらに声を荒げる真弓。彩花の堪忍袋は破裂しました。
激昂して瓶を投げつける彩花。
「何言ってんだ・・・自分の家族がバラバラじゃないか・・・他人の家の心配している場合かよ・・・あんたの目はひばりヶ丘しか見えてないのかよ。そんなに外面よくしてどうするつもりだ・・・本気でこの街の一員になれるとでも思ってんのか・・・このくそ婆」
怯えて我を失う真弓だった。彩花は正解しか語っていないのだが、それを理解する能力は真弓にはなかったのである。
玄関では室内の気配に気がついた啓介がマイカーというシェルターに避難していた。
娘の正しさを受け止めることもできず、妻の誤りを正すこともできない男なのである。
そして・・・啓介は秘密を抱えていた。
娘は夜の街に飛び出した。
母親は父親を発見した。
「あなた・・・なにしてるの・・・」
「別に・・・」
啓介は車に何かを隠していた。
「借金ってどういうこと」
「そんなのしてないよ」
「警察がそんないい加減なこといわないでしょ」
「独立資金として一千万円・・・」
「独立って・・・」
「しないよ・・・でも高橋さんが熱心に勧めてくれるんで借りただけさ・・・銀行にそのままにしてあるし・・・折を見て返すつもりだ・・・」
「・・・」
「どうして・・・順子さんと一緒にいたの」
「なに・・・いつのことだ・・・」
「喫茶店に・・・」
「知らないな・・・俺は客と打ち合わせしてたんだ・・・たまたまじゃないのか・・・順子さんがいたなんて全然気がつかなかった・・・」
「あなたがあの事件現場にいたって小島夫人(夏木マリ)が・・・」
「何言ってんだ・・・いたのは小島の婆さんだよ」
もう、啓介の話は真偽のほどが不明すぎるのだった。
小島夫人は・・・ひょっとすると・・・異物である遠藤家を追いだすために・・・遠藤家犯人説の捏造をする気満々なのかもしれないのだった。
その頃・・・街を彷徨った彩花は土手の上に慎司を発見する。
「慎司」
慎司を見上げるその目には清々しさが浮かんでいる。
(やっと・・・対等になれた・・・ただの男と女に)
慎司は途方に暮れていぶかしげに彩花を見下ろす。
その脳裏には狂ったように成績表を切り裂く母親の姿が焼き付いている。
夜の家で夜の街に出て行った中学生の娘を捜しに出ようともせず真弓は鈍感な視線を彷徨わせる。
(私は何一つ悪くないのに・・・どうしてこうなってしまったの)
昇る夜行観覧車のゴンドラはまだ頂上には届かない。
関連するキッドのブログ→第3話のレビュー
CLUB Rico開催中まこちゃんランド・スピーク・イージー。
まこ「こんなところで秘密の集会が・・・」
くう「やっぱり・・・」
シャブリ「来週も出番は確保されているようで・・・ホッとしたのでした~」
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コメント
Ricoさまを見たいけど、出ればお茶の間からは
嫌われる役どころなわけで・・・
だけど、こげな役でも引き受けちゃう
Ricoさまの懐の広さには感服なのデス!
さっみなさん、次は【はらちゃん】のロケ先となってる
まこ☆ミキのかま☆ぼこ工場に集合ヨ!
投稿: まこ | 2013年2月 9日 (土) 12時10分
●no choco●まこ☆ミキ様、いらっしゃいませ●no choco●
ひみつのアッコちゃんと
ビューティフル・レインの八百屋の娘で
そして本当はいい娘のリーガル・ハイ・メイン・ゲスト。
昨年はまあまあの役をそつなくこなしておられたのですが
本年は冬ドラマから波乱の幕開けですな。
子役→女優の過渡期ですので
周囲のフォローも大切でございますよね~。
どなたかのゴリ押しが欲しいくらいでございまする。
まあ、弱小プロダクションに咲いた一輪の花路線も
はかなげでよろしいですけどな~。
英語勉強してハリウッドに行っちゃう手もありますけどな~。
まこ様、英語の家庭教師がお見えになっておりますぞ~っと・・・もういない。
皆のもの~、まこ様捜索開始~。
ターゲットはドロンジョ・モードで逃走中!
投稿: キッド | 2013年2月 9日 (土) 13時07分
CLUB Rico、ハレルヤ(*゚▽゚)ノ
美しいRicoさまだけど、ますます性格と物言いがえげつなくおなりで…
もう、真理衣ちゃんが漂わせていた孤高の女王的空気もないただのイジメ女なのでした^^;
それでも、やっぱりブレない里琴さまが好き。
ぜひ、写真からやっと出てきた春太郎ラメポ祭りもご検討ください( ̄∀ ̄)
投稿: くう | 2013年2月 9日 (土) 14時02分
❀❀❀☥❀❀❀~くう様、いらっしゃいませ~❀❀❀☥❀❀❀
ただ今、ロイヤルミルクティーと
スペシャル・ロール・ケーキ・ワゴンを
お持ちいたしまする。
美しいRico様、ツーショットではピントを
はずされるカメラワークもなんのその
堂々たる下町のいじめっこぶりを
発揮しておりますな。
いじめることが生きがいの様々な
お嬢様方の顔を懐かしく思い出しまする。
みんな陰湿で悪逆でよろしゅうございましたなあ。
小六から始り中三まで・・・。
いじめる心の成長を感じさせる出来栄えでした。
ふふふ・・・まーくん人気ですな。
まずは今夜のかまぼこ祭りをお楽しみくださりませ。
投稿: キッド | 2013年2月 9日 (土) 14時17分
「CLUB Rico」 遅刻しました~!
>CLUB Rico会員一同、女優魂に拍手喝采と同時にお茶の間受け的前途に不安も覚えるのだった。まあ・・・女優は与えられたポジションで戦い抜くしかないわけですが。
「スクール」で同様に女王様だった荒川ちか嬢がアニメに走るなか、
里琴さまの安定感あるブレない真理衣ぶりに
私は大満足でありんす。
たしかに、お茶の間受けは心配ですが(^_^;)
>まあ、弱小プロダクションに咲いた一輪の花路線も
はかなげでよろしいですけどな~。
英語勉強してハリウッドに行っちゃう手もありますけどな~。
それって、
「死神のバラッド」の時に言ってた将来の夢じゃないですかーーっ!
投稿: シャブリ | 2013年2月12日 (火) 23時59分
▯▯black rabbit▯▯シャブリ様、いらっしゃいませ▯▯black rabbit▯▯
女優は千の仮面をかぶる宿命があるわけですが
志田未来様が千の着ぐるみ着こむ路線で
きたろうに乳もまれる体当たり演技の最中、
今回の里琴様は栗山千明的なものを憑依させて
千の変身路線を驀進中ですな。
トレビアンでございます。
栗山千明→宮崎あおい→堀北真希→成海璃子のように
美しい子役→美少女→美女の路線を
踏襲してもらいたいですなあ。
ノーメイク、ノープランでも勝負できる女優への
道は深く険しいものでありますが・・・
必ずや夢をかなえる器だと信じるばかりなのでございます。
投稿: キッド | 2013年2月13日 (水) 09時13分
文章から察するとキッドさんは原作をご存じなのかな(?_?)
あとはいじめ役の吉田里琴ちゃんがお好きなのかなと思いましたたしかにいじめ役にしてはかなり可愛い子ですよね、もったいない! あとこの作品には出てないけど、谷花音ちゃんもお好きかな~? さてま~くんはこの事件に関係あるのでしょうか。
まさか小島親子が犯人ということはないと思いますが。
真弓は娘と和解できるのか!も気になるのですが、 なんか淳子にも少し異常な面が見えてきました~。
やはりただの優しい人じゃなかったのね(汗)まあ親とはいえ好みは出ちゃうだろうから娘より息子が可愛いのは仕方ないかもですけどあれじゃあ慎司君も雛子ちゃんも可哀相ですよ。はやく淳子と慎司君には帰ってきていただきたいわ~。
投稿: 出雲 | 2013年2月13日 (水) 11時15分
~~☀~~出雲様、いらっしゃいませ~~☀~~
基本的には悪魔なので存じないことがないのですが
ドラマの場合はあくまでドラマを楽しむ方向になっております。
あくまで妄想なのでたまたまネタバレになることも
ありますがご容赦下さりますように。
体罰標準装備の厳格な父親と
自由奔放な性格の母親に飼育管理されましたので
子役には憧れがございますし
若いみそらでギャラ稼いでいることが
複雑な思いを生じさせますので
子役はすべて尊重いたします。
しかし、吉田里琴様はデビュー当時から
スター候補生として特別扱いでございます。
CLUBが発足するほどに一部愛好家の皆さまも
賛同の模様でございますし~。
そうですねえ・・・谷花音様は
ちょっと富士真奈美様が香りまして
この世代は一番、気になる存在ですな。
さすがはお見通しですね。
こういうタイプに昔から弱いですな。
こういうタイプに
「あらあんた良い男ね」とか言われたらイチコロですな。
真弓は実在すれば
けして和解することはないと思います。
娘が許容するしかないわけですが
ドラマですからねえ。
淳子が本当に「まとも」であれば
最初から真弓に「救い」の手をさしのべていたでしょう。
引っ越し祝い、バザー、着物の集い
すべて後からです。
つまり、淳子は最初から「異常」なのでございます。
お気をつけくだされませ。
真弓も淳子も見果てぬ夢が大好きなタイプなのですな。
もちろん、時にはものすごいスターを育て上げるのは
このタイプですが
一人の英才の背後には99999人くらいの残骸があるものです。
ふふふ・・・ドラマではこれでもかと
ミスリードの煙幕がはられているわけですが
意外と原作のまんまの犯人かもしれませんな。
それが誰かは・・・最後のお楽しみにされるのがよろしいかと存じます。
多分・・・刑事は犯人ではないと思いますぞ~
投稿: キッド | 2013年2月13日 (水) 16時29分