たいしたことのない女がいつも男の大切なものを奪って行く(綾野剛)
ラブ・ストーリーの金字塔である「ローマの休日」に登場するオードリー・ヘプバーンは実年齢が二十代前半で、グレゴリー・ペックは三十代半ばである。二人の年齢差は観客の感性によって変わるだろうが、少女のような女性と大人の男性の組み合わせと言えるだろう。
少女は背伸びをして、大人は失くしたものを取り戻すように恋をするわけである。
お互いのベクトルが交差して・・・一瞬の輝きを見せて・・・後は遠ざかっていく。
永遠には結ばれない二人だからこそ・・・あまりにも美しい恋が成立する。
それが二人の合意なのだ。
しかし、もう一つの選択があるわけである。年齢差も身分もおかまいなしで・・・なりふりかまわず、駆け落ちしたり、結婚したりしてしまう二人。
だが、世界においてはそれが自然の成り行きなのである。
そして・・・そうなると多くの場合はそれほどの輝きがある人生にはならないらしい。
それでも、アーニャとジョーが結ばれた未来、さらに離婚した未来。
そこにもある種の輝きがきっとあるのかもしれない。
で、『最高の離婚・第6回』(フジテレビ20130214PM10~)脚本・坂元裕二、演出・加藤裕将を見た。上原諒(綾野剛)と紺野灯里(真木よう子)の結婚の証人になるために徹夜で待った濱崎光生(瑛太)と星野結夏(尾野真千子)は体調を崩してしまうのだった。光生はさっそく生姜湯を飲んで症状の悪化を制御しようとするのだが、来るなら来いの結夏は発熱してしまうのだった。
「元気ですか」と出勤途中の光生はジョギング中の灯里に声をかけるが「すごく元気な人間なんてそんなにいないと思うしいちいち元気の状態を尋ねられてもまともに応えることのできる人間なんていないでしょって昔言ってました」と応じられてしまう。
光生はできれば灯里といい関係になりたいのだが、結夏ともやりなおしたいと思っていて自分で自分がどうにもこうにもエグザイルなのである。
仕事先でバスケットボールか、バレーボールか、阿波踊りか、ロッククライミングに誘われるうちに風邪っ気が抜け、スキップして帰宅するが、離婚後同居中の結夏は発熱してしまう。経営するクリーニング店の助っ人として呼んだのが結夏の年下の恋人・初島淳之介(窪田正孝)だった。レッド・ベルベッド・ケーキ的に如才ない淳之介の社交力に打ちのめされた光生はせっかく餃子の味をほめられたのに素直に応じることができない。
「餃子って昆虫のさなぎににてますよね・・・芋虫から蝶になる前にさなぎになってドロドロになってスープになるのです」と知識を披露してしまうのだった。
その頃・・・ついに諒は愛人の一人、日野明希(遊井亮子)にファミレスで過去を物語るのだった。
バレンタイデーの季節に上野駅から寝台車に乗って北へと旅立ったフレンズな二人。高校生のシオミカオルさんと高校生の諒。シオミさんは担任教師と性的に交際していて凌辱的な歪んだ関係に疲れ、諒を駆け落ち相手に誘ったのだった。憧れのシオミさんとの逃避行に諒は気分が最高で「18才になったら結婚しよう」とプロポーズするのだが、シオミさんは「あなたでは不足」と拒絶する。結局、三日で連れ戻され、シオミさんと教師は学校を追われてしまう。諒は不足分を補おうと教師を目指すのだが、シオミさんは二十歳の時に別の男と結婚してしまうのだった。諒の純情可憐な時計は止まり、シオミさんと結婚して幸せになった自分の幻影に呪縛されてしまったのだった。心の中は毎日、吹雪吹雪氷の世界らしい。
面倒くさい男コレクターの歯科衛生士・海野菜那(芹那)はついに光生に愛を告白し、ホテルでの肉体交渉を求めるのだが、いざとなると腰が引ける光生は応じることができないのだった。心の準備がないと体が準備できない男なのである。
ファンキー・モンキー・ベイビーな結夏は年下の男の子である淳之介に夫のパジャマを着せてベッドに寝かせている間にシャワーで汗を流しているところを光生の祖母・濱崎亜以子(八千草薫)に目撃されてしまう。「孫の嫁が間男とナニしている」ショックで茫然とする亜以子に離婚していることを隠している結夏は言いわけの言葉も浮かばないのだった。
ラブなホテル街で菜那に去られた光生は明希と諒に遭遇する。
ファミレスで諒が眠りこんでしまうと・・・光生は明希から諒のトラウマ事情を聞かされるのだった。
「・・・この人は幸せになるのが苦手なのよ」
「・・・なんてうらやましい性格なんだ・・・僕なんか・・・幸せになりたくてもなれないのに」
「・・・」
結局、諒と二人きりになる光生。
そこへ・・・一日中走り続ける灯里がやってくる。
「走り過ぎでしょう」
「ほっといて」
「ほっとけません・・・話し合ってください」
結局、一度は結婚の証人になろうとしたことを盾に・・・灯里と諒を自宅に連れ込み、関係修復を手伝おうと考えた光生だった。
顔をそろえた四人。
「二度と浮気はしないから許してください」
「許すとか許さないじゃなくてもう終わったことです別れてください」
「まあまあ・・・そう言わないで」
「あなたには関係ありません」
「そうだよねえ」
「でも・・・怒ってるってことはまだ心があるってことでしょ」
「いやなんですよ・・・正しいことしか言えないんです。好きで裏切られて自分が悪くないから正しい事ばかり云う。愛で負けているのに負け惜しみを言ってるようなもんなんです。そういう自分が悲しいとか苦しいとかじゃなくて嫌なんです」
「わかるわあ・・・」
「わかるのか・・・」
「お願いだから別れてください」
「いやだ・・・二度と浮気をしないって誓うから・・・愛のコリーダ的に」
「じゃ、今すぐ愛のコリーダ的に」
「いいとも」
「だめ・・・やめて・・・僕の家で去勢しないで・・・」
「まあまあ・・・」
「みんな大人になって一人で生きていけばいいんです」
「・・・」
「・・・」
「だめですよ・・・そんなの・・・だめです・・・ファミリーになれなきゃ・・・ハッピーになれないんですよ・・・ベイビーズがいなかったら少子化社会で老後が心配になるだけじゃないですか」
「そこかっ」
「そこかよっ」
「そこですかっ」
関連するキッドのブログ→第5話のレビュー
シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラ→くう様の最高の離婚
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コメント
キッドさん☆こんばんは(o^-^o)
そっちにいた自分はたぶんすごく幸福だったんだろうなと窓のむこう側を見る諒(この場面が一番好きです)
ジョギングする灯里を心配する光生
男性二人に子供っぽいながらもロマンを感じてましたが
ラストの修羅場がちょっと想像以上で(゚ー゚; ここまでやっちゃてどう纏めるの?と心配になっちゃいました
ユーモアのある演出、テンポのよい会話で人の業みたいな部分まで踏み込んじゃうドラマなんでしょうか?
2組の男女に輝きのある未来が見えるラストだといいなと思います
投稿: chiru | 2013年2月15日 (金) 20時30分
シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃいませ・・・大ファン
まあ、基本的には男性作家の書いてるドラマなので
二枚目だったら青春の蹉跌を
遠い目で見つめて微笑んでも
許されるんだよなあ・・・という願望丸出しでございます。
光生にとっては健康のために
ジョギングするというシステムが想定外なのですねえ。
きっと精神的な荒廃を感知しちゃうのでしょうな。
せっかく据え膳出されたのに食わないとは
恥ずかしい男ですが
男子に操を求める方には清々しいかもしれません。
しかし、光生は誰に操を立てているのやら。
結夏に立てているから
諒と灯里の仲を取り持ちたいし
歯科衛生士とは寝ないのでしょうかねえ。
そこがまあロマンチックなのでしょうな。
ラストの修羅場はまあ・・・
一種のプレーのようでもあり・・・
灯里としては男なんて誰でも良い的な投げやりな態度。
例の
わがままは男の罪、それを許さないのは女の罪的ゲームの宣言。
いろいろと妄想膨らむところですねえ。
一部愛好家なら乱交プレーに突入しそうでございます。
とにかく今は
光生→結夏
諒→灯里
と男性陣がつれない女性陣にアタックをかけているわけで
女性陣は一度は釣った魚にえさはやらないを潜り抜けた
したたかなお魚さんなわけです。
まあ、現実では次のゲームに行くしかないわけですが
ドラマなので気分を出してもう一度が
面白おかしく描かれている。
きっとそこそこハッピーエンドになると思いますぞ。
投稿: キッド | 2013年2月15日 (金) 20時53分