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2013年2月23日 (土)

夜行観覧車上のアリア(石田ゆり子)

「通りすがりの織田信長じゃ」(及川光博)にも笑ったが、「通りすがりの本願寺顕如にて御座候」(市川猿之助)にも一同大爆笑だったな。戦国武将たち・・・出歩き過ぎ。

誰が「信長のシェフ」の話をしろと・・・。

「そんな戦国武将はいない」と誰もが思うのだが・・・しかし、誰もが実際の戦国武将に出会ったわけではないので・・・一部時間旅行者を除く・・・「実はそうだったかもしれない」可能性は残るのである。

同じように、これほどまでに悪意に満ちた「ひばりヶ丘」はありえないと言う人はいるかもしれない。

しかし、お人よしの目から見た世界と極悪人の目から見た世界は全く違うとも言える。

人は優しかったり意地悪だったりするものだが・・・善意のみを見たり、悪意のみを見たりする場合があるわけである。

そして、夜行観覧車から街を見下ろすものはそれぞれの孤独なアリア(詠唱)を口ずさむのだった。

で、『・第6回』(TBSテレビ20130222PM10~)原作・湊かなえ、脚本・清水友佳子、演出・山本剛義を見た。2013年1月26日・・・事件発生から四日後である。ねっとりと時間が過ぎているので高橋淳子(石田ゆり子)はもう一ヶ月くらい逃亡している気がするが、事件発生翌日、病院から姿を消した淳子は3~4日逃げているだけなのである。しかし、事件当夜から逃亡している中学生の高橋慎司(中川大志)ともども、一年でもっとも寒い季節の逃亡生活である。普通・・・風邪ひくよな。

神奈川県警察・坂留警察署の結城哲也刑事(高橋克典)は高橋家周辺をマークするつもりだったが、早朝の一瞬の隙をついて遠藤真弓(鈴木京香)は近所の階段上で淳子との邂逅を果たすのだった。

「慎司を捜してほしいの・・・」

「落ち付いて」

「良幸(安田章大)と比奈子(宮﨑香蓮)にごめんなさいと伝えて・・・」

「夫と密会してたわよね」

「あなたを裏切るようなことはしてない」

「このままじゃ・・・世間から誤解されたままよ」

「私を・・・信じて」

何を信じていいのかわからないが・・・真弓は淳子を信じる。生れて初めてできた女友達だからである。

何かをかくしている夫は出勤していく。

「何してたんだ・・・朝から」

言葉を濁す真弓は明らかに夫を信じていないのだった。

遠藤彩花(杉咲花)は敵意に満ちた世界で味方を捜す。見果てぬ恋をしている彩花は頼りない母親に頼ることを考える。どう考えても頼れなかった。頼れば頼るほど事態が悪化するような気がするのだった。

無言で家を出た彩花は母親と同じように中傷ビラで埋め尽くされた高橋家の無惨な姿にショックを感じるのだった。母娘である。

ひばりヶ丘自治会婦人部の集いでも「そのこと」が話題になる。

「ひどいことをする」と同情的な声に対して「本当のことだから仕方ない」と自らの犯行を暗示する婦人部長の小島さと子(夏木マリ)・・・。部員たちが小島夫人の夫や息子の件で冷やかな目配せを交わすのを彼女は気付かない。

長く頂点にたったものは皆、はだかの王様になるからである。

京都で熟睡する良幸の恋人・野上明里(滝裕可里)と眠れぬ夜を過ごした比奈子だった。

大学から戻った良幸は明里に攻め立てられるのだった。

「とにかく、僕は東京に戻る・・・」

「事件に巻き込まれるようなことしてどないしはるの」

「巻き込まれるも何も・・・親父が死んでるんだよ」

「東に下りはるんやったら、うちはもうようつきあえん」

「・・・」

「ママからも犯罪者の家族とかかわったらあきまへんと言われてるのどす」

「・・・」

「えらいことや、やはり、京の女は東夷のお方には合いしまへんのやなあ」

「・・・」

「ほな、この辺でお暇いたします。これまでおおきに」

明里は根っからの京都人だった。

京都から新横浜は新幹線のぞみで二時間弱である。

遺体安置所で良幸は父・弘幸(田中哲司)の冷たい頬に触れるのだった。

弟の慎司が溺れかけた時でさえ微笑みを絶やさなかった優しい父親だった。

後妻を迎えた父親に何のわだかまりも持たなかったわけではないが・・・良幸は大学入試のお祝いに父親から贈られた腕時計をそっと撫でる。良幸はようやく父親の死を実感する。

そして、腹違いの妹をそっと抱きしめるのだった。

そんな二人を駅前で待ちうける真弓。

「私、お母さんに会ったの・・・二人にあやまってくれ・・・って言われた・・・慎司くんを捜してくれって」

「・・・慎司から電話があったんです」

「慎司くん、無事だったのね・・・これからどうするの・・・」

「一度・・・家に戻ります」

「家に・・・」

無惨な高橋家では小島夫人が待ち構えていた。

「悪いことは言わないから・・・もうお家には戻らない方がいいわ」

「なんで自分の家に戻ったらいけないんですか」

「あなたたちがひばりヶ丘にいたらひどい目にあうから」

「私たち地域の住民が力をあわせて護ってあげれば・・・」

「住民・・・まあ、どなたのことかしら」

「・・・」

小島夫人の狂気はすでにあふれんばかりの状態である。

兄妹はとりあえず市内のホテルに落ち着いた。

彩花にも探りを入れる結城刑事。

「観覧車苦手なんだ・・・生き別れになった息子と最後に乗った時も・・・震えちゃってね」

「息子さん・・・喜んだと思いますよ」

「優しいね・・・お母さんとよく似てる・・・」

「似てませんよ・・・」

「いいや・・・君のお母さんは・・・いざとなったら・・・他人に優しくできる人だよ」

「つまり・・・利用されやすいと・・・」

「・・・」

「あなたのおかげで誰かさんの出番がなくなっちゃったじゃありませんか」

「・・・申し訳ない事だ」

真弓は淳子からのフリーメールを受け取った。

慎司に電話をかけたくてもかけられない彩花とは違い、無造作にメールを慎司に転送する真弓だった。

事件から四日目、ついに捜査体制も整った。

刑事に尾行された真弓は約束の場所であるショッピングモールに向かう。

淳子は逃げていた。淳子の逃げ足は速かった。警官や刑事たちの足が遅いわけではないのだろう。慎司の運動能力は母親譲りらしい。きっと淳子は駅伝の選手か何かだったのだろう。・・・と思うしかないシーンの後で。

「ごめんね・・・何度も呼び出して・・・」

「良幸くんのところに慎司くんから電話があったって」

「慎司・・・無事だったんだ」

「これ・・・マフラーとカイロ・・・」

「ありがとう・・・」

「私・・・あなたがたった一人のともだちだから・・・いつもあなたに助けてもらったし・・・今度は私が助ける番・・・」

「子供たちのこと・・・頼むわね」

その時、二人の前に慎司も姿を現す。

しかし、二人はすでに包囲されていた。

「あのね・・・私がやったの・・・主人を殺したのは私なの」

「・・・淳子さん」

慎司は再び、姿を消す。

整形外科病院開業医の妻、逮捕のニュースは世間を駆け巡る。

「おにいちゃん・・・」

「比奈子は・・・僕が護るから・・・」

腹違いの兄妹は固く抱き合った。

再び、高橋家前に集う報道陣。

ついに錯乱した小島夫人は叫ぶ。

「出て行ってちょうだい・・・これ以上、私のひばりヶ丘を汚さないで」

帰宅した遠藤啓介(宮迫博之)は妻の制止を振り切って再び外出する。

彼が被害者から借りた金はなんだかんだで300万円ほど消えていた。

車の助手席には血痕のついた【何か】が置かれている。

取り調べ中の淳子。

「私がやりました・・・」

「凶器は・・・」

「・・・」

淳子は心の中で囁く。

隣にいい人たちが引っ越してきた。

気取りがなく誠実な人たち。

きっと、大丈夫。

あの人は助けてくれるだろう。

遠藤さん(夫)・・・私たちの運命をあなたに委ねます・・・。

啓介は隣の美人の奥さんに妻には内緒の【何か】を託されて夜の街を疾走するのだった。

しかし、真弓はひたすらに淳子の無実を信じる。

もしも、淳子が犯罪者になったらたった一人の「ともだち」がいなくなってしまうからだ。

事件発生から四日目の夜が更けて行く・・・。

関連するキッドのブログ→第5話のレビュー

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コメント

たしかに淳子の逃げ足の速さは異常でしたね~。 やはり慎司の運動能力は母の血かしら~なんて冗談は置いといても淳子はもしかしたら慎司の成績が振るわないのは自分が産んだ子だからだと思って悩んでたのかもしれないですね。
まあ、頭の良さは運動能力と違って遺伝はしないみたいですが。
それにしても警察は淳子だけじゃなくて慎司の行方もきちんと探さないと~。
あんなに近くにいたのに、出口もふさいでいたのに、淳子を捕まえたら満足しちゃったみたい あれで慎司も捕まっていたら真弓はまた余計なことしちゃったなと視聴者に言われるところでしたな。まあ、慎司ももう捕まったほうが幸せな気もしますが。
予告だとまだ逃亡してるみたいで、淳子は慎司は家に帰ってると思ってそうだけど。
淳子と啓介の関係も分からないですね。
淳子の言い方だと不倫ではなさそうですけど淳子を演じてるのが石田さんなのでじつは不倫してるんじゃと考えてしまう~って失礼な言い方(^_^;)
まあ、今までのドラマのイメージなんですけどね。
遠藤家も大変なことになるみたいでびくびくしながら次回も見ることになりそうです。

投稿: 出雲 | 2013年2月23日 (土) 14時00分

~~☀~~出雲様、いらっしゃいませ~~☀~~

遺伝というのは不思議なもので
確かに子は親に似るわけですが
そっくりになるわけではない。
女の子が父親似だったり
男の子が母親似だったりもしますし
とんびがたかを生むようなこともあります。
もちろん、逆の場合も。

小説家に女優が
「あなたと結婚したら頭がよくて美形の子ができる」
と言うと
小説家が
「逆だったら困るな」
というジョークがあるくらいですからな。

運動能力もまた脳が大きくかかわる問題ですし
頭の良さは記憶力の良さにかかわってきます。

どちらも形質がある程度は遺伝しますから
カエルの子はカエルというのも成立するわけです。

ヒトゲノムの解析によって
人間生産システム工学が
近い将来、かなり発展する可能性もありますが
これには倫理的な問題が立ちはだかること間違いなしでございます。

それはそれとして
ドラマの中では
継子である長男と実子である次男をめぐって
淳子には遺伝的に特殊なこだわりがあったことは
間違いないようですねえ。

長男はストレートで京大医学部に合格・・・
それに引き換え次男はバスケばかり得意で・・・
・・・みたいな。

母子が行方不明の場合、
警察としてはまずは
母親を確保したいところでしょうな。
なにしろ、保護者不在ですと
いろいろと問題が生じますからな。
特に相手は未成年、しかも中学生ですので
逮捕ではなく、基本的に補導、保護の対象となりますから。

真弓は場合によっては公務執行妨害、犯人蔵匿の罪、あるいは共犯になる可能性まであり、あぶない橋を渡っているのですが・・・自覚はないのですな。

その切り札は「無罪だと信じている」なのですな。

法治国家としてはバカの善意ほど扱いにくいものはございません。

「気分が悪そうなので首をしめて楽にしてやりました」と言われても困りますからねえ。

慎司は何におびえて逃げるのか・・・。

ドラマ的には慎司は現場にいなかったわけですからねえ。
もっとも殺したとは思っていなかった可能性もありますが・・・。
犯人が淳子だとすれば
母親に父親を殺させた原因を自分の責任と感じて
絶望しているとも考えられます。

母親に絶望している彩花とは好対照ということになりますな。

そして、淳子はなぜ、病院を抜け出したのか・・・。
キッドは淳子は悪女に違いないと思っているので
息子を庇っているとは思えず
時間稼ぎをしているのでは・・・と考えます。

さらに啓介は何を持っているのか・・・。
もう、かなり、隣の奥さんが好きになっちゃった的な
ことだと思いますけれど・・・。

ミステリ的には最後まで謎に包まれるわけですな。

もちろん、このドラマは人間ドラマとして
すごくいい感じでございますので
真弓が・・・
彩花が・・・
そして慎司、比奈子、良幸が
結末の後である程度、希望を見出させるのか・・・
そこが悪魔的にはもっとも楽しみなのでございます。

まあ、淳子、啓介、小島夫人は
すでにいろいろな意味で
救いようがないと思いますので・・・。

キッドとしては彩花のいじめっこトリオは
実は下町的にいい子だったらいいなあと思います。


投稿: キッド | 2013年2月23日 (土) 15時13分

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