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2013年3月 1日 (金)

とりあえず殴る人(ガッツ石松)

「ああ、これはもうやっちゃってるな」

「どうしてよ」

「だって要領の悪い男がここまで進んでるんだぜ、要領のいい方はもうやっちゃってるだろう」

「とにかく、今を楽しみなさいよ」

「ガッツ石松を見ていると、土手を思い出す」

「・・・」

「レポーターがガッツさんの初恋の思い出の場所を探訪して・・・この土手でガッツさんはドーテーを喪失しましたと言ってドテッと言いながらこけるんだ」

「どうでもいいことを覚えている人よね」

「ガッツさんを見る度に思い出すから忘れようとしても忘れられない」

「因果よねえ」

「最近、昔、熱気球で結婚式をあげた友達がいたことも思い出した」

「そうなったり、そうならなかったりするのはただのタイミングの問題よね」

「わざわざ、落ちて行く人をアップにする必要があるのかとも思うが、そうしたい気持ちもわかる」

「・・・難儀よね~」

「あれ・・・意外ともたもたしてるな」

「相手のいることだからよ」

「さかりのついた猫みたいだけどな」

で、『最高の離婚・第8回』(フジテレビ20130228PM10~)脚本・坂元裕二、演出・並木道子を見た。「のび太の結婚前夜」(1993年公開)は実在する映画である。「彼は他人の幸せを願い、他人の不幸を悲しむことの出来る人物」は花嫁しずかの父がマリッジ・ブルーの娘に語るセリフである。・・・のび太はどんだけ他人頼りなんだ。とりあえず計算する人もいるよな。娘の恋人を目にして・・・自分とは違うタイプじゃないか。娘の奴、お父さんみたいな人と結婚したくないのかよ。顔はまあまあだし、スーツも若い割には着こなしている感じがする。些少、緊張しているが挨拶の言葉はよどみない。この顔で娘とやっちゃってるのかよ。妊娠してるってことはやっちゃってるんだよな。俺の娘を抱いちゃってるんだな。な、殴りたい。でも、殴れない。そんなことして気まずくなったら困るからな。この男、本当に娘を幸せにしてくれるのか。この男の会社は大丈夫なのか。この男、健康に問題ないのか。ちゃんと保険に入っているのか。うわあ、俺の娘と目配せなんかしやがって。なんだ、心と心が通じ合っちゃっているのか。体と体も通じ合ってるからか。愛し合っちゃってるのか。お、俺の娘とかあ。あ・・・しまった。殴っちゃった。マジで殴っちゃった。ど、どうしよう。

「今夜、研究室がふさがってまして」

「じゃ、友達の処にでも泊ればいいじゃないですか」

「だからきました」

「僕たち・・・友達ですか」

すっかりくつろぐ上原諒(綾野剛)に神経をとがらせる濱崎光生(瑛太)である。

そこに、葬儀のために上京した結夏(尾野真千子)の父親・健彦(ガッツ石松)がやってくる。

尿路結石が完治した健彦は娘夫婦の離婚を知らないが、娘が家出中であることはそれほど気にしない。諒がお清めの塩をかけすぎることはなめくじではないので気になるのだった。

一時間待ちくらいで当日券が購入できるようになった東京スカイツリーに昇る、元義理の息子とそうとは知らない元義理の父親である。

おのぼりさんよろしく「ヤッホー」と興奮する父に「東京スカイツリー」なんてと馬鹿にしていたのにやはり興奮する息子だった。

「最近知ったんだが・・・娘はあんたのことをのび太みたいな人だと思っていたらしい」

しみじみとした思い出話なのか判断に迷う光生だった。・・・今週はなんとなく藤子・F・不二雄をしのぶ一週間なのか。

しかし、義理の息子として愛されている気分になった光生は嘘をついていることに耐えきれなくなってしまうのだった。

結婚の挨拶の時には殴れなかった健彦は本懐を遂げるのだった。

顔面を冷やす光生に諒は語りかける。

「奥さんとケンカしたんですか」

「・・・」

「うちはケンカとかしなかったりがいけなかったのかなあ」

「おたくはあなたの浮気がいけなかったんですよ・・・だから終わっちゃったんです」

「僕は終ったと思ってないんです」

(終わったんだよ、いや終わっててほしい)と望む光生だった。

「奥さんに未練はないんですか・・・」

(っていうか・・・向こうがみれんがないんだよ)・・・大事なことがまったく洞察できない男なのである。

結夏は未練ありありなのだが・・・光生に愛されている気がしないので仕方なく離婚したのである。

結夏はただ「愛してると云ってくれ」と思っているだけなのだ。

神経質でもいいたくましく愛してほしいのである。

で、周囲のことには神経質ではないので、いつものように歯科で愚痴る光生なのだが、いつもの歯科衛生士・海野菜那(芹那)は寿退職していたのだった。

クリーニング屋で灯里(真木よう子)を発見した光生は灯里と諒が再燃するのを恐れて灯里の隔離を試みるのだった。

しかし、光生が据え膳食わなかったことに立腹していた菜那は光生を婚約者と待ち伏せしていて一矢を報いる。

「灯里さんですか・・・昔、同棲していて今も好きなんですよね。私、奥さんより灯里さんに嫉妬してました」

「光生さん・・・おしゃべりですね」

光生はぎゃふんと泣いたのだった。

しかし、このような状況でも・・・男の自分に対する好意を第三者から語られて悪い気がしない女は少なくないのである。

失敗だと思っていたことが意外に成功につながる所以である。

いそいそとでかける祖母の亜以子(八千草薫)を尾行する光生。もちろん、亜以子が光生を釣っているのである。

サービスでバックブリーカー(背骨折り)を決められた光生は結夏との再会を果たす。

改めて健彦に離婚を報告する光生と結夏。

「離婚しちゃったんだから仕方ないでしょう」

光生への愛を秘めてふてくされる結夏。

その気持ちには全く気がつかず、とりあえず謝罪する光生である。

「みんな僕が悪いんです・・・」

光生・・・愛されていることもわからないし、愛し方もわからないのである。どこが悪いのかもわからないままあやまるしかない男なのだ。

「あんな娘ですまない・・・」とすべてをこらえて頭をさげる健彦だった。

残された光生は・・・結夏に「幸せになってください」と未練ほこらえて言うのだが・・・その言葉が相手を傷つけているとは夢にも思わないのだった。

居場所のなくなった結夏をとりあえず保護する亜以子だった。

「結婚もスタートだけど・・・離婚もスタートなのよ・・・いろいろ面倒くさいのよ」

光生に愛されたいのに愛されている実感がわかない結夏は「あゝ無情」な気分だったのである。

そして・・・コンビニで健彦のパンツをたたみ終わり光生のハブラシを買いに来たと思われる諒と遭遇するのだった。

涙は塩っぱすぎるし 焼きもちは汚い

好きにさせてよ

燃えあがる二人だった。

一方、録画したダイオウイカ(「NHKスペシャル~世界初撮影!深海の超巨大イカ」」)を今夜こそ見ようと考えているうちに放心した光生を発見する灯里。

弱った者同士は魅かれあい身を寄せるのだった。

故郷に戻ろうとまで考えていた灯里だが、こらえて、逆に前向きに生きようとするスイッチが入っていた。

前向きということは否定せずに肯定しようとする姿勢であるる

なにもかも肯定する気持ちになった灯里は光生との過去まで肯定し始めたのである。

二人が暮らした思い出の街を訪ね、思い出の食事、思い出の暮らしを振りかえる光生と灯里。前向きな灯里は光生の数少ない美点を発掘するのだった。

「この間、励ましてくれてありがとう。すごく、感謝している。人付き合いが苦手なのにがんばってる光生さんはえらいなって思ってる。スーパーマンもパーマンに臆病な人間が勇気を出して頑張るのは勇敢な人よりも高評価だっていってたし・・・ミツ夫つながりで言ってるわけじゃないの、そんで、光生さんは眼鏡をはずしたら美少年ミツオくんに変身するのです」・・・狂ったように光生をほめちぎる灯里・・・もはや、光生は少女マンガのヒロインです。

生れてはじめて煽てられた光生は天国の階段を昇りはじめるのだった。結夏は口下手なのでこれができなかったのである。

あの日あの道に枯れてく

名もない花の色を思い出した

十年の時を越えて青春時代に遡行した二人である。あの日の二人でいるような「シアワセの沈黙」が待ち構えているのである。

灯里は本題に突入する。

「女って・・・どうでもいいけど・・・男が必要な時があるのよ。だって女なんだから。ミスター・グッドバーを捜しちゃうの。だって止まり木がないとくたびれちゃうでしょ。ずっと飛んでるけにはいかないの。だから、誰でも良いから抱いてほしいって思う。だまっていればきれいな顔の男なら申し分ないの・・・」

「そんなのだめだ・・・」とこの期におよんで自分が口説かれていることに気がつかない光生だった。

「だから、とりあえず寝ましょうよ」と仕方なく具体的に指示する灯里だった。

ようやく(・・・今夜もダイオウイカが見れないかもしれない)と予感する光生である。

据え膳も二度目なら少しは上手に召し上がってもらいたい。

しかし・・・その頃、諒と結夏は先行逃げ切り態勢に入っていた。

まあ、男と女なんてくっついたりはなれたり日常茶飯事なのである。

同時にスワッピングしたり乱交すれば異常な気もするが、長いスケールで考えれば人類は一家、皆兄弟なのである。

関連するキッドのブログ→第7話のレビュー

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コメント

のび太が紛うことなくのび太だったので、びっくりしました。
いえ、光生クンのことですが。此処で「のび太の結婚前夜」の台詞が出てくるとは。
そこまで念押ししなくてもいーのになー。

それはともかく、僕は今回、亜以子さんの次の言葉が印象的でした。すなわち
①「夫婦は別れたらおわりだとおもったら大間違いよ」

ドラマの一場面にでてきた何気ないことばなのでしょうけど
僕はこの台詞を聞いて背筋に冷たいものが疾駆しました。

①は、後段に続く台詞
②「婚姻届は結婚の始まりだけど、離婚届は離婚の始まりなの。立ち直るには時間かかるわ」
の【立ち直るには時間かかるわ】
ということを伝えるがため、と普通は受け取りますがしかし
①と②はつながっているようでいてつながっていない。

別れても夫婦関係はおわりではない、という話と
別れたら立ち直るのに時間がかかる、という話が
なぜ同列で語られるのか。

意味合いを考えたら、けっこう怖いと思うのです。


ドラマの展開としては、のび太とあかりさんが予定調和的にくっついてしまったんで
――ゆかちゃんとりょうくんについても――ちょっとがっかりです。
この後はもう元鞘におさまって
最終話で桜の咲いた川沿いの道を2組それぞれが歩く場面でハッピーエンドですかね。

投稿: じゃごらあ | 2013年3月 7日 (木) 00時36分

ナンジャ(゚д゚)ゴラァ!!~じゃごらあ様、いらっしゃいませ~トドカナイテガミニナカサレテ

今回は貞淑な奥さま方には刺激の強い回であるらしく
賛否両論が巻き起こっていますね。

また、自分の浮気は認めるが妻の浮気は認めない男性陣にもいろいろと心を揺らす回だったかもしれません。

人間は猿から進化したわけですが
基本的に一夫一婦制のゴリラもあり
生涯乱交交尾のチンパンジーあり
ハーレムを作るニホンザルありと
猿の生態系も様々なのですな。

で、基本的に人類はゴリラ的であることを
選択してまあまあ、繁殖しているわけですが
まあまあ、チンパンジーやニホンザル的な
性向も残っているわけでございます。

ゴリラからみればチンパンジーは「不潔」ですし
チンパンジーからみればゴリラは「無粋」なのですな。

「離婚」した夫婦が「再婚」することはままあることですし、「二夫にまみえず」ではあまりに不合理だったりします。

「離婚」して人間関係もなくなるのは
子があれば無責任と謗られますし
「発展的解消」ならば旧友として
婚姻時代よりも関係が深くなったりもします。
離婚した妻から夫が借金を申し込まれたり
離婚した夫の看護をしたりなんていう
相互扶助な関係だってありますしね。

①と②が繋がらないのは
「離婚」~「同じ相手と再婚」の場合でしょうかね。

「結婚後」にもいろいろと面倒くさいように
「離婚後」にもいろいろと面倒くさいことがあり
特に「別れたくなかった方」は
精神的なショックで立ち直りはそれなりに大変なのが
一般的でございましょう。

今回のセリフの当事者であるゆかちゃんで言えば
「別れたくないが、別れを告げられる前に別れてやる」みたいな気持が濃厚なので・・・
いざ、別れたとなるとかなり「つらい」わけでございます。

まあ、最悪の場合は前夫に対するストーカーになったりしますからな。

亜以子さんの言葉は「夫婦関係は終るが人間関係は残るわよ」という程度の意味で、「離婚したくなかったのにしてしまったので傷は深い」ゆかちゃんには微妙な言葉だったとは言えますな。

「ふっきれるかどうか」を見通せない心情ですから。

結末についてはまだまだ不透明ですが
二組のカップルが成立するのか、
その組み合わせは?
一組の場合もあり、
一組もできずに
なんとなく仲良し四人組誕生まで
様々な選択肢が残されていると考えますが
いかがでしょうかね。
このドラマは特にハッピーエンドでなくても
それなりに楽しいのではないかとも思います。

投稿: キッド | 2013年3月 7日 (木) 03時00分

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