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2013年3月16日 (土)

希望の光が死の陰の谷にさし汝にわざわいとなぐさめを贈る(吉田里琴)

人は罪を犯すことから逃れようとする。

それは法から身を護るためである。

そして、人は身を守るために罪を犯す。

人は罰から免れようと嘘をつく。

しかし、何人たりとも罪から逃れることはできない。

罪は魂に刻まれて人を苛むからである。

それを信じぬものは暴く力を自ら行使する。

彼らは救いを求めないからである。

悪魔はそっと彼の耳元で囁くだけである。

神などはいないと。

信じるものは己のみであると。

復讐こそが正義であると。

で、『・第9回』(TBSテレビ20130315PM10~)原作・湊かなえ、脚本・清水友佳子、演出・山本剛義を見た。娘を殺そうとした母と母に殺されかけた娘の関係修復は絶望的だと思うが、母親の狂気を許容する聖なる娘ならば可能である。そのためには娘が母の懊悩を察し、人の魂の不条理を認めなければならない。それは険しい道であるが、よき指導者に恵まれ、娘は希望の光さす道を見出す。それがこの世の正しき修羅の道を諭す幼馴染であることは言うまでもない。苦しみを知るには苦しむ他ないからである。

夜行観覧車の呪いによって「聖なるひばりヶ丘天国」の夢を見た遠藤夫人(鈴木京香)は清修学院中等部不合格の烙印によって異物と化した娘・(杉咲花)を殺害しようとして失敗する。聖なる防犯ブザーによって覚醒した遠藤夫人は「とりかえしのつかないことをしてしまったこと」を悟るが、同時に漸く己の非を知るのだった。

裏の家での殺人未遂を制止した小島夫人(夏木マリ)は子育ての難しさについて考察する。

「昨日はありがとうございました」

「月に二回も殺人事件があったら・・・たまらないのよ」

「・・・私、どうしていいのか、わからなくなってしまって」

「正解なんてないのよ・・・何が大切なのかを忘れないこと・・・それだって失敗するときは失敗する。そうでなくっちゃ、ワイドショーがネタに困るんだから」

殺人未遂犯の娘となった彩花は恐ろしい母親から逃れるために坂の下の浦浜中学に登校する。母親の呪いによって地獄と化した校舎では中立地帯の保健室でさえ、身を落ち着かせることができない。坂の上の子供でもなく、坂の下の子供でもない彩花は出稼ぎの中国人労働者のように抑圧されるのだった。

かっての友達であった彩花を幼馴染の村田志保(吉田里琴)は憐れむのだった。

≪いつまでも、いつまでも昔をなつかしんでも駄目よ・・・あなたはどこにもいない子になったのだから・・・どこにもいない子として強く生きていかなければならないの≫

しかし、うつろな魂に支配された彩花は志保の聖なる足を飲みものによって汚すのだった。

≪ああ、憐れな子、憐れな子よ・・・ここにはいないことを思い知らなければならないわ≫

志保はあの世とこの世を隔てる川での禊を彩花に促すのだった。

≪一度、死んでおしまいなさい≫

志保に内在する神の御心を知らぬ、一般人の佐伯南(岡本夏美)たちは怯えるのだった。

「それは・・・やりすぎなんじゃないの」

「死んじゃったらどうするの・・・」

≪彼女はすでに死んでいるの・・・これは慈悲なのよ≫

志保の神の目には車に乗って近づいてくる遠藤夫人が見えているのだった。

≪さあ、最後のチャンスをものにするのよ・・・来週は最終回なんだから≫

遠藤夫人は冷たい一月の川を進む彩花を発見した。

川の水の冷たさの予感が一瞬、身をすくませる。

志保は声をあげて励ました。

「お母さん、彩花ちゃんが大変なんですよ」

遠藤夫人は勇気を得た。

「待って、彩花、行かないで」

「私は行くのよ」

「行かないで」

「離してよ」

「離さない」

遠藤夫人は抱きしめなければいけないものを漸く抱きしめた。

志保は苦笑しながらその場を後にした。

底知れぬ闇の中から

かすかな光のきざし

探し続ける姿は

勇気という名の船

娘を連れ帰った遠藤夫人は言うべき言葉を口にする。

「ごめんなさい」

殺人未遂の妻と証拠隠滅の夫はお互いの罪から目をそらしながらとりあえずコーヒーを飲むのだった。

罪の在りかを明らかにしないことがただひとつの救いの道だからである。

あの夜のなんらかの事情を知っている慎司(中川大志)は犯行を自供するが、信憑性が問われ、容疑を認められない。

慎司は回想する。

母は僕のユニフォームをハサミで切り裂いた。

僕は愛しているあの娘のように暴れてみた。

そんな僕を父は殴った・・・。

しかし、犯行の場面はどうしても思い出せないのだった。

勉強のできない次男の無意味な自首によって高橋夫人(石田ゆり子)は追い詰められていた。

無力な己の力を悟った慎司は良幸(安田章大)と比奈子(宮﨑香蓮)から距離を置く為に保護施設に入所する。

高橋夫人の妹(堀内敬子)からも見放された良幸と比奈子はもはや、自宅に戻るしかないのだった。

その頃、ひばりヶ丘には斎藤さんが通りかかっていた。

そして、高橋家の悪意に満ちた貼り紙をはがし始めたのだった。

思わず、家を出る遠藤夫人。

「何してるんですか」

「嫌いなんですよ・・・こういうの・・・」

「・・・」

遠藤夫人は為すべきことを思いつかない自分というものを思い知ったのである。

「そうですよね」

「そうなんです・・・」

遠藤夫人は為すべきことをした。これ以上なく落ちてしまった友達のために・・・何かしてこそ・・・友達なのである。

「じゃ、私はこれで・・・」

斎藤さんは名も告げず去って行った。

遠藤氏もやってきた。その道のプロなのである。

彩花はまたもや・・・自分の家を捨て他家に手を出す偽善的な態度の母親を見出した。しかし・・・と彩花は思いなおす。この心のない母親の娘である宿命からは逃れることはできないのである。それを受け入れるしか道はないのだった。それが光の天使である志保のおしえてくれたことだった。

そこへ・・・良幸と比奈子が帰ってきた。

彩花は思う。坂の下には素晴らしいともだちがいた。

坂の上には素晴らしいともだちがいるのだろうかと。

彩花は苦しみを知らずに育ち、幼いままの少女のために志保から与えられた菩薩の力を試すのだった。

なぜなら・・・彼女もまた苦界に沈んだ身の上だからである。

殺人未遂犯の娘と殺人容疑者の娘は魂の姉妹と言って差し支えないだろう。

彩花は憧れの清修学院高等部に行って叫んだ。

「ここに・・・高橋比奈子さんのお友達はいますか・・・お話があります」

慈愛に満ちた世間知らずの鈴木歩美(荒井萌)たちは仕方なく召集に応じるのだった。

もちろん、それなりに世間体を計算したのである。

こわいもの知らずの中学生には逆らえないからだ。

比奈子は浅い友情を修復してくれた彩花に謝辞を献ずる社交性は心得ていた。

「ありがとう・・・」

彩花は底辺の人間としてまだまだ自覚の不足している比奈子の前途を危ぶみつつ、その言葉を受け入れるのだった。

所詮は他人だからである。

変わらないこの世界

いつも愛が足りてない

このキケンなゲームも

終わらせたい でも止まらない

素晴らしいインターネットの世界の誹謗中傷に対応するために世間知らずの良幸は情報戦を仕掛ける。マス・メディアを利用して、会見を開き、事態の鎮静化を図るのである。

悪をもって悪を駆逐する一手である。

まあ、龍の顎に頭っこんでしまったという見方もできる。

はたして、事件発生から九日目に夜行観覧車に誰が乗車してくるのか・・・。

そして・・・誰かの罪ははたしてそれなりに暴かれるのか・・・。

妙に暖かく、関東でも桜が開花してしまいそうで不気味な最終回シーズンなのだった。

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様の夜行観覧車

彩花の「ごちそうさま」にウルルンのあなたはコチラへ→まこ様の夜行観覧車

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コメント

良幸は何を話す気なんでしょうね?
なぜ警察じゃなくて記者会見なのでしょう。慎司も止めようとしてましたが母親が殺人で捕まっていて、この上知られてまずいことがあるのかしら?
というかそんな知られてまずいことを世間に公表していいのかな。啓介の凶器隠匿は結局スルーですかね。
啓介が淳子にお金貸してたというのはうまいこと考えたなと思いましたが、凶器隠匿はさすがにそこまでする心理はよくわかりませんでした。
淳子もなぜ凶器隠匿したがるのか良く分かりません。慎司か自分の指紋がついててまずいなら拭けばいいだけなのに。
弘幸もよくわからないですね。
予告と回想だけみるとまともな父親にみえるけど、暴力振るったなんて慎司が嘘つくとも思えないし、理由もなしに殺されたとも思えないので。
ちょっと色々分からないことがあって後一回で本当に終われるのか不安(^_^;)
まあここまできたら犯人は淳子で間違いなさそうですけど。

投稿: 出雲 | 2013年3月18日 (月) 15時52分

cloud~~☀~~出雲様、いらっしゃいませ~~☀~~basketball

良幸は「いつかこのような日がくること」を恐れたり、
「何か」を見て見ぬフリをしてきたことを悔やんでいたようなので・・・。
きっと、「それ」を話すのでございましょう。

それがなんなのかはまったくわかりませんし
なぜ、世間に公表しなければならないのかもわかりません。

だから、楽しみです。

啓介の凶器隠匿は予告編を見る限りでは
バレる、もしくはバラすのではないかと思われます。
しかし、ミスリードかもしれません。

淳子が凶器を隠したがるのは
基本的には
外部のものの犯行に見せかけるためでしょう。

しかし、慎司の行方不明で計算が狂ったのかもしれません。
もちろん、妄想的にはですが。

弘幸は死人に口なしなので
もう真実は永遠に封じられたと云っても過言ではないのです。

ミステリとしては最終回を前にして
何一つ明らかになっていない・・・という展開です。

それを素晴らしいと考えるか・・・
ヒント少なすぎ・・・と考えるかは
好みの問題ですねえ。

原作者には
「結局、真実なんて虚構の一つにすぎない」という姿勢がありますので
最終回もまた・・・何一つ明らかにならないというのも
ありえるとキッドは考えます。

しかし、一貫して・・・
弱きものの憐れさと
理不尽な出来事に対してのやりきれなさは
醸し出してくる作風です。

そういう意味ではこの「夜行観覧車」も
いい味出してるなあ・・・と思わざるをえない。

キッドにしてみると
彩花には落ち度は何一つないわけですが
世の中の反応をみると
叱咤激励にしろ、罵詈雑言にしろ・・・
責任を追及されちゃうわけです。

そこが爆笑ポイントなのですな。

この世に生きるものは
基本的にわんぱくでも良いたくましく育ってほしいと
思っているわけですねえ。

「モラル」というもののいかがわしさが色濃く漂います。

小島夫人はただ息子を溺愛しただけで
「悪」として評価されますし、
志保はクラスメートをいじめただけで
「悪」になってしまう。
もしも、高橋夫人が夫を殺害していれば
ただ、それだけのことで「悪」になってしまうのです。
・・・おいっ、最後は「悪」じゃないのかよっ。

まあ、キッドはそういう主張が大好物ですから・・・
徹頭徹尾・・・このドラマが楽しめるのでございます。

できれば・・・事件が迷宮入りして・・・
犯人不在のまま・・・もやもやだけを残して
終わってもらいたいと願っています。typhoon

投稿: キッド | 2013年3月18日 (月) 23時04分

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