沖の鴎ととんびと鷹はどこで散るやら果てるやら(常盤貴子)
「書店員ミチル」が終了して2013年彼岸の谷間である。
久しぶりだなー。
冬ドラマはカレンダー的には成人式ドラマだったり、節分ドラマだったり、バレンタインデー・ドラマだったり、ひな祭りドラマだったりするわけだが、なんといっても春のお彼岸ドラマなのである。
そういう意味では「とんび」は最高のお彼岸ドラマと言えるだろう。
なにしろ、市川美佐子(常盤貴子)という故人を偲んで偲んで偲びまくるのだ。
それにしても・・・常盤貴子みたいな嫁に死なれたら、もう一生やる気でないのが普通だよな。
そこを乗り越えて行く主人公・市川安男(内野聖陽)は男の中の男なのだな。
まあ、そういう、荒唐無稽な話なので・・・レビューはしなかったわけだが・・・仏壇の死んだ嫁の写真がいつまでもいつまでも美しいので結局、毎週見て滂沱の涙を流すのだった。
で、『とんび・第1回~最終回(全十話)』(TBSテレビ20130113PM9~)原作・重松清、脚本・森下佳子、演出・平山雄一郎(他)を見た。とんびが鷹を生むのはやはり、とんびの見果てぬ夢なのかもしれない。人間を生んだ猿はあまり深く考えなかっただろう。とにかく・・・学歴的に不自由だった親から早稲田大学に入学した息子・市川旭(榎本城之助→五十嵐陽向→荒川槙→福崎那由他→佐藤健)が出たことがそうならそうなのかもしれません。とにかく、生んだ母・美佐子は我が子を庇って死亡・・・美佐子の超絶的理想の嫁ぶりとその早世に視聴する気がなくなったものは多いはずである。だから視聴率は17.0%↘16.1%↘16.0%↘12.0%↗12.8%↘12.6%↗12.9%↘12.6%↗18.3%↗20.3%と・・・死後しばらくは凋落したものと思われる。
とにかく・・・毎回、姑息な展開で涙を誘ったわけだが・・・終盤の盛り上がりはなんといっても息子の嫁である坂本由美(吹石一恵)が頑張ったからだろうと思われる。
そして、最後の最後は安男を支え続けた小料理屋「夕なぎ」主人のたえこ姉ちゃん(麻生祐未)が持って行ったのだった。
第9話は・・・七歳年上でコブつきの女・由美が結婚の挨拶に来る話である。
一般的に些少容貌に問題があっても、マザー・コンプレックス(母親についての記憶複合体)によって男子の母親に面影が似ている女子は結婚可能の法則があるわけだが、幼児において母を失った旭には母の記憶がない。安男が父親であり母親なのである。そのために・・・旭は、ある意味で父親そっくりの女である由美に惚れてしまうのである。なにしろ、由美は離婚後、仕事をしながら息子を育てているわけで・・・旭にとっては「オヤジそのもの」なのだった。
で、安男としては旭の嫁イコール自分の嫁の再来という妙な発想に呪縛されて、由美を受け入れることができなくなってしまうのだった。
厄介な男なのである。
結婚の挨拶に来た旭と由美を追い返す安男。
しかし、由美は安男のような女なので引き下がらない。
「私を娘にしてください」と頭を下げる。
娘・・・娘ができるのかとグラッときた安男だが・・・甘くみてはいけないほど馬鹿なので婚姻届を食べてしまうのだった。
それでも引き下がらない由美は「夕なぎ」で待ち伏せ攻撃である。
ここで、安男の幼馴染である曽根崎照雲(野村宏伸)が臭い芝居を打って安男の本心を引きだすことになる。
「この結婚には反対だ・・・もしも、美佐子さんが生きていたら大反対するだろうし・・・」
そこで安男の男気が爆発するのである。
「・・・なことはねえ。美佐子が生きていたら賛成するに違いない。よくも離婚してくれたと由美さんの前の旦那に感謝するとかなんとか頓珍漢なことを云うにきまってんだ」
そこにはいない美佐子の存在感が膨張して、涙腺が決壊するポイントである。
何回でも泣かされてしまうのだった。
墓の中の姑と長い会話をする嫁。
そこで・・・安男は息子の嫁に自分の嫁と似たところを見出す。
女はおしゃべりだからである。
そして・・・階段に並んで腰かける息子と嫁にかっての自分たち夫婦を見出すのだった。
そして・・・最終回である。
安男を東京に呼ぼうとする旭と・・・紆余曲折の末にやはり、故郷に戻る頑固な父親。
安男としては・・・姉代わりのたえ子を一人にすることはできなかったのだった。
一方で弟ができたことによって不安になり由美の連れ子である健介(黒澤宏貴)が家出したりして右往左往なのである。
結局、すべては丸く収まり・・・故郷の海で・・・息子一家は波と戯れる。
家族に縁のなかった安男と美佐子の夫婦。
二人が結婚した時、美佐子が「ふたりになったね」と笑ったのを安男は思い出す。
「二人どころじゃねえ・・・今じゃ五人家族だ・・・」
とんびとか鷹とかの問題ではなく・・・家族がいることで寂しさがまぎれる。
ただ・・・それだけのドラマである。
そして・・・それは多くの家族のいる人々の共感を誘い・・・家族のいない人の憧憬を誘うのである。
このコンテンツの威力がここにあります。
そして・・・素晴らしい嫁であり、妻であり、母である美佐子がずっと不在であることがその魅力の秘訣なのです。そうでないと安男は単なる馬鹿野郎ですから。
関連するキッドのブログ→赤い月
→天地人
シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様のとんび
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コメント
とんび初めてのレビューですね♪
最終回そんなに視聴率あったんだ~。
これを今期の一位にする人多そうですけどキッドさん的にはそこまででもなかったのかな~(?_?)
たしかに常磐さんは綺麗でしたね。
いつまでたってもあまり年をとらないですよね。このドラマでは早死にしたのでドラマの中でも老けることなくて羨ましいですな(笑)今期はサキに突っ込み夜行とカラマーゾフにどんよりし、はらちゃんに癒され、とんびに泣かされたクールでした。
投稿: 出雲 | 2013年3月20日 (水) 13時11分
お彼岸ドラマとしても
ちょうどタイムリーでしたね!
そうそう、常盤貴子が早くも第1話で
脱落となってしまったんですよね。
このドラマが始まった時
他のドラマでも死ぬ役を演じていたので
「常盤貴子 子ども残して死にすぎ」
と話題になってたんでしたっけ(笑)
まぁでも写真やら妄想やらで
ちょくちょく出てきてたので
存在感はあったかな。
ドラマ冬の時代とか言われてるけど
TBSもやれば出来るやん~なんて
思ってみてました。
またこういうようなドラマを見たいですね。
投稿: ろーじー | 2013年3月20日 (水) 19時36分
かっては面白ければなんか言う体制だったのですが
長期休暇を経て
一日一ドラマの自制をしております。
日曜日は「大河ドラマ」と決めていたので
「と」も「D」もレビュー対象外になってしまいました。
まあ、「と」に関しては
そのままで充分面白いドラマですので
それほど食指が動かなかったということでございます。
変則で大河を(月)(水)に移動することも考えましたが
双方ともそれにりに楽しんで描けそうな素材でしたからねえ。
「と」に関しては基本的に
常盤貴子を絶賛できれば
それで満足なのでございます。
もちろん、とんび父子ののほほんとした
愛の物語も楽しめましたよ。
キッドも長男の長男として
一族に溺愛されて育ちましたから
「旭」の気持ちはよくわかるのですな。
「サキ」や「カラ」も同じような理由で
まあ、いいか・・・と思いまして。
特に両方とも一話はレビューしましたので
もう満足してしまったのでございます。
キッドの満足度で言えば・・・
最終回を迎えていない作品もありますが
今季の第一位は
ぶっちぎりで・・・ミチルです。
ミチルです。
ミチルです。
投稿: キッド | 2013年3月20日 (水) 23時55分
春のお彼岸シーズン突入ですが
春の嵐がやってきたりして
いろいろと日程調整が大変でございます。
なにしろ、お参りするお墓が
やたらと多いのでございます。
常盤貴子クラスが入っていたら
とにかくお参りしなければなりませんし~。
まあ、なんだかんだと回想サービスがあって
よろしゅうございました。
死んじゃったからいつまでも若かったわけなのですが
生きていてもきっと変わらぬ美しさで
ゴリゴリきていたかもしれません。
「漂流教室」以来の民放ドラマなんて・・・
潜伏しすぎですよね~。
・・・(遠い目)
まあ、「サキ」しろ「と」にしろ
お茶の間の皆様は基本的に
釣られるのが大好き!
これだけは間違いないようでございます。
「仁」「新参者」「と」と
この枠のヒューマン路線。
原作の選択を間違わなければ
「いい」わけですよね。
そういう意味ではオリジナルの「ATARU」は
見事だったと言えるでしょう。
投稿: キッド | 2013年3月21日 (木) 00時08分