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2013年3月11日 (月)

天然理心流・近藤勇、沖田総司、神道無念流・永倉新八、北辰一刀流・藤堂平助だべし(綾瀬はるか)

第14代将軍の継承問題に端を発した幕府の政争は黒船来航という外圧によって右往左往したのである。

その結果、江戸と京という二つの政治の中心を生んでしまう。

幕府が京の治安を維持するために出動させた軍が会津藩兵であり、将軍の上洛親衛隊としたのが浪士組である。

将軍が江戸に戻った後に残留した壬生浪士組は弱体化した京都奉行所に代わって会津藩が警察行動をとるために飼われて新撰組となった。

その一つの党派だった天然理心流剣術道場・試衛館宗家の近藤勇は内部抗争の末に主流派となる。

そもそも、浪士組は家督を継げない武家の次男、三男や、腕に覚えのある武士にあらざるもので構成されていたが、農民であった近藤勇が頂点にたったことがすでに下剋上であった。

文久三年の尊皇攘夷派の同時多発クーデーター(天狗党の乱・天誅組の変)が失敗し、追い詰められた生き残りの過激派が京に潜伏したことを察知した新撰組は京都守護職の会津藩に通報。

会津藩が所司代など関係機関と協議中に独断専行した新撰組が強制捜査に踏み切ったのが池田屋事件である。

潜伏先が特定できていなかった新撰組は分派行動をしており、近藤勇率いる十名が池田屋で尊皇攘夷派を発見する。二名が別働隊への連絡に走り、裏口に四名を派遣。

突入したのは近藤勇と沖田総司の試衛館師弟、試衛館食客で神道無念流剣術道場・撃剣館出身の永倉新八、そして北辰一刀流伊東道場の藤堂平助だった。

多勢に無勢であったために新撰組は先制攻撃をかける意図はなかったかと思われるが脱出を図った志士たちと乱戦に突入。

藤堂平助が負傷し、沖田総司が喀血するなど、近藤勇と永倉新八の奮戦の舞台となった他、裏口では新撰組四人中三人が死傷した。

やがて、当局側の応援が駆けつけると十数名の脱出者の他、志士の9名が慙死し、4名が捕縛され、池田屋の騒動は鎮圧されたのである。

翌日は市中で掃討戦が行われ、志士の最後の抵抗によって参加した会津藩・桑名藩・彦根藩からも十数名の死者が発生した。

多数の死傷者を出したことで会津藩は監督責任を問われたが、任務を遂行した新撰組には恩賞を与えずにはいられなかった。騒乱の抑止が騒乱を呼び、官による鎮圧の実行に政治が介入する・・・この矛盾に純情可憐な会津藩主は困惑するのだった。

で、『八重の桜・第10回』(NHK総合20130310PM8~)作・山本むつみ、演出・清水拓哉を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は信濃国松代藩士にして吉田松陰の師匠、勝海舟の妹の夫、幕末の天才総合科学者・佐久間象山と、出地不明瞭な天才剣士にして、新撰組の粛清暗殺担当者、後の警視庁警部・斉藤一、そして、会津藩山川家出身の横山主税常守を養子とした江戸家老・横山主税常徳の三大イラスト大展開でお得です。横山主税は帰郷してまもなく没するので・・・別のヤング横山主税(山川大蔵の従兄弟)が出てくるのか・・・。幕末の二人の横山主税・・・まぎらわしいのですなーーーっ。でも画伯奥義・退場駆け込みイラストなので養父主税なのでございますねーーーっ。もしも、このままで横山主税が戊辰戦争まで登場したら爆笑ですけれどーーーっ。

Yaeden010b 文久三年(1863年)に長州の桂小五郎から軍師金を援助され、関東で挙兵した水戸天狗党。そして大和で挙兵した天誅組・・・しかし、八月十八日の政変で双方鎮圧を余儀なくされる。関白は長州派の鷹司輔熙から水戸派の二条斉敬に変更され、明けて文久四年(1864年)二月、陰陽道的に元治元年に改元される。都を駆逐された尊皇攘夷志士は巻き返し狙う長州藩のバックアップを受けて再び京に潜伏。京都炎上天皇強奪計画・祇園祭作戦を立案。しかし、六月上旬、首謀者の一人で安政の大獄で獄死した梅田雲浜の弟子・古高俊太郎が新撰組に捕縛されたため、善後策を協議するために池田屋に集合したところを新撰組に察知され、池田屋騒動に発展する。尊皇攘夷志士、治安維持勢力の双方に多数の死傷者が発生。死傷者が多くの藩にまたがったために言わば過激派アジトに強行突入した新撰組とその監督役である会津藩は責任を問われることになるのだった。また、陸奥国の片隅の貧しい会津藩は財政的にも困窮し、お役御免を願い出るが幕府首脳はこれを慰留。一方、薩英戦争によって攘夷の実行の困難さを悟った薩摩藩は兵一千名で上洛。密貿易などで経済的に豊かな薩摩藩は再び朝廷を取り込む画策を開始する。同様に長州藩も公卿の買収工作を再開。再び、会津藩は苦境に陥っていく。穏便な解決を求める幕府は念願の開国の勅許を得るために佐久間象山を京に派遣する。池田屋での密議に連動するように長州藩は兵力一千名を東上させ、七月に洛外に布陣。一部が洛中に侵入した。退去を命ずる京都守護職と長州への恩赦を主張する一部勢力の間で朝議は紛糾するのだった。

旧暦・六月は祇園祭の季節である。

京の人々は心騒ぐ日々を送っている。しかし、すでに尊皇攘夷という宗教的情熱に冒された過激派志士は特別な祭りの熱気に支配されていた。

吉田松陰の盟友であった肥後熊本藩の医師・宮部鼎蔵は計画の実行を主張したが、長州藩兵との到来を待つ長州藩士・桂小五郎は自重を促していた。

議論が平行線となったために桂小五郎は一度、盟友である対馬藩邸に移った。

この間隙をついて新撰組が池田屋に到着したのである。

近藤勇以下、数名の手勢と知った志士たちは逆襲を決した。

「壬生浪など・・・返り討ちにしてくれるわいな」

柳生新陰流の名手であった長州の吉田稔麿は桂小五郎を見送った帰りに騒動に出くわした。路上でいきなり、抜刀し、永倉新八に斬りかかる。しかし、槍を構えていた永倉は振り向きざま槍先を繰り出した。吉田は自分から串刺しになっていった。

「む、無念」

赤穂浪士の大高忠雄の子孫である大高又次郎は抜刀して階段下の近藤勇に向かって跳躍する。近藤は上段からの攻撃に応じるのが得意である。踏み出すと抜きざまに又次郎の胴体を薙ぎ払った。

真っ二つになった大高の上半身と下半身の脇をすり抜けて近藤は階段を駆け上がる。

「御用でえ。御用改めでえござる。逆らえば斬る」

わめきながら突進する近藤に土佐脱藩の望月亀弥太をたまたま訪ねていた土佐藩足軽の石川潤次郎が制止のための手を伸ばす。

「わしは・・・ちが・・・」

問答無用で振り下ろされた一撃で潤次郎は顔面を割られ即死した。一瞬で二人を殺処理した近藤に続き、沖田総司が階段を駆け上がる。

それに続こうとした藤堂平助の背後から階下にいた宮部の弟子で肥後藩士・松田重助が斬りかかる。しかし、犬神の血を引く藤堂は殺気を感じて身を交わし、空を斬った重助はそのまま、壁に激突して昏倒する。

屋内に入り込んだ近藤と沖田と入れ替わるように階段に姿を現した大高又次郎の弟・忠兵衛は兄の上半身を踏みつけて抜刀したまま転落する。そのために重助に留めをさそうとして側面を剥けた藤堂平助は不意打ちを食らって額を割られてしまう。

「不覚・・・」

転がり落ちた忠兵衛は背を打って悶絶する。

「平助・・・退け・・・」

吉田を串刺しにした槍を捨て、抜刀して店内に入った永倉新八は流血した平助に手ぬぐいを渡しながら命じた。

「血が入った・・・目がみえん」

「俺だ、永倉だ・・・俺を斬るなよ」

平助は鼻をひくつかせた。人狼聖剣士だからである。

沖田総司は長州藩士・広岡浪秀と対峙していた。広岡は陰陽師である。

「毛利流神術・・・黒猫」

広岡の術中に堕ちた総司は黒猫の群れに囲まれ身動きができなくなった。

広岡は二階の窓から飛び降りて足をくじく、しかし、立ち上がると足を引きずりながら逃げ出す。しかし、沖田総司が術に陥る寸前に放った一閃で広岡は腹を斬られていた。みるみる下半身が血にまみれて行く。

裏口から脱出しようとしたくぐつ遣いの望月亀弥太は包囲を突破したものの救援に駆け付けた土方歳三の凶刃に倒れた。

すでに決着の着いた池田屋階上では近藤勇が宮部鼎蔵と対峙していた。

「壬生浪士か・・・おいどんももはやこれまでたい・・・」

「おとなしく・・・お縄につかれよ・・・」

「ふ・・・人斬りどもに拷問されて死ぬつもりなどなか・・・」

「拙者は武士でごさる・・・」

「ふ・・・いくら武士の真似ごとをしても・・・百姓は百姓よ」

頭に血が昇った近藤は剣を振り上げた・・・しかし、鼻先に漂った匂いがその動きを制する。近藤もまた人狼剣士なのである。

考えるより先に身体が動く。

近藤が身を伏せた瞬間。

地雷火を爆発させ、宮部は痕跡を残さずに爆散した。

土方隊の一員として惨状を見た会津の隠密・斎藤一は心の中で舌打ちする。

(派手にやっちまったなあ・・・)

祇園祭の夜に聖なる王城を血で汚された京の人々が激昂したことは言うまでもない。

「壬生浪士は迷惑やなあ」

「ほんまに」

気ままな人々の心はいつものように揺れ動いていく。

再び、会津、薩摩、長州の軍事力が拮抗し・・・暑い夏が巡ってきたのだった。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

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