赤い・・・青い国から来たスパイを愛した私(星野真里)
「シェアハウスの恋人」終了のため、連夜の谷間なのであるが・・・恒例の「相棒」チェックなのだった。
今回、サブタイトルとなっているのは「酒壺の蛇」で・・・「今昔物語集」第十九巻・二十一話「以佛物餅造酒見蛇語(寄進された餅で造りし酒のくちなわとみえたる話)」からの引用である。
此叡の山で修行した僧が故郷の摂津国に戻り、妻帯して、それなりの住職に収まった。まあ、基本的に生臭坊主である。で、寄進された餅を夫婦で独占して食べていたが食べきれず、酒造りを思いつく。いざ、飲もうとすると酒壺の中に蛇がわいている。仕方なく捨てるが通りがかりの酒好きな男たちが酒壺を覗くとそこには酒があるばかり。飲み明かすわけである。噂を聞いた件の住職は「これぞ仏罰」と己の吝嗇を恥じるというわけである。
邪であるがゆえに美酒を味わえぬものと・・・純粋に酒好きなために酒があればとりあえず飲むものの対比が面白いわけなのだな。・・・結局、まむし酒だよなあ。
教訓、酒飲み万歳なのである。
しかし、落し物を無暗に飲むと毒入りの場合があるのでご注意ください。
で、『相棒Eleven最終回スペシャル酒壺の蛇』(テレビ朝日20130101PM9~)脚本・櫻井武晴、演出・和泉聖治を見た。幽霊譚の多かった今回の相棒シリーズ、最後は工作員ものである。もう、特命係だけでなく、シリーズ自体がなんでもありの自由な感じだな。冒頭は甲斐享巡査部長(成宮寛貴)が父親である警察庁次長の甲斐峯秋警視監(石坂浩二)から嫌がらせの電話を受けるところから始まる。
汚れた官僚である父親は純粋な息子が疎ましくて仕方がないのだった。
「もういい加減に警察をやめないか」
「ほっといてくれよ」
・・・という父子喧嘩である。
父親が官僚であることを無視しようとして、結局、拘泥してしまう享だった。
そういう享を温かく見守る右京(水谷豊)がついに指名の理由を最後に語ります。
事件の幕開けは組織犯罪対策第5課角田課長(山西惇)と同期である組織犯罪対策第2課の恩地課長が自宅で「毒キノコ」をあやまって食べて事故死・・・という捜査一課の伊丹刑事(川原和久)の見立てによってはじまる。
キノコ好きの享とともに駆けつけた右京は・・・恩地夫人の証言から・・・不審な匂いを嗅ぎつける。
「料理をしたことない夫が・・・なんで・・・突然、キノコ鍋なんて・・・しかも・・・一人で・・・」なのである。
さらに、恩地課長には女の影があったと恩地夫人は語るのだった。
通話記録から・・・AJファイバーという炭素繊維を扱う企業が浮上する。
角田は恩地が「でかい事件(ヤマ)を追っていた・・・」と指摘して・・・右京は「輸出制限されている炭素繊維を国外に持ち出した外為法違反容疑の捜査」を念頭に置く。
AJファイバーはその嫌疑をかけられた会社ではないかと捜査を開始した右京と享。
炭素繊維の担当者である我孫子とその部下のいずみ(星野真里)に接触を試みるのだった。
航空関連の会社ということで・・・たまたま・・・いずみは享の恋人・悦子(真飛聖)のCA養成スクールの後輩だった。
しかし、なかなかいずみとコンタクトをとれない右京は・・・工作員の暗躍を直感したのだった。
我が国の民間企業の持つ軍事的に利用可能な技術を狙っている国はどこか・・・即座に答えが思いつける常識的問題である。
こちらの世界では赤い国旗の中華人民帝国があるわけだが、相棒の世界では青い国旗の東亜民主共和国があるらしい。略して中国・・・ではなくて東国である。
いつの間にか享のスマートフォンは遠隔操作ウィルスが感染し、特殊なアプリケーションによって盗撮盗聴器に改変されてしまっていたのだった。
あえて、享と別行動をとることによって中・・・東国の極悪な工作員の裏をかくことに成功する右京。鑑識課の米沢(六角精児)の協力で危険なアプリは削除される。
いずみと接触した右京はたちまち・・・いずみの交際相手である自称・アドリア大使館勤務の井川の存在を嗅ぎつける。
警視庁警務部首席監察官大河内警視(神保悟志)や警視庁サイバー犯罪対策課専門捜査官・岩月(田中圭)らの協力を得て井川の正体が中・・・東国のスパイ・王であることを突き止める特命チームだった。
右京の追及にいずみは恩地課長との接触そのものを否定する。
しかし、証言の矛盾をつかれ・・・恩地課長がいずみをストーカーしていたと証言するのだった。
いずみへの追及にプレッシャーを感じた上司の我孫子はついに投身自殺をしてしまう。
我孫子は老母の高級介護施設入所のために・・・800万円で中・・・東国に炭素繊維を売り払ったのだった。
色と金・・・スパイの常套手段である。
やがて・・・いずみは井川がスパイだと知っていたことまで右京に看破されてしまう。
「私は・・・難しいことなんか・・・わかりません・・・ただ、彼を愛しているだけです」
「しかし、彼は日本人二人の死に関与しているのですよ」
「そんなこと・・・私には関係ありません」
ここで・・・外交官特権で国外逃亡を図る王と右京との頭脳合戦が開幕する。
そんな折、いずみは王が右京と会うと言ってきたと告げる。
廃墟に導かれた右京たちはスマホを発火装置とする爆殺トラップの洗礼を受ける。
「奴はあんたまで殺そうとしたんだぞ」と怒りを示す享。
「彼は・・・素晴らしい中・・・東国に私を呼んでくれると言ったんです」
「・・・」右京は無言だった。
王は成田、羽田を避け・・・茨城空港の国際便、上海じゃなくて・・・大連じゃなくて・・・上連行きによって・・・どこだよっ・・・中・・・東国への逃亡をはかる。
しかし・・・たまたま、居合わせたCA悦子に発見されてしまうのだった。
右京は警察庁長官官房付の神戸(及川光博・・・未登場)を通じて秘策・領空内誘導によって王を確保しようとする。
しかし・・・東国国内で拘束中の米国中央情報局(CIA)工作員と王を交換することで米国捜査当局に恩を売ろうとする甲斐峯秋警視監の画策によって・・・作戦は発動されなかった。
中国(仮名)なのになんで米国(実名)なんだよっ。
享は父にうっかり作戦内容を漏らしてしまっていたのだった。
このままでは・・・恩地の死は変死として闇に葬られてしまうとお茶の間が肩を落とした瞬間・・・右京の静かなる追及が始るのだった。
「いずみさん・・・あなたは彼を追いかけることはできませんよ」
「・・・」
「なぜなら、あなたは殺人犯として逮捕されるからです・・・」
「そんな・・・なんの証拠があって・・・」
「あなたは・・・自宅で死んでいた恩地さんが・・・他の場所で死んだことを知っていた・・・それをうっかり私に話してしまったのです」
「そんなの証拠にならないでしょう」
「恩地さんが本当に死んだ場所で・・・薬物の痕跡のある袋が発見されました・・・そして、その袋にはあなたの指紋がついているのですよ」
スパイとの愛に溺れたいずみは恩地を毒殺していたのだった。
散ってしまった同期の桜が・・・単なる不審死から殉職に格上げされたことを慰めにはりきって棺桶を担ぐ角田課長。
唇をかみしめるいずみの元へ王からの別れの手紙が届く。
「あなたはバカな日本の女・・・
難しいことを考えることが許されているのに何も考えず・・・
判らないことを調べることが許されているのに調べず・・・
ただ・・・愛という快楽に溺れるだけ・・・
私はだからあなたのことが
最初から最後まで嫌いでした・・・」
手紙を握りつぶすいずみだった。
星野真里・・・愚かで悲しい悪女・・・絶品である。
「そんな手紙を出すなんて・・・スパイのくせに変な男だ・・・」
右京は日本人二人の死に関与した中・・・東国のスパイにちょっと好意を示すのだった。幽霊も好きだがスパイも嫌いではないらしい。
しかし・・・私腹をこやした甲斐峯秋警視監には厳しいのだった。
「あなたは息子さんと違って警察官として最も大切なものを持っていない・・・」
「何・・・」
「酒壺の蛇の話に出てくる吝嗇で愚かな生臭坊主と一緒ということです・・・汚らわしい」
右京と友達になりたい甲斐峯秋警視監はまたしてもふられてしまうのだった。
しかし、逃亡に成功した王の工作行為をすべて国賊・我孫子に押し付けるストーリーの捏造を警視庁刑事部長・ 内村(片桐竜次)に命じることは忘れない。
右京に「自分のことよりも他人の心配をする男」として高い評価を受けた享には「犯人を逃がした責任」が重くのしかかる。
しかし、優しい恋人と一夜を過ごすことでふっきるのだった。
そんな享を右京は微笑んで見つめるのである。
とにかく・・・日本は今も昔もスパイ天国という物語。
もしかすると・・・さっき、パスタを買ったコンビニの店員の王さんも・・・。
関連するキッドのブログ→相棒Eleven元日スペシャル「アリス」
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コメント
スパイの手紙は嫌い嫌いの裏側に
愛がたっぷり見えていて
じ~んときちゃいましたわ~。
そして星野真理の涙の横顔が、
あまりにもきれいで息をのみました。
昨夜はドラマのあとにスパイの話ニュースがあり
唖然としました。
もしかしてこれも右京さんが仕込んだのかって
ドラマの続きかと思っちゃいました。
じいやちゃま、季節の変わり目ですからね、
ここはドカ~ンと滋養にいい
酒壺のマムシのお酒でエネルギーチャージしてね。
特別にお手製ハルサメサラダを付けちゃうわ♪
投稿: エリ | 2013年3月21日 (木) 18時23分
✿❀✿❀✿かりん☆スー☆エリ様、いらっしゃいませ✿❀✿❀✿
嫌い嫌いは好きのうち・・・と申しますからな。
まあ、バカな女・・・と嫌悪する方も多いでしょうが
美酒を味わったもう一人は「いずみ」なのでございましょう。
甲斐享が純粋に「正義の心」の持ち主だったように
いずみも純粋に「男を愛する女心」を持っていたわけですよね。
だからこそ、非情のライセンスを持つ工作員に
書かなくてもよい手紙を書かせたわけで・・・。
愛する男の為なら
殺人も辞さない・・・素晴らしい女の中の女でした。
いたるところで光る大陸からの工作員の目も
この国ののどかさに
いつしか・・・冷たさを失って行くとよろしいのですけれど。
そして、大陸の人々が一日も早く
悪夢から目覚めることを願ってやまないのですな。
まあ、巨大なので腐敗も激しいですが
滅亡まで時間がかかるのが難なんですな。
星野真里は人妻になっても
相変わらず「やさしくってちょっとバカ」な女を
演じさせたら天下一品でございました。
そういう女は結局、かわいい女なのでございます。
平成財閥沖縄ドームハブ酒研究所から
とりよせた全長3メートルのホンハブを
つけた「マングース殺し」を
こっそりお飲みになったりしていませんでしょうな。
目がギンギンになって三日三晩眠れなくなりますので
ご注意くださりませ~。
お酒は二十歳になってからですぞ~。
投稿: キッドじいや | 2013年3月22日 (金) 01時07分