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2013年3月17日 (日)

神様はどこへ行ったの?(麻生久美子)

子供たちはいつ自由を手にいれるのだろうか。

小さな小さな自由である。

はいはいをする自由。

立ちあがる自由。

歩く自由。

そして、一人で家を出る自由。

親たちはいつ子供の自由を許すのだろうか。

自分の目が届かない場所へ向かう子供たちをどんなタイミングで見送るのだろうか。

愛しさが強いほど強い痛み。

慈しむがゆえの不安。

これはそのような幸福の在り処である。

で、『泣くな、はらちゃん・第9回』(日本テレビ20130316PМ9~)脚本・岡田惠和、演出・狩山俊輔を見た。複雑なこの世界の自由は主観と客観の間で揺れ動く。職業選択の自由は教育の自由に支配され、個人の自由は管理の自由に侵食される。テリトリーの自由、インナースペースの自由、恋愛の自由、一日中ゲームをする自由、食事制限からの自由、無免許からの自由、支配する自由、不自由な人の自由、指定されない自由、悪魔の自由などが果てしない自由戦争を繰り広げているのだった。

ハッピーエンドの後の世界を描く自由もまた憲法によって保障されているのだった。

眠る必要のない【キャラクターズ】の一員、【ユキ姉】(奥貫薫)は目をつぶってじっとしていた。神様である越前さん(麻生久美子)のやすらかな寝息を聞きながら・・・。

その頃、【男たち】はテレビのニュース番組を通じて悲惨な世界の実情を朝まで垣間見たのだった。

翌朝、越前家のにぎやかな食卓で・・・【男たち】は不安を隠して明るく振る舞う。

神様の所属する世界を批判することは畏れ多かったからである。

「今日は明るいですね」と【はらちゃん】(長瀬智也)がつぶやく。

「いい御天気ですねって言うのよ」と教える越前さん。

「悪い天気もあるのですか」

「あいにくの雨ですねとか言いますよ」

「雨は悪いのですか」

越前さんの母親の秀子(白石加代子)が割り込む。「悪いっていうわけじゃないのよ。雨が降らないと困るしね。雨を待っている人もいるの」

「必要悪ってことですか」と【あっくん】(清水優)が理解力を示す。

「俺はわかったよ・・・あんたたち宇宙人だろう」と話の腰を折る越前さんの弟のひろし(菅田将暉)はレベルEレベルで断定する。

越前さんは曖昧に頷くが、秀子は「違うわよ、はらちゃんたちはマンガの世界から出て来たのよねえ」と正鵠を射るのだった。

「なんだ・・・そうか」と納得するひろし、越前さんもあきれるほど自由なキャラクター設定の母と弟だった。

「自由行動でもいい」と許可した越前さんだったが、【キャラクターズ】は出勤する越前さんに附いてふなまる水産三崎工場にやってくる。

工場前の堤で道路にお絵かきをする【キャラクターズ】たち。

それを見た悪魔さんこと紺野清美(忽那汐里)と微笑む。

しかし、【キャラクターズ】たちは不安を抱えて話し合っていたのだった。

「大きな車のような空飛ぶ機械で人が人を殺すんだ・・・戦争っていうらしい」と車が大好きな【マキヒロ】(賀来賢人)が言う。

「犬や動物たちを檻に閉じ込めたり、ガスで殺したりするらしい」とかわいい動物を愛する【あっくん】が言う。

「たくさんおいしいものを食べる人間と何も食べるもののない人間がいるらしい」と酒のつまみにこだわる【笑いおじさん】(甲本雅裕)が言う。

「食べるものがあまってもわけあったりしないらしい」と【笑いおじさん】にキャラがかぶっている【たまちゃん】(光石研)が言う。

「この世界がこわくなりました・・・マンガの世界へ帰りたい」と【あっくん】・・・。

しかし、【はらちゃん】は「でも、私はこの素晴らしい世界で神様と一緒にいたいのです・・・もう少し頑張ってみましょうよ」と仲間たちを励ますのだった。

現実世界のマンガの国の住人である田中くん(丸山隆平)は不安を口にする。

「僕はこういう話が好きでした。みんなスヤスヤ眠る頃、おもちゃが箱を飛びだす話です。だから、眠ったふりをして玩具箱を見張ったりしたものです・・・でも、そういうお話の最後はこちらの世界にさわやかな感動を残して・・・おもちゃたちは元に戻って行くっていうか・・・」

「なんでそんな不吉なことを言うの」と田中さんに詰め寄る悪魔さん。

「だって・・・心配なんです。そうなったら・・・越前さんや悪魔さんが・・・傷付くことになるんじゃないかって・・・片思いよりも・・・両思いの人が相手を失う方がつらいじゃないですか」

「なんで・・・そんなこと言うのよ」・・・またしても、田中くんにぐっときてしまった悪魔さんだった。

【キャラクターズ】の前に地元の子供たちが現れた。

子供たちは無邪気に大きなお友達にサッカーを教える。

ボールをゴールに入れるのは男の子たちの本能を刺激するのだった。

もちろん、女の子だって相手のボールをゴールに入れるのを邪魔するのは大好きなのである。

さらにいえばボールをけり上げるのが大好きな女の子だっているのだった。

それはともかくとして【キャラクターズ】たちはサッカーが大好きになってしまう。

主人公設定の【はらちゃん】はたちまちボールとトモダチになってしまうのだった。

子供たちは【はらちゃん】の運動能力の高さを評価する。そして徒競争の勝負を挑むのだった。

その頃、大橋さんの息子さんの噂話が一段落した長沼さん(稲川実代子)は「百合子さんの退職と退去の噂」を越前さんに伝える。

「百合子さん、工場やめるってよ」

あわてて、工場を出た越前さんは徒競争の嵐に巻き込まれる。

【キャラクターズ】の暴走に越前さんは立腹するのだった。

「徒競争は嫌いです」

「足が遅いんだ」

「そうですよ」

「サッカーも嫌いです」

「サッカーが下手なんだ」

「どうせ、そうですよ」

いつまでも聞いていたい越前さんと【キャラクターズ】の愉快な漫才はさておき、実は矢東薫子だった百合子さん(薬師丸ひろ子)を追いかける一同。

疲れを知らない子供たちのような【キャラクターズ】とは違い、へとへとになる越前さんだった。

「どうして・・・出て行くんですか」

「私、みんなにひどいことしちゃったから」

「逃げないでよ」とオリジナル版の匂いを強く残す【ユキ姉】は言う。

「私、あなたの作った世界が好きだったよ。いろいろと事件があったし、居酒屋の外にも出られたし、絵も上手だったし、素敵なファッションも着れたし・・・今の神様よりももっといいセリフがあったし・・・」

間接的に自分の描いたキャラクターに苦言を呈される越前さんだった。

「私を許してくれるの」

「責任とってよ・・・神様の神様なんでしょう。私たちの行く末を見守ってよ」

承諾するしかない百合子さんだった。

そして・・・つかのまの平穏が訪れる。

【キャラクターズ】は捨てられたサッカーボールを拾ってサッカーに興じる。

しかし、そのボールがついに出現した地元の不良たちに当たってしまうのだった。

不良たちは【キャラクターズ】を弱者とみなし、たちまちいじめ始めるのだった。

「いたい・・・なぜ、そんなことをするのですか」

「うるせえ・・・バカじゃねえの」

一方的に実力を行使される【キャラクターズ】・・・。

かけつけた越前さんまで殴り倒されてしまうのだった。

実は無敵のヒーロー機能を内蔵していた【はらちゃん】は不良たちに鉄拳制裁を加える。

一度、解放されたパワーは暴走し、限度を知らないのだった。

「もう、やめなさい」と泣きながら【はらちゃん】を抱きとめる越前さん。

不良たちが逃げ去った後で【はらちゃん】がつぶやく。

「これが・・・この世界・・・」

「ごめんね・・・こんな世界でごめんね」

工場で秘密を知る人間たちの手当を受ける【キャラクターズ】・・・。

自分に潜む凶暴性を知った【はらちゃん】はショックを受ける。

「ぼくは・・・もうマンガの世界に帰りたい・・・」と【あっくん】・・・。

次々と【あっくん】に同意する【キャラクターズ】・・・。

しかし、【はらちゃん】は神様の心が気がかりだった。

「嫌いにならないでください・・・」

「嫌いになんかなりません・・・私たちは両思いですから・・・」

しかし、【はらちゃん】の【涙】を見た越前さんはある決意をする。

そして、優しく言うのだった。

「泣くな、はらちゃん・・・」

越前さんは魔法のノートの封印を解き、【キャラクターズ】を回収する。

悪魔さんも田中くんも矢東薫子もそれぞれの想いを秘めて儀式を承認するのだった。

その夜・・・いつものおでん屋で昼間の結末を回想する矢東薫子は恐ろしい可能性を思いつく。クオリティーが高いからである。

「これは・・・本当の最終回とは違うわね・・・神様の神様の神様はツイストもう一回なのだわ」

【キャラクターズ】が消え、少し、寂しくなった越前家の夕食。

「冴えない娘でごめん、冴えない姉でごめん」と越前さん。

「バカな弟でごめん」とひろし。

「変な母親でごめん」と秀子さん。

和む母親と弟を残し・・・越前さんは自分の部屋へと籠る。

越前さんの恐ろしい魔法使いとしての素質はとどまることを知らないのである。

越前さんは魔法のノートに【越前さん】を描きこむ。

そして一度閉じたノートを開くのだった。

矢東薫子が駆け付けた時・・・越前さんはすでに消滅して・・・マンガの世界に引き籠ってしまっていた。

「こっちへ来ちゃいました・・・」と【越前さん】は言う。

「それでいいの・・・」とユキ姉。

「私は子供の頃からずっとこっちの世界に来たかったんです・・・はらちゃん・・・ずっと一緒だよ」

「・・・・はい」と設定通りに笑顔になるはらちゃんだった。

神様はどうなったの。

共産主義者が殺したよ。

共産主義者はどうなったの。

転向して資本主義者になったよ。

資本主義者はどうなったの。

ロシアンマフィアになったよ。

ロシアンマフィアはどうなったの。

法で裁かれて囚人になったよ。

囚人はどうなったの。

死刑になって神様にあったよ。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

銭ゲバの最終回

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コメント

キッドさん☆こんばんは

6話で一度自分の気持ちがクライマックスを迎えてしまい その後 ちょっと落ち着いていたんですが 昨夜のラストは心が震えたというか
これぞドラマだ!と胸がいっぱいになりました
最終回は、越前さんが自分を漫画の中に書き込むのかな~とか私なりにこのドラマのエンディングをあれこれ思い巡らしたりして楽しんでいましたが ちょっと自殺行為と思える現実世界を捨てて漫画の世界に行くみたいなことは想像していませんでした。漫画の世界に行ってしまった娘にたいしての達観した?お母さんの言葉にも泣けてきます
最終回前にこんな展開になってしまったので心がでざわざわと落ち着かず 土曜日を待つことになりそうです

軽やかに走る薬師丸さん、自分を一度殺した神様を許すゆきねぇの優しいまなざし、IWGPを思い出してしまう長瀬君の喧嘩姿のカッコよさ 女優さんたちには可愛いだけでない精神性を感じる美しさがあってこのドラマを奥深くしてくれているように感じます

どうか後味のよい 最終回になりますように☆

投稿: chiru | 2013年3月17日 (日) 23時26分

シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃ いませ・・・大ファン

震えましたね~。

前回も最終回のようでしたが
今回も最終回のようでございました。
毎週が最終回かっ。

越前さんオリジナル一人目のたまちゃんは
ゾンビモード【人格チェンジ】だったのですが
オリジナル二人目の越前さんは
ほぼ本人のままで二次元/三次元境界線を突破。
これはやはり、死者と生者の違いというよりは
「神様」の特権なのでしょうな。

オリジナル色の濃いユキ姉も
オリジナルでの二次元/三次元突破により
他のキャラクターとは違う意識があるようですから
「魂」の問題なのかもしれません。

フィクションでありながら
そういう微妙な設定の擬似論理性が
また素晴らしいのでございます。

越前さんがマンガの世界で
いい笑顔になったことに微笑む母親。
素晴らしい「変な母さん」ですよねえ。

そして、いよいよ本気の最終回。

もう、妄想がとまりません。

薬師丸ひろ子のさすがのフットワーク。
薄倖女優ナンバーワンならではのゆきねぇの許容。
まこと、まこと、まこと、ぶくろサイコーな長瀬君。

硬軟両方のキャラクターたちが
見事に配合されておりますな。

さて、「最終回」・・・かって「銭ゲバ」で
「もう一つ別の銭ゲバハッピーエンド」という
ものすごいフィニッシュを決めたことがありましたからねえ。
もうどんな手でくることやら。

キッドの妄想では
結局、越前さんは三次元世界に帰ってくることになると思いますが
はらちゃんは二次元世界に残留・・・。

しかし・・・実は三次元世界には
すでにリアルはらちゃんが生まれていて・・・。
さすらいの人になっていて・・・。
ギターを持った渡り鳥で・・・。
この港町に刻一刻と近づいているのではないかと~。

投稿: キッド | 2013年3月18日 (月) 01時26分

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