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2013年3月19日 (火)

愛人の家の金庫の中へ大切にしまっているのです(剛力彩芽)

「魔法人形/江戸川乱歩」(1957年)は「少女クラブ」に連載された少女向けの「少年探偵団」シリーズの一作である。

少女向けであるために少女探偵・花崎マユミが大活躍するし、小林少年は「身体に合う女の子の洋服も和服もいつでも使えるように事務所にちゃんと用意してある」ので女装します。・・・一部婦女子ってやつは時代を越えて腐ってやがるぜ。

冒頭部分を妄想キャストでお届けすると・・・。

小学生の宮本ミドリちゃん(芦田愛菜)と甲野ルミちゃん(谷花音)は下校中に怪しい腹話術人形使いに出会う。

「ルミちゃん・・・ボクと遊ぼう・・・ボクはルミちゃんが好きなんだ・・・ミドリちゃんはそんなに好きじゃないから・・・ルミちゃんに声をかけたんだ・・・」と人形が話しかける。

で、ムッとしたミドリちゃんは「知らない人とお話したら・・・だめだよ・・・帰ろうよ」とルミちゃんに言う。

しかし、いい気になったルミちゃんは「あたしはもう少し、お話するわ・・・先に帰ってもよくってよ」と言うのである。

もちろん、ルミちゃんはまんまと誘拐されてしまうのだった。

怪しい西洋館に連れ込まれたルミちゃんは紅子人形(吉田里琴)に出会う。

「紅子お姉さまは本当に人形なの?・・・本当は生きているんでしょ?」

「ええ、生きているの・・・でも半分しか生きていないのよ・・・もうすぐ残り半分も死んで・・・本当のお人形になるの・・・美しいまま年をとらないという口車にのせられて・・・魔法の薬を注射されて・・・とうとうこんなことになってしまったの・・・」

なんという萌える展開であることか・・・いい趣味してるよなあ。

ちなみに「魔法人形」で金庫にしまわれているのはダイヤモンドやルビーのちりばめられた黄金のかんむり「ほのおの王冠」である。

・・・もう、いいか。

で、『ビブリア古書堂の事件手帖・第10回』(フジテレビ20130318PM9~)原作・三上延、脚本・相沢友子、演出・宮木正悟を見た。今回は聖なるミステリ作家・江戸川乱歩(1894~1965)であるために・・・乱歩作品が乱打されていく。デビュー作は「二銭銅貨」(1923年)だが処女作は「火縄銃」(1915年)と言った具合である。「名探偵・明智小五郎」と「怪人二十面相」の対決から生まれた「少年探偵団」シリーズの一作、「魔法人形」は単行本化において「悪魔人形」に改題・・・なのである。ちなみに・・・「魔法人形」連載時に乱歩は六十代である。「逃げようたって・・・もうだめだよ・・・おとなしくしておいで・・・いま、可愛いお人形さんにしてあげるからね・・・いっひっひ」と執筆する姿を妄想するだけで涙を禁じ得ないのだった。

聖夜・・・余命宣告をされた老人・鹿山明(須永慶)は愛人の来城慶子(高樹澪)に手紙を郵送した後でうっかり階段を踏み外し死亡してしまう。

死の直前、明はダイイング・メッセージとして「1915」を残すのだった。

「金庫の中に贈り物があります」という手紙を受け取ったおどろおどろしい慶子は喉頭がんのリハリビ中のため、世話役として同居していたおどろおどろしい妹・邦代(松田美由紀)に相談を持ちかける。

「肝心の金庫の開け方がわからない」のである。

それは「鍵のかかった部屋」の主人公の出番だと思うが、古書に詳しいと名高いビブリア古書堂店主・篠川栞子(剛力彩芽)の出番なのだった。

五浦大輔(AKIRA)とともに来城慶子の屋敷を訪問した栞子は明の残した膨大な「江戸川乱歩コレクション」を見て涎を垂らすのだった・・・妄想上ではな。

「金庫を開けてくれたら・・・コレクションはすべて譲る」という展開に栞子は古書売買業者魂が燃えるのだった。

金庫は、「鍵」「ダイヤル」「暗唱コード」の三段構えであった。

不意の死によって「開け方」を教えることのできなかった故人の遺志を尊重したい栞子だったが・・・来城慶子が愛人だったために事態は複雑化するのだった。

鹿山明は有名な政治学者であり、厳格な鹿山家の婿養子だった。

明は江戸川乱歩をこよなく愛したが、士農工商ミステリ作家の時代に・・・その猟奇的な趣味は愛人宅でしか堪能できなかったのである。

金庫解錠のヒントの眠る本宅には明の遺児であるミステリアスな義彦(名高達男)とミステリアスな直美(横山めぐみ)の兄妹が住んでいたのだった。

「え・・・父に愛人が・・・え・・・江戸川乱歩を愛読してた・・・」と唖然とする義彦。

しかし・・・死者に鞭打つことはできないと協力を約束する義彦。

だが、一夜明けると・・・義彦の態度は豹変していた。

その裏に・・・栞子は10年前に消息不明になっていた母・智恵子(安田成美)が介在していたことを知る。

古書入手のためには手段を選ばない猟奇的な女・智恵子・・・ついに登場なのだった。

栞子の手持ちの手掛かりは・・・コレクションの中から、少年探偵団シリーズの一部と、乱歩全集の特典グッズである少年探偵手帳が消えていること。そして、コレクションの売り手にヒトリ書房の井上太一郎(佐野史郎)が存在していること。

それにしても五浦の書籍を扱う手つき・・・呪われるレベルである。

栞子は井上を訪ねるが、不在であった。留守番の女店員が少年探偵団の愛読家であったために「魔法人形」の話題で意気投合するのだった。

その腐ったムードの中・・・意外にも女店員が鹿山直美であることを知るのだった。

栞子は直美に協力を求めるが・・・父親に対する怨みがある直美は拒絶する。

手詰まりになった栞子だったが・・・井上はそこで・・・栞子の母・智恵子との確執を明らかにするのである。

井上は直美と幼馴染であると同時に、鹿山から経済的援助を受けていた。乱歩コレクションのために鹿山が金に糸目をつけなかったのである。

そして、結婚生活が破綻した直美に密かに想いを寄せていた井上は十五年前にも直美を店員として雇用していたことがあったのだった。

当然、父親の愛人のことを直美に伏せていた井上。そこに目をつけた智恵子は井上を脅迫して・・・鹿山相手の仕事を奪っていたのである。

「お嬢様に父親の愛人のことをばらしたら・・・彼女、傷付くでしょうね・・・」なのだった。

しかし・・・栞子は・・・禁じられていた「乱歩」を直美が愛読していたことを見逃さない。

そして・・・一計を案じたのである。

井上が・・・「娘さんを私にください」という手紙を鹿山に送っていたと直美に伝えたのだった。

想い当たることのあった直美は鹿山家の椅子の下の秘密の書庫へ栞子たちを導くのだった。そこには少年探偵団シリーズが隠されていた。

「私はこれを発見すると・・・父に隠れて乱歩を乱読したのです」

「それは違います・・・お父様は・・・あなたのために・・・この秘密の書庫を用意したのです・・・そして、死期を悟ったお父様は・・・あなたに最後のプレゼントを贈りました」

そこには「直美へ」と書かれた少年探偵手帳が置かれていたのだった。

そして・・・持ち主の氏名欄には「井上直美」と書かれていた。

それは・・・井上と直美の再婚を承諾する印だった。

見つめ合う・・・井上と直美だった。

とりあえず・・・高樹澪、松田美由紀、横山めぐみ、名高達男、佐野史郎、安田成美の怪しさ抜群の豪華キャスティングにより、AKIRAその他は空気と化していたことは間違いない。栞子は主人公としてよく頑張ったと思う。

父へのわだかまりが解けた直美は鍵の入ったケースを栞子に託す。

しかし・・・ケースは空だった。

「母・・・母だわ・・・母に先を越されてしまった」

唇をかみしめる栞子。

①鍵、②ダイヤル番号「1915」・・・残すは③五十音の暗唱コードの謎を残すのみである。

はたして・・・栞子と智恵子の古書好き母娘対決の行方は・・・そもそも、智恵子はなんで出奔したのか・・・盛り上がっているのかどうかは別としていよいよクライマックスである。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はこちらへ→くう様のビブリヤ古書堂の事件手帖

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