あまちゃんもあっという間に四週目に突入である。
先は長いというものの、もう1/6近くが消化されてしまったのである。
視聴率も20%越えでスタートし、内容に至っては見逃せない毎日、見逃せない再放送の勢いである。
ドラマの中の現在は2008年の夏から秋に至っており、おそらく第13週くらいまで高校二年~三年のアキを描き、夏ドラマの季節には高校卒業ということになるのではないか。
そうなると・・・ひょっとして・・・2011年には届かない可能性があるのだな。
いや・・・それはないか・・・2013年には届かないかもしれないけどなあ。
というか、届かなくてもいいなあ・・・と思うのだった。
半年休んで第二部スタートすればいいじゃん。
「ちゅらさん」を越えちゃえばいいのさ。
で、『連続テレビ小説・あまちゃん・第4週』(NHK総合20130422AM8~)脚本・宮藤官九郎、演出・井上剛を見た。岩手県北三陸市(フィクション)の高校に転校し、海女見習いとして本格的なスタートを切ったアキ(能年玲奈)だったが、不注意で沖に流されてしまい、祖母の夏(宮本信子)の怒りを買い、潜水禁止を言い渡されてしまう。アホの子の母である春子(小泉今日子)は娘を見守りつつ、24年間音信不通だった夏との関係修復に熱中するのだった。海に潜れず悶々とするアキだったが、親友となったユイ(橋本愛)の夢が「東京でアイドルになること」と知り吃驚仰天する。しかし、ストーブことダメ兄のヒロシ(小池徹平)のためにださいミス北鉄になったユイの輝きを見て・・・発奮するのだった。そして、夏に直談判して再び、潜ることを許される。次なる試練は「海女のシーズンオフまでにウニを一個でも採集すること」だった。そんなアキの前に奴らが現れるのだった。
月曜日 やつらが電車にのってやってきた(村杉蝉之介)
一部地域ではおタクの皆さまのことを「おまいら」などと呼称するわけだが、鉄道ファンやアイドル・ファンと自己同一化はできないので、この記事でそういう人々をやつらと呼称することをお許しください。観光協会の臨時職員となったヒロシの作ったホームページに掲載された「ミス北鉄・足立ユイの動画」(一部リニューアル・・・再生回数はカウントされません)が一部愛好家に注目され・・・とある土曜日にやつらがやってきたのである。
北三陸駅の副駅長・吉田正義(荒川良々)は電車にすし詰めになってやってきた奴らに慄いたのだった。
「ユイちゃんはどこですか」
「ユイちゃんは」
「ユイちゃんはどこですか」
カメラを構え、特殊な臭気を漂わせ、奴らは集団で襲いかかってくるのだった。
観光協会のビルから降車乗客数をカウントしていた観光協会々長・菅原保(吹越満)はただならぬ人数の集団に度肝を抜かれるのだった。
北三陸駅の駅長・大向大吉(杉本哲太)は興奮して叫ぶのだった。
「上げ潮じゃーーーっ・・・ユイちゃんはまだかーーーっ」
「まだ・・・眠ってます・・・土曜日なんで・・・」と電話を片手に応じるヒロシ。
「起こせーーーっ」目が血走る大吉だった。
やつらはたちまち、街を浸食していく。祭り以外で観光客を見たことのない商店街の人々は恐怖してシャッターを閉じるのだった。
喫茶「リアス」から春子は娘のアキに電話をかける。
「うに丼売りきれちゃったのよ・・・追加お願い」
「何個・・・」
「とりあえず120個」
「じぇじぇじぇ」
「無理よね~」
そこへ・・・安部小百合(片桐はいり)がまめぶの鍋を持って駆けつけるのだった。
「ただ今、ミス北鉄の足立ユイさんを乗せた列車が畑野駅を出ました」
「おおううおう」とどよめく奴らだった。
追加のウニ丼を持って駅に着いたアキは電車が満員で、ユイが奴らに包囲されているのを見て驚愕するのだった。
「視線ください」
「ツーショット禁止です」
何故かやつらを仕切っているのはアイドルヲタクのヒビ木一郎(村杉蝉之介)である。
やつらの嵐が過ぎ去った後、くたくたになったK3NSP(北三陸を何とかすっぺ)サミットのメンバーたちはスナック「梨明日」に集うのだった。
ウニ丼を作り続けた夏ばっぱは腰を痛めていた。
「今日だけで一千万円の経済効果がありました」と発表する観光協会の職員・栗原しおり(安藤玉恵)・・・。
「ホームページってすごいな」と茫然とする菅原。
「いや・・・ホームページというより・・・ユイちゃんの潜在能力の高さですよ」
何故か、集いに参加しているヒビ木一郎だった。
「明日は・・・日曜日だぞ」
「こわい」と怖じけづく人々。
「何いってるだ」と口から泡を飛ばす大吉だった。「いつ、街おこしをする・・・今でしょ」
大吉は・・・今こそ勝負の時と人々に総攻撃を指示する。そして・・・。
「ユイちゃん・・・明日も頼む・・・」と土下座するのだった。一同も頭を下げる。
大人たちに頭を下げられたユイは逡巡しつつ受けて立つのだった。
そして、翌日ははじめてのジャンケン大会もこなしたのである。
「かっけえ・・・ユイちゃん・・・アイドルみたいだ」
「アイドルじゃないよ・・・笑って握手してジャンケンしただけだもの・・・こんなことで浮かれていられない」
クールなユイをますます尊敬するアキだった。
「でも・・・やっぱり・・・凄いよ・・・ユイちゃん見てたらオラもがんばんべってやる気さ出るもの」
見つめ合うアキとユイ。こうして・・・北三陸市に新しい風が吹いたのだった。
火曜日 北三陸、告白前に散って(小池徹平)
海女を始めて二ヶ月・・・。未だに一個のウニも獲っていないアキ・・・。
さすがに落ち込むのだった。
そんなアキに純情可憐な下心満載でインタビューにやってきたヒロシ。
しかし、長内かつ枝(木野花)、熊谷美寿々(美保純)、今野弥生(渡辺えり)たちは心配を口にする。
「なんだっけ、子、牛・・・」
「トラウマですか・・・」
「よく、わかったわね・・・一度溺れかけたんで・・・いざとなるとその時の恐怖が蘇ってパックマン・・・」
「パニックになるんですね」
それでもヒロシはアキにアプローチするが・・・アキは「サイナラ」と帰ってしまうのだった。
眠れない夜・・・アキは母の高校時代の勉強部屋を探検するのだった。
1983年~84年。そこにはアキの知らない世界が保存されていた。そして舘ひろしは昔も今もあまり変わっていないことを知るのだった。
録音できるマイク付カセットデッキで・・・高校生の春子(有村架純)が録音したテレビ番組のカセットテープで「君に、胸キュン。/YMO」(1983年)を聴いてみるアキ。
「・・・キュン・・・キュン・・・」
お茶の間の一部愛好家が「アキに、胸キュン。」である。
そんなアキの後ろ姿をこっそりと見守る春子だった。
連日、アキをインタビューしに来るヒロシ。そして、連日、ウニが獲れないアキだった。
「ストーブさん、仕事楽しいですか・・・あ・・・興味ないのに訊いちゃった」
「ストーブさんて・・・興味ないって・・・」
「あ・・・ごめんなさい・・・海に入ると気持ちが正直になるっていうか・・・」
「父はホッとしているみたい・・・息子が無職じゃ世間体が悪いから・・・」
「そうだろうか・・・世間体を気にしているなら・・・おらの前でストーブさんを殴ったりしないっぺ。子供がかわいくない親なんていないっぺ」
ウニが獲れない落ち込みからなんとか気を紛らわせようとするアキ。
そして・・・せめて何かみんなの力になりたいと思うアキだった。
「おら・・・インタビューに応えてみる」
「そ、そう」
「ここは袖ケ浦です。最北端の海女がいます。おらも海女の天野秋です。でもオラはまだ一個もウニをとれません。えと・・・後、何をしゃべればいいのかな・・・そうそう、ここらでは吃驚した時にじぇじぇっと言います」
そこへ夏が乱入する。
「組合長さんがサザエくれたど・・・食うべ」
「食う・・・食う・・・」
サザエに釣られてインタビューのことを忘れるアキだった。
アキ、かわいいよアキである。
その夜、アキのインタビューを動画として公開するために編集作業をしていたヒロシは・・・。
「アマノアマノアキデス・・・アマノアマノアキデス・・・アマノアマノアキデス」
頭にウニがわいてしまうのだった。
そして、スナック「梨明日」に駆け込むヒロシ。
春子にむかって「好きです」と言えば血相を変える大吉である。
「ちがうわよ・・・」
「じゃ、私なの」とびっくりして標準語になる弥生だった。
「娘のアキよね・・・」
「そうです・・・今、頭の中がアキちゃんでいっぱいになって探りを入れようと春子さんのところにきたんです」
「認めません」
「えーーーっ・・・どうして」
「いや、おらの経験では海女は男を知ると深くもぐれるようになる・・・つまり処女膜が破瓜してタンクブロー浮上が困難なことに・・・」と横やりを入れる弥生。
「下ネタはそこまでよ」
「理由を言ってください・・・彼女が高校生だからですか・・・」
「ちがうわよ・・・23歳にもなってフラフラしているようなあなたに可愛い娘を預けるわけないじゃないの」
「う・・・」瞬殺されるヒロシだった。「わかりました・・・この気持ちは胸にしまっておきます・・・でも、でも、僕が、僕がアキちゃんのファン1号ですから・・・それだけは譲れませんから~」
泣きながら店を飛び出すヒロシ。もちろん、彼を追う者は店内にはいなかった。
しかし・・・ヒロシの放った恋の矢は意外なところへ刺さったのである。
巡りきた週末・・・やつらは袖が浜を目指したのだった。かってアキをブスと断定したヒビキ一郎が先頭に立っていた。
「アキちゃんはどこですか」
「アキちゃんは」
「アキちゃんはどこですか」
ホームページのアキの動画を見たやつらはリアルタイムで「萌え~」になってしまったのだ。ヒビキ一郎も現実のアキはブスだと思うが動画のアキには「萌え~」なのである。
おなべのフタで防御するアキにやつらは群がって襲いかかるのだった。
アキは心から恐怖した。
水曜日 落ち武者も影武者も武者のうち(でんでん)
ヒロシの恋の怨念によって突然、ちょっとだけ人気者になったアキ。
動画のアクセス数もユイ100万回に対し、10万回を越える勢いなのだった。
「訛って笑って」
「急に訛れって言われてもおら困っちまうだ」
「訛ってる~」
それなりに萌えるやつらだった。
「しかし・・・アキはブスっていうほどのことはないだども普通の高校生だっぺ・・・なしてだ」と疑問を呈する夏ぱっぱ。
「相乗効果ですよ。ユイちゃんは美少女ですがちょっと近寄りがたいものがあった・・・そこへ・・・どこにでもいるような素朴な女の子が登場。ユイちゃんの17歳とは思えない美貌に対してアキちゃんの16歳とは思えない子供っぽさがキタってことは、北三陸がキタってことなんです。なまってるアホなブスが来る・・・これがキターッてことです」
「ブスは言いすぎだっぺ」
言葉の過ぎるキモオタを糾弾するヴェテラン海女軍団だった。
アキ人気によって観光客が三割増しの袖が浜。漁協の組合長の長内六郎(でんでん)も「これはアキちゃんにボーナス出さねばな」と恵比須顔である。
しかし、アキの顔色は冴えない。海女シーズン終了まで後一週間。未だにウニを一個も獲れていないアキだった。
「もう、奥の手しかない・・・」海女軍団は目配せしあうのだった。
今日もアキは浜辺の人気者である。
「アキちゃん、ウニ獲ってきて」
「アキちゃん」
「アキちゃん、ウニ獲ってきて」
美寿々は「この子はまだ見習いだから・・・」と庇うが・・・アキは「今日は獲れそうな気がする」と海に入るのだった。
しかし・・・もう一歩のところで手が届かない。
ところが・・・浮上してきたアキの網の中には・・・ウニが入っていたのだった。
「おや、アキちゃん、ついにウニを獲ったか」と口々にアキを讃える海女たち。
「じぇじぇ・・・」
獲った覚えのないウニが網に入ったことで・・・獲った気になるアキだった。
アホの子の極みなのだった。
喜び勇んで夏と春子に報告するアキ。
「本当に自分で獲ったの」
「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん、はい」
「なんじゃ、そりゃ」
「無我夢中でいつ獲ったか記憶がない」
「ひょっとしたらウニが自分で網に入ってきたのかも」
「なわけないでしょ。ウニは手も足もないんだから」
疑念を示す春子に夏は訳知り顔で笑みを浮かべる。
「アキの普段の行いがいいから・・・潮が運んでくれたのかもしれんぞ」
夏に言われてその気になるアキだった。
しかし・・・ネタはすぐに割れるのだった。
海中で安部小百合(片桐はいり)がウニを網に入れてくれたのである。
「そんなのインチキだっ」とアホの子だけに不服なアキである。
「勘違いするな・・・海女はサービス業だ・・・若い女の子に獲ってもらうことを喜ぶお客さんがいるなら・・・サービスしてあげる・・・それが銭を稼ぐってことだぞ。お客さんが喜んでまたきてくれる。それが観光海女の生きる道だべ」
夏の正論に反論できないアキだったが・・・どうしても不満が残るのだった。
「それじゃ・・・安部(あんべ)ちゃんが・・・落ち武者みたいでねえか」
アキの一言を受け流す海女軍団・・・しかし、組合長だけはひっかかるのだった。
「いや・・・それは落ち武者でなくて・・・影武者だんべ・・・」
しかし・・・そういう細かいことにはこだわらないのが女というものだった。
「ま・・・どっちでもいいか」と言葉を濁す組合長である。
アキよりもずっと観光客へのサービスに徹するユイ。
それに対して・・・ウニも獲れない自分は・・・。
海が好きで・・・海に潜るのが好きで・・・ウニを獲ろうとするのが好きなアキ。
しかし・・・それだけでは何かが足りないと感じるアキだった。
アキ・・・それはウニだよ・・・とお茶の間はアホの子に教えたい気持ちでいっぱいになるのである。
木曜日 卒業アルバム、強襲(片桐はいり)
一部愛好家熱狂のかわいい幼女がアキのウニを食べるために遠方からやってきた。
曇りのない瞳で見つめられ、「ウニ、おいしい」と言われたアキはついに心が折れるのだった。
「本当は・・・あそこにいるおばちゃんが・・・こっそり海の中で渡してくれるの・・・だから・・・ごちそうさまはあの人にいってあげて・・・」
「うん・・・ごちそうさま」
思わず漂う微妙な空気である。
海女たちは海女小屋でアキを責め立てるのだった。
「あんな夢を壊すようなこと言ったらダメだ」
「でもウソつくのはいやだ」
「アキちゃんの獲ったウニが食べたくて遠くからやってきた人に失礼だ」
「・・・」
「安部ちゃんだって立場がないべ・・・最後の花道だってのに」
「最後って・・・」
実はこのシーズンを最後に海女を引退して、宇都宮のデパートで岩手名物のまめぶを扱うカフェの担当者になる安部だった。
推進者は元夫の大吉である。
「安部ちゃんのまめぶが・・・一番おいしいと思う・・・まめぶとしては・・・」と語る大吉。
まさかと思うが・・・春子狙いのために・・・元妻を追い払う魂胆なのではと邪推が浮かばないではない展開である。
アキは割り切れぬ思いに耐えかねてラブレター禁止でポスターを盗まれる勢いのユイに相談してみるのだった。
「需要と供給のバランスとれてるでしょ」とクールに応じるユイ。「お客さんはアキちゃんのウニが食べたい・・・アキちゃんは海に潜りたい・・・それで上手くいくんだからそれでいいじゃない」
「ユイちゃんは・・・握手とか、写真撮影とか・・・楽しいの?」
「楽しいわけじゃないけど・・・私にそういうことが求められているんだから・・・期待には応えたいと思う」
アキはユイの言動に大人を感じるのだった。
「お客さんだってダルダルのおばさんより、かわいいユイちゃんに獲ってもらった方がうれしいでしょ」
「ダルダルって・・・」アキはそのフレーズに受けて相談内容を忘れるのだった。
次に喫茶「リアス」の春子を訪ねたアキは流れで「アイドル」について話すのだった。
ユイのアイドル的なことについて話したアキだったが・・・何故か春子の逆鱗に触れてしまうのである。
「ママの若い頃のアイドルって誰だった・・・ママの憧れのアイドルって聖子ちゃん・・・」
「なんだってえ」
「町で一番最初に聖子ちゃんカットにしたって・・・安部ちゃんが・・・」
「昔の話よ・・・中学生の頃の」
「その頃の写真見たい・・・」
「ないわよ・・・」
「一枚くらいあるでしょ・・・」
「なによ・・・この子はアイドルアイドルって・・・海女の次はアイドルになりたいとか言うんじゃないでしょうね」
「そんなこと・・・」
「あなたみたいなブスになれるわけないでしょ・・・」
娘にブスと言うママもママだが、ママにブスと言われる娘も娘なのだった。
カウンターで凍りつく・・・琥珀掘りの小田勉(塩見三省)・・・。
「ごめん・・・言いすぎた」
しかし、涙が止まらないアキだった。
「泣くなよ」
そこへ・・・大吉がやってくる。
「どうした・・・アキちゃん・・・泣いたりして」
「泣いてねえ・・・」
「いや・・・泣いてるべ」
たまらず店を飛び出すアキだった。
「うおおおおおおおおおおおお」
思わず自転車をかっとばして北鉄よりも早く袖が浜にたどり着くアキだった。
クーラーがこわれたらスカート扇風機をするほどキレやすい母だったが・・・かってないほどのキレ方が気になるアキは・・・春子の過去を知る同級生の安部を訪ねるのだった。
そして・・・卒業アルバムを見せてもらう。聖子ちゃんカットで小首をかしげた昔の春子は・・・今のユイのような美少女だった。
「でも・・・どうして私のこと・・・ブスって言うほど怒ったのかな・・・ただ、昔の写真を見せてって言っただけなのに・・・」
その一言を聞くと、蒼ざめる安部だった。
アキはママには何か恐ろしい秘密があると・・・勘付いてしまうのだった。
秘密を求めて・・・アキは真夜中のドアを開けるのだった。
春子の勉強机の引き出しには・・・なにやらノートがある。
思わず手を出したアキの背後から春子が声をかけるのだった。
「なに・・・してんのよ」
アキはあまりの恐怖で石になるのだった。
金曜日 何してくれちゃったんだよ、ストーブ(荒川良々)
「ごめんなさい・・・ママ」
春子の青春の秘密の部屋で死を覚悟するアキ。
しかし、アキを突き飛ばすように部屋に入ってきた春子は時を越えて昔の春子に戻るのだった。
「うわあ・・・吉川・・・凄い肩幅・・・安全地帯・・・聖子ちゃん・・・ジャガー横田、なんじゃこりゃ・・・うわあ・・・菅原くんとの交換日記・・・しかも三日でやめちゃってるし・・・変な子だねえ・・・私って変な子だったよねえ・・・」
「ママ・・・」
「ちょっと・・・この部屋でママって言うのはやめてよ・・・この部屋にいる時の私は・・・あなたのママになるなんて・・・思ってもいなかったんだから・・・あれ・・・なんだこれ・・・ゲームだよ・・・安部ちゃんのだよ・・・24年間借りっぱなしだよ・・・いやだ・・・返さなくちゃ・・・今、何時?」
「じぇじぇ・・・今から?」
「行かないよ・・・夜中だもの・・・ねえ・・・ちょっと散歩しようか」
「・・・」
真夜中に海へ向かう母と娘・・・。アキは戸惑いながら狂躁的な母親に従うのだった。
「ここはねえ・・・私の秘密基地・・・おばあちゃんとケンカした時にここに隠れてたんだ」
春子は青春の落書きをアキに見せるのだった。東京・・・表参道・・・原宿・・・海死ねウニ死ね・・・愛羅武勇・・・舞蹴蛇苦尊・・・それは1981年・・・春子16歳まで遡る過去への旅だった。春子とアキは時を越えて同じ年齢になったのだった。
18歳で家を出た春子。それからアキを生むまでには8年の歳月が流れている。家出前の春子の秘密も恐ろしいが・・・家出後の春子の過去も想像するのが恐ろしいものである。
「田舎が嫌いだったんだ」
「ユイちゃんみたい・・・」
「そうかあ・・・そうかもねえ」
「ユイちゃん、高校卒業したら東京さ行くって」
「あんたはどうなの・・・東京に帰りたい?」
「ううん」
「そう・・・よかった・・・」
「え・・・なにが」
「なんでもないよ・・・帰ろうか・・・家に・・・」
「ハルちゃん・・・」
「なんだって・・・」
「だってママって言っちゃいけないんだべ」
「あははは」
「はるちゃ~ん」
「あははははははははは」
その夜・・・春子は長く潜る秘訣をアキに伝授するのだった。
「あのね・・・人間は脳で酸素を一番消費するの・・・だから海の中では何にも考えないこと」
「なーんだ・・・それなら・・・楽勝じゃん・・・」
すっかり安心して眠るアキ。
春子は我が子ながらアホの子だと思い・・・アホの子ほどかわいいという言葉をかみしめるのだった。
決意を秘めて・・・アキは夏に・・・九月三十日の・・・シーズン最後の日・・・船で沖に出る「本気獲り」への参加を申し出る。
「だめだって言ってもついてくるんだべ・・・」
夏はアキの願いを聞くのだった。
しかし・・・本気獲りにエントリーできるのは一家に一人の決まりだった。
それを知ったアキは天野家の代表になってしまったことを知るのだった。
たちまち・・・襲いかかるプレッシャーだった。
そんなアキの前にヒロシが現れる。
「アキちゃんが心配なんだ・・・」
「なして・・・」
「アキちゃんが好きなんだ・・・」
生まれて初めて告白されたアキの心は木端微塵になるのだった。
「うわあ・・・考えちゃだめ・・・考えちゃ駄目なのに・・・なんてことしてくれたのよ、ストーブ」
駆け去るアキだった。
通りすがりの吉田は獲り残されたヒロシに「残念でしたねえ」と言った。
海女の口開けと呼ばれる・・・本気獲りの前夜。
アキはまったく眠れなくなってしまったのだ。
「ウニが一匹・・・ウニが二匹・・・」「好きだ」「ウニが一匹・・・ウニが二匹」「好きだ」
「好きだ」「好きだ」「好きだ」「じぇじぇじぇーっ」
土曜日 私ウニを獲りました(能年玲奈)
「予定通り、本日は海女の口開けを開催します」
引退する安部小百合の涙のアナウンスが響く。
アキにとってのラスト・チャンス。
本気獲りの日。アキは一睡もできずに朝を迎えてしまった。
乱獲防止のために・・・いつもは限定した地域でウニを獲っていた海女たちが・・・この日は獲り放題の漁業権を行使するのだった。そのために・・・海女クラブのOBなども参加して本気でウニを獲りまくるのである。液晶テレビが買えるほど獲るのだった。
ヒロシもカメラを構えて職務を遂行する。
そして・・・海女の群れを乗せた船は沖へと漕ぎ出すのだった。
船を送り出した夏ばっぱは監視小屋へ向かう。先着していた春子ママは双眼鏡でアキの姿を見守るのだった。
サイレンが鳴り・・・次々と海に潜る海女たち・・・。
しかし・・・アキは足がすくんでしまう。
今日は・・・みんなが本気だから・・・溺れても助けてもらえない・・・そう思うと恐怖が沸き起こる。
「こわかったら・・・無理しなくていいぞ」と優しく声をかける組合長。「いつもの海と違って水温も低いし・・・潮の流れも速いから・・・」
しかし、アキはついに心を決める。
「おら・・・いく・・・安部ちゃんと約束したんだ・・・自力でウニをとって安心して宇都宮に行ってもらうって・・・」
秋の海にアキは身を投げた。
「うわ・・・冷ゃっこい・・・」
そして・・・アキは潜った。
考えるな・・・考えるな・・・いつしか・・・アキははじめて・・・海に落ちた日のことを思い出す。
夏ばっぱは言った。
「考えるな」
「考えたってどうにもならねえ」
「何も考えるな」
一番大切なことを夏ばっぱは最初に教えてくれたのだった。
アキは潜る。アキは潜る。そしてついにウニを掴んだ・・・しかし、つかみ損ねた。
海の底へ沈むウニをアキはおいかける。
海女たちは危険を感じてアキを止めにかかる。
その制止をふりきってアキは潜る。
あぶないよ・・・。
大丈夫、きっと獲れる・・・。
そして・・・アキは「はじめてのウニ」を確保した。
その様子を夏は双眼鏡で確認して顔を綻ばせる。
「獲ったど・・・」
「ホント・・・ホントだ・・・掴んでる」
春子は晴れ晴れとした気持ちを感じる。
起承転結で言えば四週目は一つのフィナーレである。
それは長いフリの後で一つのウニによって決着するのだった。
アキは「ごめんね・・・五百円しか稼げなかった・・・」と謝る。
しかし、夏は「アキのはじめてのウニだ・・・天野家にとっては一生もんだ・・・」
そこへユイがやってきてアキを祝福する。抱き合って喜ぶ二人の少女。
「アキちゃんの獲ったウニは・・・」
「まざっちゃったかも・・・」
「ここにござる」
アキは袖が浜の希望の星なのである。
アキのとったウニはお宝あつかいなのだった。
・・・アキの獲ったたったひとつのウニは海の神様に奉納される。
春子は三方に載せられたウニの記念写真を撮るのだ。
もうなんだか・・・ドキュメンタリーを見ているようだった。
こうしてゴールド・クロー安部は北三陸を去って行ったのである。
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【おしらせ】ココログで障害が発生している模様。トップ記事の表示が遅い。コメント・TB受付画面が表示されないなど不具合が報告されています。皆さまにはご迷惑をおかけして申し訳ありません。
【追記】2013年4月28日未明に発生した障害は夜更けに復旧した模様です。公式発表はありませんがココログに代わって御不便をおかけした読者の皆さまにお詫び申し上げます。すいやせんでしたっ。
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