目に映るすべてのものがすべてのメッセージとは限らないのです。(香取慎吾)
幽(かす)かな彼女でございます。
わかりやすいのは面白さの重要な要素だ。
しかし、わかりやすすぎればつまらなくなってしまう。
人間の感覚はなかなかに手強いのである。
「幽霊」というフィクションは古くからの「手」だ。
「教師」というフィクションも同様である。
アイディアの基本であるプラス思考で、「幽霊」+「教師」を実行中。
倉本聰の脚本で「あなただけ今晩は」(フジテレビ1975年)があり、これは「幽霊」+「夫」である。
1990年には映画「ゴースト/ニューヨークの幻」があって、これは「幽霊」+「妻」である。
最近では「ゴーストママ捜査線」(日本テレビ2012年)が「幽霊」+「息子」だった。
「ゴーストママ捜査線」では「息子の父」の「担任教師の幽霊」が登場し、ある意味では「幽かな彼女」の直近の先行系になっている。
こういう場合にはどれほど先行作品を研究し、理解しているかがひとつの焦点になってくる。
「教師」が現実に存在するフィクションであるのに対し、「幽霊」は架空のフィクションであると言える。
そういう意味では「幽霊」の自由度は高い。その分、「わかりにくさ」の要素になるわけである。
「わかる/わからない」の微妙なバランスを維持しつつ・・・熱血教師もの・・・というありふれた素材を「幽霊」がなかなか巧妙に再生している。
「幽かな彼女」はそういうドラマだ。・・・ま、今回は幽霊がちょっと活躍しすぎましたがーーーっ。
で、『幽かな彼女・第3回』(フジテレビ20130423PM10~)脚本・古家和尚、演出・白木啓一郎を見た。生者である世田谷区立小原南中学校の新任教師・神山暁(香取慎吾)は霊感が強くて幽霊を視認できる特殊な存在である。しかし、かっていじめ問題の対処に失敗して問題をこじらせた過去があり、生徒指導に対して消極的になっている。しかし、赴任先の下宿でアカネ(杏)という元教師の地縛霊と出会い・・・その情熱に影響されて・・・少しずつ生徒との信頼関係を築きつつあるのである。
神山先生が担任を受け持つ3年2組は生徒数30名。副担任の河合千穂(前田敦子)はミニスカートから足を出してもクールな心は出さない裏表のある性格で生徒を指導する気持ちは微塵もない仮面教師である。
第一話で不登校の相田(神宮寺勇太)をアカネのともだちである浮遊霊・吉岡さん(佐藤二朗)の協力で立ち直らせた神山先生。第二話では相田の幼馴染の岡本(未来穂香)が経済格差によって窮地に陥ったところを「抜き打ち持ち物検査」で存在しないものを没収するという機転によって救い・・・少なくとも二人の窮地を救ったのだった。
しかし、「抜き打ち持ち物検査」の実行により、クラス全体の好感度は下がり、クラスの女子グループのリーダー・京塚りさ(山本舞香)からは敵視され反抗的態度をとられることになる。
しかし、直観力に優れた生徒たちは神山先生の変化を見抜いていた。
その一人で、仏教関係の宗教者を祖父に持ち、神山先生と同様に霊能力者である森野小夜(森迫永依)は積極的なアプローチを開始する。神山先生の下宿を急襲してきたのだった。
「いや・・・それは・・・ちょっと」
昨今では女子中学生が男性教諭の家庭訪問は禁断の領域になっている。なにしろ、ふしだらな教師による性的な不祥事が後を絶たないからだ。
「まずいですよ・・・一人で来たら・・・」
「一人じゃないじゃないですか」
「え・・・」
小夜がアカネの存在が見えることを知り、うっかり領海侵犯を許す神山先生だった。
「君にも彼女が見えるのですか・・・」
「ええ、先生も霊的存在が見えることは知ってました。でも、先生は生徒に興味がないようなので放置していたんです。でも・・・最近、先生の態度が変わってきたので・・・ちょっと関わりをもってみようと思いました」
「・・・」
小夜はアカネが地縛霊として部屋から出られない事情を知ると深く同情する。
こうして、神山先生は小夜とも信頼関係を築く。なにしろ、霊能力者同志なのである。
現在の信頼獲得度は3/30・・・一割の生徒から優良教師として認知された神山先生だった。
何か含むところがある小原南中学校副校長の霧澤和泉(真矢みき)は生徒に対して教師の評価アンケートを実地し、評価の高い順に面談を実施する。神川先生の順番はなかなか回って来ず、意外なことに生徒から人気があると思われていた河合先生も評価は低かった。河合先生は生徒たちに内面を見透かされていたのだった。
3年2組の男子生徒の一人、根津(森本慎太郎)は制服の着崩し方から明らかに反抗的な生徒だが、小夜とは幼馴染である。小夜の神山先生への接近に危惧を感じるのだった。
「教師に接近しすぎるのはどうかと思うな」
「思ったより悪い先生じゃないよ」
「そういうのが一番危険なんだよ」
根津には教師に対して何かわだかまりがあるのだった。
一方で面倒見のいい男子生徒・手嶋健太郎(岩橋玄樹)は相田や、岡本の問題を解決した神山先生の手腕を好感を持って見守っていた。
そんな時、手嶋が密かに想いを寄せる柚木明日香(広瀬すず)に一つの問題が発生しようとしていた。
柚木明日香は冴えないサラリーマンの父親(相島一之)への反発から華やかな芸能界に憧れモデルを目指していた。しかし、専属モデルのオーディションではなかなか採用に至らず、あせりを覚えていたのである。
ちなみに・・・明日香を演じる広瀬すずは「35歳の高校生」で高校生を演じている広瀬アリスの実の妹で・・・広瀬姉妹は揃って雑誌「Seventeen」の専属モデルである。
再び、神山先生の家庭訪問をした小夜は・・・祖父から地縛霊の地縛を解く秘義を教わってきていた・・・どういう一家なんだよっ。
「浮遊霊が根なし草っていうか、動物的だとすれば・・・地縛霊は植物的で・・・土地に根付いているのです」
「根っこなんてないですよ」
「意識を集中してみてください・・・霊気が霊糸となって顕現するはずです・・・」
「おおっ・・・」
神山先生はアカネが霊的に畳の下の床板に根付いていることを発見するのだった。
その床板を切り出すことで・・・アカネは床板を生者が持ち歩けば携帯幽霊として外出可能になったのである。
ただし、アカネが霊的に存在するのはやはり部屋自体に由来するために・・・長期外出には限界があるのだった。部屋でないと霊的パワーが充電できないのである。もう、後は霊的充電器の開発が必要なのだな。
小夜が板きれを持ち数十年ぶりに外出したアカネはテレビでしか知ることのできなかった現世の光景に感動する。
しかし、その時、小夜は明日香を見かける。明日香は自称・芸能事務所のスカウトマン・冬木健(渡邉紘平)に声をかけられていた。
アカネは冬木に悪い残留思念が憑依していることに気が付き、不審を抱く。
「それは・・・生きている人間の怨みの念の残留物だから・・・霊能力者であっても生者には見えないのです」と解説する吉岡さん。
アカネから解放されて一人きりになった神山先生は久しぶりにオ・・・お城作りに熱中していた。
「生徒が騙されているかもしれない」と心配するアカネ。
「浮き沈みの激しい世界ですから・・・成功できなかったものの怨みがあるのは当たり前じゃないのかな」と妙に芸能界に詳しい神山先生だった。
しかし、クラスメートとして明日香を案じる岡本からも「クラスメートにもモデルとしてデビューするって公言してるし、もしものことがあったら・・・助けてあげてほしい」と頼まれた神山先生は念のために声をかけるのだった。
「君はモデルの仕事をしているんだって」
「先生には関係ありません」
「いや・・・もしものことがあったら心配だから・・・先生の宛先をメールリストに加えておいてくれないか」
「私がだまされてるって言うんですか」
「・・・」
「親と同じですね・・・私の可能性をつぶさないでください」
「・・・」
「私はつまらない大人になりたくないんです」
「先生はつまらなそうに見えるかもしれないが・・・そうでもないんだよ」
「・・・」
交渉決裂である。
スカウトマンは明日香の家庭までやってきて明日香のちょっと頭の悪い母親を説得することに成功するのだった。
いやあ、未成年のモデルのためのテスト撮影に同行しない親は・・・世間をなめきってるよね。
もちろん、怪しいプロダクションはもう少し手順を踏んで徐々に水着撮影に持って行くし、そうじゃない場合は単なる変態集団か、その筋の人か、娘に売春させちゃう両親か・・・だものね。
アカネ、岡本、手嶋の危惧通りにまんまとだまされ、マンションの一室で薄い水着着用を強要される明日香だった。
絶対絶命の明日香はトイレに逃げ込み、時間を稼ぐ。
そこへ手嶋から着信があった。
「明日香・・・がんばれ」
「・・・助けて・・・助けて・・・」
明らかに変態集団であることを露呈した男たちはトイレのドアをこじあけにかかるのだった。
手嶋からの連絡を受けた神山先生は携帯幽霊アカネとともに・・・性的情欲に支配された悪魔のマンションに駆け付ける。
もちろん、扉は閉ざされているがアカネは意外と強大な力を発揮するのだった。
板きれを郵便受けから投げ込むと、おそらく男たちに玩具にされた少女たちの怨念を増幅し、物凄いポルターガイスト現象を巻き起こす。
男たちはおそらくお茶の間以上の怪奇現象を目撃したのである。
できれば幻の火に包まれ、死の恐怖を味わうところまで演出するとさらに良かったな。
とにかく、業火に焼かれたように見えたのは幻で男たちが逃げ去った後には何の形跡も残っていないようだった。
明日香もなぜ助かったのか不明だったろうと考える。
しかし、神山先生に助けられたことは間違いないのだった。
「よかったね・・・」
「ちっともよくない・・・私なんか・・・もうおわりだ」
「そんなことない。君にはまだ長い未来がある。未来なんてみえないことだらけだよ。みえることだけがすべてだと思ったらこんなにつまらないことはないんだ・・・みえないから失敗する・・・だけど・・・それがおもしろいんじゃないのかな・・・一度失敗したくらいでおわりだなんて・・・それこそつまらないんじゃないですか」
「・・・」
家に戻った明日香に父親が声をかける。
「父さんは昔、パイロットになりたかったんだ・・・でもなれなくて・・・サラリーマンになった・・・そして母さんと結婚して、お前が生まれた。でも父さんは人生をつまらないと思ったことはないぞ・・・明日香の父さんになれて・・・それだけですごく嬉しくてすごく面白くてすごく楽しいから」
翌日、明日香は元気に登校した。
「どうだった・・・モデルのテスト」
「駄目だった・・・私、だまされちやったみたい。でも、次、がんばるから大丈夫だよ」
神山先生の面談の順番がやってきた。
「評判は凄くわるいけれど・・・新任なのに二人の生徒から信頼されている・・・面白いですね」
実はすでに支持率5/30でおよそ17%の信頼を確保している神山先生だった。
「副校長は・・・どうして・・・こんなアンケートをとったんですか」
「ただ・・・先生たちのことを知りたかったから」
副校長はまだ何やら目論んでいるようだった。
生徒たちからの評価が一番低かったのは河合先生だった・・・。
「意外でした。私、まだ未熟なんで・・・いろいろと生徒に迷惑かけているみたいで・・・これからはもっと頑張ろうと思います・・・」
狂躁的に言葉を紡ぐ河合先生に生徒たちの評価を読み上げる副校長。
「うわべだけをとりつくろっている。生徒に関心がない。生徒を見下している・・・」
「・・・」
「先生は本当は先生になりたくなかったんじゃないですか・・・」
河合先生の顔から偽りの微笑みが消える。
「そうですよ・・・私に言わせればおかしいのは・・・副校長ですよ・・・弁護士の資格があるのになんで学校なんかに来たんですか・・・」
「昔、私は中学校ですごく情熱的な先生に出会ったのよ・・・私・・・その先生に感謝している・・・」
「私にどうしろって言うんです」
「やめる前に・・・たった一人でもいいから・・・生徒に感謝されるような先生になってください・・・お願いしますよ、河合先生」
河合先生は頑な表情を崩さない。
その頃、アカネは神山先生に新たなる難題を持ち出していた。
「私・・・学校にいきたいの・・・」
「・・・」
「学校に行けば・・・忘れていた記憶を思い出すかもしれないから・・・」
戸惑う・・・神山先生だった。
これだけは言える。芸能界は実力世界である。実力が伴わなければ水着はどんどん薄くなるのが定めなのである。
しかし、薄い水着あるいは全裸から這い上がる人もいます。
関連するキッドのブログ→第2話のレビュー
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コメント
全部のドラマの初回を見たわけではないのですが 今クールのドラマの中では 朝ドラ以外では お話としては このドラマが1番気持ちよく 今後の展開にも興味が沸いて最後まで見続けたいと思いました(^^)
初回見た時はまさかアカネが家から出れるようになるとは思わなかったし 小夜の役まわりも意外で なんだか 見ていてすごく楽しかったです
教師アンケートの面接の時も 思った以上に和泉が正当にアンケート結果を判断していて 彼女がアカネと関係があるのは 何となくわかるんですが 本当に良い人なのかも気になります
来週はアカネは服を着ちゃうのかな?
ますます楽しくなりそう♪
今後も幽霊さん達に活躍して貰って 一風変わった学園ドラマとして楽しみたいです
女子生徒がみんな すごく可愛いですね!
投稿: chiru | 2013年4月24日 (水) 19時08分
シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃ いませ・・・大ファン
ふふふ・・・全部のドラマの初回を見ているので
今クールの中で、上位七作の一つに入っていることを
自信を持って断言いたします。
ま、あくまで悪魔が申すことですけれど・・・。
「お天気お姉さん」と「ご縁ハンター」は
惜しかったのですな。
霊的バッテリー切れがあるところなんかは
まさに携帯電話的発想で・・・
地縛霊の解放方法としては
アイディアが秀逸でしたな。
この脚本家はこういうところが好ましいのでございます。
アカネが家電的に登場し
携帯電話に発展する。
それが便利なのはもちろん、
電話=幽霊自身に喜びがある・・・
というのが愉快なのですねえ。
小夜はいつもなら暗い役回りですが
今回は子供なのに導師的ポジションのようで
ちびまる子ちゃんならではのキャスティングですな。
生徒にアンケート
先生に面談
という「流れ」もアイディアとして
構築されていますよねえ。
ついにもう一人のヒロインである河合先生の
見せ場まで持ってきたりして・・・。
副校長は・・・もういい人でいいかもしれませんな。
まあ、ただいい人ではないと考えますが。
なにしろ、河合先生がダークヒロインなので
副校長もそうだとくどくなるかもしれません。
アカネは記憶をとりもどしても
昇天はしない気がしますな。
ま・・・なんとなく仏教系なので
成仏するんでしょうな。
黒の女教師の
クラスの美少女率も異常でしたが
カスカノは・・・となりのクラスまで
美少女が配置されて
学校全体がほとんど美少女という・・・
ありえない世界が形成されています。
その点はスルーしたいと考えます。
申し分ないですからな。
投稿: キッド | 2013年4月25日 (木) 00時00分