ガリレオとオカルトちゃんととある呪いの強電磁場発生器砲(大島優子)
ツンデレというものは基本的には「好き」と言う代わりに「嫌い」と言う人である。
しかし、うっかり、「好き」と言ってしまい、たんなるツンツンではなくデレデレであることが判明する。
ズケズケものを言う人が急にモジモジする場合はズケモジとは言わないが、ツンデレの一種ではないだろうか。
ツンツンする代わりにモジモジするのでモジデレなのか。
昨日までなかった言葉が今日はある。
そういう不確かな道具で・・・人は意志の疎通を図ろうとする。
しかし、「好意」一つ伝えようとしても、かなりの困難が予想される。
それは相手の反応が気になるからである。
もしも・・・「好意」を受け取ってもらえなかったら。嘲笑されたら。嫌悪されたら。拒絶されたら。憂慮されたら。無反応だったら。誤解されたら。無限の可能性が呪縛を生む。
予想がつかないことは恐怖を生む。まだ見ぬ未来に怖気づくのである。怯えで口が重くなるのだ。
できれば無心になって「好意」を伝えたい。
しかし、心がなければ「好意」もないのである。
で、『ガリレオ(第2シーズン)・第3回』(フジテレビ20130422PM9~)原作・東野圭吾、脚本・福田靖、演出・澤田鎌作を見た。小学生時代から子役・ジュニアアイドルとして活動し、芸歴16年くらいの24歳、大島優子がゲスト出演である。ミステリのゲストは加害者が一番、無難なわけだが、それなりにデメリットもある。なんといっても悪役である。また、それなりに演技力も要求される。次に被害者があるが・・・死体になってしまうと出番が少ないのが難点である。全裸で解剖されたりするとそれなりに汚れ役になる。アイドル的な立場の女優の場合は「被害者や加害者の関係者」で「何者かに狙われている」つまり「ターゲット」という手がある。「守られるべき立場」というのが地位向上にも役立つ場合がある。つまり・・・それなりに美味しいのである。
今回は「話がかみ合わない」という話である。そのために過剰に「一方的に話す人々」が演出されている。「日本人は右傾化している」という韓国人を「韓国人はバカである」と日本人が思うようなものだ。しかし、「バカにバカと言ってもしょうがない」ので言わない日本人は多いと思う。
フェイドインすると青空で・・・ティルトダウン(パンダウン)して橋の下を流れる川面・・・ズーム・アップするとうつ伏せの着衣の水死体・・・ブラック・アウト。
まったく断りなく時間は遡上し・・・死体発生前の時間に遡上し再びフェイド・イン。
こういう時系列を乱す使い方は好みが分かれるところである。
告別式らしい現場であるが・・・弔われているのは女性で・・・死因は手首を切って自殺。
そこにオカルトちゃんこと岸谷美砂警部補(吉高由里子)が登場する。死者は大学のサークルの先輩らしい。オカルトちゃんは大学時代のサークル仲間と弔問に訪れている。オカルトちゃんより事情通の彼女たちは死んだ白井冴子(陽月華)先輩についてそれとなく噂する。真偽のほどは確かではないがそういう情報は鵜呑みにされやすい。
やがて・・・白井の勤務先のデータ復旧サービスのベンチャー会社ペンマックスの社長・早見達郎(近江谷太朗)が焼香をすますと足早に立ち去ろうとする。
しかし・・・突然、狂態を示すのである。
まるで何者かに話しかけられているように「やめてくれ・・・ゆるしてくれ・・・」などと叫び、逃げるように去っていったのである。
場面は変わり、ガリレオこと湯川学帝都大学理工学部物理学科准教授(福山雅治)が研究室で思案している模様である。
「ビーフシチュー・・・麻婆豆腐・・・とろろ芋・・・」
後にわかることだが、ガリレオは絶対粘度を密度で割った動粘度を指標とすることを食物を使った実験で講義しようと計画し、相応しい料理を考えているのである。
おそらく、料理が管のなかを自重で通過する速度でも計測して比較する気なのだろう。
「ここに料理の本はなかったかな・・・」とクリちゃんこと万年助手・栗林宏美(渡辺けい)に尋ねる。
しかし、クリちゃんはテレビのニュースにすでに天敵であるオカルトちゃんを発見し、興奮してガリレオの問いには答えない。
「ほら・・・あいつですよ・・・あんなところで・・・間抜けそうな顔して」
オカルトちゃんは発見された遺体を川に引き上げているところだった。ここで死体が早見社長であることがわかり、最初に時系列の乱れがあったことが明らかになる。時系列的な論理の乱れによる揺さぶりであるが・・・そういう記憶の整理をしないものにとっては意味不明な演出である。
ガリレオはテレビをオフにする。
「何するんです・・・」
「君は彼女が嫌いなんだろう・・・」
「いえ・・・いつもだとかならず反論されるので彼女の顔を見ながら罵倒したかったのです」
「・・・」
「あ、私の器の小ささを笑いましたね」
「いや・・・笑ったりはしない」
「器が小さいとは思ったんだ・・・」
ここで示されているのは物体には粘度の差異があり、言いたい相手に言いたいことが言えない人間が個人差はあるが存在するということだ。
生前に早見社長の狂態を目撃したオカルトちゃんは同僚の太田川稔刑事(澤部佑)には理解できない直感で・・・白井先輩の自殺との関連を洞察する。
そのためにペンマックスの社員に対して事情聴取に赴くのだった。
その結果、早見社長と白井先輩が愛人関係にあり、白井先輩は失恋して自殺、早見社長は呪いによって死者の声を聞き、発狂して自殺したというオカルト・ラインが浮上したのである。
その時、ガリレオから「ネバネバした料理について何か知らないか」と質問の電話がある。
オカルトちゃんが混乱している間に、社内でも混乱が発生する。
社員の一人である加山幸宏(宮本大誠)が突然暴れ出したのである。彼もまた幻聴を聞いて錯乱したのだった。制止しようとしたオカルトちゃんはカッターナイフで臀部を刺されてしまうのだった。
「お尻・・・私のお尻に穴が・・・なんじゃこりゃあ」
オカルトちゃんは尻からの出血にクラクラするのだった。
幸い・・・軽傷だったが入院治療を受けたオカルトちゃん。
おしゃべりな友人たちが「イケメン医師にお尻丸出しで二針縫われて意気消沈する」オカルトちゃんをからかう。「恋愛経験がゼロだもんね・・・ゼロじゃないもん・・・ああ、法学部のナカジマくんね・・・恋すると態度が変わるものね・・・物言いも遠回しになって・・・意味不明で・・・結局・・・告白しても通じなくて撃沈だったわよね」などと容赦ないのだった。
続けてやってきたのはガリレオである。
「いつからいたんですかっ」
「刺されたと聞いては見舞いにこないわけにはいかなかったが、退院するのでは必要なかったな・・・」
「呪いで人が死んでいるんです・・・私も呪われているのかも・・・」
オカルトちゃんの話すオカルト的な部分に釣られるガリレオだった。
「ツタンカーメンの発掘に伴うファラオの呪いについて知りたければ山岸凉子の『ツタンカーメン』(1996年)を読むといい・・・」
「幽霊の声が聞こえたみたいなんです・・・変な音を聞いた社員もいたし・・・」
「他人には聞こえず、特定の人物だけが聞こえる声か・・・」
ガリレオは・・・超音波で鋭い指向性を持たせる音響システムの研究室をオカルトちゃんに示す。
「これが・・・幽霊の声の正体ですか」
「いや・・・耳をふさいでも聞こえるからこれではない」
「消去法ですか・・・他には」
「今はない」
「なんじゃ・・・そりゃ・・・」
オカルトちゃんは幻聴の可能性について社長の遺体を解剖した東京都監察医務院監察医アイザック(安原マリック勇人)の所見を紹介する。
「様々な要因により発狂している場合とか・・・身体的な不調・・・特殊状況下における正常な反応・・・感覚遮断とか・・・強電磁場に置かれた場合とか・・・」
「それは物理学の領域だ」
たちまち、可能性について試算を開始するガリレオだった。
「仮説を立証するために実験が必要だ・・・三日の猶予をくれ」
しかし、焦らされると弱いオカルトちゃんは泥酔して・・・ガリレオを夜襲するのだった。
「こんなに遅くまで・・・私のために・・・」
「いや・・・特に君のためではない」
「ムニャムニャ」
「ここで寝るな」
「・・・ナカジマく~ん」
「・・・」
仕方なくオカルトちゃんに毛布をかけるガリレオだった。
もちろん、それなりの行為をしたと妄想できる。
めくるめく時が流れて・・・不快な耳鳴りや異音を聞いた社員・脇坂睦美(大島優子)を実験対象として側頭部にマイクを装着、清掃員に変装したオカルトちゃんと太田川刑事が監視する中で・・・怪奇現象「呪いの声」を待つ。
やがて・・・異音が発生する。
刑事たちが擬装したスピーカーで睦美だけに聞こえる音を拡声する。
ここまではハイテクだが最後はオカルトちゃんの観察力勝負というローテク展開である。
しかし・・・オカルトちゃんはシステム・エンジニアの小中(松尾諭)の不審な動きを見逃さなかった。小中が手元の機器を操作すると音は停止したのである。
「確保」
逃亡を図った小中は逮捕され、装置は押収される。
それは・・・マイクロ波聴覚効果(フレイ効果)によって頭蓋内に音を送信できる電磁波照射装置だった。指向性の高い低周波を脳内に送りこみ、音を感じさせる超兵器である。
これによって小中は特定の人物に呪いの声を聴かせていたのだった。
本来は冷戦時に特定の人物を洗脳するために開発されたテクノロジーである。
小中の動機は・・・脇坂睦美に好意を寄せる異性の排除だった。
愛人を自殺に追い込んだ社長は睦美を狙っていたために「幻聴発生器」によって「許さない・・・あなたを絶対に許さない・・・呪ってやる・・・あの世から呪ってやる」を聴かされて発狂したのである。
そして・・・オカルトちゃんのお尻を刺した社員は睦美と親しくしたためにターゲットとされて「次はお前の番だ・・・呪ってやる・・・お前を殺してやる」という女の声を聞かされたのだった。
そして・・・睦美に対しては無意識に働きかけるサブリミナル効果を狙って「コナカユキヒデを愛している」を加工した音声を照射していたのだった。
「なんで・・・そんな不確実なことをしたのかはさっぱりわからない」
「私は分かるような気がします・・・恋愛ってそういうものじゃないかしら」
「ナカジマくんのことか」
「・・・なんで知ってるんですかーーーーーーーーーーっ」
一種のイチャイチャである。
「好きだ」と一言 云えずに流されてた
途切れることない 永い夏の日々が
明日も二人を 焦がしてくれるから
優しい風吹けば 笑う君 青空 白い雲
(「永い夏(Long Summer)」)
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