私が殺した依頼人~探偵はBARにいる~(大泉洋)
「世界卓球」のために「みんな!エスパーだよ!」一回休みである。
ええーっと思ったよ。
ここまでスルーの「放課後グルーヴ」(高梨臨)でも良かったのだが、第4話が「前篇」なので中途半端なんだな。実写版「荒川アンダー ザ ブリッジ」の監督・脚本・編集の人が相変わらずスタイリッシュ過剰で鼻につく監督・脚本・編集をしていて少し苦言になるかと思うと・・・「みんエス」の日の気分じゃないんだよね。そこそこ面白くもあるじゃないか。・・・こういうのってパーフェクトじゃないとダメなんだよな。
放送延期になっていた「事件屋稼業」も寺尾聰(65歳)がいくらなんでもだったからなあ。杉本歯科医と深町丈太郎は同級生なんだぜ・・・佐藤江梨子(31歳)との腐れ縁のような友情関係が・・・意味不明なものに・・・。
まったく・・・ハードボイルドじゃないんだよな・・・。
ま、ハードボイルドということで・・・谷間にはこれを。
で、『日曜洋画劇場特別企画・探偵はBARにいる(2011年公開)』(テレビ朝日20130512PM9~)原作・東直己、脚本・古沢良太(他)、監督・橋本一を見た。主人公はハードボイルド・ミステリの探偵というよりはルパン三世実写版みたいな感じである。途中で何度か感情を爆発させ・・・我を失ってものにあたる場面があり・・・好みが分かれるところである。もちろん、キッドはそれについては全否定。しらけるもんな。その点を除けば・・・「強くなければ生きていけない・・・優しくなければ生きて行く値打ちがない」という一種の鉄則はまあまあ貫かれていて、そこそこハードボイルドな気分に浸ることができる。特に最後の依頼人(小雪)の描写はこれぞハードボイルドだった。つまり・・・情けのために非情になることこそ・・・真髄だからである。
【私は近藤恵(吉高由里子)、しがない外国人相手の観光ガイドよ。まあ、大した仕事じゃないけど・・・故郷の北海道札幌でスナック勤めをしているよりはマシかもしれない。私の姉はススキノの飲食店ビル「皆楽会館」でスナックをやってたのさ。父親違いだし、年の離れた姉だったけど・・・世間で言うほど折り合いが悪いわけじゃなかった。母親の百合子(竹下景子)ちゃんはなんていうかしらないけどさ。で、放火事件があって姉ちゃんが死んじゃったと知った時はとてもとても悲しい気持ちになったわけ。私の親父とは違う姉ちゃん(街田しおん)の本当の父親は霧島敏夫(西田敏行)で元はサヨクの運動家だったけど・・・結局、札幌の裏社会の親分衆の一人になったってわけ。私だって何度かあったけど・・・ものすごく面白いおじいちゃんって感じだったわ。姉ちゃんが死んだのは田口晃っていう不良が放火したのが原因だけど・・・裏じゃ地上げ屋がからんでいて・・・いろいろ噂があったわけ。だけど・・・田口っていうバカはすぐにシンナー中毒で死んじゃった。死人に口なしってわけよ。姉の父親の霧島は姉の死をすごく嘆いてさ・・・真相を暴いてやるってすごく美人の奥さん(小雪)に語っていたの。高級クラブ「コンチェルト」のママで沙織って人よ。本当に美人なんだって。ただの美人じゃなくて・・・ぞっとするほどの美人ってやつ。ところがある雪の夜にさ・・・霧島親分は不良に絡まれて黒いワンボックスカーに連れ込まれそうになっていた女の子を助けようとして逆に撲殺されちゃったのね。年寄りの冷や水ってわけ。
それから・・・いつもいきつけのバーの名刺を配っている探偵(大泉洋)に電話がかかってきたわけ・・・電話の相手はね・・・「近藤京子」って名乗った。そうよ・・・私の死んだ姉ちゃんの名前。死者からの電話ってわけ。そうね。そんなわけない。でも・・・オレオレ詐欺が成立するのって・・・結局、電話じゃ・・・親に子供だって思いこませることができるってことでしょう。電話の声なら、私だって姉ちゃんになれるかもしれないし、すごい美人の沙織さんにだってなれるかもしれない。そこがミソなわけよ。
で、探偵は相棒の高田って人と「振り込まれた着手料の十万円」に魅かれて「依頼人」の指示に従うわけ。私が思うに探偵よりも高田さん(松田龍平)の方が探偵家業には向いていると思うの。なにしろ、車と話ができるし、喧嘩も強いし、すごく頼りになりそうな感じ。でも、高田さんは本当は北大農学部の人らしいわ。つまり、インテリなのよね。私なんて一目惚れしちゃいそうな感じ。
それから・・・探偵は「死んでいる依頼人」の電話がある度に指示通り動いて・・・その度にひどい目にあっちゃうのよね。
「カトウ」って男に会いに行くと雪の穴に埋められちゃうしね。北海道で雪に埋まったら普通は死ぬけどさ・・・探偵だから死なないの。探偵はタフだからでしょう。カトウ(高嶋政伸)ってさ、暴力団・花岡組のヒットマンよ。
それから探偵は放火事件の犯人の両親に会いに行くの。父親の田口幸平(有薗芳記)はろくでなしだったけど・・・母親の田口康子(阿知波悟美)は息子を亡くして沈んでいた。探偵は子を思う母の思いには弱いものなのよ。
で・・・今度は息子が所属していた私設の更生施設・則天道場に行くわけ。だけどそこは花岡組の息のかかった構成員養成所だったわけ。指導者の佐山(波岡一喜)は拳銃を乱射するは、カトウもやってくるわで大騒ぎ。でも、いざとなったら高田が大活躍するから・・・九死に一生を得るわけ。
でも・・・探偵は奥歯が抜けちゃうし、高田さんも骨折しちゃうのよ。
それでも・・・探偵は依頼人に従って今度は南って弁護士に会いに行くの。
南(中村育二)は政治家ともつきあいのある敏腕弁護士だけど裏では花岡組の顧問もする闇社会の住人なのね。
そして・・・探偵はついに沙織さんと出会うのよ。
その時までには大筋は読めていたんだと思う。まず・・・地上げの話があって・・・立ち退きに応じない人たちがいた。そこで田口が放火して・・・姉ちゃんが死んだ。姉ちゃんを殺した田口は口封じで殺された。真相を暴こうとした姉ちゃんの本当の父親の霧島親分も殺された・・・こういうことね。
探偵は沙織さんが・・・霧島親分の仇を討とうとしてるって考えたのね。
そんで・・・ちょっとやりすぎちゃったのよ・・・田口の父親が田口が誰に殺されたのかの証拠を持っていることを突き止めるの。
でも・・・そのために・・・田口の父親はともかくとして・・・何の罪もない田口の母親までがカトウに殺されてしまうわけ。
探偵はものすごく甘ちゃんで・・・そういう「無実の人が犠牲になる」みたいな話にすごく弱いのよ。
ところが・・・依頼人だと思っていた沙織さんが・・・関西の暴力団の大物・岩淵恭輔(石橋蓮司)の息子・貢(本宮泰風)と再婚する予定だとわかるの・・・。
そして花岡組のバックに岩淵がいることも・・・仲のいい地元ヤクザの桐原組の若頭(松重豊)から聞き出すわけ。
依頼人だと思っていた沙織さんが・・・実は黒幕だった。ハードボイルドでは一種の定石よね。じゃ・・・本当の依頼人は誰なのか。当然、探偵は思うわけ。殺された近藤京子に妹がいたことをね。
同時に探偵は沙織さんに裏切られた気分になるの。調査をしている間に殺された霧島親分の人柄が好きになっていたのね。そんな親分を裏切った沙織さんがますます許せなかったの。
「一件から手を引くように」と探偵さんは瀕死になって身動きがとれないほど痛めつけられても・・・手を引かなかった。
そして、例の依頼人の指示に従って小樽に決定的な証拠を捜しにやってくる。
その日は沙織さんの結婚式だったのね。
でも・・・そんな証拠はなかった。やはり・・・依頼人は沙織さんだったのよ。
「やめてくれ・・・俺はあんたのために・・・爺さんの形見の時計まで駄目にしたんだぞ・・・」
探偵は札幌にいる「復讐の花嫁」に電話をした。
「ごめんね・・・あなたのおかげで誰に復讐すればいいか・・・すべてわかったの・・・ありがとう」
沙織さんはまず・・・カトウを殺した。
微笑んで銃で撃ったの。見事な腕前だけど・・・当然でしょう。沙織さんは裏街道を昇りつめた極道の妻なんですもの。それから・・・汚い弁護士の南も射殺して・・・花婿を射殺して・・・花婿の父を射殺した。バーン、バーン、バーン。
見事な腕前で全員即死だったって言うわ。
誇り高い笑顔を見せて復讐を遂げた沙織さんは一発だけ残った銃弾で微笑んでわが身の始末をつけたの。
探偵の連絡を受けて高田さんが駆けつけた時にはすべてが終わっていた。
悪い奴はみんな死んで・・・復讐の花嫁は・・・血まみれの骸になっていたの。
探偵ときたら肝心の時には札幌に向かう電車の中にいたのよ。
結局、探偵は依頼人を守れなかった。やはり、探偵失格よね。でも、沙織さんは感謝の意をこめて・・・霧島親分の形見の時計を探偵に残したそうよ。最後までかっこいい女だったみたい。
さあ・・・これで私の話はおしまい。そうよ・・・最後まで私の出番はなかったの。
これだけは言えるわよね。私、目当てで映画館に来た人はきっとすごく怒ったかもしれない。
でも、それがハードボイルドってものなのよ。
電話の声が私だと思った人は・・・娘からの助けて電話にはご用心・・・】
まあ、沙織が整形した近藤恵であるという考え方もある。それはそれでハードボイルドだ。
関連するキッドのブログ→まほろ駅前多田便利軒
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